お金は小さい自分だと思う。投資家・ヤマザキOKコンピュータさんの考える「くそおもしろい未来」の作り方

ヤマザキOKコンピュータさん

<プロフィール>
ヤマザキOKコンピュータ。1988年生まれ。埼玉県生まれ、東京都育ち。投資家・バンドマン・文筆家・グラフィックデザイナーなど幅広く活動している。福岡への移住を経て、現在は沖縄在住。著書に『くそつまらない未来を変えられるかもしれない投資の話』(タバブックス)がある。
Twitter:@0kcpu


「MEETSCAREER」では多様な選択肢の中で自分らしい生き方をされてる方々の言葉を集め、「はじめの一歩」を踏み出すきっかけをお届けしています。今回のテーマは「お金との向き合い方」。

社会に出て数年も経つと、金銭的にやや余裕ができ、貯金やいわゆる「投資」についても関心を持ち始めると思います。しかし、その動機は「周囲が考え始めたから」「今から将来のために準備しないとマズいから」と、自分の生き方とは関係なく、仕方なくお金と向き合っている人も少なくないのではないでしょうか。

バンドマンや文筆家であり、投資家でもあるヤマザキOKコンピュータさんは、「お金は万能じゃない」と認識しつつ、意志を持った投資こそが“くそつまらない未来”を変えるかもしれないと「お金と向き合うこと」についてポジティブに語ります。

ヤマザキさんにとってお金とは、投資とは何か。そして、どのように面白い未来を築こうとしているのか。投資を始めたきっかけから、自分と向き合う方法までお伺いしました。

減るか増えるかより、「持ち方」に対する意識から投資を始めた


── 投資を始められたのは22歳ごろとのことですが、当時はどのような生活を送られていましたか?

ヤマザキOKコンピュータさん(以下、ヤマザキさん):当時は今よりもバンド活動ばかりしていて、黄緑の髪の毛でボロボロの服にボロボロの原付に乗って、お金はいつもポケットに直接入れてました(笑)。起きてる時間は全部遊びに費やしてましたね。それは今も変わらないけど……。
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取材はリモートで実施しました


── 失礼ですが、そんなに遊んでいたのに投資を始めるお金があったのですか?

ヤマザキさん:バンドマン=お金ないってイメージありますよね(笑)。20代の前半はライブハウスでバイトしていて、毎日出勤したら友人でもある企画者や出演者と一緒に良いイベントをつくるために頑張っていました。だから、とにかく毎日本気で遊ぶのが仕事。当時はバンドとバイト以外は何もしてなかったけどそれが最高に楽しくて、お酒もタバコもやらないし、実家暮らしだったんですよ。それで気づいたら200万円くらい貯まってました。

── 気づいたらまとまったお金が貯まっていたと。そこから投資を始められたのは?

ヤマザキさん:当時はお金のことを特別意識していなかったので、「とりあえず定期預金かな」と、いつも給料が振り込まれている銀行に行ったんです。そしたら、個室のカウンターに案内されて、投資信託を勧められて。ただ、俺はめちゃくちゃ疑り深い性格なので、人に何かを勧められた時って絶対にその場では決めないんですよ。それで、いったん持ち帰っていろいろと調べてみたんです。

── 調べてみて、いかがでしたか?

ヤマザキさん:正直、俺が勧められたのはゴミ商品でした(笑)。銀行の投資信託って、お客さんに提示する選択肢を銀行側が選べるので、売る側には都合が良いですけど、買う側にとっては不利になることも多いと思います。それに、その銀行は投資やお金に関する知識を持っていない人に必要のない商品を買わせたり、不必要に売らせたりして、たくさん手数料を取っていたみたいで。そこで、自分の預金がその銀行への応援になっていると思ったらめちゃくちゃ腹が立ってきて。

── そのことへの反発から投資を始めようと?

ヤマザキさん:それが大きいです。銀行に預けるくらいなら、自分でお金を管理しておこうと。とはいえ、知識がなかったので最初はインターネットで情報収集したり、本を読んだり、独学で学びました。あと、今は「サバイブ」というメディアの運営に携わっているんですけど、そのメンバーにも詳しく教えてもらったり。

── 日本では学校や親から「投資」ってなかなか教わらないと思うのですが、始めるにあたって不安はありませんでしたか?

