相談は迷惑?“時間泥棒”にならないために―社会人の相談スキルを磨く4つのポイント

――仕事で自分では判断がつかない時や、これでいいのか分からない時、上司に相談したいとは思いつつ「忙しそう」「時間をとって申し訳ない」と感じ、相談できずに困っています。

また、逆に後輩にフィードバックをする場面では、短時間で済ませるつもりが気づいたら20分以上かかってしまい、申し訳なくなることもあります。

とはいえ、チャットだけではうまく進めることができません。

相談しないのはもっとよくないとは思っているのですが、良い相談の方法や相談の乗り方が分かりません。相談をスムーズに進めるためにはどうすればいいのでしょうか。


「これ、確認したほうがいい気がするけど……忙しそうだし、今じゃないかも」
「こんなこと聞いたら、“そんなことも分からないの?”って思われないかな」

仕事の中で判断に迷ったとき、本当は相談したほうがいいと分かっていながら、つい手が止まってしまう。そんな経験はないでしょうか。

一方で、相談を受ける立場になると、「短時間で終わらせたいのに、思った以上に時間がかかってしまう」と感じることもあります。

相談しないのも不安。
でも、相手の時間を奪ってしまうのも気が引ける——。

そんな葛藤の中で、うまく動けずにいる方は少なくありません。

実はこうした悩みは、特別なものではなく、多くの人が感じているものです。
ではなぜ、「相談すること」はここまで難しく感じられるのでしょうか。

今回は、こうした「相談のしづらさ」の背景と、仕事を前に進めるための“相談のスキル”について、キャリアコンサルタントの林碧さんに解説していただきました。

キャリア・コンサルタント

林 碧(はやし みどり)
株式会社キャリアイズ 代表取締役社長、国家資格キャリアコンサルタント・キャリアコンサルティング技能士1級、両立支援コーディネーター。 企業人事経験および個別相談対応経験を活かし就職・転職の相談からライフキャリアビジョン構築、育児・傷病など個別事情との両立まで、幅広い相談に対応。通算6000件以上の個別面談実績、年150件以上の研修登壇実績を保有。特に若年層のキャリア形成支援を得意とし、大学での登壇実績が豊富である他、企業向けの育成者研修や若手定着支援、組織コンサルティングも実施。日経Womanアンバサダー。小学生2児の母。

「相談」で悩む人は増えている

今回のご相談者様は、「相談すること」と「相談に乗ること」の両方に難しさを感じていらっしゃいます。読んでいて、「分かる……」と思われた方も多いのではないでしょうか。

自分が相談する立場になると遠慮してしまう一方で、いざ相談を受ける立場になると「どう関わればいいのか分からない」「思った以上に時間がかかってしまう」と感じる。

どちらか一方ではなく、両方に難しさを感じている方は少なくありません。

だからこそこのテーマは、単なる“話し方”の問題ではなく、働くうえでのコミュニケーション全体に関わるテーマとも言えそうです。


「相談したいのにできない」は、あなただけではない

こうした悩みは、決して個人の性格や気持ちの問題だけではありません。

マイナビ転職が実施した新入社員向けの調査では、上司や先輩への相談について

・「今相談していいタイミングが分からない」……57.9%
・「忙しそうで相談しづらい」……53.8%
・「どう説明すればいいか分からない」……29.8%

といった声が挙がっています。

また、「そんなことも知らないと思われそうで相談しづらい」という回答も一定数見られたようです。

マイナビ転職「新入社員の意識調査(2024)」

ここから見えてくるのは、「相談したくない」のではなく、“どう相談すればいいのか分からない”人が多いということです。

そしてもうひとつ大切なのは、その状態は「本人の努力不足」ではなく、環境や経験の影響も受けているという点です。

なぜ今、相談はこんなにも難しくなっているのか

社会人になると、「自分で考えて動けること」が求められます。
その中で、「分からないことを聞く=できていない」と見られるのではないか、と感じることもあるでしょう。

この感覚は個人の性格だけで生まれているものではありません。
特に若年層では、「失敗によって評価が下がること」への不安が高い傾向もありそうです。

・失敗に対する評価への不安
・周囲からどう見られるかを意識しやすい環境
・限られた時間の中で成果を求められる働き方

こうした要素が重なることで、「相談すること」自体がリスクのように感じてしまうのです。

一方で、その育成やマネジメントを担う側から見ると、「相談の少なさ」は不安要素にもなります。相談があることで、相手の考え方が見え、育成やサポートがしやすくなるためです。

