転職は新たな一歩を踏み出す大きな決断。希望ばかりではなく、不安や迷いを感じることも多々あるでしょう。企業研究は当然するものの、「いざ転職したら希望どおりにならないかもしれない」「今の会社の方が良かったと後悔するかも」と考えてしまう方も少なくありません。
この記事では、転職を検討している方、特に前職で「配属ガチャでハズレた(職種や勤務地など、配属先が思うような先ではなく就労継続の困難さを感じた)」など希望と異なる仕事の担当になったことから転職に至った方が、次の転職で同じような境遇にならないために留意したいポイントを、データと専門家のアドバイスを交えてご紹介します。
転職に対する不安を解消し、より自分に合った仕事・就業環境で自信を持って前進するために、ぜひ参考にしてください。
監修者
「配属ガチャ」や希望と異なる配属で「辞めたい」と感じる方は一定数
マイナビ転職が行った新入社員800名(入社2カ月時点)を対象とした「新入社員の意識調査(※1)」によると、新入社員で勤務地・配属先ともに希望通りだったのは59.9%と過半数を上回りました。とはいえ、半数近くがファーストキャリアを希望とは異なる状態でスタートしています。そのなかで、「配属ガチャにハズレた」とまで感じている新入社員は11.1%。それほど多くない印象ですが、「辞めたい」と思ったことがある退職検討経験者は、23.7%が「配属ガチャにハズレた」と感じており、非退職検討経験者よりも15pt以上高い結果に。
希望通りの配属にならない人ほど「今の仕事を退職したい」と考えがちで、それは新卒に限らず転職においても、希望通りの配属にならなければまた「辞めたい」となり、転職を繰り返すことになってしまうのは想像に難くないところです。
転職活動であり得る「配属ガチャ」とは?
中途採用は新卒採用ほど総合職採用が多くはありませんが、転職でもやはり「配属ガチャ」はあるようです。転職での配属ガチャはどのようなケースがあるのでしょうか。「勤務地」「配属先(職種・部署など)」の2つの観点で、キャリアの専門家に意見を伺ってみました。
配属ガチャ:勤務地編
店舗が複数あるサービス業や支店がある企業は、自宅から遠い勤務地や希望と違うエリアに配属になるなど、考えていた勤務地と異なる場合があります。面接などの選考・入社前段階で勤務地を特定せず研修後に決定する場合は、通勤時間がかかる店舗や支店などに配属される可能性もないとは言い切れません。全国に店舗や支店などがある企業で、地域を限定したエリア採用でなければ、転居を伴う勤務地の可能性もある、と考えたほうが良いでしょう。
配属ガチャ:配属先編
転職の配属ガチャで多いのは、仕事内容が考えていたものと違うケースです。例えば、総務として採用されたのにドライバーも兼任で行うとか、商品企画で転職したのに商品企画ではなく、業務の中心が営業だった、などです。更には事務職として採用されても、研修という名目で店舗に配属されてしまうことも。本来、選考時に研修があることを内定前に伝えるべきですが、悪質な場合、応募が集まりにくい職種に、研修という名目で配属する企業もあるため注意が必要です。
人手不足を理由とした配属変更を避けるには?
接客サービス系など一部の職種では、管理系の職種で採用されたものの「人が足りないから」と店舗に配属され、そのまま固定化されてしまうケースがあるようです。このようなケースを入社前に見抜いて避ける方法はあるのでしょうか。
質問に対して曖昧な回答の場合は要注意
面接で転職後すぐに管理部門に配属されるのか、確認をしてみてください。配属に不安があるならば、ダイレクトに質問をしたほうが良いでしょう。「入社後すぐに○○職に携わることができますか?」「管理部門配属前に店舗などで研修がありますか?」「入社後すぐに管理部門に配属されますか?」のように質問すると、入社から着任までの流れが確認できます。研修目的で店舗に配属になるという回答であれば、研修期間について確認をします。曖昧な回答や1年間など長期間であれば、店舗に配属されて固定化されてしまうケースがあるでしょう。こういった企業では、面接時に募集職種の仕事内容や入社後の研修について、詳しく説明をしないことが多いので、入社後すぐに管理部門へ配属になるかどうか確認をしてみましょう。
また内定後にもらう労働条件通知書で、「就業場所」と「業務の変更範囲」もチェックを。就業場所で店舗が記載されている場合や、業務の変更範囲で疑問点があるなら、採用担当者に確認をすべきです。
このような採用を行っている企業は、転職口コミサイトで実態が書かれていることが多いです。疑念が少しでもあるようであれば、ぜひチェックをしてみましょう。
転職で「配属ガチャハズレ」を回避するには?