ヤマザキさん:なかったですね。俺の場合、貯金が減っても増えても大した問題じゃないんですよ。独身だからそこそこ健康ならアルバイトとかでも食っていけるし、自分ならその生活も楽しめそう。貯金が多くても少なくても、俺の人生にはほとんど影響がない。それよりも、自分のお金をどうコントロールして、どう生かしていくのかっていうことのほうが重要だと思ったから。

お金の行く先を知ること。小さい自分を嫌な活動に加担させたくない


── 投資家という仕事の内容があまりイメージできないのですが、現在の1日のルーティーンを教えてください。

ヤマザキさん:ないんですよね、ルーティーン。ほとんどが長期投資なので、モニターに張り付いてるなんてことは全然なくて。ましてや、人から預かったお金を運用するわけでもないし、100%投資で食べていく生活でもないですし。強いて言えば、朝に株価をチェックするくらいですね……起きれたらの話ですけど(笑)。

── では、どういう生活を送っているんですか?

ヤマザキさん:記事を書いたり、たまにデザインの仕事を受けたりもしますが、基本的には料理をしたり、本を読んだり、魚釣りしたり、野菜作ったり……24時間好きなことをしています(笑)。失礼かもしれないけど、生活も仕事も全部遊びのつもりで取り組んでいます。だから楽しいし、頑張れる。自分はいろんな境界線を取っ払ってグラデーション的に考えるのが好きで、仕事と遊びも分けてないし、投資っていう行為もそんなに特別なことだと考えていなくて、実はみんな普段からしていることだと思うんですよ。

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── どういうことでしょうか?

ヤマザキさん:いわゆる、企業の株を買うような「投資」だけが投資じゃないと思うんです。例えば、先ほど話したどの銀行にお金を預けるかということもそうですし、友達のお店でご飯を食べるとか、お気に入りのお店で洋服を買うとかも買い物であり、応援であり、投資でもありますよね。

投資のリターンってお金だけじゃなく色々な物があって、お金の使い方や持ち方によって、未来が自分の望む形に近付いていくなら、それって十分に利益だと言えるじゃないですか。

── なるほど。

ヤマザキさん:どうせなら、自分が面白いと思う未来に向かって投資したいんです。そのためには、お金の向かう先を意識することが重要だと思っていて。例えば、お昼ご飯を食べるにしても、どの街にもあるコンビニの弁当と、あくの強いおばあちゃんが営んでいる定食屋があったら、必ず後者の店で食べるようにしてます。家の近所くらいはずっと個性的な店であふれていてほしい。別の地方から友達が来てくれたときに、全国チェーンの回転寿司とか連れて行きたくないじゃないですか。面白い街に住みたい。だから、買い物も投資も自分が思い描く未来から離れるような選択はしないよう心掛けています

── 商品についてはあらかじめ調べているのでしょうか?

ヤマザキさん:そうですね、なるべく調べて納得いくものを選んでいます。俺は「フルコース」って呼んでるんですけど、特に日常的に利用するものはリスト化していて、それを増やすのが楽しいんです。お米はここ、ガソリンスタンドはこことか。

ただ、お金の向かう先を意識するあまり、生活に無理が出たり、精神的に負担になったりするのであれば本末転倒だとも思っていて。チェーンの回転寿司に行くときもありますし、旅行中や友達と遊んでいるときは豚肉や牛肉*1も食べます。ゆるくて、すみません(笑)。

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── でも、一つひとつの消費に対してそこまで考えられているんですね。

ヤマザキさん:自分のお金によって嫌なことが起きることは避けたいんです。だから、「なんとなく」 で選ぶのはやめました。最近はもう、自分のお金のことを「小さい自分」みたいな存在として捉えてます(笑)。 そう考えたら、好きでもない活動に加担させるのが嫌になりませんか? 例えば、ある商品がとんでもなく安かったとしても、社員をひどい労働環境で働かせている会社が作ったものだとしたら、小ちゃいヤマザキをそんな経営者たちに加担させないぞって思いますよね。

文章にすることで自分の思考を整理する


── ヤマザキさんのようにお金の流れに意識的になるために、日々の消費行動から変えていきたいのですが、まず意識すべきことはありますか。

ヤマザキさん:だとしたら、まずは「なんとなく」をできるだけ遠い存在にすることを意識するのが良いかも。何かを購入するとき、「なんで?」と何回も問いかけていくんです。例えばお蕎麦屋さんなら、「なんで、この蕎麦屋にしたの?」「歩いて行ける範囲の中で一番好きな店だから」「ほかにもたくさんあるのに、なんでここが好きなの?」「味も好きだけど、雰囲気が特別好き」「それはなんで?」 みたいな。

