漫画『トリリオンゲーム』に学ぶ、ビジネスで成果を出すマインドとアクション |稲垣理一郎×けんすう 対談(後編)

トリリオンゲーム対談(後編)


週刊『ビッグコミック スペリオール』で連載中の漫画『トリリオンゲーム』。世界一のワガママ男・ハル(天王寺陽)と、まじめなガク(平 学)の二人がゼロから起業し、トリリオン(1兆ドル)を稼ぐ物語です。

ガクの自宅で創業し、20万円という少ない資金で事業をスタートさせたトリリオンゲーム社でしたが、投資家との交渉や事業開発を成功させ、巨大資本も無視できないほどの力をつけていきます。その道のりで描かれるのは、交渉術や行動指針、チーム作りのコツやマネタイズの考え方。それらは起業家はもちろんのこと、新規事業に取り組むビジネスパーソンや組織の中で働く会社員にもヒントを与えてくれます。

前編に引き続き、『トリリオンゲーム』の原作者である稲垣理一郎さん、作品の大ファンで自身も起業家として多くの新規事業を立ち上げてきたけんすう(古川健介)さんの対談を実施。後編となる今回は、ビジネスパーソンが新規事業に取り組む前に押さえておきたいマインドやアクションを作中から探ります。

※前編はこちら!


【プロフィール】

稲垣理一郎
1976年東京都出身。『アイシールド21』(作画:村田雄介)、『Dr.STONE』(作画:Boichi)。『Dr.STONE』で第64回小学館漫画賞受賞。現在「ビッグコミック スペリオール」で『トリリオンゲーム』(作画:池上遼一)を連載中。
公式twitter:@reach_ina

けんすう(古川健介)
アル株式会社代表取締役。学生時代からインターネットサービスに携わり、2006年リクルートに入社。新規事業担当を経て、2009年に株式会社nanapiを創業。2014年にKDDIグループにジョインし、Supership株式会社取締役に就任。2018年から現職。会員制ビジネスメディア「アル開発室」において、ほぼ毎日記事を投稿中。

投資を呼び込むのは、「細かなプラン」よりも「実行力」


──『トリリオンゲーム』で起業を題材にするにあたり、稲垣先生は起業家や投資家、さまざまな業界のスタートアップ企業などに取材をされたと伺いました。その中で、意外に感じたことや特に興味深かったことを教えてください。

稲垣理一郎(以下、稲垣):取材する前は、起業家や投資家たちはみんな、ものすごく緻密な計算に基づいて動いているものだと思っていました。

例えば、投資家がシード期(起業前もしくは起業間もない段階)のスタートアップに出資する際に、「この状況だと成功比率は何%で、数年後の期待値はこれくらいだろう。よって、この会社のバリューは2億8765万円であると想定される」……みたいに、きっちりとしたシミュレーションに基づいて決められているんだろうと。

──そうではないのですか?

稲垣:実際に話を聞いてみると、大体の投資家が「いや、なんとなくですよ」と言うんです(笑)。「この会社は(なんとなく)全体のバリューが5000万円くらいかな。出資割合を(なんとなく)15%として、そこから逆算すると……よし、出資額は750万円にしよう!」みたいな感じで決めているんだと。そんなにアバウトなんだと思って、そこは意外でしたね。

けんすう:いや、でも本当にそんな感じですよ。『トリリオンゲーム』の中にも出資の交渉をするシーンが出てきますけど、めちゃくちゃリアルだなと思いました。

稲垣:出資割合や出資額って、会社の運営に直結するものすごく大事なことのはずなのに、そこにあまり根拠ってないんだなというのが驚きでした。でも、そもそもその事業が成功するかどうかすら未知数なわけですから、この段階の細かい数字に確実な根拠を求めるのは難しいですよね。

いろいろな投資家や起業家に話を聞いて思ったのは、つまるところ投資っていうのは「人」に対してするものなんだなと。事業どうこうよりもその人自身を見て、投資するかどうか、いくら出資するかが決まっていく。考えてみれば当たり前ですが、取材前は気づかなかったですね。

「プランではなく人に出資する」と話したうえで、希望の出資額をハルに聞く投資家・前山田 (画像:『トリリオンゲーム』第2話より) ©️稲垣理一郎・池上遼一/小学館
「プランではなく人に出資する」と話したうえで、希望の出資額をハルに聞く投資家・前山田 (画像:『トリリオンゲーム』第2話より) ©️稲垣理一郎・池上遼一/小学館

──けんすうさんもエンジェル投資家として、さまざまな起業して間もないスタートアップに出資されていますが、やはりプランよりも人を重視されているのでしょうか?

