男性が育児休暇を取得するのは難しい?経験者が語る、仕事への影響と育児参加の重要性

男性育休

<プロフィール>
鈴木 良太。デジタルマーケティング部のリーダーとして全社のデータ文化推進やマーケティング支援を担当。妻と2歳の息子を持つパパ。奥様は2020年に第一子を出産、現在もフリーランスのエンジニアとして活躍中。夫婦で協力して家事・育児を分担することで仕事と家庭を両立している。

男性の育児休暇について、みなさんはどんな印象をお持ちでしょうか。周囲を見ても、まだまだ制度自体が認知されていなかったり、取得経験者が少ないというのが現状ではないでしょうか。

2022年4月から段階的に施行されている改正「育児・介護休業法」では、『産後パパ育休制度(出生時育児休業制度)』の創設や雇用環境整備、個別周知・意向確認の措置の義務化などが定められました。

男女とも仕事と育児を両立できるよう掲げられた制度ではありますが、男性の育休取得に対しては不安に感じる方も多いのではないでしょうか。今回、育児休暇を取得された方にお話を伺いました。

プロフィール

コロナ禍で妻の妊娠。前例がほぼない中で、1年間の育児休暇を申請

──鈴木さんの現在のお仕事と家族構成について教えてください

鈴木良太さん(以下、鈴木):今はデジタルマーケティング部でマーケティング支援や全社共通ルールの整備、データ文化推進などを担当しています。家族は妻と2歳になる息子がいます。妻はフリーランスのエンジニアで、現在も育児と両立しながら仕事をしています。

──鈴木さんは2020年の第一子誕生の際に1年間の育児休暇を取得されていますが、以前から取得することは決めていたんでしょうか。

鈴木:(1年間という)期間は決めていなかったのですが、子どもができたら育児休暇を取得したいというのはずっと頭にはありました。そのタイミングでちょうど新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)が蔓延してきた時期が重なったので、頼みの綱であった双方の実家を頼るという選択肢もなくなってしまい、どうしたものかと。
その当時のコロナは詳細がまだ明確になっていなかったこともあり、今よりもずっと脅威に感じていましたし、数カ月程度では終わらない雰囲気があったので、期間を決めずに育休に入り、半年経過した頃に1年間取得することを決めました。

──上司にはいつごろ報告されましたか?最初は驚かれたのではないでしょうか?

鈴木:上司には妻が安定期に入ったタイミングで育児休暇を取得することを伝えました。前例などあまりなかったこともあり、最初はやはり驚いた様子でしたが、周囲へ伝える時期や組織編成の相談などしていく中で徐々に協力的に対応してくれたと思います。

──同僚や部下の方の反応はどうでしたか?

鈴木:部署異動してきたばかりだったのもあり、そこまで驚かれることはなかったですね。だた、大規模システムを担当している多忙な部署のメンバーに関してはテンションが落ちてしまったように見えました。異動先では戦力が増える認識だったはずなのに「せっかくきたのに休むのか」となってしまったのかなと思います。今思うと、そういった部分に応えられないという自分の周囲に対する引け目があったので、なおさらそう見えてしまったのかもしれません。

──ワーキングマザー向けのアンケート(※)では夫の育児休暇取得で収入減を不安に感じる方も多いようですが、取得前に奥さまとどんな話をされましたか?

鈴木:妻は良い意味でも悪い意味でも私の仕事にあまり関心がないのですが、ハードルが高い中で1年間の育児休暇取得を決めたことに関しては、父親としての努力を認めてくれましたし、妻の安心に繋がったと思います。収入の面に関しては私の方は色々な手当があったので、ボーナス分が減った程度の収入減ですみました。逆に妻のほうがフリーランスということもあり、会社員がもらえるような産休・育休や手当がないので収入減という面ではインパクトが大きかったかなと思います。

──育児休暇取得に関して不安だったことはありますか?

鈴木:そもそも「本当に休んでいいのかな」という気持ちでしたし、異動のタイミングで組織が大きく変わったのもあり、「この先どうなるんだろう」という。先が見えない不安がありました。育児の面ではコロナ禍で妻の親御さんを頼れなくなったので、頼れる育児経験者がいない状況だったということですね。

コロナ禍で妻の妊娠。前例がほぼない中で、1年間の育児休暇を申請

二人で子育てすることで、妻の負担の大きさを理解できた

──育児で難しいと感じたことは何ですか?

