上司からの評価が思うように上がらないと、努力が認められていないと感じて転職を考え始める人は少なくありません。日々の業務で努力を重ねているのに正当な評価を受けられないと、モチベーションも下がりがちです。
とはいえ、転職をすれば不満が解消できるとも限りません。転職を検討する前に、現職でできる改善策を見つけられれば、新たなステップを踏み出す前に職場環境をより良くする手段が見つかるかもしれません。
今回は、上司が変わったことで評価が下がってしまった方のお悩みを取り上げ、評価が不当だと感じた時に取るべき行動について、キャリア・コンサルタントの林 碧(はやし みどり)さんにアドバイスをいただきました。
キャリア・コンサルタント
「評価への不満」が転職のきっかけの上位に
仕事をしていくうえで、上司との関係性や上司からの評価というのはとても重要です。マイナビ転職の転職満足度調査(転職経験者700人回答)によると、11.7%の人が「上司や先輩との相性」が転職のきっかけになったと答えました。そして、評価は報酬につながる部分でもあるのですが、マイナビ転職「新入社員の意識調査2024」(※)では、仕事の理想と現実のギャップが大きい点の3位内に「働きと報酬が見合っている」「努力や貢献が賃金で評価される」が入るという結果になっています。
このように、自身の評価に対するギャップ、つまり不満に直面した時、どのように向き合い、どのように現状を乗り越えていけばいいのか? キャリア・カウンセラーの林 碧さんにアドバイスをうかがいました。
上司との相性が悪くて評価が下げられると感じる時の対処法とは?
<質問>半年ほど前に上司が変わりました。新しい上司は細かいミスを指摘する人で、評価も下げられてしまい、賞与の額が大幅に下がってしまいました。
このままの給与だとやっていけないので転職を考えていますが、転職先にも嫌な上司がいるかもしれないと思うと踏み切れません。どのようにすれば良いでしょうか。
転職する・しないを判断するためにも状況の背景を確認しましょう
林さん:「転職に踏み切れない、どうしたらよいか」とのご質問でしたので、本当に転職するべきかどうかを含めて、相談者さんは今迷っているのでしょう。その判断をするためにも、まずは今の状況となった背景を正確に捉えることが必要です。背景が分かれば今の会社で状況を改善する方法があるかどうか、またその難易度について検討ができ、あわせて転職の妥当性も確認ができます。また、自分自身を冷静に見直すことは、今後を見据えた自身の成長ポイントや、転職時に重視すべきポイントを知ることにもつながります。
転職をするにせよ、しないにせよ、状況の背景を正確に捉えることは、今後に役立つでしょう。
上司からのフィードバックをもらいましょう
林さん:背景を正確に捉えるには、評価者である上司との対話が最も有効であるといえます。「評価も下がった」とのことですが、その理由や改善点については確認済みでしょうか。今回は「細かいミスを指摘」されるようになったとの話もあり、上司がミスを重要視している可能性は高そうですが、それ以外の要因が評価の低下につながっているケースもあります。また、もし記載にあったようなミスが直結している場合は、相談者さんにとっては細かいミスでも、上司にとっては重要で看過できないミスだということです。
ご相談内容から、相談者さんはそのミスが重視される理由まで確認できていない、あるいは話された理由に納得できていない状況にあるのだろうと感じています。ただ、評価に不満があるのであれば、改めて確認する必要がありそうです。
まずは「評価に対してのフィードバック」として、1対1で対話する時間をもらってみてはいかがでしょうか。その時間のなかで、自分に対する期待値や達成度、上司から見た改善点について、すり合わせしていけるといいでしょう。
評価の理由を知ることが重要
林さん:確認時にはその理由も含めて聞くようにすることが大切です。評価については会社ごとに一定の基準がある一方で、同じ評価項目であっても、上司のこれまでの経験や仕事における価値観の違いから、何をもって評価するかはそれぞれ異なるものです。上司の考え方を知ることで、評価が下がった要因や評価の回復方法がわかりますし、自分にとっての難易度も含めて検討が可能となります。また今回のご相談を見ていて、相談者さんと上司の間に普段から会話があるのか、やや気になりました。日頃からコミュニケーションをとっていると、互いの価値観や得意不得意の理解につながり、仕事も進めやすくなります。対話不足が要因の場合は、改めて面談を持つことで双方からの相手に対する理解が深まり、状況が一気に改善するケースも多くあります。
