
「最近、疲れが抜けにくい」「このまま今の働き方を続けて大丈夫なのだろうか」
そんな違和感を抱えながら働いている人は、決して少なくありません。
マイナビ転職が実施した「キャリア危機に対する意識調査」でも、今後起こりそうなキャリア危機として「健康問題(怪我や病気、精神的な不調)」が上位に挙げられています。

多くのビジネスパーソンが、心身の状態とキャリアの継続について、少なからず不安を感じているということです。
ただ、不安はあるものの、「何から手をつければいいのかわからない」「まだ大丈夫なはずだ」と自分に言い聞かせながら、日々をやり過ごしている人も多いのではないでしょうか。
今回は、健康やメンタルの問題でキャリアから離脱しないために、日頃から意識しておきたい視点と、「相談してもいい」と思える状態をつくるヒントを整理していきます。
キャリア・コンサルタント
- キャリアを築くうえで、健康は“土台”である
- 自分は何を理由に健康不安を感じているのかを見つめる
- 身体的な負荷が高い場合に考えたいこと
- 精神的な負荷が高まっている場合の対処法
- 不調を感じたときは「対話」という選択肢を持つ
- 小さな不調を大きく育てないために
- キャリア離脱を防ぐために
キャリアを築くうえで、健康は“土台”である
キャリアを考えるとき、スキルや経験、実績といったものに目が向きがちですが、それらを支えているのが「健康」という土台です。近年はウェルビーイングという考え方が広がり、働く人の幸福度を考えるうえでも、健康は重要な要素として位置づけられるようになってきました。健康が損なわれると、判断力や集中力が落ち、これまで問題なくこなせていた仕事が急に重く感じられることがあります。
重要なのは、不調はある日突然起こるものではなく、多くの場合、小さな違和感の積み重ねとして進行するという点です。バーンアウト(燃え尽き症候群)*1も同様に、段階的に進行していくことが知られています。
「最近、以前よりも疲れやすい」「仕事のことを考えると気持ちが重い」
こうしたサインは、“今のやり方を少し見直したほうがいい”という合図かもしれません。キャリアを長く続けるためには、結果を出すことと同じくらい、回復の設計を持つことが大切です。
「バーンアウト(燃え尽き症候群)」に関する記事はこちら
meetscareer.tenshoku.mynavi.jp
自分は何を理由に健康不安を感じているのかを見つめる
一口に健康不安と言っても、その背景は人それぞれです。労働時間の長さ、責任やプレッシャーの増大、身体的・精神的な不調を感じながらも受診や相談を後回しにしている状態などが重なり、「何となくしんどい」「このままではいけない気がする」という感覚につながっているケースは少なくありません。
大切なのは、不調を「気合で乗り切るべきもの」として扱わないことです。背景が整理できないままでは、適切な対応を考えることも難しくなります。
ここでおすすめしたいのは、原因探しを完璧にやろうとするより、まず“現象”を捉えることです。
たとえば、次のような問いは、状況整理の助けになります。
・しんどさが強いのは、どんな時間帯・どんな業務のときか
・疲れは「量(時間)」の問題か、「質(緊張・気遣い)」の問題か
・休んでも回復しにくいのか、休めば戻るのか
・身体のサイン(睡眠、食欲、頭痛、動悸など)と気分の変化はあるか
「自分は何に負荷を感じているのか」「どの場面でしんどさが強まるのか」を確認することが、最初の一歩になります。
身体的な負荷が高い場合に考えたいこと
長時間労働や業務量の多さなど、身体的な負荷が高い状態が続くと、「頑張るしかない」「今は踏ん張りどきだ」と自分に言い聞かせてしまいがちです。しかし、その状態が慢性化すると、回復に必要な時間は想像以上に長くなり、結果としてキャリアの継続が難しくなることもあります。だからこそ、早めに、状況打破の一手を打つことが求められます。
ある程度の裁量がある場合には、自身の業務を棚卸しし、他の人に引き継げる仕事や、業務分配を見直せる余地がないかを検討してみましょう。
「自分でなくても回る仕事」「今だけ減らせる仕事」「やらないと困る仕事」を分けて整理すると、調整案が作りやすくなります。業務を手放すことは怠慢ではなく、仕事を持続可能にするための判断です。
一方で、裁量がほとんどなく、自分一人では調整が難しい立場にいる場合には、「相談すること」が重要になります。忙しい組織ほど個々の状態は見えにくく、声を上げない限り周囲に伝わらないことも多いものです。
「このままでは続けられないかもしれない」と感じる段階で、心情も含めて共有することが、状況を変える第一歩になります。
相談は、正解を持っていく必要はありません。「現状を共有し、選択肢を一緒に探したい」という形でも十分です。
