純喫茶も仕事も両方あってこそ相互にいい作用をする。難波里奈さんのワークライフバランス

つくばの純喫茶「らんぷ」。東京喫茶店研究所二代目所長・難波里奈さんが好きな純喫茶

つくばの純喫茶「らんぷ」


ワークライフバランスについて悩んだ経験を持つ社会人は多いのではないでしょうか。特に社会人数年目の頃は、まだ慣れておらずバランスの取り方に困る機会が多いかもしれません。

さらに最近ではコロナ禍でリモートワークがスタンダードな働き方の一つになり、オン・オフの切り替えがしづらくなってきていそうです。

今回は会社員のかたわらプライベートで純喫茶めぐりを行い、純喫茶の魅力をSNSや書籍で発信する難波里奈さんにインタビュー。ワークライフバランスとの向き合い方を伺いました。

PROFILE

難波里奈。東京喫茶店研究所二代目所長。会社員のかたわら、仕事帰りや休日に純喫茶を訪ね、その魅力をSNSやブログ「純喫茶コレクション」で発信する。著書に『純喫茶コレクション』『純喫茶へ、1000軒』『純喫茶、あの味』『純喫茶とあまいもの』『クリームソーダ

難波里奈
東京喫茶店研究所二代目所長。会社員のかたわら、仕事帰りや休日に純喫茶を訪ね、その魅力をSNSやブログ「純喫茶コレクション」で発信する。著書に『純喫茶コレクション』『純喫茶へ、1000軒』『純喫茶、あの味』『純喫茶とあまいもの』『クリームソーダ 純喫茶めぐり』『純喫茶の空間』『純喫茶とあまいもの 京都編』『なないろのクリームソーダ』ほか。2021年11月にはキーコーヒー株式会社と全国にある純喫茶の魅力を発信するWebサイト「純喫茶ジャーニー」を立ち上げる。
Twitter:@retrokissa Instagram:@retrokissa2017

仕事で悩みが生じた時に純喫茶に救われた

富士宮の純喫茶「らんぶる」。東京喫茶店研究所二代目所長・難波里奈さんが好きな純喫茶

富士宮の純喫茶「らんぶる」

―― 最近では純喫茶の魅力を発信するWebサイト「純喫茶ジャーニー*1」をキーコーヒーさんと立ち上げられるなど、ますます精力的に活動されていますが、あらためて難波さんが純喫茶めぐりを始めた経緯を教えてください。

もともとは学生時代に「昭和」にはまり、当時の家具や雑貨、古着を集めていました。今はスマホ一つでいろいろな情報が手に入りますが、昭和の30~40年代はそうはいきません。ましてや海外の情報なんてさらに限られていたのではないでしょうか。

そんな状況下でテレビなどから得た情報を自分の中に取り入れて、想像力と熱意で新しいものを作り上げる……。そういうところに今とは違ったパワーのようなものを感じて惹かれ始めたんですよね。

そして、そのタイミングで私の師匠である沼田元氣さんの書籍と出会いました。純喫茶の魅力を紹介する本で、それを読んで「私はこういう美しいものが好きで、あんな世界で生きたいんだな」とぼんやり思ったんです。それで純喫茶に関するグッズも集め始めたのですが、自分の部屋で純喫茶の世界を実現するには部屋の容量に限界がありますし、無理だなとなり(笑)。それで、ならば純喫茶に行こう、と。

自分が純喫茶に行けば毎日部屋を着替えられるし、完璧に出来上がっている世界観を楽しめる! と思ったのを覚えています。

―― 純喫茶との接点を持ったのは学生時代とのことですが、その後さらにはまっていったきっかけはあるでしょうか。

1社目の会社に入って数年目の頃に、会社や職場の人とは良好な関係でしたが、日々のタスクが固定化されてきて、ふと「何のためにこの会社にいるんだろう」と自分の中で疑問が生じたんです。でも「辞めたところで何もできることはない」と仕事を辞めることに葛藤していました。

その頃から仕事終わりに行く純喫茶の軒数が増えましたね。私にとっては現実からいなくなれる場所が純喫茶で、「純喫茶に行かないと次の日に進めない」と思っていました。自分の勝手な自意識なんですが、同年代の人が多いカフェは周りが気になってしまって、変に意識してあんまりくつろげないんですよね。でも純喫茶は、入ってさえしまえばマスターをはじめお客さんも誰も私のことなんか気にしていなくて「独りじゃないのに適度に放っておかれて居心地がいいな~」みたいなのもありました。