状況にあわせて周囲や専門家の力も借りましょう
林さん:ここまで「まずは上司と対話しましょう」とお伝えしましたが、一方で今の状況を踏まえると、相談者さんが上司に強い苦手意識をお持ちである可能性も感じます。1対1でのフィードバックを得るのが一番かとは思いますが、それが難しい、あるいはそれは耐えられないほどの負荷であると感じる場合、周囲の力を借りての現状理解からはじめてもいいでしょう。例えば、周りで働いている同僚が認識している上司の価値観や仕事上の重視点を確認することもできるでしょうし、ご自身に対して同僚目線からのフィードバックをもらうことも方法の1つです。あるいは自分を評価してくれていた前の上司に相談することで、見えてくることもあるかもしれません。
人事部もリソースの1つです。面談機会をつくるにあたって人事部などに間に入ってもらうこともできるでしょうし、人事が聞いている評価を確認するという方法もあります。また、自社の評価基準や異動申告の制度などの情報源としても有効です。
自分が活躍するために必要なことを整理しましょう
林さん:前の上司の時には評価を得られていたのですから、相談者さんのいい部分も多くあるはずです。どういう部分が評価されやすくどのようなことを苦手とするのか、自身のスキルや特性について、集まった情報をもとに「活躍しやすい条件」として整理しておきましょう。また「このままの給与だとやっていけない」の部分も、いくらであれば安心できるのか、理想と最低条件を確認してみてください。ファイナンシャルプランナーなどの専門家の力を借りるのもおすすめです。
これは今だけではなく、5年後、10年後といった長期で考えられるといいでしょう。どれくらいの期間であれば今の条件でも生活を維持可能なのか把握しておくと過剰な不安が解消され、今後にむけて冷静な選択ができるようになります。
あわせて、自分自身の改善ポイントについても冷静に振り返りましょう。たいていのケースにおいて、自身にも改めるべき点があるものです。コミュニケーション・スキル・マインド、それぞれの観点で同じことを繰り返さないために、意識するべきことや成長するべき点を確認しておくことで、同じ状況に陥る可能性を大幅に下げることができます。
取り得る選択肢を洗い出し、整理していきましょう
林さん:現状の背景と自分自身についての確認を行ったうえで、今後について検討を進めましょう。取り得る選択肢について、今一度確認してみてください。今の部署に残ることと転職すること以外に、異動など第三の選択肢があるかもしれません。選択肢が出揃ったら、それぞれを選んだ際のメリットとリスク、その場合に求められる行動を確認してみましょう。今の職場に残ることのメリットはありますか。残る場合、評価回復にむけての行動とその難易度はいかがでしょうか。現体制はどれくらいの期間維持されるのかも、考慮すべきポイントの1つです。
転職や異動という選択肢の場合、先ほど確認した「活躍に必要な条件」も照らして考えたいところです。選択肢の量や実現可能性、難易度も検討しましょう。転職活動に踏み切る場合、選考時に確認するべきこともあらかじめ整理しておきたいですね。
どんな選択でもリスクはあるものです。並べて検討したうえで、ご自身にとって最も納得感の高い選択ができるとよいでしょう。そしていずれを選択しても、現状を打破するには何らかの行動をとることが必要不可欠となります。
「評価されない」は、さらなるステップアップのチャンス
林さん:今の状況は相談者さんにとって、とても苦しい状況かと思います。一方で、現状を振り返り、自分を見つめ直す機会にすることで、より評価される社会人となるための成長ポイントの理解や、自分にとっていい環境に身を置くことにつながります。この経験を苦しいだけのものにして終わらせないためにも、ぜひ一歩踏み込んだ行動をとり、成功体験に変えていただけたらと思います。
まとめ:現状改善が見込めなければ転職も視野に
上司からの評価に不満を感じた時、転職はひとつの選択肢ですが、まずは現状を改善できるかどうかを検討することを怠らないようにしましょう。自己評価と上司の期待にギャップがある場合、それを埋めるための行動やアプローチが見つけられるかもしれません。それでも職場での改善が難しい場合は、転職準備を進めることで自分に合った環境や役割を見つける一歩となります。冷静に現状を分析し、自分にとって最適なキャリアを築いてください。
文:ミーツキャリア編集部
【出典】
※ マイナビ転職『新入社員の意識調査(2024)』