
──最近、仕事に対してやる気が出ません。
業務はこなしているし、上司からも特に何か言われているわけではないのですが、心の中では“ただ流されているだけ”という感覚があります。
昔はもっと前向きに働いていた気がするし、成果を出すことにやりがいを感じていたはずなのに、今は“早く終わらないかな”とばかり思ってしまいます。
転職したい気持ちも少しあるけれど、今の職場に不満があるわけではないし、辞める理由がはっきりしないまま動くのも怖いです。
こういう状態って、転職を考えるべきなんでしょうか?それとも、もう少し今の職場で頑張るべきなんでしょうか?
仕事のやる気が出ない──そんな状態に陥ったとき、私たちはどう行動するべきなのでしょうか。
必要最低限の業務はこなせているし、職場に大きな不満があるわけでもない。
ただ、あと一歩がんばれなくて、やらなきゃいけないことがずるずる後ろ倒しになる。報連相をさぼってしまう。成績が落ちている。同期と差が開いている……。
この状態を放置すると、キャリアや人生に悪い影響が出てしまうのではないか。
働き方やキャリア観が多様化している時代だからこそ、そんな不安を感じる方は少なくないと思います。
いっそ転職して環境を変えたら、このもやもやを脱却できるだろうか。でも、モチベがないままでも今なんとかなっているし。わざわざ転職するようなこと?──今回の記事では、読者のお悩みをもとに、キャリアコンサルタントの林碧先生に「仕事のやる気が出ない」状態の背景と、現職にとどまるか転職を選ぶかを判断するヒント、そして意欲を取り戻すための具体策を伺いました。
林 碧(はやし みどり)
株式会社キャリアイズ 代表取締役社長、国家資格キャリアコンサルタント・キャリアコンサルティング技能士2級、両立支援コーディネーター。 企業人事経験および個別相談対応経験を活かし就職・転職の相談からライフキャリアビジョン構築、育児・傷病など個別事情との両立まで、幅広い相談に対応。通算4000件以上の個別面談実績、年100件以上の研修登壇実績を保有。特に若年層のキャリア形成支援を得意とし、大学での登壇実績が豊富である他、企業向けの育成者研修や若手定着支援、人材コンサルティングも実施。日経Xwomanアンバサダー。小学生2児の母。
- 「静かな退職」とはどんな状態?
- やる気が出ないとき、まず考えるべきこと
- 静かな退職の落とし穴──“守り”が奪うもの
- 転職か現職かを判断するヒント
- 静かな退職から抜け出す5つの方法
- まとめ──未来の自分のために立ち止まる勇気を
「静かな退職」とはどんな状態?
あなたが感じている「ただ流されているだけ」という感覚は、近年注目されている「静かな退職(Quiet Quitting)」に近いかもしれません。「静かな退職」とは、実際に辞めるのではなく、やりがいやキャリアアップを追求せず、“決められた仕事を淡々とこなす”働き方を指します。残業を避け、必要以上の努力や挑戦をしない──そんなスタンスです。
「そんな考え方は許されない」と憤慨する方もいるでしょう。しかし、背景には「これ以上無理をしたくない」「健康や家庭を優先したい」といった思いが隠れていることがあります。あるいは「努力しても報われなかった」「挑戦の機会が与えられない」という失望感から、心が守りに入っているケースもあります。
つまり静かな退職は、怠けや甘えではなく、働く人が自分を守るために取る自然な防衛反応と捉えることもできます。

実際、日本でもこの状態に当てはまる人は増えています。マイナビが実施した「正社員の静かな退職に関する調査」では、正社員の44.5%が「自分は静かな退職をしている」と回答したそうです。決して一部の人の問題ではなく、多くの人に共通する課題だと分かります。
つまり、「やる気が出ない」と感じているのはあなただけではありません。むしろ今の時代を生きる多くの人が直面しているテーマなのです。
やる気が出ないとき、まず考えるべきこと
まず大切なのは、「やる気が出ない自分」を責めすぎないことです。キャリアのどの段階でも、人は必ずモチベーションの波を経験します。体調や家庭の事情、ライフイベント、季節による気分の変化──要因はさまざまです。常に全力で前向きでいることは、むしろ不自然とも言えるでしょう。
ただし、やる気の低下が一時的なものなのか、長く続いているものなのかを見極めることは必要です。
短期的な疲労や一時的な倦怠感なら、休暇や趣味の時間でリフレッシュすることで改善することがあります。
一方で、半年以上続いている場合は注意が必要です。これは心や体から「このままでは長期的に持たない」というサインかもしれません。
このサインを見過ごすと、やる気の低下が「静かな退職」へとつながり、キャリアや人生全体に影響を及ぼすこともあります。
静かな退職の落とし穴──“守り”が奪うもの