けんすう:確かに、事業計画書よりもその人自身を見ているところはあります。稲垣先生がおっしゃるように、緻密な事業計画書を作って「何年で、いくら売上を出します!」なんて言っても、走り出してもいない状態でどうなるかなんて誰も分かりませんよね。それに、会社の新規事業も同じだと思いますが、想定通りになんていきませんから。

──ただ、ハルやガクのように、事業計画書どころか何をやるかすら決まっていない段階で出資をお願いしに来る、なんてことはさすがにないですよね?

けんすう:いや、それがあるんですよ。「けんすうさん! 俺、ビッグになりたいんすよ!」みたいな感じで、勢いだけで来る人は結構います。さらには「でも、事業プランがないんで、一緒に考えてもらえませんか?」って言われたことも……。まあ、最終的には出資したんですけどね。

ライバル会社、ドラゴンバンクの取締役・黒龍キリカ(桐姫)に出資を持ちかけるハル (画像:『トリリオンゲーム』第3話より) ©️稲垣理一郎・池上遼一/小学館
ライバル会社、ドラゴンバンクの取締役・黒龍キリカ(桐姫)に出資を持ちかけるハル (画像:『トリリオンゲーム』第3話より) ©️稲垣理一郎・池上遼一/小学館

稲垣:人を見て出資を決めたというわけですか。

けんすう:そうですね。エンジェル投資家からしてみると、シード期の細かい事業計画はそこまで重要ではないんです。

普段から投資家は色んな事業を見ていますから、「こんなふうにやるといいよ」とアドバイスできる。実際、急成長しているスタートアップでも、投資家から提案されたアイデアをベースに成功しているケースが結構あります。

ですから、僕が大事だと思うのは細かなプランよりも「実行力」。この人ならきっと最後までやり遂げるだろうなと感じられたら、だいたい出資していますね。

──では、けんすうさんが投資家という目線で見た時に、ハルやガクは出資するに値しますか?

けんすう:それはもう、間違いなく出資すると思います。彼らの魅力は、良い意味でこだわりがないところ。これが例えば「俺、メディア事業しかやりたくないんです!」と言われてしまうと、メディア事業がうまくいかなかった時に詰むんですよね。

この2人は、どの事業をやるかについては、あまりこだわりがない。特にハルに関してはすべての行動原理が「お金を稼ぐこと」ですから、そのためにさまざまな打ち手を選べるのは大きな強みだと思います。

「まずは「実行力」を身につける」「良い意味で「こだわり」をなくす」

「尖った特徴がある人」と組む


──少し無茶振りの質問かもしれませんが、お二人は『トリリオンゲーム』に登場するキャラクターの中で、自分は誰に似ていると思いますか?

稲垣:僕は蛇島さん(ライバル会社のドラゴンバンクから引き抜いた優秀なゲームクリエイター)ですね。

けんすう:ああ、分かる気がします。

──蛇島は一見すると、楽天的で人間臭い部分が多いキャラクターですね。

いつもふざけているように見える蛇島だが、トリリオンゲーム社でのソシャゲ開発において 的確にプロダクトマネジメントを進めている (画像:『トリリオンゲーム』第36話より) ©️稲垣理一郎・池上遼一/小学館
いつもふざけているように見える蛇島だが、トリリオンゲーム社でのソシャゲ開発において 的確にプロダクトマネジメントを進めている (画像:『トリリオンゲーム』第36話より) ©️稲垣理一郎・池上遼一/小学館

