生産者さんのリアクションこそ仕事のエンジン。地域産業に携わって働く中山拓哉さんの「仕事のやりがい」

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数年働き続けていると、「この仕事は何のためにしているのか」や「なぜ働いているのか」と思い悩んでしまうこともあります。世の中の先輩たちは、どのようにして悩みを乗り越えてきたのでしょうか。

今回は「仕事のやりがい」を求めて大手企業からベンチャー企業へ転職した中山拓哉さんにお話を伺いました。憧れの一流大企業からスタートアップへ転身したきっかけとは? キャリアの転換を通じて発見したという「仕事のやりがい」についてお聞きしました。

プロフィール

中山拓哉さん

1992年、福岡県福岡市出身。2016年、慶應義塾大学商学部卒。新卒で日本アイ・ビー・エム株式会社へ入社し、地方銀行および外資系カードブランドへのITアウトソーシング営業を行う。その後、2017年8月、株式会社ポケットマルシェに創業メンバー入社以降、初の社員として入社し、生産者へのサポート業務に従事。現在は生産者CS部マネージャー。肩書きは「日本一多くの農家さん漁師さんに出会っている人」。野菜ソムリエ。 Twitter:@nakataku5

この仕事は誰のために? 大企業で抱いた虚無感

──中山さんは現在どのようなお仕事をしているのですか?

私が働いているのは全国の農家・漁師さんが出品した食材を消費者が直接購入できるサービスを展開する「ポケットマルシェ」というベンチャー企業です。サービスを開始して2022年で6年目になります。私はサービスのユーザーをサポートする「生産者CS部」のマネージャーをしています。生産者さんの登録から出品までトータルでサポートする窓口業務が私の仕事です。

全国の農家さんや漁師さんに会ってお話するのも私の仕事で、これまでに47都道府県を回り、おおよそ2,000人の生産者さんと直接お会いしてきました。

──中山さんも紆余曲折あり、現在のフィールドに辿り着いたとお聞きました。もともと学生時代はどのようなことについて学び、研究をしていたのでしょうか?

私は福岡県出身で、大学進学をきっかけに上京しました。東京に出てきたことで、地元福岡の魅力に気づき、地域産業について研究するゼミに所属。地方創生や地元の一次産業に興味を持ち、地方でフィールドワークをしたり、無くなりそうなお祭りをボランティアで支えたりと、地方を盛り上げるための方法を学んでいました。

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学生時代のゼミにて地域産業について学び、現地へ足を運んだ

──しかし新卒で就職したのは、外資系の大手企業だったそうですね。なぜ大学で研究をしていた分野に進まなかったのでしょう?

「地方創生に携わりたい」というビジョンは抱いていましたが、具体的な企業や働きたい地域が思いつかなかったのです。さらに「1年間の浪人をし、大学まで進学させてもらったのに、小さな企業に入ってしまっては」と、親への申し訳なさも感じていました。

あとは……周りに流されてしまっていたのが大きいと思います。同期もみんな大企業を狙って就活をしているし、いわゆる”大企業”もかっこいいなとも思っていたんです。なので就職活動では自分の興味のある分野ではなく、大手企業を狙ってエントリーをし、最終的に外資系のIT企業に入社を決めました。

けれど心のどこかでは、学生時代に学んだような地域産業に携わる仕事に就きたいという思いを抱き続けていたのも事実です。

──社会人1年目ではどのように働いていたのでしょうか?

外資系IT企業向けのアウトソーシングサービスの営業をしていました。当時うれしかったのが、私の担当クライアントの中に地方銀行が含まれていたこと。地方に関わっていたい気持ちがあったので、少しだけ希望が叶いました。新卒の営業の中で初めて海外出張にも行かせてもらう機会があったり、かなり大きな金額が動くプロジェクトにも関わらせてもらったりと、「こんなに大きな仕事に携わっているんだ」という喜びもありました。そして、なにより素敵な上司や同期にも恵まれていました。

ただ、国内の社員だけでも総勢1万人を超すほどの大規模な企業だったので、パズルの1ピースになっているような感覚も否めませんでした。仕事内容もBtoB向けの営業だったので、「私の仕事は最終的に誰に届くんだろう」という疑問も抱いていましたね。

もやもやとした悩みが大きくなるにつれ、胸のうちに思い描いていた「地域に関わる仕事をしたい」という気持ちが次第に強くなっていったことを覚えています。

状況を打破したアクションは「包み隠さず相談すること」

──当時の中山さんが抱いていた悩みは、どのようなアクションで打破したのでしょうか?