静かな退職にはメリットもあります。過剰な働き方から距離を置き、健康や家庭を守れることは大切です。短期的には「燃え尽き症候群」から自分を守る働き方にもなり得ます。
大切にしたい要素が仕事外に大きくあるとき、心身の状態が崩れているタイミングなどでは有用であると言えるでしょう。
しかし、それを長く続けると大きなデメリットが現れます。
まず挙げられるのは、成功や成長の機会を逃すことです。周囲から「意欲がない人」と見られると、新しい仕事や研修のチャンスが回ってこなくなります。その結果、実績不足に陥り、将来的な転職や昇進の選択肢を狭めてしまいます。
さらに「この程度でいい」という感覚が続くと、自己肯定感が下がり、仕事以外の場面でも意欲が持ちにくくなります。小さな成功体験の積み重ねが減るからです。気づけば「頑張れない自分」が固定化してしまうリスクもあります。
また、人間関係の希薄化も避けられません。積極的に動かないことで同僚や上司との接点が減り、孤立感が増すことも。社会的なつながりの不足は、メンタルヘルスや健康リスクにも直結します。
つまり「守りに入る選択」は、短期的には安心をもたらしても、長期的には人生の豊かさを奪いかねないのです。
転職か現職かを判断するヒント
では、静かな退職をしているなら「すぐに転職したほうがいいのか」といえば、必ずしもそうではありません。例えば、人間関係が極端に悪化しているようなケースや、心身に明らかな不調をきたしている場合は転職を積極的に選択するべきといえるでしょう。
ただ、今回のご相談者のように、仕事内容や人間関係に大きな不満がない場合は、改善の余地が残されています。むしろ「環境を変える」前に、「自分にとって何が不満で、何が満たされていないのか」を探ることが先決です。
転職は大きな環境変化であり、リスクも伴います。条件面だけを求めて転職しても、根本的な課題が解決しなければ再び同じ壁にぶつかる可能性があります。
だからこそ、「今の職場でできる工夫」を試したうえで、転職を選ぶことが望ましいのです。
たとえば──
• 頑張れていた頃と比べて、何が変わったのかを振り返る
• 当時はどんな瞬間にやりがいを感じていたかを思い出す
• 今の業務や関係性に、改善できる余地はないかを探す
こうした問いを通じて、自分が本当に求めているものを整理できれば、「転職すべきか」「現職で工夫できるか」の判断もしやすくなるでしょう。
勿論、工夫を試しても改善が見られないというケースもあるかと思います。そのような場合はこの転職にて何を取り戻すのか、どんな姿になるために転職をするのかを明確にした上で、前向きに転職を選択するといいでしょう。
静かな退職から抜け出す5つの方法
ここからは、意欲を回復させるための具体的なアプローチを紹介します。1.仕事の意味を再確認する
「誰のために」「何のために働いているのか」を振り返ることは、意欲を呼び戻す強いきっかけになります。生活を支えるため、家族のため、社会に貢献するため──理由は人それぞれですが、その原点を再認識しましょう。
2.小さな目標を立てる
大きな成果を追う必要はありません。「今日はここまで終える」「一週間で新しい知識をひとつ身につける」など、達成可能な目標を重ねることが自己効力感の回復につながります。
3.信頼できる人に話す
悩みを打ち明けることで気持ちが整理され、「意外と自分は頑張れている」と気づけることがあります。特に同僚や友人は、自分では気づきにくい長所を教えてくれる存在でもあります。
4.働き方を工夫する
タスクの順番を変える、効率的なツールを取り入れるなど、小さな工夫で負担感は大きく変わります。単調さや非効率さが意欲低下の原因になっている人には効果的です。
5.新たな関係性をつくる
リスキリングや社外コミュニティの活用で、新しい仲間や刺激を得るのも有効です。人との関わりや学びは、日常に新しい意味づけをもたらします。
まとめ──未来の自分のために立ち止まる勇気を
「やる気が出ない」という感覚は、心と体からの大切なサインです。無理やり前向きになる必要はありません。ただ、そのサインを受け止めずに放置すると、人生の選択肢を狭めてしまうかもしれません。
静かな退職を選ぶ自分に向き合い、改善の工夫を試す。そのうえで必要なら、転職という新しい道を選ぶ。どちらにせよ「立ち止まって考える」こと自体が、未来のあなたを助けます。
今の迷いは、決してあなただけのものではありません。大切なのは、その迷いをどう活かすか。
未来のあなたが「あのとき、自分と向き合ってよかった」と思える日が来ることを願っています。
やる気が出ない理由は、環境のせい? それとも自分の価値観の変化?
迷ったときは、まず“自分を知る”ことから始めてみませんか。
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制作・マイナビ転職
【出典】
マイナビ「正社員の静かな退職に関する調査2025年(2024年実績)」
