“最近の若者”は本当に意欲がない?——世代を超えてチームワークを育むための3つの視点

若手に仕事を任せると、必要最低限のことはやるのですが、自分から提案したり主体的に動く姿があまり見られません。
“もう少し積極的に動いてほしい”と思う一方で、言い方を間違えるとハラスメントになってしまうんじゃないかと不安にもなります。
自分たちの時代とは働き方も価値観も変わっているのだろうなと思いながらも、今の若手にはどんな関わり方が合うのかつかみきれず、悩んでいます。

今回の相談者の方のように、若手に「意欲がないのでは」と感じつつも、時代背景の違いを理解しようとするミドル層の戸惑いは、決して珍しくありません。

実際、40代管理職の悩みとして挙げられた1位は「ハラスメントと言われるのを避けたい」ということ。

「部下に言いたいことがあっても我慢している」の回答も高く、まだ「働き方の多様性」「過度の労働の弊害」「ハラスメント」という概念がない時代に「厳しい下積み」を経験した方は特に、後輩や部下の指導にあたりジレンマを抱えることも少なくないでしょう。

自身が若手だったころの姿を重ねて「最近の若者は」という言葉がつい出そうになる。それをぐっと堪えて指導や業務にあたる。そのような努力はもちろん素晴らしいのですが、この葛藤を繰り返し続けるというのは、なかなか苦しいものがあります。

そこで、今回の記事では、キャリアコンサルタントの林碧先生に

・なぜ世代間で意識のズレが生まれるのか
・自身も伝えたいところを伝え、若手が能力を発揮しやすくなる関わり方のヒント

を解説いただきました。

「若手との距離感が難しい」と感じているミドル層の方にとって、日々のコミュニケーションのヒントになれば幸いです。

キャリア・コンサルタント

林 碧(はやし みどり)
株式会社キャリアイズ 代表取締役社長、国家資格キャリアコンサルタント・キャリアコンサルティング技能士2級、両立支援コーディネーター。 企業人事経験および個別相談対応経験を活かし就職・転職の相談からライフキャリアビジョン構築、育児・傷病など個別事情との両立まで、幅広い相談に対応。通算4000件以上の個別面談実績、年100件以上の研修登壇実績を保有。特に若年層のキャリア形成支援を得意とし、大学での登壇実績が豊富である他、企業向けの育成者研修や若手定着支援、人材コンサルティングも実施。日経Xwomanアンバサダー。小学生2児の母。

「最近の若者は…」と言いたくなる気持ちも、実はよくわかる

キャリア支援の現場で上司・先輩世代の方とお話ししていると、時折こんな声を耳にします。

「最近の若手、仕事に対してガツガツしていない気がする」
「もう少し積極的に動いてほしいんだけど……」
「言われたことはやるけれど、その先の一歩が出てこない」

仕事を任せる立場からすれば、そう感じる瞬間も多くあるでしょう。

ですが、ここでひとつ立ち止まって考えてみたいのです。
若手は本当に “意欲がない” のでしょうか。

マイナビが行った「2026年卒 大学生キャリア意向調査3月<就活生のワークライフバランス意識>」では、必ずしも、若手に“意欲がない”とは言えない、 “意欲の出る条件が変わっているだけ”かもしれないことも見えてきました。

この記事では、世代間ギャップの正体をキャリア支援者の視点から改めて整理し、
若手の力が発揮されやすくなる関わり方について解説していきます。


視点1:データで見る「若手の価値観」——“ワーク重視”で意欲はむしろ高い

「若手は仕事への意欲が低く、プライベートの充実を求めている」――本当にそうでしょうか?

