「ゴミを出した人の人格が分かる」ゴミ清掃芸人の滝沢秀一さんが二十代に伝えたい、将来役に立つゴミの豆知識

自分らしい生き方の参考になる、人生がちょっとプラスになるモノコトについて伺うコーナー「気になるあの人のオススメ」。今回は芸人とゴミ清掃員の、ふたつの肩書きを持つマシンガンズの滝沢秀一さんにインタビュー。環境に配慮する考え(SDGs)に注目が集まる中、「ゴミ清掃員兼芸人」としてエッセイや漫画の執筆、メディア出演など仕事の幅を広げています。そんな滝沢さんにゴミ清掃員として働くきっかけから、将来の環境問題を考える二十代が知っておきたいゴミにまつわる豆知識や、ゴミの分別方法などを教えてもらいました。

プロフィール

滝沢秀一。1976年、東京都生まれ。太田プロダクション所属。東京成徳大学在学中の1998年、カルチャースクールで出会った西堀亮とお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。「THE MANZAI」で認定漫才師に選ばれるなどコンビとしての実績をあげつつ、2012年、ごみ収集会社で働きはじめる。2014年に『かごめかごめ』(双葉社)で小説家デビュー。2018年、エッセイ『このゴミは収集できません』(白夜書房)を上梓したあと、漫画『ゴミ清掃員の日常」(講談社)、『ごみ育 日本一楽しいごみ分別の本』(太田出版)などを立て続けに出版している。2020年10月、環境省『サステナビリティ広報大使』に就任。同12月、消費者庁『食品ロス削減推進大賞』の委員長賞を受賞。

お笑いコンビ・マシンガンズの活動と並行してゴミ清掃員のお仕事を始めたきっかけを教えてください。

ゴミ清掃員の仕事を始めたのは、36歳の時でした。きっかけは妻の妊娠ですね。出産費用が必要になったのですが、当時はお笑いの仕事が徐々に減っている状態で……。アルバイトをしようと思ったものの、年齢的なこともあってかまったく見つからなかったんです。追い詰められて「いっそお笑いを引退しようか」と考えた時に、ふと「芸人を辞めた人なら仕事を紹介してくれるのでは?」と思いたちました。何人かに電話をしてみたところ、そのうちの一人がゴミ清掃員の仕事をしていて「すぐにでも始められる」と紹介してくれました。なので最初は「ゴミ清掃員兼芸人として活動しよう」とか「環境問題に興味があって」とかでは、まったくなかったんです。

かといってゴミ清掃員の仕事を専業でやっていこうとは考えていませんでした。むしろ「これでお金が稼げるからお笑いを続けられる、ラッキー!」と思いましたね。お笑いを辞めるという選択肢はまったくなくて……。とにかくお笑いが好きだったのもあるけど、途中で引けないというか辞められない意地みたいなものもあったんですかね。

そんな気持ちですから、ゴミ清掃員の仕事をしながら「本当はこの仕事がやりたかったわけではないのに。いつまでゴミ清掃員の仕事をしないといけないのか」と思うこともありました。当時36歳だったので、その年齢からお笑い芸人として再ブレイクする可能性は限りなく低いと感じながら「なんでお笑いにしがみつきながら、自分はゴミ清掃員をやっているのか」と考えるのも辛い時期がありました。

ですが、結果的に今こうしてゴミ清掃員の仕事をきっかけにたくさんメディアに出させていただいています。これは自分の思っていた目標ではなかったかもしれない。だけど、自分の視野を広げ、目指していた目標の範囲を広くすると気持ちが楽になることに気づいたのです。自分の場合、最初に目指していた目標は「お笑い芸人として売れる」ことでした。だけど、目標の範囲を「芸人として売れてテレビに出ること」と狭めず、例えば「肩書きはなんであれ、色々なメディアで活躍する」と広げて設定すれば気持ち的にすごく楽になるんです。

「ゴミ清掃員が本業」と思うようになってからは、「お笑いは楽しんでやろう」という気持ちになり、自分を肯定できたような気がします。

滝沢さんがゴミ清掃の仕事を本業として続けていくと決めた、ターニングポイントはどんなことだったのでしょうか?

