無駄づくり発明家・藤原麻里菜のこれまでとこれから【私のはじめの一歩】

自分らしい生き方をしている気になるあの人の「はじめの一歩」について、本音で答えてもらう企画「私のはじめの一歩」。今回は「オンライン飲み会緊急脱出マシーン」や「謝罪メールを打ちまくれるマシーン」など、一見無駄にしか思えないような工作や発明をしながら、ライターとしても活躍する藤原麻里菜さんにインタビュー。

藤原さんの自由すぎる発想は一体どこから来ているのか? その秘密は小学生の頃の偶然の出会いにありました。

プロフィール

藤原麻里菜
1993年生まれ。頭の中に浮かんだ不必要な物をなんとか作り上げる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeを中心にコンテンツを広げている。2013年からYouTubeチャンネル「無駄づくり」を開始。現在に至るまで200個以上の不必要なものを作る。2016年、Google社主催の「YouTube NextUp」に入賞。2018年、台湾で行われた初の個展「無用發明展」を開催。2万5,000人以上の来場者を記録した。同年11月に初めての書籍『無駄なことを続けるために - ほどほどに暮らせる稼ぎ方 - 』を上梓。

現在のお仕事を始めたきっかけは?

もともと芸人として活動していたんですが、そのときはいろいろな芸人さんたちとお笑いライブに出たりしていました。ただ、芸人の活動をしていて、私は舞台に出て人を笑わせるのはあまり向いていないかも、って思っちゃいました(笑)。

もともと、インターネットが好きだったこともあって、そこで面白いことができないかなと思いました。

私は「ピタゴラスイッチ」*1や、「デイリーポータルZ」*2が大好き。さらに物を作ることも昔から好きです。そんな自分の好きなことをかけあわせて、「無駄づくり」を始めたら面白いかなと思ったんです。

藤原麻里菜さんの今の生き方や考え方に影響した、一番のターニングポイントはどんなこと? その時に踏み出したはじめの一歩は?

これはものすごく変な話に思われるかもしれませんが……。

私は小学生の時に「毎日つまらない」って思いながら生活していました。いま思えば「自由に生きたいのにそうなれない」と感じていたんだと思います。子どもだから自由がないのは当たり前かもしれませんが、理不尽に思っていました。

そんなある日に、運命の出会いがあったんです。いつものように夕暮れ時に学校から一人で帰って、誰もいない路地にさしかかりました。すると、電信柱の影にサングラスをかけた中年くらいの女性がいたんですよ。

その人が棒立ちで私の方を見ながら「芋けんぴ」を無心にポリポリと食べていたんです。ちょっとびっくりしてしまうような光景ですよね。でも、別に誰に迷惑をかけているわけじゃない。その人はその瞬間にやりたいことをしていただけです。それがとても「自由」なことだと思ったんです。

すごく衝撃を受けたので、はっきりとこの光景は覚えています。同時に「私はもっと自由になれるはずだ」とも思いました。他人や世間の目は、自分の自由を縛る鎖にすぎないかもしれないと思ったんです。

あの時の出来事がなかったら、芸人になったり、「無駄づくり」を始めたりということはなかったでしょうね。

大人になっていくと、自分のやりたいことを我慢しなくてはいけないときも増えます。そんなときも、きちんと自分のわがままな欲望に気づいて、それを現実的に実現する術を考えていくことが大切かなと思います。

押し殺しているわがままなやりたいことも、いろいろな角度から見ていくと、落とし所を見つけることができると思っています。なので、感情と論理、どちらも大事にしながら試行錯誤を続けることが、自由につながるのかなと考えています。

たくさんの面白いアイデアをひらめいている藤原麻里菜さん。普段から心がけていることはありますか?

アイデアって、なにもないところから脈絡なく浮かんでくるようなイメージがありますよね。私も「無駄づくり」を始める前はそう思っていました。

でも、仕事としてアイデアを量産しなくてはならないようになると、とても浮かぶのを待っていられなくなります。きっちりと考えなくてはいけません。

考える方法はさまざまです。机に向かって考える。カフェで考える。歩きながら考える。考えることには時間がかかるので、時間を作って考えるようにしています。

特に「無駄づくり」に関して言うと、日常の生活の中でもやもやしたことがあったら、極力言語化するようにしています。例えば仕事をしていくなかで、ちょっと嫌な対応をされることってあるじゃないですか(笑)。それのどこが嫌だったかをちゃんと言葉にしておく。そうすることで、嫌なこともポジティブなアイデアにつながっていくんです。

最近はじめてチャレンジできたこと、やってよかったことは?

実はYouTubeチャンネルの「無駄づくり」はそれほどお金になるわけではありません。私のメインの収入はWebライターの仕事でした。お陰さまでいろいろな媒体から連載をいただいて、それで安定して生活できるくらいの収入を得ることができていたんです。

ただ、2020年からはWebライターの仕事を一部休止しています。生活は不安定にはなるのですが、その分、新しいことをしてみたいんです。現在、無駄づくりのグッズを商品化したり、本を執筆したり……いろいろチャレンジしています。それがどうなるかは、いまはまだ分かりません。でも今後につながると信じています。

昨年に限らず、私は毎年なにかしら生活に変化をもたらすようにしています。仕事だけっていうわけではないのですが、生活や取り組むことに変化がないとすぐにバッド入っちゃう性格なので……。

あとは、「無駄づくり」というコンテンツの中で、できることを無限に増やしていきたいということもあります。そのほうが、未来の自分がもっと自由に選択できるようになるかなと。未来の自分に褒められるように生きていきたいです。

なかなか一歩目を踏み出せないが、いつかやってみたいことは?

物理的に大きな物を作りたい、という思いがずっとあります。家には入りきらないくらいの。

私はいままで作業台に載るくらいのサイズの物ばかりを作っていました。でも、海外で物づくりをしている人たちに目を向けてみると、スケールがまるで違うんですよね。広いガレージや、森の中で巨大な物を作っています。

そもそも私が借りているアトリエの規模ではそんなことはできないのですが、それだけ大がかりな物を作るという発想自体がなかなか出てこないです。

知らず知らずのうちに作業環境は発想に影響しています。それでは本当の自由とは言えないかもしれません。もっともっと自由になりたいですね。

こんなことを話していると「自由な発想を得るためにはどうしたらいいか」なんて聞かれることがあります。かっこいい言い方になって恥ずかしいのですが、それは「思考と行動を止めないこと」です。

考えて手を動かして、手を動かしながら考えたり。それを繰り返しているうちに、いろんなことに気づいて、どんどん自分を縛っていた鎖みたいなものが外れる感じがあります。

あとは、正解やゴールを決めないことにしています。「無駄づくり」を作っているときも、ちゃんとした設計図は書かないんです。作りながら考えて出来上がる、そのいびつな形がすごく好きなんです。最初に考えていたものと、全然違うものが出来上がることもあって、それも楽しいんですよね。

なので、人生とかに対してもそんな感じです。ハッキリした目標とか未来の自分の姿はモチベーションにもなるんですけど、それによって苦しくなったりすることもあるので、あんまり明確には持たないようにしています。

仕事の告知・宣伝があればどうぞ!

この度、アイディアを考えるための本を作りました。頭の中でより自由に、想像力を広げる後押しをする本になっていると思います。ぜひよろしくお願いします!

『考える術――人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』(ダイヤモンド社)
価格・本体1500円+税、発売日・2021年1月27日

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*2:世間の需要にかかわらず、ライター自身が興味のあることを調べるWebメディア