人間関係をよくする魔法の言葉は「お互い様」。人生をシェアする石山アンジュさんの信頼関係の作り方

石山アンジュさん。シェアリングエコノミーの専門家で、一般社団法人Public Meets Innovation代表も務めている

職場の人間関係に悩んだ経験を持つ人は少なくないでしょう。特に20代半ばとなると、社会人としての立場も少しずつ固まっていき、学生時代の人間関係とのギャップに戸惑う人もいるかもしれません。

今回は複数の仕事を組み合わせて働く「ポートフォリオワーカー」であり、シェアリングエコノミーの専門家でもある石山アンジュさんにインタビュー。仕事で多くの人と関わるだけでなく、シェアハウスで新しい家族の形「拡張家族」になるなど、人生そのものを他人とシェアしている石山さんに、信頼し合える人間関係の築き方のヒントをお聞きしました。

プロフィール

石山アンジュ
1989年生まれ。一般社団法人Public Meets Innovation代表、一般社団法人シェアリングエコノミー協会常任理事(事務局長兼務)内閣官房シェアリングエコノミー伝道師。国際基督教大学を卒業し、リクルートへ入社。その後クラウドワークス経営企画室を経て現職。シェアリングエコノミーを通じた新しいライフスタイルを提案し、規制緩和や政策推進にも従事。著書に「シェアライフ-新しい社会の新しい生き方(クロスメディア・パブリッシング)」がある。羽鳥慎一モーニングショー コメンテーター。


複数の会社で働くうえで感じた人間関係を築く難しさ。役割でなくビジョンを共有して理解を得た

シェアリングエコノミーの専門家で、一般社団法人Public Meets Innovation代表も務めている石山アンジュさん。個人が企業に依存せずに対等な関係でいられる社会の創造を目指して、シェアリングエコノミーの普及活動をしている

―― 社会人になり誰かと一緒に働く機会ができると、人間関係に悩むこともありそうです。石山アンジュさんの人間関係に悩んだエピソードと、どう乗り越えたかについて教えてください。

個人が企業に依存せずに対等な関係でいられる社会の創造を目指して、シェアリングエコノミーの普及活動をはじめ、自分でも複数の会社で働くポートフォリオワーカーになりましたが、それぞれの会社の期待に応えるのに苦労しました。会社Aの立場で本を出版したら、会社Bから「Aでの仕事を優先しているのか」と思われるのではないか、個人でメディアにたくさん出ていると「個人の活動ばかり優先しているんじゃないか」と疑問を持たれるのではないか……といつも周囲の理解を得られているのかどうか不安でしたし、実際にそんな目線を感じたこともありました。

そこで、まわりの理解を得るために、周囲に自分のビジョンを伝えるようにしました。それぞれの会社でやっていることは違っても、同じビジョンに向かって行動していることが伝われば理解されやすくなります。

複数の仕事で共通して伝えているのが「すべてを失っても他者同士がつながることで助け合って生きていける未来をつくる、という概念を社会に浸透させること」。シェアリングエコノミーに関する発信もその一環です。今は一緒に働くメンバーへのビジョンの共有や、どういう社会をつくりたいのか、対話をする時間を大切にしながら、それぞれの会社での活動を理解してもらえるように働きかけています。

ただ、私が目指す未来の一環として取り組んでいるシェアリングエコノミーについて行政や政治家の方に提言する時、最初はシェアリングエコノミーという新しい概念を横文字で説明してもうまく伝わらなくて。まだ20代で若かったこともあり「せっかく専門家として呼んでいただいているのに、うまく伝えられなかったら失望されてしまうんじゃないか」と不安でしたね。

自分と年齢層が違う方々にどうやって同じ認識を持ってもらうか悩んだ末、ジェネレーションギャップがある方々とのやり取りでは、相手が理解しやすい共通言語で会話するように心がけました。

例えば、最初からシェアリングエコノミーというカタカナ横文字は使わずに、日本にかつてあったお醤油の貸し借りや、畑で採れた野菜をご近所に配る「おすそ分け」文化などで例えながら説明したりしています。イメージしやすいストーリーで共感を得られれば、同じ熱量で取り組んでもらえたり支援につながることがありました。

