「部下や後輩が指示通りに動いてくれない」「話したいことはあるのに、パッと言葉に出てこない」といった経験をしたことはありませんか?それは、自分の考えや進捗状況などの「言語化」がうまくできていないからかもしれません。
言語化を得意にするためには、入ってきた情報を自分なりに整理し、必要に応じて表現できるようにしておくことが重要です。この記事では、言語化が得意な人の特徴や、言語化を得意にするトレーニング方法を紹介します。
「言語化」の意味とは?
まず、「言語化」の意味をおさらいしておきましょう。実は厳密に言えば、「言語化」という言葉は明確には定義されていませんが、一般的には「自分の考えをどう表現するかを整理し、言葉で表すこと」といったニュアンスで使われています。言語化がうまくできると、以下のような効果が期待できます。
- 今の自分が客観視でき、その場に合った行動ができる
- 自分の行動を振り返り、抱えている課題を解決できる
- 自分が思っていることや状況や指示を、他の人に齟齬なく伝えられる
言語化の質を高めるほど思考や行動の質も上がり、意思決定の質も高くなります。
そして言語化は、ポイントを掴んだうえで練習を重ねれば、誰でも得意になれる可能性を秘めています。言語化が苦手だと感じる場合は、後述の「言語化に必要な3つの能力とアップさせるコツ」をご覧ください。
言語化を得意にするビジネス上のメリット
言語化が得意になると享受できるビジネスシーンにおけるメリットは、次の通りです。
物事が整理でき、課題を明確化できる
言語化ができると、業務上の課題をはっきりと把握しやすくなります。言語化のプロセスでは、たくさんの情報を整理しなければなりません。その途中で理由や背景が曖昧な部分や、関連性がわからない部分などが出てくることがあります。しかしその点をさらに突き詰めて言語にすることで、目の前の仕事の本質や抱えている課題が徐々に見えてきます。
その結果、課題の解決策や今後の方向性も思い浮かんでくるでしょう。まだ気付いていなかった課題が偶然見つかり、事前に対策できることもあるかもしれません。
意見交換や提案がしやすくなる
自分の考えや意見をきちんと整理して言語化できると、会議やミーティング、商談などでの意見交換や提案にも難なく対応できるようになります。言語化のために情報の整理をしているうちに、自分の主張やその根拠がクリアになってきます。「なぜ、その主張に至ったのか」を論理的に説明できるだけの土台が作れるため、人前で言葉に詰まる機会も減らせるはずです。
もし相手に何か質問をされた場合も、スピーディーに回答できるでしょう。
報連相がうまくなる
言語化ができるということは、「現状どうなっているのか」が理解できている状態でもあります。上司や同僚に報告を求められた場合も、要点を押さえながらわかりやすい報告ができるでしょう。加えて現状が理解できていれば、業務にあたっていて迷いやトラブルが生じたときでも、すぐに連絡や相談が可能です。結果的に、社内での信頼獲得やチームワーク向上も期待できます。
報連相がうまくなるためのコツは、以下の記事で詳しく紹介しています。
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周囲から信頼されて仕事が進めやすくなる
状況や課題、要点などを適切に言語化できていれば、報連相をするときに相手に納得してもらいやすくなります。たとえば上司から「明後日に提出するA社への提案資料、進捗はどう?」と聞かれたシーンを想像してください。どちらの返答のほうが、相手の理解を得られそうでしょうか。
- 「すみません、まだ完成していないのでもう少し時間をください」とだけ伝える
- 「明日まで時間をください。午前中に一旦完成したのですが提案に生かせそうなデータが新しく見つかったので、内容をブラッシュアップしているところです」と答える
後者のほうが、進捗状況や対応している内容などが明確に伝わると感じたのではないでしょうか。仮に後者と同じ理由で時間が欲しいと言ったとしても、前者のような答え方では「本当にできているのだろうか?」と思われてしまいかねません。
自分への信頼や評価を落とさないためにも、言語化することは重要です。
言語化が得意な人に見られる特徴
身の回りに、「言語化が上手いな」と思う人はいませんか?そうした人たちをよく観察すると、言語化のために必要な能力を持っているのみならず、日常的にインプットとアウトプットを繰り返している傾向が見られます。そしてインプットなら「たくさんの人と雑談をする」、アウトプットなら「メモを取る」「SNSでつぶやく」など、小さなことから取り組んでいることも多いです。こうしたインプットとアウトプットが日常の一部になっているため、言語化に慣れているのでしょう。結果的に言語化がスピーディーにできるようになり、「言語化が得意そうだ」と見えているのかもしれません。