最終的にどこかでは「なんとなく」にたどり着くと思うんですけど、そうやって問いかけることを習慣にすると、自分の志向や好きなものが分かってくる。目標は「なんとなく」まで10回問いかけを続けることにしましょうか。

── 著書にも「選好」という言葉は出てきましたが、自分の嗜好を知ることが大切だと。

ヤマザキさん:そうですね。何かを選ぶとき、自分がどれを買えばより効率的に満足できるのか知っておくことはすごい重要だと思います。それが分かれば、自分に必要なお金の量も把握できるし、お金が向かう先にも自然と意識がいくようになると思うので。

── ヤマザキさんは、自分の理想の姿と現実の世界をズレなくマッチさせているように思うのですが、やはりそれは自分自身の志向を熟知していることが大きいのでしょうか。

ヤマザキさん:そうかもしれない。俺めちゃくちゃ暇だから、普段から頭の中で考えたことをメモ帳にバーっと書いてるんです。そうすると、やっぱり考えがまとまって、自分の気持ちが再確認できる。自分の中で投資をやることに納得がいったのも、書き出したおかげだと思います。

── というと?

ヤマザキさん:最初から投資を「悪」だと思ってたわけではないですけど、パンクスの友達とは考えが交わらないと思っていたので、当初はほとんど誰にも言っていませんでした。でも、自分がどういうつもりで投資をやっているのか、投資にはどういう力があるか、ということをテキストや図にまとめてみたら、自分が強く影響を受けているパンクの精神「Anyone Can Do It=誰だってやれる」や「Do It Yourself=自分達でやる」に繋がってきたんです。パンクスとしての自分、投資家としての自分は別に矛盾してないし、二面性もないし、意外ですらない。文章化するアウトプットがあったからこそ、自分の思考が整理できたのかなって。

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── もともと言葉に残す習慣があったのでしょうか。

ヤマザキさん:そうですね。昔からメモの習慣はありました。時期にもよりますが、アウトプットの時期はずっとメモ帳になにか書いています。ちなみに『くそつまらない未来を変えられるかもしれない投資の話』も、半分以上はメモ帳から引っ張ってきたものだと思います。

── ちなみにインプットはどうされているんですか?

ヤマザキさん:本は読みますね。サバイブで記事を書くようになってから、たくさん読むようになりました。アウトプットが前提にあると、たくさん頭に入ってくるし、いっぱい読みたくなってくるんですよね。

── アウトプットの習慣があるからこそ、インプットしやすくなったと。

ヤマザキさん:はい。あとアイデアにつまった時は瞑想しますね。瞑想は読書の逆で、インプットの遮断のイメージです。起きている時間は目や耳から何かしらの情報が入り続けているので、ずっとインプットが忙しい。そうなると、自分の中に溜まったものに意識が向きにくい気がしてます。浅い呼吸をずっとしてるみたいな感覚というか。だから、寝る前にアイマスクと耳栓をして30分過ごしたりすると、新鮮なアイデアが湧いてきたり、自分の思考が整理されるような感覚があって、たまにやってます。

投資と一緒で生き方も分散化させておく


── ここまでお話をお伺いして、お金と向き合うことは、自分と向き合うことでもあるのだなと感じました。

ヤマザキさん:そうですね。社会で働いてると、「家賃は給料の何割」みたいなセオリーとか、「年齢×1万円くらいは月収ないとダメ」とか「年相応の生活をするべき」とか、そういうくそみたいな理論をあたかも正解のように押し付けられることがあると思いますけど、そんなの全部人それぞれなんで、何も気にしなくて良いと思ってます。お金も時間も体力も、自分の好きなものや目指す未来のために使っていきたいですよね。
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最近ヤマザキさんがつくっているという喫茶店


── なるほど。盲目的にお金を稼ぐことを目標にするのは本末転倒ですね……。

ヤマザキさん:お金をたくさん稼ぐのが幸せっていう人ならそれもアリだと思います。それが自分の目指したい未来であれば、一般的な尺度から外れていても良いし、俺の言っていることもまったく気にする必要がない。俺自身、もうすぐ32歳になるんですけど、沖縄で一人でボロマンションに住んで毎日友達と遊んで、曲を作って……(笑)。世間的に見たら「ヤバイ」と思うんですよ。 でも自分にとっては、これが理想の形なんですよね。世間一般の常識に従っていたら、生存率は高いでしょうけど、その分のロスも大きいと思っています。お金も、時間も。