また管理職などの立場にいる場合、チーム全体が疲弊しているのであれば、それは個人の問題ではなく構造的な課題である可能性もあります。人員配置や業務プロセスの見直し、ツール導入による効率化など、組織として取り組むべきテーマかもしれません。
「自分の管理能力の問題だ」と抱え込み続けると、結果的にチーム全体が立ち行かなくなるリスクを高めます。抱え込まないことは、個人のためだけでなく、組織を守るためにも重要です。
管理職が健やかに働き続けるコツはこちら
meetscareer.tenshoku.mynavi.jp
精神的な負荷が高まっている場合の対処法
精神的な負荷は、「説明しにくさ」がある分、自責的に捉えられがちです。「なんとなくしんどい」「理由ははっきりしないが気力が湧かない」といった状態に対して、「自分が弱いのでは」「気の持ちようでは」と思ってしまう人も少なくありません。
しかし、不調は個人の弱さではなく、負荷と個人の特性が重なった結果として生じること。条件が重なれば、誰にでも起こり得るものです。
だからこそ、「頑張りが足りない」ではなく、「何が負荷になっているのか」「支えが足りているか」という視点で見直すことが大切です。
たとえば、裁量の少なさ、評価基準の不明確さ、対人関係の緊張、自分の得意分野が活かされない役割など、こうした要因は一つひとつが小さく見えても、積み重なることで大きな負荷になります。
また、仕事量が同じでも「終わりが見えない」「期待値が曖昧」「失敗が許されない空気」など、心理的な消耗が強い環境では疲労が抜けにくくなります。
重要なのは、「自分にとって何が負荷になりやすいのか」を知ることです。
得意・不得意や集中しやすい環境、苦手な役割を把握し、周囲に伝えるのはわがままではなく、長く働くための前提条件です。
日頃から対話を重ね、「自分を知ってもらう」「周囲の特性を知る」ことが、結果的に消耗しにくい働き方につながります。
対話自体が負荷になる方も、短い報連相、チャット、定例面談など、自分に合う手段からで構いません。「ゼロか100か」ではなく、できる形でつながりを作っておくことが大切です。
不調を感じたときは「対話」という選択肢を持つ
健康やメンタルの不調を感じていても、「相談する」という選択肢を取れずにいる人がいるのが実情です。「やる気がないと思われるのでは」「評価や出世に影響するのでは」といった葛藤が、相談を遠ざけることもあります。
しかし、不調は能力低下ではなく、環境や役割とのミスマッチとして現れることも多く、本人だけで調整しきれない場合もあるものです。
対話を通じて状況を共有することで、業務内容や役割、働き方を見直せるケースもあります。組織づくりの立場から見ても、「事前に相談があれば対応できた」という声は、現場でたびたび聞かれます。つまり相談は、弱音を吐くことだけではありません。
たとえば、
「この状態が続くとパフォーマンスが落ちそうなので、一定期間、優先順位を整理したい」
「この業務は負荷が高く、進め方を変えたい」
といった形で、現状解決のための建設的な提案として伝えることもできます。
「自分だけでなんとか解決する」以外の道があることを、ぜひ思い出してみてください。
小さな不調を大きく育てないために
日常のセルフケアでは、睡眠や運動も大切ですが、「仕事から心理的に距離を取る時間」を意識的に確保することが重要です。発散の方法は人それぞれなので、自分に合った方法を見つけ、短くてもかまわないので、“回復の時間”を予定に入れておくとよいでしょう。
また、ただ寝るだけでなく、軽い運動を伴う活動を取り入れること(積極的休養)は、疲労回復や気分転換に役立つと言われています。ヨガやジョギング、1駅分歩くなど、日常に軽い運動を取り入れるのも一つの方法です。ポイントは「続く形で、少しだけ」です。
そして本格的な不調を感じたときは、「辞める」よりも「まず休む」が第一選択です。重要な決断は、ある程度回復してから行うことが鉄則と言えます。
消耗した状態では視野が狭まり、極端な選択をしやすくなってしまいます。回復の余白を確保することは、キャリアを守るための大事な判断です。
キャリア離脱を防ぐために
健康不安は、今や多くの働く人にとって身近な課題です。一方で、簡単に解決できるものでもありません。環境や状況によって今できることは異なりますが、大切なのは「ひとりで抱え込まない」ことです。
もし今、違和感があるなら、それは相談してよい十分な理由になります。
周囲で働く方と不安の背景にある課題を分かち合うことが、結果的にあなたが活躍し続けられる環境づくりにもつながります。
この記事が、そのための一つの支えになっていれば幸いです。
出典:マイナビ転職「キャリア危機に対する意識調査」
制作:マイナビ転職編集部