鈴木:育児自体が辛いとかではないのですが、抱っこしたりミルクをあげたりしても子どもの表情が少なくて、リアクションも返ってこないのがしんどかったですね。今思えば成長は後から追いついてくるものだと理解できるのですが、生まれるのが予定より3週間ほど早かったので、発達の遅れが気になっていました。妻と二人で育児をしていても、子どもの成長に関する不安が消えることはなかったので、これが妻一人だったら本当に心細かったと思います。
今は子どもがちゃんと反応するようになったので、それがすごく嬉しいですね。以前は慣らすためにビクビクしながら与えていた牛乳も飲めるようになって、もう大丈夫だと思えるようになりました。

──育児を通じて、ご自身の中での変化があれば教えてください

鈴木:気づいたこととしては、経験もせずに急に育児参加するのは無理だということ。生まれてから早い段階での日々のスキンシップなど、父と子の信頼関係を構築していかないと育児はできないと思います。育児休暇を取得できたからこそ、信頼関係のベースが構築できたと思います。今ではだっこは私だけに求めてくるので、私がだっこを担当しています(笑)

あとは、妻の負担の大きさを知ることができました。よくテレビで芸能人の方が夫婦の冷え切った関係について話をしていますが、育児に参加していない男性がどう踏み込んでいるか分からず困っている状況や、なぜそうなっているか分かるようになりました。私も育児休暇を取得しなければ、妻の負担を理解できずに夫婦の関係性が悪化していたかもしれないと思います。

二人で子育てすることで、妻の負担の大きさを理解できた

ポジティブに自分を整理する時間ができたことで、育休復帰後はやる気に満ちていた

──復帰後の周囲の反応や仕事への影響の有無について教えてください

鈴木:会社のメンバーは思っていたよりも普通に迎えてくれましたね。休みに入る前は不安も多く、負い目を感じていたのですが、復帰時点ではそういった気持ちも解消していたので、なおさらそう思えたのかもしれません。事前に調整していたこともあり、仕事の影響もありませんでした。

──休暇取得前に感じていた不安など、結果としてどうでしたか?

鈴木:休暇中、最初の半年は「会社は動いているのに、自分だけが止まっている」という感覚があり、辛い気持ちになっていました。ただ、それを過ぎたあたりからは「復帰後は何をしようかな」と考えるようになり、“自分がしたいことは何か”、“自分は何が得意か”、“それが今の組織とどうマッチするか”など考えて整理していました。1年経つ頃にはイメージが固まって、その状態で良いスタートが出来ました。自己分析の時間がつくれたことで、気持ちが晴れてきて休む前よりもよりポジティブになれたのだと思います。

──現在の家事・育児の役割について教えてください

鈴木:今は時短勤務を利用しているのですが、妻も仕事をしているので二人で家事・育児を分担しています。帰宅後の流れとしては子どもと遊んでから食事をたべさせます。その後にお風呂に入れて、乳液などのケアをした後に少し遊んで寝かしつけています。全て終わるのがだいたい22:30くらいです。
子どもが生まれる前から掃除以外の家事は分担していたのですが、料理であれば時短できるミールキット使う、洗濯は乾燥まで出来る全自動のものを使うなど、なるべく家事の負担を減らす工夫をしています。

──男性の育児休暇取得のロールモデルになったことで、社内で相談を受けることも増えたのでは?

鈴木:まだそこまで多くはないのですが、どのくらの時期に報告すれば良いかなど、取得に関する相談や、うちの子どもと同じアレルギーを持つお子さんのことなど聞かれることはありますね。相談を受けた際には「早めに言っておいたほうがいいよ」ということはアドバイスしています。男性が育児休暇や時短勤務をするということで、1つのキャラ設定ではないですけど、今は子育てする時期だというのが周知されたことで無駄な駆け引きもなくなりました。前例をつくれたことは組織にとっても会社にとっても良かったと思っています。

まとめ

会社や置かれている立場などによって異なる部分は多いかもしれませんが、

  • 自分の人生を理想に導くために早い段階から周囲への理解を促す
  • どうすれば仕事が回るのか頻繁に周囲とコミュニケーションを取っていく

この2つを意識することで、鈴木さんのように、育休取得で家族を大切にする時間を作りつつも、自分のキャリアを整理し、次に向けた動きをしていくのも、ライフステージが変化する世代にとっては必用な時間なのではないでしょうか。

※参照:マイナビ転職『ワーキングマザーに関する意識調査 2022年』(2022年2月)
https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/careertrend/10

取材・文・撮影:瀧川さおり