── 自分にとって何が必要で不必要なのかを整理し、目指したい未来を知っておく。

ヤマザキさん:たまに考えて、ハッキリさせておくと色々早くて良いと思います。でも、その未来は何回変更しても大丈夫。いろんな人たちが「初心を貫かせよう」としてきたけど、初心なんて全然貫かなくて良いと思っていて。人なんか環境の変化や成長具合でいくらでも変わるし、最終的にどれが良いかなんて分かんない。 だから、その時に自分が思うベストに向かっていればいいと思います。強いて言うなら、俺は「ブレまくる」っていう初心を貫こうかな(笑)。

── そうはいっても周囲の声やネットの情報などに左右されることも少なくないと思います。ヤマザキさんはどのようにそうした影響をシャットダウンしていましたか?

ヤマザキさん:いや、影響は受けますよね。必ずしも悪いことではないと思うし。流されるのが心配だったら、自分自身をいろんな所に分散していくのがおすすめ。分散すると人間的にしぶとくなると思います。投資と一緒ですね。

1つの場所、1つの筋に絞って頑張っている人は、それを周囲に否定されたときや、続けられなくなったときのダメージが大きいですよね。 自分の場合は、執筆や講演やバンドのほかに喫茶店の経営も始めて、趣味も釣りや料理や古道具とか、いろんな筋を持っています。誰かにマウントとられても何も気にならないし、どれかがダメになったとしても生活への影響が少ない。

── なるほど。パラレルキャリアの考え方にも近いですね。いろんなことをやって人生が豊かになるし、リスクヘッジにもなる。

ヤマザキさん:そうです。分散すればあんまり周囲からのダメージは受けない。まあそれだとイチローさんみたいに一つを突き詰めることはできないんですけど(笑)。

たとえ一本一本が中途半端でも、全部が足し算や掛け算になって、その合計値が自分になっていくようなイメージです。パンクと投資とか無茶苦茶な掛け算だけど、やりたいこと片っ端からやってきて良かったと思ってます。

明日死んでも100年生きてしまってもいいように生きたい


── ちなみに、最近はどんなことにハマっていますか?

ヤマザキさん:最近はオルタナティブベース「NEO POGOTOWN」のなかに喫茶店を作っているので、壁を塗ったり、木を削ったりしています。でも、喫茶店は仕事でやるわけじゃなく、俺にとって最高の暮らしをするための場所づくりなんです。

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── どんなことをやろうとしているんですか?

ヤマザキさん:高いけどずっと欲しかったコップを並べたり、良いコーヒー豆を揃えたり、ここではめちゃくちゃ贅沢な暮らしをする予定なんです。俺と趣味が合う人がここに来てくれたら、わずか数百円で同じ空間・喜びを共有できる。仮に、お客さんが来なかったとしても、俺は自分好みの環境で執筆したり、楽器で遊んだりできます。いずれにしても、幸せは確定してるんです。

── すごい……。ヤマザキさんの場合は、今を最高に楽しみつつも、同時に遠い未来のことも考えていらっしゃいますよね。

ヤマザキさん明日死んでもいいし、100年生きてしまってもいいという生き方が理想だと思っていて。将来のために今を犠牲にして働いていたら明日死ねないし、逆に今だけを考えて生きてたら、意外と100年生きちゃう可能性もある。長生きしたときに地球がボロボロだったら嫌だし。そもそも環境問題を先送りにしたり、それを解決する新しい技術をただ待っているのって、未来を人任せにしているだけで、自分の考えと相容れないんですよ。

だから、明日を楽しむことは前提としたうえで、自分のお金が格差や環境汚染に加担しないように注意しながら、創造的に生きていきたいと思って行動してます。そうすれば、近い未来も遠い未来においても、自分が目指す“くそおもしろい未来”に近付けるんじゃないかって、希望を持って生きてます。

取材・文:小野洋平(やじろべえ)

 

*1:牛肉1kg を作るには、鶏肉1kgを作る場合の10倍以上の二酸化炭素を排出するとも言われている