自分の強みを尊重して、自他に優劣をつけずに協力し合う

行政の仕事も多数務めている、シェアリングエコノミー専門家の石山アンジュさん。自分の強みを自覚してから、背伸びせず等身大の自分でコミュニケーションしている

―― お話を聞いていると、政府とのお仕事などは世代や業界の違いから、人間関係を築くにあたって試行錯誤されたことも多そうです。前向きに取り組むために必要なことがあれば、教えてください。

私は、自分の強みを認識したことで優劣を感じず「みんなで一緒に成果を出そう」と前向きに取り組めるようになり、やりとりもスムーズになっていきました。

私も27歳くらいまでは、若さや自信のなさから自分を大きく見せようとしたこともありました。でも、専門領域に関しては年齢なんて関係ないんですよね。「このテーマに関しては自分が一番知識があるし、強いビジョンも持っている」ということを自覚するようになってからは自信につながりましたし、徐々に関係者と意志疎通がとれるようになって、等身大の自分で話せるようになりました。

また、自分より年齢が上のメンバーや、自分よりも優秀だなと思うメンバーと組織をつくって仕事をしているので、「足を引っ張らないだろうか」と負い目を感じたこともありました。ただ、やはりそれぞれに違った強みがあり自分にも強みはある、と気がついてからは前向きに取り組めるようになりました。例えば、相手の方は1を100にする力があるけど、私には0から1を生み出す発想力や伝える力、巻き込む力がある、などですね。

もし自分の強みが分からない人は、まわりに聞くのもいいと思います。例えば、上司や部下などさまざまな立場の人に評価してもらう360度評価はおすすめです。私はリクルート時代に360度評価を受け、今まで自分が気づかなかった強みを知り、自己理解が深まって自信も生まれました。または自分の強みを診断する「ストレングスファインダー」もおすすめです。「私ってどんな人だと思う?」「何が得意だと思う?」と友人や同僚に聞いてみたり、第三者の視点を得られると、自分の強みに気づかされるはずです。

まずは自分から歩み寄る。そうすれば信頼関係が生まれる

二拠点生活を送りながらシェアリングエコノミーを実践している石山アンジュさん。近所の人とは普段から草刈りを手伝ったり野菜のおすそ分けをしてもらったりする仲

―― 上司や同僚……悩みは人それぞれですが、最後に、人間関係に悩み足踏みしている社会人に向けてメッセージをお願いします。

仕事での人間関係の築き方をいろいろと話してきましたが、仕事でもプライベートでも、やはりまずは自分から心を開いて歩み寄ることが大事だと思います。そのうえでここまでお話してきたようなことを必要に応じて意識できるといいと思います。

私は、2年前から大分の田舎の集落と渋谷のシェアハウスの二拠点生活をしています。近所の人とは普段から草刈りを手伝ったり野菜のおすそ分けをしてもらったりする仲ですが、お金のやり取りはありません。「お互い様」の精神で支え合っているんです。

都会では仕事や肩書などのステータスが重視されがちに思いますが、お互いに助け合える人間関係は人生の大きな財産になります。「お互い様」の関係を作るには、自分から心を開いて一歩踏み出す勇気が必要です。他人でも友人でも家族でも、つらい時には「助けて」と言えたほうがいいですよね。たとえ価値観が違っても、性善説に基づいて「話せば分かってもらえるのではないか」と心を開いてコミュニケーションすることで共生の輪が広がっていきます。

そんな密接な人間関係は面倒かもしれませんが、面倒くささの先に幸せがあると私は思います。価値観が違うと喧嘩したり、面倒くさいなと思ってしまうかもしれないけど、人と向き合うということは、良い意味で自分を変えたり、相手と深くなるきっかけでもあります。「自分は変えられない」と思わず「他人と良い人間関係を作るために、自分はどう変わればいいんだろう?」と自問自答して、与えられる喜びだけでなく与える喜びも味わってこそ、幸せな人間関係が築けますし、そんな自分が好きになれると思いますよ。

(MEETS CAREER編集部)

最後に、仕事の告知・宣伝があればどうぞ!

私が常任理事(事務局長兼務)を務める一般社団法人シェアリングエコノミー協会主催の日本最大シェアリングエコノミーカンファレンスシェアサミット2021が10月5日に開催決定となりました。私も出演します。
詳細やチケットのお求めはこちらから。

取材・文/秋カヲリ

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