肩書をつくり片っ端から営業した。「こす.くま」の2人が開拓したYouTube作家という地平

こす.くまさんトップ写真

<プロフィール>
すのはらさん(写真左)。株式会社こす.くま代表取締役。1995年生まれ。高校生の頃よりYouTuberとしての活動を始め、その後2016年ごろよりYouTube作家としての活動スタート。2019年より現職。
たけちまるぽこさん(写真右)。株式会社こす.くま代表取締役。1995年生まれ。大学在学中よりテレビの放送作家としての活動を始め、その後2016年ごろよりYouTube作家としての活動スタート。2019年より現職。



「MEETS CAREER」では多様な選択肢の中で自分らしい生き方をされてる方々の言葉を集め、「はじめの一歩」を踏み出すきっかけをお届けしています。今回のテーマは「未知のキャリアへの挑戦」

昨今、働き方改革やデジタルツールの普及により、キャリアの形が多様化しています。しかし、そうしたなか、新しい働き方や仕事に関心を抱きつつも、まず何をしたらいいのか分からず、なかなか一歩目を踏み出せないという人も少なくないのではないでしょうか。

昨年、株式会社こす.くまを立ち上げた、「たけちまるぽこ」さんと、「すのはら」さんの仕事はYouTube作家。4年ほど前から本格的に活動を始め、現在は企画立案はもちろん、サムネイルの選定や各種データの分析などさまざまな業務を一手に引き受け、現在の担当チャンネル数は30ほどにも上るそうです。

今でこそ芸能人の参入も相次ぎ、メディアとしてのYouTubeの知名度や信頼度は確立されつつありますが、少し前まではまだYouTubeは「下」と見られることもありました。そうしたなか、いかに2人は新たなキャリアを切り開かれたのでしょうか。現在に至るまでのガムシャラな道のりを振り返っていただきました。

初めて会った瞬間から意気投合し、YouTube作家の道へ

── お二人は19歳のときに出会ったと伺いました。当時はそれぞれ別の活動をされていたそうですね。

たけちまるぽこさんのインタビュー写真1

たけちまるぽこさん(以下、たけちさん)僕は大学に通いながら、放送作家として仕事をさせてもらっていました。ただ、もともとテレビやラジオのお笑いが好きで始めた仕事でしたが、期待が大きかった反面、次第にモヤモヤとした違和感も芽生え始めていた時期でしたね。

── どういったモヤモヤでしょうか?

たけちさん企画立案から形になるまでのスピードの遅さ、自分の企画が放送されても視聴者の反応がイマイチ分からないこと、「下積みは10年が当たり前」みたいな業界の謎ルールなど、挙げたらキリがないのですが……。ただ、そこで大きかったのは、少なくとも僕の目からはそうしたモヤモヤの原因を変えられると思えなかったことかもしれません。

実際、そう感じてからは、すぐにもともと好きだったYouTubeの世界を考え始め、友人に片っ端から聞き込みしたんです。「知り合いにYouTuberいない?」と。そこで友人づてに紹介してもらったのがすのはらさんです。

── 当時、すのはらさんはYouTuberとして活動されていたんですよね。

すのはらさん僕は高校時代から音楽をやっていて、YouTubeも集客のために始めました。出るだけでなく、企画・撮影・編集も一人でやっていて、ある程度の手応えもありました。ただ、演者としての自分には限界を感じ始めていた時期でもあって……。自分自身、裏方気質だと思っていましたし、長い目で見たら早い段階でそっちに行くほうがいい。そんな時に、たけちさんと出会ったんです。

すのはらさんのインタビュー写真1

── 初めて会って、すぐに一緒にやろうということになったのでしょうか?