マイナビが行った「2026年卒 大学生キャリア意向調査3月<就活生のワークライフバランス意識>」にて「年代ごとのワークライフバランス意識」について調査を行った結果、20代の57.7%が「ワーク重視」と回答している他、40代以降では「ライフ重視」が高まる傾向の回答がありました。

この結果だけを見ると、
「若手のほうが実は仕事に前向きなのでは?」
と感じる方もいるかもしれません。

実際、「プライベートを優先したい」という若者も一定数いる一方で、「仕事で経験を積み上げたい」「将来の選択肢を広げたい」という志向性の若者も多くいる、この事実はまず知っておいてほしいことです。

そして、もうひとつ。ここで誤解したくないのは、
“ワーク重視=長時間働きたい”という意味ではないこと。

むしろ若手は、

• 自分の強みが活かせているか
• 成長実感があるか
• 働く目的を理解できているか

といった “中身の質” を重視する傾向があります。

つまり、

働くことへの意欲そのものはある。
ただ、意欲が湧くポイントが、上の世代と少し違うだけ。

ここが、世代間ギャップを生む大きな要因のひとつです。

視点2:ギャップの正体は「価値観」ではなく“育ってきた前提の違い”にある

世代間ギャップは、「価値観の違い」というよりも、
“経験してきた環境の違い” がつくるものです。

ここでは、一般的な傾向として、それぞれの世代が置かれていた環境を整理します。

上の世代(団塊ジュニア〜40代)が経験してきた環境(一般論) 1長時間労働が当たり前の時代に働き始めた 2「仕事中心」が社会のスタンダードだった 3「とにかくやってみろ」で成長していくことが多かった 4経験を積むためなら多少の無理も許容されやすかった
この経験から、
“頑張り=時間や量で示すもの”
という前提が育ちやすいと言えます。

若手(Z世代〜若いミレニアル)が置かれている環境(一般論) 1働き方改革・ハラスメント防止が制度化された後に社会に出ている 2SNSで多様な働き方が可視化される中でキャリアを考えている 3物価上昇・将来不安など“自分の人生をどう設計するか”の圧が強い 4「やりがい搾取」「無理な働き方」への警戒心が強い
この環境では、
“頑張り=質や成果、納得感で示すもの”
という前提が育ちやすくなります。

つまり、「意欲がない」のではなく“意欲のスイッチが違う”だけ。

上の世代は、「自分がしてきた頑張り方(時間・量)」を基準に見がち。
若手は、「意味・成長・自己理解(質・納得)」を基準に考えがち。

この“前提の違い”が、「最近の若者は…」という誤解を生んでいることが多いのです。

だからこそ、この“前提の違い”を理解したうえで、若手が力を発揮しやすい環境や関わり方を考えていくことが重要になります。

こうした違いは世代間に限られるものではなく、同じ世代の中でも、育ってきた背景や大切にしている価値観は一人ひとり異なります。

世代というラベルでくくるだけでは、目の前の相手の理解は十分ではない場合もあるのです。

視点3:世代を問わず意欲を引き出す職場づくり——3つのポイント

ここからは、キャリア支援の現場でもお話をしている、若手の意欲を引き出す3つの環境要因を紹介します。

改めて自分の指導の仕方や職場の環境を思い出しつつ、確認していきましょう。

1.「何のためにやるのか」が伝わっている

若手世代は、「意味や価値」を大切にする方が多い傾向がある、と言われています。ですから、「目的」を理解すると一気に動きやすくなります。

• どうしてこの仕事が必要なのか
• チームにどんな価値をもたらすのか
• 自分が担う役割は何か

ここが曖昧だと、行動が“ただの作業”になり、意欲が湧きにくくなります。

ポイント:指示の際に「目的」や「もたらす価値」が認識できるよう、工夫しているか?

2.“小さな成長”が可視化されている

実は、これは若手世代に限った話ではないのですが、「成長を実感」できることは、ウェルビーイングの観点からも、働く上での満足度を高めると言われています。

成果が見えにくい仕事でも、

• 昨日よりできたこと
• 任せる範囲が広がったこと
• 他者からの貢献フィードバック

など、小さな成長実感が得られると、自己効力感が高まり、次の挑戦につながりやすくなります。

ポイント:個々の成長点に意識を向け、本人が自分の成長を実感できるよう、工夫しているか?

