お金の“使いどき”は見極める。劇団雌猫・もぐもぐさんの「将来のお金」との向き合い方

劇団雌猫・もぐもぐさんに聞く給料(お金)と将来設計、お金の管理方法について


働く上で、「給料(お金)」のことは多少なりとも気になるもの。「将来のためにも、貯蓄はしておくべき?」など、社会人であればきっと誰もが、特にまだ模索の時期である新卒数年目の頃はこのような悩みにぶつかることが多いかもしれません。

そこで、普段は会社員として働きながら、主に「趣味」にまつわる浪費活動について発信している同人サークル「劇団雌猫」のメンバーとしても活動するもぐもぐさんにインタビュー。

劇団雌猫として『一生楽しく浪費するためのお金の話』(イースト・プレス)を刊行されるなど、お金についてすでに向き合っていることが伺えるもぐもぐさん。そんな彼女に、自身の給料・将来のお金についての考え方をお聞きしました。

PROFILE

もぐもぐ

もぐもぐ
平成元年生まれ、インターネット育ち。アイドル、宝塚、2.5次元舞台、エンタメ全般が大好き。オタク女子集団「劇団雌猫」のメンバーとしても活動し、同人誌『悪友』シリーズを刊行中。編著書に『浪費図鑑』(小学館)、『一生楽しく浪費するためのお金の話』(イースト・プレス)など。
Twitter:@mgmgnet Blog:インターネットもぐもぐ

自分のテンションを上げるために、給料を使う

――まず、もぐもぐさんはお仕事をするうえでお金……いわゆる「給料」についてどう捉えられているのでしょうか。また、就職活動時に給与面を重視する方も一定数いるように感じますが、そういった思いはありましたか?

大学時代あまりアルバイトをしていなかったこともあって、就職してお給料をもらい始めた当初は、結構浮かれていましたね(笑)。まとまったお金が手元にあるだけで新鮮で、「使えるお金がこんなにある! ありがたすぎる!」という感じでした。

仕事選びでは「とにかく稼ぎたい」よりも「やっていてしんどくない仕事」の優先度のほうが高かったかもしれません。新卒でIT系の会社に入ったんですけれど、それも自分が好きな世界だったから「ここならやっていけそうだな」くらいの気持ちで。

今でこそ趣味活動にまつわる発信も多くしていますが、実は趣味をたくさん持ち始めたのって、働き始めてからなんですよ。社会人になって最初の頃は日々会社に行くだけでいっぱいいっぱいで「せめて週末の2日は楽しい予定を作らないと!」と思ったんです。周囲の友達にコンサートや劇場など色んな場所に連れて行ってもらったり、気になっていたアニメとかドラマを片っ端から見始めたり……。気づけば好きなものがどんどん増えていきましたね。そしたら、楽しい週末のために頑張るか、と働く元気も出てきて一石二鳥でした。

なので、「好きなことのためにお金を稼ぐ」よりも「自分のテンションを上げる・気力を高めるために、稼いだお金を使って楽しむ!」という感覚が近いかもしれません。

もぐもぐさんのお金の使い方・向き合い方についてのイメージ画像

取材はリモートで実施しました

「心の余裕」はなくしたくないからこその“将来設計”

――社会人になり手にするお金が増えた分、漠然と将来のための備え(お金)に不安を持つ方も少なくないように思います。もぐもぐさんは将来設計について考え始めた瞬間はありますか?  趣味ができたことで支出もグッと増えたのではないかな、と……。

そうですね(笑)。20代前半は使うことに全力だったのですが、26、27歳頃に、「このままだとヤバいな」と思い始めた感覚があります。毎月給料をもらっているはずなのに、驚くほど預金が増えない。でも、すぐ「貯金しよう!」っていう感じには正直ならなくて。「今この瞬間はいいけど、10年後大丈夫なのか?」とただただ漠然とした不安を抱いていましたね。何をしたらいいかも分からなかったし。

ただ、老後のお金とか、具体的なことまでは分からないけれど、お金がないことで心の余裕がなくなるのは嫌だな、精神的にもよくないからなんとかしたいな、って思っていました。あとは、例えば急に好きなアイドルの卒業が決まったり、遠征してでもどうしても観たい舞台やライブが入ってくる可能性もあるじゃないですか。そういう時にすぐ「行く!」って言える状態にするためにも「ある程度は備えていないと」という思いもあったかも。

その後、30歳手前くらいの時期にファイナンシャル・プランナー(FP)の方に相談する機会があって。いろいろ教えてもらった結果、iDeCoとNISA、いわゆる投資信託を始めました。小さい頃からお小遣い帳が一度も続いたことがない、お金の管理がとにかく苦手な自分には、「毎月数万円を積み立てていけば勝手に運用される、銀行に定期預金をしていくような感覚でOK」というのが合っていたなと思います。天引きで最初からその分のお金はなかったものと思えば、意外と平気でした。

実際に投資信託を始めてよかったのは、資産が増えていくこと以上に「よく分からないけど不安で仕方がない」という感覚が減ったこと。「これはやってるから最低限なんとかなる!」と思えるようになったのは大きいです。

