「怖い」よりも「好かれたい」という気持ちで。お笑い芸人・丸山礼さんに“目上の人と仲良くなるコツ”を聞いてみた

丸山礼さんトップ画像

<プロフィール>
丸山礼。1997年、北海道生まれ。「ものまねグランプリ」(日本テレビ系)や「新しいカギ」(フジテレビ系)などさまざまなバラエティ番組で活躍する一方で、2020年にはドラマデビューも果たす。また、自身のファッションブランド「reI’m(リアイム)」をプロデュースするなど、多方面で活躍中。
Twitter:@_iremaru
Instagram:@rei_maruyama


上司や先輩、取引先の“えらい人”。仕事をするなかではそんな「目上の人たち」と否応なく関わらざるを得ません。ただ、年齢や価値観の違いを意識するあまり、目上の人とどう接すれば“正解”なのか分からない……と悩む方も少なくないでしょう 。

人間観察力の光るモノマネで大ブレイクし、その朗らかなキャラクターで老若男女の支持を集める丸山礼さんも、芸能界に入った頃は人の目を見て話せない「スーパーネガティブ人見知り女」だったそう。

しかし、場数を踏むなかで徐々にコミュニケーションのスタイルを確立し、今や芸能界の大御所や先輩芸人たちを含むさまざまな世代・立場の人と交流を深めています。

今回はそんな丸山さんに、「目上の人とのコミュニケーションの取り方」というテーマでインタビューを敢行。礼儀をわきまえつつ相手の記憶に留まるためのちょっとしたテクニックなど、コミュニケーション力を上げるためのコツをお伝えします。

目上の人にも「好かれたい」と考える

――丸山さんは以前のインタビューで、「目上の人にもグイグイ話しかける」と語っています。でも、20代のうちって、仕事でもプライベートでも、目上の人はなんだか違う世界の人に思えて、積極的に話しかけるモチベーションも湧きづらくありませんか……?

丸山礼さん(以下、丸山):私は年上の人や目上の人を「アドバイスをくれる人」と見ているんです。年上の人や目上の人って自分よりも人生経験豊富ですし、そんな方々のアドバイスなら、たとえ厳しいものであれ役立つはず、と。だから自分を成長させるためにも、積極的にコミュニケーションを取ろうとします。

私、事務所に入ったのが19歳で、周りに年上の人しかいなかったんです。でも、芸能界未経験で右も左も分からないなか、40歳くらいのベテランタレントさんと同じ振る舞いができるはずもなく。だから、足りていないところを目上の人たちに教えてもらうことが、売れるためのいちばんの近道だと思いました。当時のマネージャーさんには「なんでも指摘してください」って自分から言って。何も知らなかった分、素直だったんでしょうね。

――なるほど。丸山さんのコミュニケーション力は、そんな当時の環境によって培われたものなんですね。ただ、目上の人と接するうえでは価値観や考え方の隔たりにぶち当たることも多いですよね。そうした「壁」を丸山さんご自身はどう乗り越えてきたのでしょう?

丸山:もちろん、考え方や価値観のギャップがあることは当然。そのうえで、今も昔も「怖い」ではなく「好かれたい」「楽しませたい」という気持ちで接するように心掛けています。

私は今24歳(取材時点)ですが、私たちの世代って、目上の人から一度でも怒られると、自分を責めて殻に閉じこもってしまう人が多いようにも感じます。それは私も同じで、このお仕事を始めた頃は、周りの状況が見えず「今その振る舞いは違うから」と指摘されたこともあって……。些細なことだったのに、言われた時はショックで、ワーッてめちゃくちゃ泣きました。

――丸山さんにもそんな過去が。

丸山:思えば、最初は分からないことだらけで、毎日がトライアル&エラーの連続でしたね。でも、場数を踏んでいくなかで、落ち込んだままではコミュニケーションスキルは上達しない、とトライアル&エラー自体を前向きに捉えられるようになっていったんです。具体的には、「ちょっと違ったな」「やりすぎたな」と反省しつつも、「相手の性格も十人十色だし、落ち込みすぎないようにしよう」と思うようになりました。

――丸山さんの素直さは自分を成長させるうえでとても大事ですよね。でも、中には見当違いなアドバイスや嫌な言い方をしてくる人もいるんじゃないでしょうか? 取り入れる意見とそうでない意見を自分の中でどう選別していますか?