すのはらさん:最初から意気投合したんですよね。互いにやりたいことが合致していて、その場で具体的にどう活動していくかも全部決まっていった。そこからひたすら企画を立てて、YouTuberに売り込みをかけるという日々がスタートしました。新型コロナウイルスが流行する前まではずっと休みなく仕事をしていて、たけちさんと出会ってから4年で、顔を合わせなかったのは2〜3日じゃないかな。

テレビがつくりたいのではなく、とにかく面白い企画を考えたい

── お二人がYouTube作家として活動を始めた4年前は、YouTubeは「テレビより下」と見る向きも強かったように思います。たけちさんはもともとテレビの仕事をしていた身として、葛藤はありませんでしたか?

たけちさん:世代もあるかもしれないのですが、僕はテレビやラジオもYouTubeもどちらも好きだったのでほとんどなかったです。それと当時あらためて考えを整理してみたら、僕はテレビがつくりたいというより、企画を考えることが好きでやりたいだけ。だとすると、発信する場所はどこでもいいかな、と。

ただ、周囲の同世代に「YouTube作家やるんだ」って言うと、当時は微妙な反応もありましたけどね。ちょっと、いじられたりもしましたし。ただ、いじる感じを出しつつも、「こいつ、実は憧れてるな?」と感じられるリアクションも少なくなかった。親だけは本気で心配してましたけど。「YouTubeの会社が倒産したらどうするの?」と(笑)。

── たけちさんがテレビからYouTubeに軸足を移した一方、すのはらさんは演者から裏方に転身することになります。最初からうまくシフトできましたか?

すのはらさん:そうですね。自分自身が演者として活動している時期もあったからこそ、ウケる企画を考える自信もありましたし、作家は自分に向いてるなと感じました。

── 大学3年生になると、周りは少しずつ就活を始めますよね。そのときもYouTube作家という仕事への姿勢が揺らぐことはなかったですか?

すのはらさん:僕はむしろ「普通に」就職をすることに対して違和感を持っていましたね。いろんなことができるこの時代に、どうして一様に大企業を目指すんだろうと。もちろん、就職するのが一つの道であることは理解していますが、今でも社会人3年目として働く友人たちを見ていると、もったいないんじゃないかと思うことはあります。

こす.くまさんのインタビュー写真1

たけちさん:僕の場合、そんなに前向きな決断ではなくて、もうフリーランスという選択肢しかないなと思っていたんですよ。なぜなら、中高時代から「普通のこと」が何もできなかったから(笑)。遅刻の数は中高とも学年トップでしたし、宿題や提出物の期限も守ることのほうが珍しいくらいで。本気で改善しようと思っても、どうしてもできない。だから、会社に入っても迷惑をかけてクビになるのが目に見えていましたから、自分の責任でやっていくしかないなと、ある意味腹を括っていました。

新しい分野を開拓するために、肩書を作り出し自身を売り込んだ

── YouTube作家として活動を始められた当初は、企画をひたすら売り込んでいたとおっしゃっていました。具体的に、どのようにアプローチしていったのでしょうか?

たけちさん:知り合い経由で片っ端からいろいろなYouTuberの方に連絡を取り、片っ端から「企画を考えてきたので、見てください」と1回につき100個くらいの企画を提案するという(笑)。企画書を書きまくるのはテレビの仕事で慣れていたんです。

── 当初から対価などはいただいていたんですか?

すのはらさん:最初はまったくもらっていませんでした。まずは仕事を任せてもらって、実績をつくっていくことが重要だなと感じていたので。だから、「最初は無料だけど、次やるときは◯◯円でお願いします」と営業する。当時はひたすら、その繰り返しでしたね。

── そもそも当時はYouTube作家という仕事自体が認識されていないと思います。相手に驚かれたりすることはなかったのでしょうか。

たけちさん:僕たちの戦略の一つとして、とりあえず「YouTube作家」と名乗っちゃうというところから始めました。そうすると、みんな聞いたことがないので、意外と面白がってくれる人は多かったです。それからSNSなどで「YouTube作家とはこういうものだ」と定義付けを明確にして発信したりとか、徐々に浸透させていった感じですね。

たけちまるぽこさんのインタビュー写真2

── 逆に言えば、最初からYouTube作家という職業自体は成立すると感じていたということですか?

