「働いている」という感覚をいかになくしていくか。企画作家・氏田雄介さんの「仕事のやりがい」

企画作家として『意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の物語』などを送り出している氏田雄介さん


「仕事のやりがいとは?」社会人であればきっと誰もが、特にまだ模索の時期である新卒数年目の頃はこのような悩みにぶつかることが多いかもしれません。

今回は企画作家として『意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の物語』『ツッコミかるた』などの楽しいアイデアを世に出している氏田雄介さんにインタビュー。たくさんのアイデアの裏にはどんな苦労があるのか。そして、どんなことでやりがいを感じるのか。仕事との向き合い方のヒントをお聞きしました。

PROFILE

氏田雄介(うじたゆうすけ)

氏田雄介
1989年生まれ。SNSでバズるコンテンツを数多く発案する「企画作家」として活動。書籍も多数あり、『意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の物語』(PHP研究所)『あたりまえポエム 君の前で息を止めると呼吸ができなくなってしまうよ』(講談社)など。
Twitter:氏くん(@ujiqn)

「仕事のやりがい」は意識しない。そのためにも働いているという感覚をなるべく持たないように

――日々仕事をしていると、やりがいやモチベーションの維持が難しくなった経験を持つ人は多そうに思います。氏田さんは仕事の何にやりがいを感じますか?

難しい質問ですね(笑)。僕はいままで「仕事のやりがい」ということを意識したことはないですし「働いている」と思うとモチベーションが下がってしまうタイプです。

現在「企画作家」と名乗っていろいろな企画を作っていますが、そうした仕事は「やりがい」や「モチベーション」でやっていません。もともと好きなので、なんとなく企画を考えてしまうんです。

やりがいについて悩んだり、モチベーションの維持について考え込んだりしているのなら、自分が無意識になんとなくおこなってしまうようなことや、単純に好きなことを仕事にする、という手段を検討するのもいいのかもしれません。

そもそも僕が新卒で入ったのは「カヤック」という広告やゲームの制作会社でした。カヤックを選んだのは「働きたくなかった」から。すごく楽しそうな会社に見えたので、これなら働いているという感覚にはなりにくそうだな、と(笑)。

実際、仕事は楽しかったです。会社のお金で好きな企画や物づくりができる。仕事内容も本当にいろいろな種類があって、作詞に挑戦したり、カードゲームを作ったり、アプリを作ったこともありました。「仕事でこんなことをしていいんだ」という気持ちでしたね。

「進行管理」の仕事を通じて思った、自分の得意・不得意を把握する大切さ

――それでは、仕事をしていてつらかったり、不安になったりしたことはなかったんでしょうか?

「楽しかった」とはいえ、もちろん会社ですからつらいこともありますし、正直大変なことの方が多かったです。僕は6年間カヤックにいて、いろいろな部署を異動しました。なかでも苦手だったのは、「進行管理」です。

進行管理とはスケジュールを引いて、それを関係者全体に連絡して、スケジュール通り行われているかどうかチェックして、遅れが出たら対応を検討して……という仕事です。これって、みんなを引っ張って、「きっちり」管理しなくちゃいけないんです。

そして、自信満々に言うことではないのですが僕は「きっちり」するのが苦手です。自分でも薄々気づいていてはいたんですが、はっきりと自覚するまでに時間がかかってしまいました。逆にきっちりしない方がいい、企画の「ブレスト」みたいなことなら得意なんですが……。

進行管理は苦手なりに、こなしてはいたんです。ただ、進行管理が得意な同僚を見て「これからどれだけやっても絶対にその人みたいにはなれない」と、どこか不完全燃焼な思いを持ってしまいました。

もっと早く自分を知ることができたら、そんな気持ちにもならずに済んだと思いますし、こういうのは仕事のやりがいに影響しそうですね。

そのときは苦労しましたが、進行管理の経験は後にすごく役に立っています。現在は独立して一人で仕事をしているので、自分自身の進行管理は自分でやらなければなりません。苦手なことだけに、ここで身に付けておいてよかったと思います。

個人活動で成果を出したことが、会社での信頼獲得につながった

――苦手な仕事を任されているときは、どのようにしてその状況を打破しましたか?

