「やりがい」VS「働きやすさ」──転職の最終選択で後悔しない4つの視点

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(イラスト:うかうか ヤメコミ! byマイナビ転職「お疲れ! はたらき犬」

転職活動を頑張った結果、なんと2社から内定が出ました! 嬉しいけど、どっちにするか迷っています……。
ひとつは、ずっと興味があった業界で、やりたい仕事ができそうな会社ですが、残業が多めで働き方にはちょっと不安。
もうひとつは、業務内容は少し地味だけど、定時退社&福利厚生もばっちりな“ホワイト企業”。
「やりがい」と「働きやすさ」、どっちを選ぶべきでしょうか?


近年、働き方に対する価値観は大きく変化し、転職先を選ぶ基準も複雑化しています。

ワークライフバランスを重視する声が広がる一方で、副業やリスキリングなど自己成長への意識も高まっています。さらに、夫婦共働きが一般化する中で、家庭を持つことを考えるなら、育児や介護との両立も視野に入れておきたい課題です。

こうした背景から、「やりがいを取るか、働きやすさを取るか」という問題は簡単ではありません。

では、どう優先順位をつければ後悔しない選択ができるのでしょうか?

今回は、キャリアコンサルタントの林碧先生に、判断のヒントとなる「4つのステップ」を解説していただきました。

キャリア・コンサルタント

林 碧(はやし みどり)
株式会社キャリアイズ 代表取締役社長、国家資格キャリアコンサルタント・キャリアコンサルティング技能士2級、両立支援コーディネーター。 企業人事経験および個別相談対応経験を活かし就職・転職の相談からライフキャリアビジョン構築、育児・傷病など個別事情との両立まで、幅広い相談に対応。通算4000件以上の個別面談実績、年100件以上の研修登壇実績を保有。特に若年層のキャリア形成支援を得意とし、大学での登壇実績が豊富である他、企業向けの育成者研修や若手定着支援、人材コンサルティングも実施。日経Xwomanアンバサダー。小学生2児の母。

迷うことは、自分に誠実である証──「正解探し」より「納得づくり」を

まずは、転職活動お疲れさまでした。そして、2社からのご内定、本当におめでとうございます。ここまで努力を重ねてきたあなただからこそ、つかみ取れた結果です。

一見「贅沢な悩み」に思えるかもしれませんが、“やりがい”と“働きやすさ”の間で揺れる気持ちは、多くの人が通る自然なプロセスです。どちらも人生を支える大切な要素であり、どちらを選んでも、あなたの成長と幸せにつながっていくはず。

ただし、選択の場面で大事なのは「正解を探すこと」ではなく、「自分が納得できる選択を見つけること」です。

今、あなたは“選ぶ権利”を手にしています。それは、キャリアの舵を自分で握る力を持っているということ。迷うということは、それだけ“どちらにも誠実でありたい”という思いがある証拠です。

だからこそ、この時間を「自分の今」と「自分の価値観」を丁寧に見つめ直すチャンスにしてほしいと思います。

今回は皆さんが考えやすいよう、ポイントを分けながら紹介していきたいと思います。

ステップ1:まずは“今の自分の状態”を見つめ直す

「変えたいこと」と「すでに持っているもの」を整理しよう

まず考えてみたいのは、「今の自分はどんな状態にいるのか」ということです。

転職活動を始めたきっかけには、必ず“何かを変えたかった理由”があります。それは、新しい経験を得たい、もう一度自分らしく働きたい、安心できる環境を取り戻したい――など、人によってさまざまです。

「新たに何を獲得したいと思ったのか?」
「何を取り戻したいと思ったのか?」

この問いを整理することで、「リスクを取ってでも挑戦したい」と思えた納得感の根っこが見えてきます。

その一方で、転職前にすでに満たされていたことにも目を向けてみてください。私たちは、現状を変えようとするとき、“足りないもの”ばかりを見がちです。しかし実際には、「すでに持っていたもの」や「自分を支えていた環境」を過小評価しているケースが少なくありません。

・仕事を通して得ていた達成感や安心感
・支えてくれていた上司や同僚の存在
・自分の強みを活かせていた瞬間

これらは、次の職場でも「最低限これだけは欠かせない」と言える基盤です。

“今の自分のステージ”を客観的に見てみよう

たとえば、キャリアの基盤を築く20代であれば、経験値を積む「やりがい」を重視する時期かもしれません。

一方で、子育てや家庭との両立期であれば、生活リズムを守る「働きやすさ」が大切になります。

ライフキャリア・レインボー(Super, 1980)という理論*1では、人の人生は複数の役割で構成され、それぞれの重なりによって“今の自分”が形作られるとされています。

つまり、今の自分は「どんな時期を生きているか」を意識することが、何を優先すべきかを考えるうえでの羅針盤になるのです。

今はどんな時期なのか?それはどれくらい続くのか?この後はどんな時期が待っているのか?
ライフステージが進んだ先で手に入れにくくなるものはあるのか?次のステージに備えて行っておくといいことはあるのか?

