【第1回・実践リスキリング講座】40代に後悔しない!体験談から学ぶキャリア危機への備えとは?


AIの進展や雇用環境の多様化が現実味を帯びるいま、市場ニーズ変化に対応するため新たなスキルを習得する「リスキリング」が注目を集めています。

厚生労働省が「教育訓練休暇給付金制度」を開始するなど推進が進む一方で、マイナビ転職が行った「リスキリングに対する意識調査」では、実際にリスキリングを経験しているのは全体の24%との結果が。

「何を、なぜ学ぶのか」「学んだ先に何ができるのか」が見えないまま、焦りや不安だけが先行してしまっている人も少なくなさそうです。

本連載では、45歳からのキャリア支援を行う都築辰弥さんが、実際の支援現場で見てきた後悔やつまずき、そこからの立て直しをもとに、リスキリングを“どう始め、どう活かすか”を年代別に紐解いていきます。

第1回となる今回は、「10年後に後悔しないために、20代・30代の今、何に意識を向けるべきか」をテーマに、
・リスキリングとの向き合い方
・社外との接点づくり
・人間関係
という3つの視点から語っていただきました。

20~30代は、仕事にも私生活にも追われ「この先のキャリア」について腰を据えて考える余裕を持ちにくい時期でもあります。しかし、忙しい今だからこそ、未来の選択肢を狭めないために、準備を始めてみても良いかもしれません。

※本記事は、「実践リスキリング講座シリーズ」の第1回です。第2回テーマは「40代からのリスキリング再入門」、第3回テーマは「リスキリング×複業(副業)」を予定しております。

著者:都築辰弥(つづき たつや)東京大学工学部システム創成学科(コンピュータサイエンス)卒。新卒でソニーに入社し、スマートフォンXperiaの商品企画担当として2019年フラグシップモデル「Xperia 1」などをプロデュース。その後、2019年に人材系スタートアップである株式会社ブルーブレイズ(現ライフシフトラボ)を立ち上げ、45歳からの実践型キャリアスクール「ライフシフトラボ」を開講。人生後半のキャリア形成支援に取り組む。国家資格キャリアコンサルタント資格を持ち、フルスタックエンジニアでもある。


中堅社員として今、バリバリ脂が乗っている30代のあなたへ。
まず最初に、共有したいデータがあります。

マイナビ転職の「キャリア危機に対する意識調査」によると、正社員の66.8%が「将来、今の仕事を続けられなくなるかもしれない(キャリア危機は起こりうる)」と感じているそうです。
年代別では、30代で66.0%、40代では76.5%と、30代後半から40代にかけて不安が一気に高まる結果となりました。

しかし一方で、同社の別調査では「働き続けたい年齢(働きたい年齢)」の平均は62.8歳と、多くの人が60代以降も働く意欲を持っているとの結果もあります。長く働き続けたい、けれど現実的には難しいかもしれないと不安を覚えている。そんな方が増えているのです。

もちろん、実際にはキャリアはまだ終わりなどではありません。80歳まで働くことが当たり前になるとも言われる人生100年時代において、40代なんてまだ前半戦で、50歳でようやく折り返し。60歳の定年時点でも、キャリアはまだ20年残っているのです。

ところが、職場の10歳上の先輩を思い浮かべていただければお分かりの通り、人生100年時代としてイメージされるキャリアの時間軸と、多くの会社で40代が置かれる環境との間には、大きな乖離があります。

40代後半以降といえば、部下や後輩を育成するやりがいを感じる一方で「出世レースに決着がついた」「セカンドキャリア研修を受けさせられた」「早期退職の募集が始まった」「同期が次々と子会社に出向している」「役職定年で元部下の部下になった」というように、第一線から遠のいていくように感じる出来事がどうしても増えてきます。

仕事人生というフルマラソンをまだはるか先まで走り続けなければならないにもかかわらず、折り返し地点にも至らないうちに、会社から与えられる機会が減ったり、求められる役割が変わってしまったりするかもしれない。だからこそ、30代である今から、そのリスクに備えておくことが重要なのです。

