
「35歳を過ぎたら転職は厳しい」──そんな言葉を耳にしたことはありませんか?
実際、転職市場では「35歳転職限界説」と呼ばれる考え方が根強く残っていると感じる方もいるようです。
けれど、40代・50代になった今だからこそ、「これまでの経験をどう活かすか」「これからどう働きたいか」を見つめ直す機会になることもあります。
実際に、マイナビ転職の「転職による年収アップの実態調査」では40代の39%、50代の33.5%が転職によって年収アップを実現したという結果も報告されています。

年齢を重ねたからこそ築いてきた経験やスキルが、企業にとって価値あるものとして評価されるケースも少なくありません。
本記事では、ミドル世代が転職に向き合う際の不安や課題、そして“納得できるキャリア”を築くためのヒントをお届けします。
解説はキャリアコンサルタントの林碧先生です。
林 碧(はやし みどり)
株式会社キャリアイズ 代表取締役社長、国家資格キャリアコンサルタント・キャリアコンサルティング技能士2級、両立支援コーディネーター。 企業人事経験および個別相談対応経験を活かし就職・転職の相談からライフキャリアビジョン構築、育児・傷病など個別事情との両立まで、幅広い相談に対応。通算4000件以上の個別面談実績、年100件以上の研修登壇実績を保有。特に若年層のキャリア形成支援を得意とし、大学での登壇実績が豊富である他、企業向けの育成者研修や若手定着支援、人材コンサルティングも実施。日経Xwomanアンバサダー。小学生2児の母。
- 「40代・50代の転職って実際どうなの?」──広がる選択肢とリアルな現実
- 「不安の正体」はここにある──転職に踏み出せない3つの理由と向き合う
- 「年齢=キャリアの深み」──活かすべき経験と、伝え方のコツ
- 「どこで、どう探す?」──求人の見極めと“再スタートに向いている場所”
- 「これまでと、これからをつなぐ転職を」──変わる勇気と、“今”動く意味
「40代・50代の転職って実際どうなの?」──広がる選択肢とリアルな現実
「もう若くないし、今さら転職なんて……」そうおっしゃる40代・50代の方とお話をする機会がよくあります。責任あるポジションを任されていたり、家庭の事情で制約があったり。転職を考えること自体が、ちょっと気恥ずかしく、勇気が要るというケースもあるでしょう。
でも実は、今まさに“第二のキャリア”に踏み出す人が増えているのです。コロナ禍を経て「働き方」や「これからの暮らし方」を見直した結果、もう一度、自分らしく働ける場所を探したい──そんな想いで一歩踏み出す人が多くいます。
一方で現実は、決して甘くはありません。
「求人の数が少ない」「面接で年齢を気にされているような気がする」……そんな声があるのも事実です。
けれど、ここで大切なのは「年齢そのもの」が問題なのではなく、“どんな形で経験を伝えるか”が、採用可否を左右する時代になっているということ。
変化の多い現代だからこそ、柔軟に動けるミドル層の価値が見直されています。
転職市場では、年齢ではなく、“今後の関わり方”や“貢献できる具体性”を重視する企業も増えています。
「不安の正体」はここにある──転職に踏み出せない3つの理由と向き合う
「転職したいけれど、やっぱり怖い」。そんな気持ちは、とても自然なことです。これまでキャリアを築いてきたからこそ、そして背負っているものがあるからこそ、簡単には動けないのだと思います。
実際、40代・50代の方が転職に二の足を踏む理由は、大きく分けてこの3つに集約されることが多いです。
理由1.この年齢で雇ってもらえるのか不安
年齢が高くなるほど、即戦力や専門性を求められる傾向があるのでは?と感じる方も多いです。ですが、最近では“実務の腕”だけではなく、「部下との関わり方」「現場の潤滑油的な存在」「後進育成への姿勢」など、“周囲と協働できる力”に注目する企業も増えています。
理由2.家庭や体力の事情で、フルコミットできない
たとえば、介護や子育てなどを理由に「前のようには働けない」と悩まれる方も。ですが、働き方の多様化が進む今は、フレックス制度や週休3日勤務のある職場も増えており、「自分にできる範囲で貢献したい」という意思が伝われば、柔軟な選択肢が見えてくるケースもあります。
理由3.自分には“取り柄”がないように感じる
これまで積み重ねてきた経験があるにもかかわらず、「特別なスキルはないし…」と口にされる方も多くいらっしゃいます。ですが、現場で当たり前にやってきた「誰かの意見を丁寧に聞く」「ミスが起きたときに落ち着いて対応する」などの姿勢や対応力も、現代の組織で求められている“スキル”のひとつです。
不安は、“ないほうがおかしい”もの。でも、その不安の正体を丁寧に見つめ、言葉にすることができれば、少しずつ前に進むことができます。
キャリアとは、昨日までの自分と、今日これからの自分をつなぐ道でもあるからです。
「年齢=キャリアの深み」──活かすべき経験と、伝え方のコツ
「40代・50代になったら、即戦力でなければ採用されない」そう思っている方は多いかもしれません。でも、企業が“ミドルシニア世代”に求めているのは、必ずしも「最新スキル」や「スピード感」ばかりではありません。
むしろ大切なのは、“経験からくる安定感”や“状況に応じた判断力”といった、時間をかけて培ってきた力です。
たとえば、こんな経験はありませんか?