そのころのカヤックは特にいわゆる「ネットでバズる」企画をたくさん出していました。そこで、任された仕事以外に、個人で作品を作ろうと思ったんです。出した企画はブログやSNSで発表していきました。個人の活動といっても、それも成果の一つにはなるかもしれないと。

その中で特に話題になったのが、YouTubeに投稿されている猫の動画をずっと自動再生できるサイト「Ever Cat」や、個人ブログに投稿した「アフィリエイト広告だけで『桃太郎』を書いてみた」などです。

当時はとにかくネットでウケたいという気持ちが強くて。「はてなブックマーク」という、ネットの記事などをブックマークして保存・公開ができるサービスで、いかに自分が書いたブログ記事がブックマークをとれるか、という戦いを一人でしていましたね(笑)。

のちに企画の仕事に戻ったときに、個人活動での実績は自信になりました。まず、社内のメンバーからも「ネットでウケている若いヤツのいうことなら乗ってみるか」と思ってもらえる。社内の仕事の実績だけでは信頼してもらうのにもっと時間がかかったと思います。

企画をクライアントにプレゼンするときにも自信を持てるようになりました。どんなに面白い企画をプレゼンをしたとしても、実績がないとどうしても薄っぺらく感じてしまいますよね。個人制作で実績ができたことで、自分の言葉に体重が乗るようになったと思います。

『意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の物語』(PHP研究所)より

個人的な活動は他にもいろいろ行っていました。会社員5年目の時には、『意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の物語』をツイッターで発表しました。僕はショートショートを書きたかったのですが、普通に書いても読んでもらえる自信がなかったので、SNSで流通しやすいフォーマットを考えました。

これが出版社の方の目に留まって書籍化されることになりました。意外だったのは「児童書」として売り出されたことです。小学校では始業開始前に「朝読書」など短い時間で本を読む機会があります。そのために子ども達には短編の需要が高かったようです。現在7巻まで出ていて、学校の図書館にも置かれるようになっています。

そして、こうした個人の活動が多くなった結果、独立することになりました。現在では「株式会社考え中」という自分の会社で、いろいろなクライアントと一緒に企画を考える仕事をしています。

うまくいかなかった企画もポジティブに捉え直す

―― 氏田さんのように新しい企画を多数作っていると、うまくいかないことも多いのではないかと思います。落ち込むことはありませんか。

企画がうまくいかなくても落ち込むことはないという氏田雄介さん

企画がうまくいかなくても落ち込まないですね。企画を提案したときにボツになっても、他の人に提案したら受け入れられることがあります。また、作品を出した当初は反響がなくても、数年後に同じものを出したらなぜか面白がってもらえたなんてこともありました。もしかしたら、僕はただ「スベり慣れている」だけなのかもしれませんが(笑)。

それに「スベっていてもおもしろい」ってこともありますよね。テレビで芸人さんが、スベっているのに自信満々だと、その様子がおもしろかったり。あるいは視点を変えて「この笑いは大衆ウケをねらっているわけではないんだ」って考え直したり。

ちょっと強気なことを言ってしまいましたが、関係者の多い仕事は、反響があるか心配で毎回お腹が痛いです(笑)。それは社会人になってからいまに至るまで、ずっとそうです。

でも最近では、クライアントとともに企画の「共犯者」になるのがいいんじゃないかって思っています。僕が提案して、クライアントから承認してもらうような形ではなく、クライアントと一緒にチームになって「これ絶対おもしろいですよね!」っていう合意を形成して企画を走らせる。その方が成功したときも失敗したときも、いい方に転ぶような気がしています。

仕事のモチベーションよりも「自分らしさ」を意識してみる

―― 仕事のやりがいに悩む社会人にアドバイスをいただけますか。

仕事のモチベーションをいかに維持するかを考えるよりも、働いているという感覚をいかになくすかが大事なんじゃないかと思っています。少しずつでもいいから、自分のやりたいフィールドに仕事を寄せていくんです。もちろん、それと同時に会社から課せられた目標を達成するようにしなくてはいけませんが……。

ただ、会社の期待に100%応えようとすると、どこかできっと無理が出てきてしまいますよね。「今月は効率的に手を抜いてみよう」とか「内線を取るときに、無駄にいい声で話してみよう」とか。決してポジティブでなくてもいいので、そんなふうに自分だけの目標を作って、それを達成することを少しでも楽しめたら良いのではないでしょうか。

一見仕事をする上で無駄なことのように思われるかもしれませんが、自分のためだけのいろいろなチャレンジをすることで、自分なりの働き方が形作られていくのかな、と僕は思っています。


仕事のやりがい、に悩んだら