やはりゴミ清掃の仕事に対して、最初は「自分はお笑いをやりたいのになぜこんなことをしているんだ」と思っていました。しかし、ゴミ清掃の仕事を始めて3年くらいたったある日、「明日もどうせゴミ清掃の仕事をしないといけないんだから、ゴミ清掃の仕事に一回本気で向き合ってみよう」と考えたんです。ゴミ清掃の勉強を真剣にして、人の役に立つような動きをしてやろうと。そういう気持ちでゴミ清掃の仕事をしていたら、先輩たちが色々教えてくれるようになったんです。そして、環境問題に対しても興味を持つといろいろな情報が入ってくるようになります。

そんなふうに、ゴミ清掃の仕事に真摯に向き合っていくと目の前が開けてきて……。「お笑い芸人としてやっていけるのか」といったことに悩むのではなく、まずは「いかに目の前のことを大切にして、仕事を自分で見つけてやっていくか」が大事だと気づきました。

これがゴミ清掃の仕事を本業としていこうと決めたターニングポイントでしたね。ゴミ清掃の仕事に真摯に取り組むようになってからは、清掃員の間で「滝沢が来ると仕事が早く終わる」と言われるようにもなって、それはめちゃめちゃ誇りに思えてうれしかったですね。

お家時間の増加で一人暮らしで出るゴミの量も増えている昨今。二十代に伝えたい、意外と知られていないゴミの豆知識を教えてください。

長年ゴミを回収しているとね、ゴミ集積所に出されているゴミ袋を見ただけで、そのゴミを出した人の人格が分かるようになってくるんです。例えば「エナジードリンクをよく飲んでいる人は、ゴミの分別に無頓着な人が多い」という法則を見つけました。こういった人に限って、なぜかエナジードリンクの空き缶を可燃ゴミとして出していることが多いな……と。

ちなみに生活力がしっかりある方は、ほとんどゴミを出さない傾向があると思います。ゴミが出るような嗜好品をあまり口にせず、長く使えるアイテムや自己投資を好むようです。なので、栄養ドリンクの瓶が大量にゴミに出ていることもありません。僕もゴミ清掃員の仕事を始めてから、そうした方々の行動をマネするようになりました。服はレンタルに変えて、安い服をワンシーズンで捨ててしまうようなことは一切なくなりましたね。これもゴミを減らすことにつながります。

あとは、読者の皆さんが引っ越しで新しい物件を探す時には、立地や間取りだけでなく、ゴミの集積場を見ることをおすすめします。その地域の治安が分かりますから。ゴミ集積場を汚く使う人は騒音問題を起こしたり、自転車の止め方にもモラルがなかったりする、それがゴミの集積場を見ると一発で分かりますね。

SDGsが注目されるなかで、環境問題を意識する機会も増えています。若い世代だからこそ今すぐやってほしい、ゴミ問題に対してできること・環境に配慮したゴミの分別方法を教えてください。

あと20年くらいすると、ゴミの埋め立て場所がなくなってしまうことをご存知ですか? そうなった時にどうするか、実はまだ何も決まっていないんです。今は国がゴミ捨て事業を担っていますけど、どうしようもなくなったら民間に委託しなければならなくなるかもしれない。そうすると民間企業のビジネスになるわけですから、ゴミを捨てるのにものすごく高いお金が取られるようになるかもしれません。

そのため、若い人は自分達の将来のためにも今からゴミ分別をしたり、ゴミの量を減らしたり、少しでもゴミの埋め立て地の寿命を延ばしていかなければなりません。「じゃあ、自分も少しはゴミの分別をしてみよう」と思ってもらえたらやってほしいことがあります。

ペットボトルを捨てる時は、フタとラベルを別々に分けて捨ててほしいです。また、スーパーなどでよく回収をしていますが、そうしたところに持っていって捨てるのが一番いいですね。牛乳パックも、サッと洗って手でガッって開くだけ。でもそうしてリサイクルすれば、ペットボトルは新しいペットボトルに、牛乳パックはトイレットペーパーに生まれ変わるんです。

そして普段は可燃ゴミとして捨てているものの中で、紙があればできるだけ資源に出すようにしましょう。

例えば、個人情報の記載されている封筒であれば、宛名の書かれている部分だけ切り取ってシュレッダーにかけ、それ以外は「雑紙」として束にして雑誌や新聞と一緒に資源として出せるんです。それだけでも可燃ゴミが今よりも30%減ると言われています。資源として出せば、それはまた再生紙として生まれ変わります。でも可燃ゴミに出されてしまったものは灰になって埋め立てられる、ただそれだけなんです。

埋め立て地の寿命を延ばすために、そして再生できる資源をムダにしないためにも、今日から「雑紙」は資源として分別して捨てるようにしてみてほしいですね。

仕事の告知・宣伝があればどうぞ!

最新刊は『リアルでゆかいなごみ事典』(大和書房)を出版。
日々の情報は、TwitterやYouTubeチャンネル『たきざわゴミ研究所』にて発信中。

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