同期やパートナーなど、さまざまな業種や立場の人に包み隠さず悩みを打ち明けました。会社の同期はすでにたくさんの仕事を一緒にしており、私が思い悩んでいたことも知っていたので、「そんなに悩んでいるのだったら前向きに退職して、新しい一歩を踏み出してみては」とも言ってくれました。

その中で一番の大きな出来事だったのが、現在私が働いているポケットマルシェの社長、高橋博之に悩みを打ち明けたことでした。

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ポケットマルシェ社長の高橋博之氏(右)

──社長の高橋さんとはどこかで繋がりがあったのでしょうか?

実は彼とは大学時代に出会っていました。当時所属していた地域産業を学ぶゼミで、講師として彼に授業をしてもらったことがあったんです。話を聞きながら「とても面白い活動をしているな」と興味が湧き、FacebookやTwitterで繋がりを持ち続けていました。

ちょうど私が新社会人になったばかりの時にポケットマルシェのサービスがスタートし、私もそのことは知っていました。そして働いているうちに、いつしか自分もそのフィールドでチャレンジしてみたい、そこで働いてみたいという気持ちが湧いたんです。

しかし私が希望するような業種は募集していなくて、求人の門戸も開いていない状態。だからこそ、今の悩みを打ち明けて、もっと地域に携わる仕事をしたいという気持ちを聞いてもらおうと、直接会うことにしました。

──社長に直接会うとは、かなり大胆で勇気のいる行動ですよね。

そうですよね。一人では抱えきれない思いを抱いていたからこそ実行に移せた行動だったかもしれません。

彼が相談に乗ってくれたのは日曜日のこと。青山にある喫茶店でした。思いの丈をありのままにぶつけていくうちに気持ちが昂ぶってしまい、最後は私が号泣してしまって……(笑)。そうしたら「お前の思いは分かった。これから会社もエンジンをかけて人を増やそうと思っている時期だから、うちで働いてみるか」と言ってくれたんですね。それが入社のきっかけとなりました。

今思えば、学生時代に興味関心のある分野と向き合っていたからこそ、次のステージが拓けたのだと思います。好きなことをしっかり学び、そこでの繋がりを大切にしていたことが、今歩んでいるこの道へ導いてくれたのかもしれません。

働くことの意味を知っているから、悩みがあっても頑張れる

──ポケットマルシェに転職された今、中山さんが感じる「お仕事のやりがい」はどういったものでしょう?

まず、先ほどお話したように私は学生時代より、地方や地域産業に関わる仕事に携わりたいと考えていました。そのため、日本全国に住んでいらっしゃる農家さんや漁師さんのサポートをする今の仕事は、ずっとやりたいと考えていた仕事であり、日々の原動力となっています。

そして生産者さんと消費者さんが使うサービスなので、ユーザー両者の顔が見える、反応を知ることができるというのがやりがいです。

生産者さんからは「このサービスのおかげで新しいお客さんと出会うことができたよ」や、「売上がこんなに変わったよ」という話を、消費者さんからは「ポケマルというサービスのおかげで、食べ物を残さなくなった」や「生産者と繋がることで、自分の地域の天気だけではなく、仲の良い生産者さんの住む地域の天気まで気にするようになった」という話を聞くことができました。その言葉を聞けたことがうれしくて、大きなモチベーションに繋がっていますね。

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全国の生産者さんの元へ訪問し、生の声を聞くことも

──とはいえ入社当時はベンチャーだからこその悩みもありましたか?

こんなに小さな会社もあるのだと驚きましたね。仕事もそれぞれ割り振られているのではなく、自分で作っていく必要がありましたし。もちろんプレッシャーもありましたが、地域や地方に関わる仕事ができているという喜びが勝りました。

一番うれしかったのが、やはりサービスを利用するユーザーの顔が見えたこと、そしてリアクションを知ることができたことです。自分の仕事が人に影響を与えているのだと実感できたことは、前職では味わえなかったやりがいでした。

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ポケットマルシェのメンバーと

──最初は数人だった会社も、今は数十名を抱える規模へと成長したそうですね。働きながら前職の時のような悩みを抱えてしまうことはありませんか?

もちろんどの環境にいても悩みなく働くことは難しいと思います。今はチームのマネージャーとして、みんなにどうやって仕事をしてもらおうか、モチベーションを保ってもらおうかと悩みは尽きません。

けれど今は前職で抱いていたような「この仕事は誰のために?」という疑問や、ひとつのピースとして働いているような虚無感はありません。なぜなら自分の中に「何のために働いているか」への答えがあるから。ゴールもなく海原を進み続けるのはつらいことです。でも今は「ここに向かって走っているんだ」というビジョンがあるから、頑張れるんです。

取材・文/大城実結

ふと、何のために働いているだろう? と思ったら