すのはらさん:そうですね。YouTuberって基本的に企画・撮影・編集をすべて一人でやるので、めちゃくちゃ忙しいんですよ。そのことは、僕が演者としてYouTubeをやっていたからこそ痛感している部分で。僕の規模ですら「企画がほしいな」と思っていたので、毎日一人で動画を作ってアップしているYouTuberからは必ず重宝されるだろうな、と。

── それは自分自身で体験されているからこその確信ですね。実際に企画を採用にしてもらうために意識していたことは何かありますか。

すのはらさん:企画のクオリティを上げるのは当然ですが、それよりもまずは信頼関係を築くことですね。「この人たち面白いな」と思ってもらうために、一緒にご飯を食べに行ったりとか、いろんなことをしました。いくら僕らがいいと思う自信のある企画でも、やはりベースの信頼がなければなかなか採用してもらえませんから。

── ちなみに、「いろんなこと」とは具体的にどんなことですか?

たけちさん:すのはらさんが髪の色を毎週変えてきたり、お偉いさんとご飯を食べに行く時には、死ぬほど食べるとか。恥ずかしげもなくガムシャラにやってましたね。とりあえず、大人には全員ハマっておけというのが当時の僕らの鉄則だったので。

すのはらさん:飲み会の時は「飲み会台本」も作ってましたもんね。こういう話をふって、こう返して……みたいな。とにかく、面白いと思われようと必死でした。ただ、そのなかで一つ気を付けるようになったのは後輩テンションになりすぎないこと。「何でもやります!」みたいな感じで仕事を受けまくっていたら、一度普通に生活できなくなったことがあって(笑)。それからはバランスを意識して人と接するようになりました。

こす.くまさんのインタビュー写真2

YouTubeにおいて重要なのは演者本人の熱量

── そうした活動を続けるなか、YouTube作家として軌道に乗ってきたなというタイミングはありましたか?

たけちさん:やっぱり、東海オンエアさんの動画に関わらせてもらったことは大きいと思います。もともと大好きだった方々とご一緒させてもらえるという意味でうれしかったのはもちろんですが、自分たちの存在を知ってもらう絶好の機会でもあったので、バズを狙いつつ、作家性を入れ込みつつという感じでかなり企画を練りました。

youtu.be

── このときは、どのようにお仕事につながったんですか?

すのはらさん:マネジャーさんとの信頼関係ができていたのが大きかったと思います。もともとご本人たちよりも前にマネジャーさんと知り合って、それから企画はずっと出し続けていたんですけど、それと平行して動画のアイキャッチの作成とか細かいお仕事もやらせていただいて。そこで生まれた信頼関係がベースにあって、最終的に企画を採用いただけたかなと思っています。

── やはり信頼関係が根底にはあったんですね。最近は担当するチャンネルの数も多くなっていると思いますが、現在はどのような形でお仕事をされているんですか?

たけちさん:今、担当させていただいているチャンネルは約30ほどなのですが、常に海外の動向をリサーチしたりしつつ、企画は考えています。そのうえで、例えば相手のYouTuberさんが「20代の女性に届けたい」という要望があるのであれば、過去の実績などを参照しながら企画を詰めていったりとか。

すのはらさん:やっぱりYouTubeだと一日単位で改善していけるんですよ。実は自分たちでもYouTubeチャンネルを運用していて、未知の企画などはここで一度試して分析して、提案に生かすといったこともしていますね。

── 最近は芸能人のYouTube参入も相次いでいますね。

すのはらさん:僕らがYouTube作家を名乗り始めた頃は、「YouTuberってなんやねん!」と結構テレビやラジオでディスられてましたから、素直にうれしいですね(笑)。実はすでに依頼もかなりいただいていて。ただ、僕らはなるべく自分たちが好きな人や、本当に伸びると感じられるところとしかやらないようにしようとは決めています。

── 基準はどういったところにあるんですか?