稲垣:蛇島って一生懸命チャラけようとしているんですけど、「チャラいキャラ」になりきれていないんですよね。あとは、トリリオンゲーム社のソシャゲ開発に蛇島がジョインした時も、自分がつくりたいものはとりあえず置いておいて、まずはプロジェクトとしての成功を重視する。それでいて、ヒットした後の自分へのリターンが少ないと、露骨に不満を溜め込む。ああいう人間くささというか、ダメなおっさん感が好きだし、自分にも近いかなと思います。

けんすう:分かるなあ(笑)。蛇島さん、めっちゃ良いキャラですよね。

──けんすうさんはどうですか? 自分に近いと思うキャラクター。

けんすう:おこがましいですけど、やっぱりハルくんタイプなのかなと思います。僕の役割って、自分が積み上げてきた影響力や知識、実績といった持っているカードを使い、自社の強みをアピールして出資を募ったり、ユーザーに反応してもらうためにTwitterで盛り上げたり、そういうことが多い。さすがにハルほど極端なことはやりませんけど、役割としては近いのかなと。


けんすうさんはTwitterで自社の新サービス告知を怠らず、盛り上げ役を担うことが多い

──では、登場キャラクターの中で一緒に働いてみたい人はいますか?

稲垣:僕は圧倒的に凜々(リンリン)ですね。漫画の中では、まったく異業種のアルバイトから転職してきて、いきなりトリリオンゲーム社の社長を任されていますけど、彼女の実務能力の高さは秘書として非常に魅力的。漫画家って基本的に事務作業が苦手なので、そこを完璧にカバーしてもらえるんじゃないかと。

トリリオンゲーム社初の事業開発にあたり、膨大な量のリサーチに自主的に取り組んでいた凜々(画像:『トリリオンゲーム』第13話より)©️稲垣理一郎・池上遼一/小学館
トリリオンゲーム社初の事業開発にあたり、膨大な量のリサーチに自主的に取り組んでいた凜々(画像:『トリリオンゲーム』第13話より)©️稲垣理一郎・池上遼一/小学館

逆に、一緒に働きたくないのはハルかな。彼はきっと、得意の二枚舌を発揮して仕事をたくさん取ってくるだろうけど、そんなにさばき切れないので(笑)。

けんすう:僕は、誰だろう……。それこそ蛇島さんと一緒に働いたら楽しそうですよね。

稲垣:でも、あの人って犯罪者なんですけどね。告発こそされていないけど、前職で横領をやってますから。さすがに、会社のお金を盗む人とは一緒に働けないかな。

けんすう:確かに(笑)。ただ、スタートアップってネームバリューも実績もないので、人材の確保には本当に苦労しますからね。結果的に、「優秀なんだけど、どこか欠点がある」みたいな人が集まりがちで、そういう意味でもトリリオンゲーム社のメンバーはリアリティがあると思います。まあ、横領は絶対NGですが……。

──確かに、トリリオンゲーム社のメンバーはそれぞれ何かしら欠落している部分はあるけど、一方でめちゃくちゃ尖った特徴も持っています。

けんすう:一緒に新しい事業を進めていく仲間としては、そういう人のほうが魅力的だったりしますよね。会社が大きくなっていけば、自然と平均化してくるものだと思うので。最初は凸凹が集まっていたほうが、良いものをつくれるように思います。

ルールの裏を突き、数を打つ。「稟議の壁」を突破する方法

──起業家ではなく会社員でも、新規事業に関わっている人はたくさんいます。ハルのような実行力を発揮したくても、大きな組織になるほど承認プロセスも複雑になる。現実的には思うように物事が進まず、もどかしい思いをしている人も多いのではないでしょうか。お二人にも、そうした経験はありますか?

けんすう:僕自身も、会社員時代には大きな組織にいたので、やはりそうした承認プロセスに向き合うことがありました。でも、ルールブックをよく読んでみると、やり方によっては最速で突破できそうなところがあったりするんですよね。

ルールの裏をうまく突くとか、逆に「ルールブックに書いていないことはやっていいんですよね?」みたいに、ある意味開き直って独断でやっちゃうみたいなことはありました。もちろん、ルールを破るとペナルティがあるので、さじ加減は難しいですけどね。もちろん、普通に怒られることもありましたし。

──言える範囲で、例えばどんなことで怒られましたか?