このような「配属ガチャ」の実態を踏まえて、転職で「配属ガチャハズレ」を避けるには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。企業選び、面接など選考段階それぞれで見るべきポイントを、解説していきます。
「勤務地ガチャハズレ」の回避:求人情報、労働条件通知書を確認
勤務地は、求人情報で確認することができます。転勤がない企業は「勤務地限定」といった記載がされています。勤務地に多くの店舗や支店などが記載されていれば、転勤があると考えるべきです。転居を伴う異動を希望しない場合は、勤務地限定の企業や、勤務地を特定したエリア採用の求人に応募しましょう。また勤務地について、内定後に労働条件通知書で確認をして、不安や疑問がある場合は、そのままにせず必ず確認しましょう。
「配属先ガチャハズレ」の回避:選考中や内定後の確認ポイントを逃さない
職種等の配属ガチャを防ぐ方法は、面接で具体的な仕事内容を確認することです。転職は職務や職種を限定して募集を行うことが多いですが、同じ「事務職」でも今の仕事と業務範囲や担当業務の比重が一緒とは限りません。よって、配属先の具体的な仕事内容について面接で確認することをお勧めします。例えば、「今回の募集業務で期待されていることは何ですか?」「○○職の仕事で重視していることは何ですか?」「○○職の1日の業務の流れについて、お聞かせください」のような形で質問すると、実際の仕事内容の具体的なすり合わせができ、ギャップを少なくできます。
選考前に仕事内容について話が聞けるカジュアル面談を行っているのであれば、自身のやりたい仕事をやれそうか、そこでも確認することができます。
内定後は、労働条件通知書で従事する業務内容に相違がないかチェックを。内定後に入社日の調整や仕事内容などの確認を行う「オファー面談」を実施している企業であれば、そこで確認できます。オファー面談を実施していない企業でも、採用担当者との面談を希望して従事する業務と配属先を確認することは可能です。
また内定後に配属部署の社員との面談を希望して、具体的な仕事内容を確認する方法もありますが、忙しいなどの理由で拒む場合は、希望しない部署に配属される可能性があります。
勤務地や職種において些細なことでも疑問や不安、配属ガチャに外れそうな懸念があるのなら、放置せず入社前に確認をすべきです。
「職種限定募集」「総合職募集」のメリット・デメリットとは?
ところで、転職においても「総合職募集」はありますが、「総合職」にもメリットはあるのでしょうか。「職種限定募集」「総合職募集」それぞれのメリット・デメリットを解説していきます。
職種限定募集のメリット・デメリット
欧米では、職務を明確に定義して契約を結ぶジョブ型雇用が多いですが、日本のジョブ型雇用は、職務を限定するのではなく職種を限定した募集も多く、職種限定を含めてジョブ型雇用と呼んでいる企業もあります。就業においては具体的にどのような契約内容になっているのか、充分に確認することが求められます。■職種限定募集のメリット
職種限定募集は特定の職種に限定した募集です。総合職募集と違い、希望する仕事に就けるメリットがあります。転職では多くの企業で職種を限定した募集が行われているため、新卒で総合職として入社したもののやりたい仕事に就けていいない場合、職種限定募集の企業へ転職をすることで、やりたいことが実践できモチベーション高く仕事ができるでしょう。
■職種限定募集のデメリット
職種限定募集は、原則として入社後は他の職種に異動になることはありません。つまり、転職先企業でキャリアアップが見込めない場合、違う仕事をやりたくなった場合でも、社内で異動が難しいケースもあります。その場合は、再び転職が必要になるかもしれません。年齢や勤続年数を加味して評価されやすい総合職募集とは違い、担当職務内で実績や成果を出せなければ、評価されづらい点もデメリットでしょう。とはいえ、結果が出せないと職種限定募集で採用されても、違う仕事に異動になることもあります。