まずはお金に関する本を読むことから、でもOK

ーーもぐもぐさんが実際にお金について考えるにあたり参考にしたものなどがあれば、教えて下さい。

何から始めれば? という人も多いですよね。ネットで調べるのももちろんいいのですが、私は情報が多すぎて逆に戸惑ったので、基本的な本を何冊か読みました。

投資信託の入り口としては『一番やさしい!一番くわしい! はじめての「投資信託」入門』がイラストや図版も多めで、銘柄の選び方のコツも紹介されていて分かりやすかったです。他にも、今iDeCoやNISAに関する本はたくさん出ているので気が合いそうなものを本屋さんで探してみるといいと思います。

あとは手前味噌ですが……(笑)、劇団雌猫で出した『一生楽しく浪費するためのお金の話』はオタク趣味がある人生を前提にしたい、でも将来にもある程度備えたいという私たち自身が知りたかった「オタクのためのお金の使い方」についての基礎情報を詰め込みました。私もこの本の制作をきっかけに具体的に投資を始めたので、「貯金の必要性は分かるけど、趣味にかけるお金は減らしたくない!」という方にはぜひ読んで欲しいなと思います。


『一番やさしい!一番くわしい! はじめての「投資信託」入門』(ダイヤモンド社)『一生楽しく浪費するためのお金の話』(イースト・プレス)
(画像左)『改訂版 一番やさしい!一番くわしい! はじめての「投資信託」入門』(ダイヤモンド社)
(画像右)『一生楽しく浪費するためのお金の話』(イースト・プレス)

自分が最近まで何もしていなかったので、説得力はないかもしれませんが(笑)。あまりに早く老後を見据えて「将来のため」と焦りすぎなくてもいいような気もします。何年か働いて少しお金に余裕が出てきてから始める、でもいいんじゃないかなと。

もちろん、積立は早いうちから始める方が有利なのは事実ですし、とにかく老後の不安をつぶすことが今の働く原動力、という人もいますよね。でも、今の生活をガラリと変えて節約最優先にしたり、ささやかな楽しみを切り詰めたり……というくらいなら、無理して始めなくていいと個人的には思います。「貯金を増やす」よりも「手取りを増やす」ことを考えたら、若いうちは転職も一つの手段だよな、とか。

できるだけ現金を使わず、家計簿アプリで支出を可視化

――将来の備えをするにも「お金の管理」が重要そうですが、もぐもぐさんが普段行っているお金の管理方法について教えてください。

お恥ずかしい話、自慢できるほど大したことはしていなくて。給与が振り込まれるメインの口座と、いざというときに使える数十万円をキープしているサブ口座があって、それくらいしか。あとは先程の投資信託用(iDeCoとNISA用)の証券口座。メインの口座から毎月決まった額が天引きされていく感じです。

強いて言えば、あまり現金を使わないようにしています。クレジットカードか電子マネーでなるべく支払うようにして、その履歴を家計簿アプリに同期。ただ、別にそれを見て「この項目の支出を減らさなきゃ!」みたいな感じはゼロです(笑)。しっかり管理をしているわけではないけど、可視化はできている状態なので、支出の異常値が出たら「何にこんなに使ってるんだ?!」と見られるようにはしている、くらい。家計簿をつけるのが嫌な人は、現金をなるべく使わない、というのはアリかもですね。

将来の備えはもちろん大切。でも、いざというとき「躊躇せず使う」のも大事

――将来への備えもそれなりにしたいものの、働きはじめの数年目の頃はまだあまり余裕がないのも事実。その分、日々のお金の使い道に悩むことも多そうです。もぐもぐさんなりのお金とのうまい付き合い方を教えてください。

真逆のようですが、いざというとき「使うことを躊躇しない」のは大事かもしれません。自分の中でお金の価値を知ること。

私が何度も挫折してきて思ったのは、節約って結構、趣味の領域でもあるなって……。「工夫して節約するのがおもしろい」「お金が貯まること自体が楽しい」という方もいると思いますが、向いてない人は向いてない!(笑)みんながやっているから、と義務感だけでやみくもにまねせずに、まずは「1万円あればこれくらい楽しいことができるよな」といったことを肌で実感しているほうが、将来のための貯金も最終的には面白く思えるんじゃないかな。

私は宝塚歌劇やアイドルが好きなので、「これでライブ1回分」とか「14,000円あれば東京から大阪まで新幹線で行ける」など、いろんな物事を「自分がやりたいこと」で換算するようになっていくんですよね。私のまわりのオタク友達も結構言いがちです(笑)。

1年間積立していて14,000円が増えたら「何もしなかったのに新幹線1回乗れるくらい増えた! ラッキー!」って思えて実感も湧きやすいし、幸福のリターンも想像できる。なので、ときには“余計な”出費を経験してみる必要もあるんじゃないかなと思います。オタク趣味に限らず、旅行で散財するとか、背伸びしてちょっといいレストランに行くとか、なんでもいいと思います。

他人から見たら贅沢とか、無駄遣いと思われるようなことでも、「自分はこれが好きだから、欲しいからやるんだ!」みたいな経験が1回でもあると、その後のお金そのものの価値、貯蓄額の意味みたいなものが想像しやすくなるかもしれません。

将来に向けて備えるべき5大出費とは?FPが不安を解決するポイントを解説

(MEETS CAREER編集部)

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