この点を踏まえると、「言語化が上手になってからアウトプットしよう」と考えるのではなく、「アウトプットすることで言語化が上達する」と捉え、積極的にアウトプットをするのがおすすめです。
アウトプットの方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
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言語化に必要な3つの能力とアップさせるコツ
言語化をするために必要な能力は、大きく以下の3つが挙げられます。言語化が上手くできないと感じる場合、この3つの能力をバランスよく鍛えることから始めてみましょう。
思考力:さまざまなことに疑問を持つ
思考力とは、見聞きした物事について深く考え、本質を見抜く力です。複雑な物事を解読し、よりシンプルに捉える力だと言っても良いかもしれません。思考力を高めるためには、身の回りの物事に対して「なぜ?」と疑問を投げかけてみましょう。問いかけを繰り返すことで、表面的な理解にとどまらず、その背景にも思いを巡らせられる深い思考力が養われるはずです。
また、普段の自分の感情を分析するのも効果的です。特に次のように感じたときは、分析をする絶好のチャンスです。
- 食事をして「おいしい」と感じたとき
- 本やSNSで見た文章や、誰かの言葉を「良いな」と思ったとき
- 他人の行動や言動に対して「嫌だな」と思ったとき
- 仕事をしていて「この工程、面倒だな」と感じたとき
自分なりの価値観や判断軸がないと感じる場合も、この方法が役立ちます。「なぜ、『おいしい』『良い』と思ったのか?」「どこが『嫌だな』『面倒だな』と感じたのか?」と考えることで、自分の思考のクセや特徴も把握しやすくなるためです。加えて要約力や語彙力も養われるため、一石二鳥です。
要約力:「重要な点がどこか?」を常に考える
要約力は、入ってきた情報を自分なりに整理し、「何が重要なのか」を明確にする力です。本当に必要な情報や要点を抽出する力とも言い換えられます。要約力を鍛えたい場合は、数ある情報の中から核となる部分を見つけ出すトレーニングやアウトプットが効果的です。以下のような方法を試してみてください。
- 会話の最中にメモを取る
- 本や新聞記事などを、ポイントを意識しながら読む
- 文章をなるべく短く書くよう努める
会話の中で「結局どういうことなの?」と言われてしまうのは、相手に伝えるべき要点の整理ができていないことに起因しています。要点を意識する姿勢が身に付けば、大量の情報から重要度の高いものを見抜き、時と場合に応じた言語化ができるようになるでしょう。
語彙力:たくさんの言葉に触れる
語彙力は、思考・要約した自分の考えや感情を表すために、ぴったりな言葉を探し出すための力です。
芽生えた感情は同じでも、状況によって微妙なニュアンスの違いがあります。何かに対して「嬉しい」と思ったときでも、「予想外の出来事があってラッキーだった」と直感的に思うときと、「これまでの努力が報われたようだった」と感慨深く、しみじみと感動を覚えるときもあるでしょう。
しかし、そこでただ単に「嬉しい」とだけ表すのと、気持ちを的確に言い表せる言葉を使うのとでは、言語化の質も大きく変わります。その時々に応じて「これだ!」と思える言葉で言語化できるよう、言葉のストックを充実させておきたいところです。
語彙力不足を感じた場合は、とにかくさまざまな言葉に触れることを意識してみてください。これから使おうとしている言葉の言い換え表現や類語がないかを調べたり、あえて友人・知人とは異なる年齢層の人と話したりするのも効果的です。
また、公私ともについ使いがちな「ヤバい」「すごい」といった言葉を封印し、より具体的な言葉で言い換えるのも良い訓練になります。
特に「ヤバい」は良いことにも悪いことにも使われるため、安易に使うと自分の意図がうまく伝わらない可能性があります。「あの会社はヤバい」と言われただけでは、その会社を良く言っているのか悪く言っているのか、すぐに判断できませんよね。
細かな言葉遣いを意識することは、言語化の質を高める以外に「要点や結論が伝わらない」といったトラブル防止にもなるでしょう。
語彙力アップの方法は、以下の記事でも詳しく解説しています。
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言語化ができれば今以上に仕事がうまくいく!
言語化がサクサクとできれば、普段の仕事を今以上にスムーズに進められるようになります。また、いざ誰かに報連相が必要になった場合でも、すぐに齟齬なく伝達できるでしょう。言語化は一朝一夕で習得できるものではありませんが、今回紹介したコツやトレーニング方法も意識すれば、徐々に身に付いていくでしょう。「言語化が得意です!」と言えるように、小さなことから始めてみてはいかがでしょうか。
文/シモカワヒロコ(Nyima.)