総合職募集のメリット・デメリット
総合職募集は職種を限定せず入社後にさまざまな仕事を経験し、将来管理職や幹部候補として活躍することが期待されているケースもあります。新卒採用では実務経験がありませんので、総合職募集が多く行われています。転職では、職種や部門を限定した技術系総合職、事務系総合職としてキャリアアップするケースもあります。
■総合職募集のメリット
さまざまな仕事を経験していくことで企業全体を把握することができ、管理職や幹部として活躍が期待できます。多様な業務を進める中で、自身の適性や強みを見いだせることも。終身雇用を前提としていることが多く、昇給や昇格では、年齢や勤続年数を重視する傾向があります。
■総合職募集のデメリット
ジョブローテーションが行われたり異動があったりすることで、スペシャリストとして仕事を極めることができないことがデメリットです。中途採用では職種別のスペシャリストを募集することが多いので、転職が難しくなる可能性があります。
入社後に希望と異なる配属になったら転職すべき? とどまるべき?
転職時は希望どおりの配属となったとしても、組織変更や異動など、入社後にしばらくたって配属が変わってしまうこともあり得ます。当初やりたかった仕事ではない部署への配属となると転職を考える人も少なくありませんが、気持ちどおりに転職すべきでしょうか?転職すべきか、転職せずにとどまるべきか、それぞれの見極めポイントを伺いました。
転職を考えてもいい場合
人手不足の部署だから、という理由での異動であれば、転職を考えてみるべきです。中途採用は職種や職務で募集することが多いなか、人が集まりやすい職種で募集を行い、入社後に集まりにくい部署へ異動させる傾向が見られるのであれば、速やかに転職を考えてください。社員の職務能力や適性を考慮せず企業都合の異動なのであれば、継続して仕事をしても良いことはありません。- 転職をすることで、強みや適性を生かした仕事ができる
- 転職で仕事のモチベーションを高めることができる
- すぐに転職できるとは限らない
- 次の転職活動で、企業に「やりたくない仕事はしない」と受け取られる可能性がある
転職せずにとどまったほうがいい場合
転職後しばらくたって配属が変わる場合、急な部署異動ではなく事前に説明があるはずです。適性や能力が評価されて異動する場合や、キャリアアップのために必要な経験、叶えたいことの実現のために必要な経験など、今後のキャリアを考えて納得できるものであればとどまっても良いでしょう。ポイントは、異動が納得できるか否かです。経験を積むための異動であれば、具体的な期間や仕事内容を確認しましょう。まとめ:転職の不安を抱える方々へアドバイザーからひと言
やりたいことが実現できず配属ガチャに外れたと感じている場合や、配属された部署の仕事が業務適性不一致だと感じているならば、転職を考えることもあるでしょう。新卒採用では、総合職として採用して入社後配属先を決める企業が多いため、配属ガチャで外れることもありますが、転職は職種や職務で募集する企業が多いので、配属ガチャで外れるという現象は比較的少ないです。ただし転職でも配属ガチャはありますので、求人情報、面接、内定時に求める仕事内容・条件とマッチしているかを確認して、叶えたいことが実現できる転職を目指しましょう。何らかの理由でイメージと違う仕事内容、希望していない部署の担当になってしまった場合、ショックを受ける方もいるでしょう。ただし、マイナビ転職の調査(※2)では会社意向の異動経験者の約半数が「意外な自身の適性に気付いた」「さまざまなスキルが身に付けられる」と、メリットを感じているという結果も。前職やインターンの経験から「やりたいことと違う」「合わない」と感じている時は別ですが、もしまったく経験したことのない領域であれば、少しお試しでやってみるのも悪くないかもしれません。
文:ミーツキャリア編集部
【出典】
※1 マイナビ転職『新入社員の意識調査(2024)』
※2 マイナビ転職『ジョブ型雇用の意識調査』