丸山:そうですね。もともと言われたことは一旦やってみようと思うタイプですが、何かを指摘されたとき「悔しい。自分はもっとできるはずなのに」と感じたり、日常生活の中でその言葉をふと思い出したりするようなら、それは乗り越えたほうがいい課題なんだろうな、と思っています。

ただ、本当にときどき、「何言ってんのかよく分かんないな」と感じるアドバイスをいただくことも、申し訳ないけどあります。そういうときはとりあえず、締めの言葉に「ありがとうございます、勉強になります!」と言って、心の中で「はにゃ?」と受け流す(笑)。

場を盛り上げるため「バスガイド」になりきる

――では、具体的なノウハウを教えていただきたいのですが、そもそも目上の人とコミュニケーションを取るうえで大切なことはなんだと思いますか?

丸山:まずは相手の信頼を得ること、そして最低限の礼儀をわきまえつつ場を盛り上げ相手の記憶に留まることです。私のやり方は突き詰めると、この2つに集約されると思います。

――なるほど。では、自分の特技ややりたい仕事を目上の人にアピールする、というシチュエーションを題材に、今挙げていただいたノウハウを順番に教えていただけますでしょうか?

丸山:自分のアピールを好意的に受け取ってもらうには、まずは相手に信頼される必要がありますよね。だから、自分をアピールするよりも相手のことを知る。このスタンスが大事です。

もちろん、そのためには120%くらいの「準備」をする。大前提として、信頼を得るには自信を持ってしゃべることが何より大切ですから。だから、相手が手掛けたお仕事や作品は可能な限りチェックして、自分の心に刺さったポイントをあらかじめ用意しています。

お会いした時は、「この前放送してたあの番組、〇〇さんがスタッフをされてましたよね。すごく面白かったです」みたいに仕事内容から話を広げることもありますし、シンプルに相手の好きな食べ物を調べて会話のネタにすることもあります。

――仕事に限らず、いろいろなコミュニケーションの場で使えそうですね。相手のことを知るというのは信頼を得るためには必要ですし、それ自体がアピールにつながることもありますよね。

丸山:そうですね。そのうえで、最近はこうやってリモートで会議や取材があることも多いので、画面越しでも相手のことを気にかけますね。相手の目をちゃんと見るのはもちろん、「その髪色いいですね」とか「背景ぼやぼやなの最高~(編注:Web会議ツールの背景をぼかせる機能のこと)」とか、なんでも言っちゃうかも。

――背景まで(笑)。

丸山:よくやるのは、「〇〇さん」って相手のお名前をしつこいくらい呼ぶことですかね。「〇〇さん、どう思いますか?」「〇〇さん、これから私が話すので聞いてくださいね」とか。恥ずかしいかもしれないけど、自分はバスガイドなんだ、と思い込めば案外いけます(笑)。バスガイドさんって、よく乗客の方に呼びかけるじゃないですか。

あとは、難しいかもしれないけど、褒められても「ありがとうございます」で終わらせず、「お互い様でございます(笑笑)」「〇〇さんの素敵さには敵いません!」みたいな相手に反応の余地を与える返しをして、会話が続くよう工夫してみる。目上の人に褒めてもらった時のコミュニケーションって難しくて、単に「ありがとうございます」だと私個人としてはクール過ぎる印象なので、良い引っ掛かりを残すのがミソだと思っています。

――なかなか上級者テクですね。でも、コツさえつかめば、いろいろなシチュエーションで有効活用できそうですね!

丸山:そもそも私はプレゼンとか面接、自己紹介の場って、自分のイリュージョンショーだと思っているんです。就活の面接で「コント、面接」って唱えてから臨むと緊張しない、みたいな話もありますが、そうして視点を切り替えるとずっと楽になると思います。イリュージョンショーはさすがに私独自のやり方なので、真似するのは難しいかもしれないけど……。

――そうは言っても、人前で話すのがあまり得意でない読者も多いと思います。少し難しいかもしれませんが、会話以外で「記憶に残す」ために、どう工夫すればいいでしょうか?