私がいま、なぜこの記事を書いているのか。それは、「もっと早く、ちゃんと準備しておけばよかった」という40〜50代の方々の声があまりにも多いからです。

申し遅れましたが、私は、45歳からのマンツーマン転職塾「ライフシフトラボ」の代表を務めています。ライフシフトラボでは、転職をお考えの40~50代のビジネスパーソンを対象に、自己分析や職務経歴書の作成、求人選定、企業分析、面接対策などを一体的に伴走支援する、転職活動のパーソナルトレーニングを行っています。

日々受講者の転職支援に取り組む中で、彼らが打ち明ける後悔は、後輩世代にもっと共有されるべきではないかと強く感じるようになりました。「このまま行くと10年後にどんな問題に直面するのか」を今知っておきたくはありませんか。

この記事では、40~50代の後悔の体験談をもとに、リスキリングへの向き合い方、社外との接点や人間関係構築の重要性という3つの申し送りをまとめました。

「目的なき学びに逃げてしまった」

総合電機メーカーで技術職として勤める50歳男性のMさんは、3年前に社会人大学院に入学し、経営学を学んだそうです。

リスキリングの重要性はますます高まっています。意欲的で非常に良いご選択だと私は思いましたが、なんとご本人は「経営学を学んだからといって、何かが大きく変わったわけではない」とおっしゃるのです。

「今思えば、仕事で成果を出せていない焦りから、学びに逃げたかったんだと思うんです。経営学を学んでも、会社の評価が上がったり、部署異動ができるわけではないことは薄々わかっていたのに、目の前の仕事と向き合うのが怖くて、でもそのまま何もせず、「職場で価値を発揮できていない人」というレッテルだけが残るのも嫌でした。」

この率直な告白に、私は返す言葉が思いつきませんでした。Mさんの選択が間違っていたとは思いません。ただあえて、Mさんのお話から学び取れることがあるとすれば、リスキリングには明確な目的が不可欠だ、ということでしょう。

英語やAI、MBA(経営学の学位)、資格など、社会人が学び直しに時間やお金を投資することが珍しくなくなったからこそ、「なんとなく大事そうだから」「周りもやっているから」という動機ではなく、「そのリスキリングにどのようなリターンを期待するのか」という問いを自分に向けることが重要なのです。

「社外で食っていけない人間になってしまった」

ここで言う「社外で食っていけない」とは、能力が足りないという意味ではありません。

会社の中では評価されてきたにもかかわらず、その価値を社外で説明・再現できる形にしていなかった結果、転職やキャリアの選択肢を自分で狭めてしまった状態のことです。

このように、リスキリングやキャリアについての目的意識が曖昧なまま、それでも与えられた目の前の仕事には真面目に向き合ってきた結果として、気がついたら「今さら会社を辞めることなんてできない」という袋小路状態になってしまう。これが、まざまざと突きつけられる現実です。

総合職としてのジョブローテーションの結果、特定の領域に専門性を持つわけではないジェネラリスト人材になり、この会社でしか通用しない社内ルールや根回しばかりが上手になった――。そのようなお話を、私は何度聞いたことでしょうか。

ただ、だからといって「総合職では専門性が身につきにくい」と単純に結論づけてしまうのは、必ずしも正確ではありません。ライフシフトラボのプログラムにも含まれている、30代のうちにぜひ取り組んでいただきたいことが2つあります。

ひとつめは、自分がこれまで取り組んだ業務・積み上げた経験を定期的に棚卸しし、再現性のある知見に変換すること。ライフシフトラボではこれを「じぶんコンテンツ」と呼んでいます。仮に他の会社に転職したとしても、転職先の同僚に教えてあげられるようなノウハウは何か。それが、会社の外で価値を持つ自分の資産になります。
じぶんコンテンツとは、自分の経験を他者に再現可能な価値に言語化したもの

ふたつめは、その「じぶんコンテンツ」が本当に社外で通用するのかを仮説検証すること。具体的には、転職スカウトサイトに最新の職務経歴書を登録してどんな会社からスカウトが来るかを試してみたり、副業マッチングサービスに登録して他社で自分のスキルが通用するかを実際に確かめてみたりすることなどが挙げられます。

役職やポジションによっては、日々の仕事で社外の人間とほとんど関わりがないという方も少なくないでしょう。そのような環境では、意識的に社外の空気に触れておくことが重要です。実際に転職するかどうかはまったくの別問題として、社外との接点がいざというときのキャリアの安全網になってくれます。