短期軸ではなく、長期でとらえたからこそ得られる気づきは、ぜひ大切にしてほしいと思います。

ステップ2:「やりがい」と「働きやすさ」を分解して考える

“やりがい”と“働きやすさ”は、よく対立軸のように語られます。けれど、実際にはすべてが相反するわけではありません。まずは、その中身を自分の言葉で分解してみることから始めましょう。

このように並べてみると、“やりがい”のなかにも「人との関係」や「安心感」は含まれていたり、“働きやすさ”のなかにも「成長機会」や「達成感」を求める気持ちがあったりと、重なりが多いことに気づきます。

大切なのは、本当に相反する部分はどこかを冷静に見極めること。たとえば、「成長機会」と「勤務時間安定」は両立が難しい場面があるかもしれません。けれど、「人間関係の安心」と「挑戦の機会」は共存できるはずです。

“選ばなければならない二者択一”ではなく、“両立の余地を探す思考”が、納得のある選択に近づく第一歩です。

また、“働きやすさ”の多くは社会資源によって補える場合があります。

たとえば、子どものお迎え時間は学童保育や家族の協力で調整できるかもしれません。通勤負担も、リモート勤務やサテライトオフィスなど環境の工夫で軽減できます。

一方で、“やりがい”の根源にある「貢献」や「自己成長」は、仕事の中でしか得にくいものです。

こうした柔軟性を考えるうえで、参考になるのがシュロスバーグの「転機の4Sモデル」*2です。

人が転機を乗り越える際に活用できる資源を、以下の4つの視点から点検します。

この4Sを整理しながら考えると、「本当に自分が守りたいもの」「譲れないもの」が明確になります。

想定していなかった支援や戦略に気づくことも多く、自分のなかの選択基準がより立体的に見えてくるでしょう。

ステップ3:これまでの「働くうえでの幸せ」に目を向けてみる

これまでの仕事のなかで、あなたが「幸せだな」と感じた瞬間はどんなときだったでしょうか。

人によってその答えは違います。大きな成果を出したときかもしれないし、誰かに感謝されたとき、あるいは穏やかな一日を終えた瞬間かもしれません。近年、転職などの選択の場面で「休息(リフレッシュ)」を重視したいと答える人も増えています。

ただ一方で、働く幸せを感じる人ほど『自己成長』や『他者貢献』を重視する傾向があることも報告されています。

つまり、“働きやすい=幸せ”と単純に結びつけてしまうと、本来あなたのなかにある「働く喜びの源泉」を見逃してしまう可能性もこともあるのです。

休息や安定を求めることは悪いことではありません。ただ、もしそれが「疲れたからとにかく穏やかに過ごしたい」という逃げの発想に傾いているなら、少し立ち止まって、「過去に自分が充実感を得られた瞬間」を思い出してみてください。

どんな経験が、自分に“生きている実感”をもたらしてくれたのでしょうか。その経験にはきっと、あなたにとっての“やりがい”や“働く幸せ”の核が隠れています。

過去の体験を振り返ることは、自己分析の延長ではなく、「自分が幸せを感じる構造」を見つけることに近い作業です。経験を通して考えることで、あなたの価値観や選択基準に対する納得感はぐっと高まります。

そしてその納得こそが、転職という決断を迷いではなく、“自分への誠実な選択”に変えていくのです。

ステップ4:“最低限”と“理想”を分けて考える

「やりがい」を求めすぎて心身が追いつかなくなったり、「働きやすさ」を優先しすぎて物足りなさを感じたり——。

そんなふうに、働くなかでバランスを取ることの難しさを感じた経験がある方も多いかもしれません。幸せに働くための鍵は、「やりがいを感じつつ、持続的に働ける状態をつくること」

そのためにまず意識したいのが、「自分にとっての最低限」と「理想」を分けて考えることです。

すべてを理想通りに整えることは難しいですが、最低限を確保できない環境では、どんなにやりがいがあっても長くは続きません。

逆に、すべての条件を完璧に満たそうとすると、選択ができずに立ち止まってしまうこともあります。

おすすめは、次のように三層構造で可視化する方法です。

こうして“最低限ライン”を明確にしておくことで、判断に迷ったときにも、自分を守るための軸が見えてきます。そして、“理想”を描いておくことは、長期的なキャリアの方向性を定める指針になります。

もうひとつ大切なのは、自分はどんな環境下で最も力を発揮できる人間なのかを理解しておくこと。

挑戦があるほどエネルギーが湧くタイプもいれば、整った環境のなかで落ち着いて力を発揮できるタイプもいます。

どちらが良い悪いではなく、あなたが“どうすれば自分らしく働けるか”を知っておくことが、結果的に心身の健康と成果の両立につながります。

キャリアを歩むうえで、選択の正解はひとつではありません。けれど、「これだけは譲れない」という自分の境界線を言葉にしておくことで、働き方の選択はぐっとシンプルになります。

そしてその線の内側で、自分なりの理想を少しずつ育てていく——。それが、長く幸せに働き続けるための現実的な一歩なのです。

自分の選択を“正解”にしていくために

どんなに時間をかけて考えても、選択には不安がつきものです。けれど最終的に大切なのは、「自分で選んだ」という感覚です。それは、どんなキャリアの局面でも、あなたを支え続ける力になります。選んだ先に“完璧な環境”はありません。

けれど、「選んだ道を自分で整えていく」ことは、誰にでもできます。たとえ迷いながらでも、自分の選択に責任を持ち、少しずつ“納得を育てていく”。その積み重ねが、“転職を成功させる”というよりも、“人生を自分の手で形作る”という意味を持っていきます。

どの道を選んでも、それはあなたが歩む人生の一部であり、その選択を通じてしか出会えない人や経験があります。だからこそ、結果よりも「自分で決めた」という事実を大切にしてほしいのです。

今目の前にある選択は、終わりではなく、始まり。これからのあなたのキャリアに、新しい物語を刻む第一歩になりますように。

制作:マイナビ転職編集部




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*1:アメリカの教育学者ドナルド・E・スーパー(Donald E. Super)が提唱したキャリア理論

*2:アメリカの心理学者ナンシー・シュロスバーグによって提唱された、成人のキャリア形成に関する理論