けんすう:新規事業の話ではないですけど、以前所属していたとある会社に、社員のデータベースみたいなものがあったんですよ。社員であれば誰でも閲覧できて、キーワードで検索かけると人探しもできるっていう。

僕は会社内で名前を売るというか、目立つためにそれを利用してしまおうと思って、自分のデータのフリー項目の欄に会社の全社員の名前を入れておいたんです。そうすると、どの名前で検索かけても、僕のデータが出てくるじゃないですか。実際、データベース上で「最近、やたらこいつの名前見るな」っていうふうになったんですけど、まあ怒られましたね。

──それこそ漫画みたいな話ですね。

けんすう:僕の場合はやりすぎてしまったんですけど、ゲームのように裏技を見つけるのも仕事の面白さじゃないかと思います。会社だって、事業を成功させるためにルールをつくるのであって、ルールを守らせること自体が目的ではない。たとえ裏技でも、うまく使って会社に利益をもたらしたほうが絶対にいいし、自分だって楽しいはずです。

ソシャゲを作るために用意したはずの資金をすべて芸能事務所の買収に使ったことを笑って謝るハル (画像:『トリリオンゲーム』第36話より) ©️稲垣理一郎・池上遼一/小学館
ソシャゲを作るために用意したはずの資金をすべて芸能事務所の買収に使ったことを笑って謝るハル (画像:『トリリオンゲーム』第36話より) ©️稲垣理一郎・池上遼一/小学館

──稲垣先生はいかがでしょう?

稲垣:僕は会社員ではなくフリーランスなので、個人的に何かをする時に稟議を通さなきゃいけないということはない。ただ、漫画を作るためには出版社の連載会議に通らないといけませんから、その点では会社員の方の「稟議」と似ているかもしれません。

新人の頃、読み切りのネーム(セリフや配置などを大まかに表した下描き)を出版社に持ち込んだ時も、編集者から「じゃあ、これ上に上げておくわ」と言われたっきり、なしのつぶてということがよくありました。

──でも、そこで何の連絡もこないと、次にどう動いていいか分かりませんよね。

稲垣:最初から連絡はこないだろうなと思っていたので、2週間後くらいにまた別の新しいネームを持っていきました。「前回の結果をまだ聞いてないんですけど、これもお願いします」って。で、また2週間経ったら次のを持っていく。それを4回くらい繰り返したら、編集者から「一つ目のネームが通ったから」と連絡が来て、それが僕のデビュー作になりました。

──すごい! 粘り勝ちというか。

稲垣:そう。だから数を打つってけっこう大事なんだと思いますよ。そのうち、「そこまで言うならやってみな」となる。これは会社員の方でも同じことではないかと。

「ルールの「裏」を見つける」「何度でも諦めず、数を打つ」

ジェネラリストに「逃げるな」。自分がやりたい最大限を目指そう


──『トリリオンゲーム』は起業家の物語ですが、一般の会社員にとっても学べる点が多い作品のように感じます。けんすうさんが特に、若い人に参考にしてほしいと思う部分はどこですか?

けんすう:ハルくんの「全部欲しい」というマインドは、けっこう大事なのかなと思います。起業や新規事業推進の経験の少ない人って「アレをやるにはコレを犠牲にしなきゃいけない」みたいな、トレードオフの意識があるように感じます。そんなふうに考えると結局小さくまとまってしまうから、まずは自分がやりたい最大限を目指してみるといいんじゃないでしょうか。

買収を持ちかけてきた超大手ライバル会社に対し、逆に買収する未来を宣言する。「とりあえず」ではなく、最大値を目指すハル (画像:『トリリオンゲーム』第43話より) ©️稲垣理一郎・池上遼一/小学館
買収を持ちかけてきた超大手ライバル会社に対し、逆に買収する未来を宣言する。「とりあえず」ではなく、最大値を目指すハル (画像:『トリリオンゲーム』第43話より) ©️稲垣理一郎・池上遼一/小学館