すのはらさん:やっぱりYouTubeにおいて重要なことは演者本人の熱量だと思うんです。なので、YouTubeをやりたい理由を聞いた時に、「仕事がないから」みたいなマイナスなことを言う人とはやらないようにしています。そのマインドだと絶対に続かないし、伸びない。逆に、打ち合わせで自らやりたいことをたくさん話してくれる人には、「こうしたらもっと伸びると思いますよ」と意見を伝えて、そこから一緒に組むことになるケースが多いですね。

すのはらさんのインタビュー写真2

── ちなみに、企画のアイデアに詰まったり、スランプになることもあるかと思いますが、その場合はどう解消していますか?

すのはらさん:僕は企画を出す! と決めたら、あらかじめそこで時間を押さえてしまって、とにかく何かしらはアクションを起こすようにしているので、そこまで何も出ないということは少ないかもしれません。

学校では1時間目は数学、2時間目は国語というように決められた時間がありましたよね。同じように自分で時間をあらかじめ区切って押さえておく時間割を作っておくのもいいかもしれないですね。

たけちさん:それが、僕は苦手なんですよね……。僕の場合は計画的にできなくて、締め切りに追われてやっと作業に取り掛かれる。

── お気持ちは非常に分かります……。ちなみに、日々のインプットの際に心掛けていることはありますか?

たけちさん:とにかくメモはとりますね。その際、心掛けているのは一つひとつのメモに「タイトル」をつけること。例えば映画のワンシーンに感動したら、それを短いフレーズで凝縮したタイトルにしています。そうすると覚えやすいし、メモのテーマやジャンル分けが自然にできて「これとこれは全然違うものだけど、どこか被っている要素があるな」といったことが分かる。それが企画の種になったりすることもあります。

新しいことを始めるなら、無理なくできることから少しずつ広げてみる

── 金銭的に苦しい時期もあったと伺いましたが、それでも現在まで続けてこられた理由はなんでしょうか?

すのはらさん一番は、単純に楽しいということ。僕はもともと超インターネット大好き人間なので、企画を考えるのはまったく苦にならないんです。あとは、たとえ誰にも採用してもらえなかったとしても、自分たちでチャンネルを作ればお金は稼げるだろうと考えているところはありました。僕は自分でもYouTuberとして活動していた時期があったので、いざとなれば誰かに頼らなくても生きていけるという謎の自信はあったかもしれません。

たけちさん:僕も楽しかったのは同じですが、一人じゃなかったのが、結構大きかったと思います。例えば、打ち合わせで超うざいやつがいたとして、一人だったらヘコむけど、すのはらさんがいるからメンタルを保てる。帰りのタクシーで「あいつ、やばかったね」と言い合うのも楽しかったり(笑)。当時はワンルームに一緒に住んでいて、感覚を共有しながら企画を作っていました。

たけちまるぽこさんのインタビュー写真3

── 最後に、お二人のように新しいキャリアに関心を抱く人たちに向けて、アドバイスをいただけますか?

すのはらさん:新しいことをやろうとするときに、力んで「踏み込まなきゃ!」みたいに考えると、実際にはなかなか一歩を踏み出せないと思うんです。そうではなく、「自分が無理しないで、できることって何だろう」と考える。そのなかで、まだ誰もやっていないようなことを始めてみると、結果的に新しいキャリアにつながるんじゃないかと思います。

たけちさん:僕も同じですね。今いる会社をすぐにやめて、新しいことに飛び込んでほしいとはまったく思いません。もちろんそれで成功する人もいるでしょうけど、リスクが高すぎるので。だから、今の場所を確保しつつ、余白の時間で何か見つけられたら、そこを少しずつ広げていけば、自然と何か形になっていくんじゃないでしょうか。

こす.くまさんのインタビュー写真3

取材・文:小野洋平(やじろべえ)、榎並紀行(やじろべえ)
撮影:小野奈那子