趣味を軸に、仕事や生活を組み立てていく。横尾涼さんの趣味との付き合い方

趣味との付き合い方 横尾涼さん

さまざまな社会人の「趣味との付き合い方」をお聞きするシリーズ企画「変化する『趣味との付き合い方』」。今回は、学生時代から趣味として写真を撮り続け、会社員を経て現在は写真が好きな人に向けたウェブマガジン『Photoli』の代表を務める横尾涼さんにお話を伺いました。

今や趣味は生きていくうえで欠かせない存在になりつつありますが、昨今の環境の移り変わりを受け、趣味との付き合い方にも変化が生まれていそうです。「趣味は何よりも優先度が高いもの」と語る横尾さんに、趣味との付き合い方の変化を伺いました。

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さまざまなところへ出かけて絶景を撮るのが好き

Q.)横尾さんの趣味活動について教えてください。

大学生の頃から写真を続けています。中高はずっと卓球をやっていて、大学でも半分体育会系のような卓球サークルに所属していたんですが、大学2年生のあるときふと「他にも何かやってみたいな」と思ったんです。その時たまたまインターネット上で、マクロレンズで撮られたすごくきれいな作品を見て。「すごいな、カメラって面白そうだな」と思ってカメラを買ったのが始めたきっかけです。

実際にマクロレンズで撮った写真。被写体を大きく写すことができる。

最初は動物園に行って動物を撮ることが多くて、そこからだんだん風景を撮るようになりました。きれいな緑や絶景を撮るのが好きで、社会人になってからは土日のたびにどこかへ出掛けて写真を撮るような生活をしていました。もともと頻繁に旅行するタイプではなかったんですが、写真を理由にいろんなところに出かけるようになったのは大きな変化です。

日常風景よりも絶景を撮るのが好きで、「綺麗な場所をすごく綺麗に写したい」という気持ちが強いんですよね。撮る場所を決め、その地を訪れて、写真を撮り、レタッチでイメージに近づける。その工程すべてが楽しいです。

自由に出かけることが難しかった2020年は、撮影の熱が強くなかったこともあり、写真から離れていた時期もありました。ただそれを経た今は、撮影に出かける機会は増えています。2カ月に一度くらいはまとまった時間をとって、さまざまな場所を訪れて写真を撮っています。

富士山と朝焼け。湖面にうっすら映っているのが綺麗。

趣味は仕事と同じくらい優先度の高いもの

Q.)今の横尾さんにとって趣味はどんな位置づけでしょうか。以前との変化とあわせて教えてください。

現時点では、人生で一番優先度が高いものです。「もしも今お金にまったく不自由していなかったら」「時間の制約がなかったら」と考えたとき、「まずは満足するまで写真を撮るだろうな」と思うんですよ。いろんなところへ行って写真を撮りたい。少なくとも今の段階では、写真を撮ることは仕事と同じくらい優先度の高いものです。なので趣味をなるべく真ん中に置き、それに合わせて生活や仕事を組み立てている感じです。

コロナ禍を機に、リモートワークやオンラインでの打ち合わせをする人が増えましたよね。なので、より趣味を中心にしたライフスタイルが可能になった感覚もあります。コロナ禍の前、特に会社員だった頃は、平日の昼間に写真を撮りに出かけることは難しく、どうしても時間的な制約を感じていました。

でも今は、離島へ写真を撮りに行って、そのままホテルに戻ってオンラインの打ち合わせをするなんていうこともあります。撮影の予定を先に立て、それに合わせて仕事の予定を組む方法は、コロナ禍を経てやりやすくなったなと感じています。


まず趣味の予定を決め、それに合わせて仕事のスケジュールを組む

Q.)社会人は仕事とのバランスを考えることが多そうです。趣味と仕事を両立するうえで工夫していることを教えてください。

先ほど「趣味は何よりも優先度が高いもの」というお話をしましたが、強制的に趣味の時間をとってしまうのはいい方法だなと思っています。まず「この日は撮る日」と決める。その予定を先に入れたうえで、仕事の予定を組んでいく……という順番にするといいのかなと。

多くの人は、優先度の高いものから手をつけていきますよね。その時に趣味の優先度をふわっとした状態にしておくと、趣味のための時間って一生回ってこない気がしていて。なので優先度を自分で上げるしかないんです。「5日以内に仕事が終わったら趣味の日を一日入れよう」というマインドではなく、「必ず5日で終わらせる」ものとしてスケジュールを切る。

そのためには仕事の効率を上げる必要がありますが、効率を上げるために「ダラダラしない」のではなく「人はダラダラするものだ」と割り切ったほうがいい、というのが自論です。

例えば僕は仕事をするパソコンのすぐ横に「Nintendo Switch」のコントローラーを置いていて、いつでもゲームができる状態にしているんです。ゲームをする時は、10分くらいやってすぐ切り替える。ダラダラすることに罪悪感を抱かないように意識していると、逆にダラダラの時間が短くて済む気がするんです。使い古された言葉ですが、やっぱりメリハリは大事ですよね。


生き方の満足度が上がると、趣味に評価を求めなくなる

Q.)そのほか、趣味に関することで以前と比べて変わったことがあれば教えてください。

「頭を空っぽにできる」という意味合いで、写真を撮る時間の価値が上がったかもしれません。

コロナ禍に突入したばかりの頃は、仕事が減ったのもあり「仕事を頑張らなきゃ」という気持ちが強かったんですが、今は少し心に余裕が出てきて。仕事のことをまったく考えず、頭を空っぽにする時間も必要だと思うようになりました。写真を撮っているときは興奮状態に陥っているというか、一心不乱になって他になにも考えられなくなるので、仕事のことを考えずにいられるんです。

ほかに変わったことといえば、写真を評価されなくてもいいと思えるようになったことでしょうか。以前はSNSに写真をアップして「いいね」をもらうことが楽しみだったんですけど、最近はその気持ちがかなり減ってきました。

年齢的に落ち着いてきたのもあると思いますが、働き方も含めて自分の生き方に対する満足度が上がってきて「自分のために写真を撮れるようになった」という表現が一番しっくりくるかもしれません。評価を求め続けると疲れちゃうので、趣味として続けるためには評価を気にしないのも大事なことかなと思います。

(MEETS CAREER編集部)

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お話を伺った方

横尾涼

横尾涼
写真のライフスタイルメディア「Photoli」代表。「写真の楽しさを発信すること」「クリエイティブで価値ある事業を支援すること」が生きがい。好きなことは写真と旅と美味しいご飯とインターネット。
Twitter:@ryopg8
Instagram:@ryopg8_tabi