ここでは言えない逸話もたくさん話に聞くんですが、ソフトバンクの孫正義さんや、楽天の三木谷さんなどは、おそらくすべてを手に入れたいと思って実行している気がします。普通だったら、今これしかお金がないからこれはできない、と考えそうなところを、いろいろなスキームを作り実行してしまう凄みだったり、会社の危機となりそうなリスキーなこともして、どんどん手に入れている。

自分はこのくらいが限界だ、と決めてしまったり、変に遠慮してしまうのは、ビジネス上ではあまり意味がないのかなと。

──ハルのように、もっとワガママになっていいと。

けんすう:そう思います。実際、僕が会社員時代に優秀だと感じた人って、みんなめちゃくちゃワガママでしたから。「これをやらせてくれ、予算はこれだけほしい。それとは別に、自分は副業もやるから認めてくれ」と、ハッキリ主張していました。そういう覚悟と責任を背負って我を出せる人こそ会社のさまざまな壁を突破していくし、その後も起業して成功していたりする。会社って意外と誰も我を出さないので、ワガママを言ってみると通ったりするんですよね。ダメだったとしても、怒られるだけですし。

株式会社じげんっていう、東京証券取引所プライム市場に上場している会社があるんですけど、その社長である平尾丈さんも、若い頃からなかなかのワガママっぷりを発揮されていましたよ。もともとはリクルートにいて、周りの優秀な先輩社員たちに遠慮せずガンガンと存在感を発揮していって、25歳でドリコムとリクルートが出資した子会社の社長になりました。その後、MBOし独立した上で上場まで果たしている。

見方を変えると、リクルートの社員だからグループ会社の社長になっているのに、もう一度独立したいから、と思い自分で借金をしてその会社を買うって、めちゃくちゃワガママなやり方だと思うんです。でも、無茶なことでも実行してきたからこそ、叶ってしまったわけですよ。

──結果、会社にも利益をもたらしているわけですよね。

けんすう:そうそう。ハルくんもよく「儲かればいいんだよ」と言っているじゃないですか。結局は、最終的な結果がよければ納得してもらえるし、その覚悟が持てるかどうかですよね。

ゲームの開発発表会で大嘘をついて20億円もの出資を集めたハル (画像:『トリリオンゲーム』第21話) ©️稲垣理一郎・池上遼一/小学館
ゲームの開発発表会で大嘘をついて20億円もの出資を集めたハル (画像:『トリリオンゲーム』第21話) ©️稲垣理一郎・池上遼一/小学館

──ありがとうございます。最後に、ぜひ稲垣先生も、若い会社員へアドバイスをいただけますか?

稲垣:一つ思うのは、ジェネラリストに「逃げないで」ほしいということですね。漫画の世界にもあることですが、ずっと同じ仕事をやっていると、スペシャリストとして勝てそうにない相手っていうのがたくさん出てくるんですよね。

そういう時に、本当は変わらずスペシャリストとして勝負したいのに、「いや、俺は他にもこんなことやあんなことができるし、総合的にはあいつよりイケてるでしょ」っていう方向に向かってしまいがちです。でも、そうやって逃げを打ってしまうと、最終的にはどの分野でも勝てない人になってしまうと思います。

もちろん、欲張って色んなことをやるのは全然いいんですけど、それなら全部の領域でトップになってやるくらいの気持ちでやらないと、すべてが中途半端になってしまう。ジェネラリストになるにしても、「俺はスペシャリストじゃないから、これくらいでいいんだ」みたいに目標値を下げてしまうのはよくないですよね。

──結果的にスペシャリストの領域でトップをとれなかったとしても、それくらいの気持ちで望むことが大事だと。

稲垣:そうですね。本当のトップ以外の人は2位以下に甘んじることになるわけですけど、そこで変にジェネラリストと自分を位置付けず「俺は誰にも負けない」って思い続けられている人は成功しているように感じます。

僕自身も原作者として、ネームは誰にも負ける気はないですから。実際には負けたとしても、自分の能力を信じ続けたい。その気持ちがなくなったら、おそらく引退するんじゃないですかね。

「「ワガママさ」を大切にする」「「スペシャリスト」であり続ける」

取材・文:榎並紀行(やじろべえ)

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