- 部下が失敗したとき、頭ごなしに叱るのではなく、一緒に考えながら支えた
- 上司と現場の板挟みになりながらも、丁寧に調整し続けた
- 縁の下で、日々の運営を支える存在として信頼されていた
こうした経験は、履歴書には一言では書けないけれど、実は“働く力”そのものなのです。
大事なのは、「自分はすごくない」と思わずに、“自分なりにやってきたこと”を、誰かに伝える準備をすること。
たとえば、自分のキャリアを棚卸しする際には、こんな視点が役立ちます。
●【行動】具体的にどんなことをしていた?
●【結果】その行動で、どんな影響を与えた?
この3つをメモに書き出すだけでも、自分の言葉で語れる「仕事の軸」が見えてくるはずです。
「どこで、どう探す?」──求人の見極めと“再スタートに向いている場所”
いざ転職を考え始めると、「求人がなかなか見つからない」という壁にぶつかることも。特に、年齢を重ねたあとでは「自分を必要としてくれる場所があるのか」と不安になりますよね。
けれど、視点を少し変えると、選択肢は広がります。
たとえば、40代・50代を歓迎する企業では、次のようなポイントを重視していることがあります。
- 組織に安定感をもたらしてくれる
- 若手の育成を任せられる
- トラブル時に“人としての対応力”を発揮してくれる
実際、中小企業や地域密着型の企業では、若年層だけでなく経験豊かな世代を歓迎しているケースも少なくありません。
また、再就職支援制度や自治体のプログラム、ハローワークのミドル向けセミナーなども、意外と頼りになります。
さらに、「転職だけが道ではない」ことも、今の時代ならではの選択肢です。
- 現職にいながら副業・兼業で別のチャレンジをしてみる
- 地域活動やボランティアから自分の可能性を再発見する
- 学び直しで新しい視点を取り入れる
それ以外にも自社のなかで新しい関係性を築いてみたり、新たな仕事に挑戦したりすることで、糸口が見つかった、というケースも多いです。
キャリアの築き直しには、「いったん立ち止まって視野を広げる」ことが、何よりの近道になることもあります。
「これまでと、これからをつなぐ転職を」──変わる勇気と、“今”動く意味
転職を考えるとき、「今のキャリアを捨てるようで、もったいない」と感じる人もいるかもしれません。でも、転職は“これまでをなかったことにする”ためではなく、“これからを自分らしく生きる”ための手段です。
これまでの経験は、どんな仕事についたとしても、必ずどこかで活きてきます。
むしろ、その「経験をどう活かしたいのか」を自分で選び取ることができる。
それが、ミドルシニア世代の転職のいちばんの強みかもしれません。
迷っているなら、まずは小さなアクションからでも構いません。
- 自分のキャリアをメモに書き出してみる
- 気になる求人サイトに登録してみる
- 誰かに相談してみる
今日の小さな一歩が、半年後のあなたの景色を変えるかもしれません。
——最後に。年齢は、マイナスではなく、“深さ”です。
40代、50代という時期にこそ、自分の価値を丁寧に見つめ直す機会が訪れるのだと思います。
「この歳で、なんて」とためらう気持ちも、「この歳だからこそ」と言い換えてみたら、少しだけ未来が近づいてくるかもしれません。
ぜひ、今の自分ができる小さな一歩を踏み出して、未来を良くしていける方が増えることを願っています。
「経験を活かして、もう一度輝く」——そんな転職先を探してみませんか? 40代・50代の転職で年収アップを実現した方も。あなたのキャリアを必要としている企業が、きっとあります。
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文・マイナビ転職編集部
出典・【転職による年収アップの実態調査】転職で年収アップした人は4割。30代の約5人に1人は100万円以上の年収アップに成功