丸山:時と場合によりますが、自分の出身地のお土産をみんなに渡して回るとか。やり方は無数にあると思いますが、意外と簡単にトライできることが多いんですよ。

――ちょっとした心掛けですが、印象に残りそうです。そういった話し方やコミュニケーションのコツを、丸山さんはどうやって身に付けて、どうやってブラッシュアップされているんですか?

丸山:基本的にすごく他人を観察して、他人のちょっとした所作や言葉遣いから「いいな」と感じたところを吸収するようにしています。友達の中に、目上の人に教えてもらった映画やドラマをすぐに見て、次回相手に会うときまでに必ず感想を言えるようにしておく人がいるんです。それって相手も絶対にうれしいはずなので、見習いたいなと思いましたね。

先輩方の振る舞いからも日々学んでいます。例えば、アンガールズの田中(卓志)さんは「アンケートの鬼」と呼ばれていて、番組出演前にスタッフから配られるアンケート用紙を端から端までびっしり埋めると聞いたことがあります。そういう努力をしているからこそコンスタントにお仕事が入るはずで、自分も真似したいです。

ブラッシュアップの方法としては、立場を逆にして考えてみるのがいいかもしれません。つまり、自分の話を自分がお客さんや上司の立場で聞いた時にどう思うか? と。一人で考えるのが難しそうだったら、厳しい意見もちゃんと言ってくれる友達の前で会話の練習をして、「どこが課題だと思った?」「何か印象に残った?」と聞いてみるのもアリだと思います。

ただ、やはり場数を踏むことが大事なので、ここで話してきたことも練習しないと板にはつかないと思います。私も、家や移動中の時間を使って何回も練習しましたから。


自己紹介の方法を紹介した動画(丸山さんのYouTubeチャンネルより)

ネガティブな自分が、明るい「丸山礼」を支えている

――どんな人に対しても積極的にコミュニケーションを取ろうとする丸山さんは本当にすごいと感じる一方で……YouTubeチャンネルの動画では、もともと「スーパーネガティブ人見知り女」だったと明かされています。正直、とても驚きました。

丸山:本当にそうだったんですよ? 今の事務所の養成所に入るオーディションで、スタッフの方に「どうして君は目を合わせてくれないの?」って言われたのがいまだに忘れられなくて。当時は特技も自信もないなかで上京したから、コミュニケーションのスタイルを模索する日々が毎日続いていました。自分の中で「ギア」を入れられるようになるまでにはかなり時間がかかりましたね。

――ギアを入れる、というのは?

丸山:今は「半ギア」くらいで喋っているんです。もしまったくギアを入れなかったら……こうなります(無の顔)。

で、ギアを全開にしたら、「みなさァ~ん! おはようございまァ~す!」。

――全然違う人みたいですね(笑)。

丸山:アゲアゲアゲ~! みたいな。こんな感じで、いくつものモードを、空気と相手のテンションによって使い分けています。芸人モードだけでなく、好きな人の前モード、女友達と話すモードもある。いろいろな経験をへるなかで、気づいたらモードを切り替える自分になっていたというか。

中にはいまだに世の中のことを斜めに見て、自分の嫌な部分ばかり気にしてしまうスーパーネガティブモードもあるんですけど、そういうネガティブなもう一人の自分が支えてくれているおかげで、明るい「丸山礼」を作り出せてるのかなって今は思います。

――なるほど。丸山さんの周囲の状況を冷静に分析する力とモードを切り替える手法が、今のコミュニケーションに活用されているんですね。個人的に、ネガティブな自分を否定しなくていい、という一言は救いになりました。

丸山:スーパーネガティブモードも役立つ時はあって。ネガティブな目で世間を見た時に気づいたことを明るいモードにパスして、「おもしろネタ」として世に出している側面もありますから。

あと、ここまで会話のテクニックをたくさん紹介しておいて「今更!?」感はありますが、いつも「周囲の人を楽しませたい」と考える必要はないと思いますよ。私もプライベートでは、「ネタやってよ」と振られても「仕事じゃないんですみません」みたいな感じなので(笑)。

ただ、お仕事だと価値観の違う人とやり取りしなくてはいけない機会もあると思うので、今回紹介した方法をそんな時の「モード切り替え」にうまく活用いただけるといいのかな、と考えています。

丸山礼さん記事内画像

(MEETS CAREER編集部)

取材・文:生湯葉シホ


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