最近では、業績が安定している企業であっても、人員構成の見直しや希望退職の募集が行われるケースが見られます。AIの進展によって「自分の仕事はどうなるのか」と不安を感じる方も増えているでしょう。それでも多くの人は、忙しさを理由にこうした備えを先延ばしにしてしまいがちです。緊急ではないものの重要なこうした活動こそ、意思を持って優先順位を高める必要があると私は思います。

「人間関係に投資しなかった」

ライフシフトラボの転職コースをご受講いただく40~50代の受講者の転職理由ランキング1位は何だと思いますか。

答えは、職場の人間関係です。

意外に思った方も多いかもしれませんが、想像してみてください。

40代以降は、出世する人・しない人の差がどんどん広がっていきます。以前は毎週のように居酒屋で楽しく飲んでいた同期メンバーだって、「彼・彼女が部長になった一方で、自分は...」という状況になったらどうでしょうか。

権限も違う。給与だって違う。割り勘にするときの、お互いに一瞬心がざらっとする感覚……。そんな小さな違和感が、関係性を変えてしまうこともあるでしょう。飲み会は次第になくなっていくかもしれません。また別のシチュエーションにはなりますが、自分より歳下の上司とうまくやっていくことも、そう簡単ではないものです。

出世した側も同じです。発言や態度に責任が伴う立場となり、誰かを気軽に飲みに誘って会社の愚痴を言ったり、「自分は会社や世の中をこう変えたい」と野心を語り合ったりできるような同志も減っていきます。

「友達がどんどん減っていく感覚」――そう表現したライフシフトラボの受講生の言葉がとても印象に残っています。

20代・30代のうちは、成果を出すことに必死だったり、結婚や子育てでプライベートも忙しかったりして、人間関係への投資は後回しになりがちです。しかし、「あのとき、もう少しちゃんと関係を作っておけば、社内での立ち位置が変わっていた」「上司や同僚との関係が崩れて、キャリアの選択肢が一気に狭まった」と振り返る40~50代の方々がとても多いのです。

たとえば先述のリスキリング。何か学びたいことがあるならば、同じ目的を共有できる同期社員や同僚をぜひ誘ってみてはいかがでしょうか。キャリアに関心を持ち意欲的な仲間のコミュニティを、意識的に育てていくのです。

リスキリング、社外との接点、人間関係。この3つに共通しているのは、「始めるのが早ければ早いほど、複利で効いてくる」ということです。

40代を「気づきの年齢」ではなく「準備が完了している年齢」にできるかどうかは、20~30代の今にかかっています。

繰り返しになりますが、ぜひ優先度を意識的に高めて、小さな一手を始めてみてください。そうですね、たとえばこの記事を、問題意識を共有できる仲間にシェアしてみるのはどうでしょうか。

※本記事は、「実践リスキリング講座シリーズ」の第1回です。第2回テーマは「40代からのリスキリング再入門」、第3回テーマは「リスキリング×複業(副業)」を予定しております。

リスキリングは、「流行っているから」「不安だから」と始めても、思うような成果につながらないことがあります。

だからこそ、学びそのもの以上に「学ぶ前の目的設定」「社外との接点づくり」「人間関係への投資」といった、“心地よく働き続けるための土台づくり”も視野に入れると、より効果的にリスキリングに臨むことができそうです。

なお、リスキリングの内容によってはWEB講習やワークショップが伴い、それ自体が「社外の人脈づくり」になるケースもあります。

今回の記事で取り上げられた体験談は、決して特別なものではありません。多くの人が無意識のうちに選びがちな道の延長線上にあるものです。

忙しい日々のなかでキャリア危機への備えをするのは簡単ではありません。しかし、そんな中で小さな一歩をできるだけ早く踏み出すことができれば、いずれ大きな財産になるのではないでしょうか。

連載第2回では、「40代以降のリスキリングでは、何に焦点を当てるべきなのか」を取り上げます。シリーズを通してご覧いただき、自分なりの「キャリア危機への備え方」を見つけていただければ幸いです。


制作:マイナビ転職


今日の学びをX(旧 Twitter)にメモ(読了メモ)
このエントリーをはてなブックマークに追加