3.試せる「余白」がある(心理的安全性)

若手世代の傾向として、失敗することに対しての否定的な反応が強いことが知られています。

失敗した瞬間に強い自己否定を感じやすい傾向があることや、そもそも失敗する可能性があることを避けたいと感じる人がこれまでの世代より多いということがわかっています。

とはいえ、仕事でも、それ以外でもそうですが、最初から全てがうまくいく保証などありませんし、うまくいかないことを試行錯誤する中で、スキルを獲得・定着させ、出来る事を増やしていくのが、人間というものです。

だからこそ、

• まずやってみようと言える空気
• 失敗した時に一緒に振り返る姿勢
• 完璧ではなく“改善”を重視する関わり

を用意し、失敗に対しての心理的なハードルを下げることが重要と言えるでしょう。

このような安心がある環境づくりができると、試行錯誤が増え、行動量も自然と伸びます。

ポイント:失敗を許容できる空気があり、試しに挑戦しやすい環境を作れているか?

上司・先輩としてできる関わり方——“決めつけ”から“対話”へ

人の価値観は、育った環境や受けた教育など、それまで経験してきたことなどによって、育っていくもの。

世代間の差は、その背景の差の違いから生まれる“あたりまえ”の差によるものです。

ただし、現代の若者はその「経験」自体が多様になっており、その結果、持つ価値観もまた、多様になりつつあるとも言えるのが現状です。

だからこそ、「この世代」というくくりで一般化せず、「目の前の相手」をしっかりと見ることが求められてきます。

コミュニケーションをとる際の3つのポイントを、最後にもう一度整理しておきます。

1.ラベリングではなく“行動レベル”で伝える

「最近の若者は〜」ではなく、「この場面で、こうしてもらえると助かる」と、具体的な行動で伝える。

「意味や価値」と「具体的な行動のリクエスト」をセットで伝えると、仕事の進め方に対するギャップは埋まりやすくなります。

2.“どうしたいか”から対話を始める

若手には「あなたはどう思う?」という質問が意欲のスイッチになることが多いです。

ただし「どう?」と広すぎる問いだと答えにくいので、テーマを絞って聞くのがポイント。

• この仕事のどこにやりがいを感じてる?
• 今、どこで難しさを感じてる?
• どんな働き方が理想に近い?

などの質問をするのもひとつの方法ですし、
「1.ラベリングではなく“行動レベル”で伝える」のリクエストの前段で「●●、と思うけど~~さんはどう思っている?」など、今とる行動の背景にある思いを聞いておくのも、意図を持っての積極的なアクションを呼び起こすことに繋がります。

3.価値観の違いをあえて言語化してみる

自分が相手の背景を理解出来ていないのと同じように、若手もまた、上の世代の価値観の背景を知らないというのが現状としてあります。

「自分の若い頃はこうだったけど、今はどう感じてる?」とオープンに話すことで、期待されている動きと自分の動きの差異を知るきっかけを若手にもたらすことが出来ます。

もちろん、「昔は●●だったからあなたも●●してほしい」、と一方的に伝えたところで、若手は決して納得しません。

ただ、相手の背景を知り、そのうえでの対話があることにより、歩み寄りは生まれていきます。

自分の価値観を伝えることが相手の価値観を引き出すことにもなり、コミュニケーションの摩擦を減らすことにもなるのです。

違和感を抱え込むのではなく、対話を通して解決する姿勢が、今の時代の若手指導では求められていきます。

“最近の若者”ではなく、“今ここにいるこの人”を見る

データを見ると、若手の多くは「仕事そのものには前向き」 という姿勢を持っています。

もし意欲が低く見えるとしたら──それは “意欲を引き出す条件が変わっているだけ” かもしれません。

だからこそ、

• 時代背景
• 育ってきた環境
• 承認や価値観の構造
• 仕事への意味づけの違い

これらの前提を一度整理してから対話をすると、世代間のすれ違いは大きく減っていきます。

世代の違いを「ズレ」と捉えるか、「多様性」と捉えるか。

その違いが、職場の空気や若手の成長スピードに大きく左右します。

“最近の若者”ではなく、“今ここにいる、この一人” を丁寧に見ること。それが、チーム全体の力を引き出す第一歩になります。


制作:マイナビ転職編集部


キャリアトレンド研究所バナー
今日の学びをX(旧 Twitter)にメモ(読了メモ)
このエントリーをはてなブックマークに追加