そんな毎日を過ごすなかで、純喫茶にいる時間があらためて好きだと自覚して、余計に会社にいる時間に意味を見出だしづらくなり、一度区切りをつけるために辞めました。

純喫茶で過ごす時間が自分にとって大事なことを気づかせてくれましたし、その後今の会社に転職しましたが、あのまま落ち込んでいる状態で生きていたら何も頑張れなかっただろうなと実感しています。

仕事と純喫茶めぐりは相互に作用する関係。それぞれのバランスの比率は自分で見つけよう

―― 純喫茶は難波さんにとって重要で、仕事で悩んだ時も純喫茶で過ごす時間があったからこそ次の道がひらけたことがよく分かりました。では仕事とプライベートの純喫茶めぐりのバランスについて、難波さんはどういうお考えをお持ちですか?

どちらか片方ではなく両方なくてはならない存在と思っています。

純喫茶に通う中で自分にとって大事なことへの気付きもあって、私の場合は「自分が好きなことをするお金を得るために働く」という意識が強いです。

純喫茶めぐりを本業にする道もあるのかもしれませんが、それだと純粋に純喫茶にお金を使えなくなるというか。会社でちゃんと給与をもらっているからこそ、純喫茶は趣味と割り切って比較的自由にお金を使えています。

またお金の側面だけではなく、仕事のシーンで純喫茶の影響を感じることもあります。コミュニケーション能力とまでは言わないですが、純喫茶で得た人に慣れる感触などは、例えば会社でプレゼンなどをする時に多くの人を前にしても動じづらくなったと思います。気持ちの面でも、純喫茶という心の拠り所があるおかげで仕事に前向きになったように思います。

逆に会社で身に付く時間配分の意識は、純喫茶めぐりの活動でいくつかの原稿執筆が並行するときなどに役立っています。

あとはバランスの比率ですが、それは人によって違っていいと思います。仕事とプライベートが7:3の人もいれば5:5が一番心地いい人もいるはずです。これは自分にしか分からないと思うので、大事なのは周りを気にせずに自分なりのバランスを見つけることだと思っています。

バランスを保つうえで大事にしているのは「割り切り」と「自分の気持ちに素直になること」

有楽町の純喫茶「ストーン」。東京喫茶店研究所二代目所長・難波里奈さんが好きな純喫茶

有楽町の純喫茶「ストーン」

―― 仕事とプライベートの両立で悩んだことはありますか? また両立するために意識されていることがあれば教えてください。

今もそうですが、最初は特に時間のやりくりがうまくいかない時もあってバランスの取り方に悩みましたね(笑)。

そんな経験もへて、今では割り切ることも大事にしています。仕事では「これは明日でも大丈夫だな」と思ったら、すぐに切り上げるようにしています。そのうえで意識しているのは、他人の時間は自由に変更できないこと。自分の予定は調整しやすいので優先順位は気を付けています。

そしてプライベートでは、自分の気持ちを大切にしています。行ってみたい純喫茶があれば時には有給休暇を使用して訪れることも。行きたい気持ちを抑えるとモヤモヤが募って結局は仕事にも影響が出てしまいますからね。

もし今の悩みが仕事にあるなら、思い切ってプライベートの時間に気持ちを向けてみよう

―― 最後にワークライフバランスとの向き合い方に悩む社会人にメッセージをお願いします。

悩み方はいろいろとあると思いますが、一つ、私も1社目の時にそうでしたが、特に社会人数年目の頃は仕事でつらいことや悩みができると、世界がそれで100%になって何も楽しめなくなってしまうと思います。でも、私の経験からすると実はそこから離れて別の場所に行ったら、いい方に向かうことも多く、選択肢はほかにもあるなと気づかされます。

そして、その別の場所が趣味でありプライベートの時間だと思うんですよね。仮に、自由で楽しい時間が今は5%だったとしても気分転換できて、それが次の日は10%になって……。でもまた0%になる日もあるかもしれないですが、もし仕事で悩んでいるならまずは数時間でもいいので思い切って別の場所に一歩踏み込んでみて、切り替えつつ、自分にとって居心地のいいバランスを見つけてほしいなと思います。

(MEETS CAREER編集部)

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*1:キーコーヒー株式会社が運営するWebサイト。難波里奈氏の監修のもと、全国にある純喫茶の魅力を発信する