つまり、相談しないこと自体が評価を下げる可能性もあるという点は、知っておく必要があります。

「相談するのが苦手」という感覚は、個人の問題だけではありません。
ただし、そのままで良いわけでもない。

だからこそ、
「なぜ自分は相談できないのか」と責めるのではなく、
「どうすれば相談しやすくなるか」を考えることが大切になってきます。


上司側にも余裕がないという現実

加えて、相談を受ける側にも事情があります。

マネージャー層は、限られた時間の中で多くの業務を抱えており、「相談の積み重なり」が負担になっているケースもあります。

その様子は、当然一緒に働く側にも伝わります。
結果として、「今はやめておこう」という遠慮を生み、相談のタイミングを逃してしまうことにもつながります。

だからこそ、相談を受ける側は「相談してもいい」という状態を、言葉や態度で伝えていくことが大切です。

例えば、あらかじめ相談しやすい時間帯を共有したり、仕組みとして相談の機会を設けたりするのもひとつの方法です。

ここには、どちらか一方が悪いという構図ではなく、お互いの余裕のなさがすれ違いを生んでいる側面があります。

その前提を理解したうえで、相談を受ける側も「どうすれば相談に乗りやすくなるか」を考えていくことが求められます。


「相談の仕方」を学ぶ機会が少ない

もうひとつ見落とされがちなのが、そもそも「相談はスキルである」という点です。

以前であれば、先輩の仕事を間近で見ながら、OJTの中で自然と相談の仕方を学ぶ機会が多くありました。

しかし現在は、業務効率化やコミュニケーションの変化に加え、リモートワークの普及によって、他者の働き方が見えにくくなりがちです。

その結果、「相談の進め方のイメージが持てないまま仕事を任される」状況も生まれやすくなっているのです。

相談をスムーズにするカギは「目線合わせ」

では、どうすれば相談はスムーズになるのでしょうか。

相談をする・受ける双方に共通するポイントとして、相手との“目線合わせ”ができているかがあります。

相談が長引いてしまうときや、話がかみ合わないとき、やり取りの中でギクシャクしてしまうときは、

・何について相談しているのか
・どこまで考えているのか
・何に困っているのか

といった前提が揃っていないことが多くあります。

つまり、相談がうまくいかない原因の多くは、能力ではなく、前提のすり合わせ不足による“すれ違い”にあるのです。

相談前に整理するだけで終わらせない

相談の質を高めるためには、事前に整理することが大切です。
相談の前には、次の4点を一度整理してみましょう。
① 何について相談したいのか(目的) ② 相手に何を求めたいのか(期待) ③ 自分はどこまで考えたのか(思考の現在地) ④ どれくらい時間が必要か(時間感覚)
ここまでが“準備”です。
さらに一歩進めると、整理した内容を言葉にして相手に伝え、認識をすり合わせることが重要になります。

【実践イメージ】

〇〇についてAとBで迷っています。
自分なりに△△までは考えたのですが判断に迷っていて、5分ほどご相談できますか。
方向性についてアドバイスをいただけると助かります。

さらに余裕があれば、

この進め方で問題なさそうか、一度認識を合わせさせていただいてもよろしいでしょうか。

と添えてみましょう。
“相談”が、“一緒に考える時間”へと変わっていきます。

「相手の前提」を確認するという視点

もうひとつ、相談の質を高めるポイントがあります。

それは、相手がどの前提で考えているのかを確認することです。
例えば、

この業務の優先順位としてはどの位置づけでしょうか

今回はスピードと品質、どちらを優先すべきでしょうか

こうした問いを挟むことで、
自分だけでなく相手の視点も揃いやすくなります。
それは結果的に、仕事の質を高め、評価にもつながっていきます。

相談は一方向ではなく、お互いの前提をすり合わせていくプロセスでもあるのです。

相談を受ける側が意識したいこと

相談は互いのコミュニケーションです。

そのため、受ける側の関わり方によっても、その時間の質は変わります。

相談を受ける側としても先ほどの“目線合わせ”の視点を意識してみましょう。

例えば、

・最初に「今日は何について相談したい?」と確認する
・「5分で方向性だけ一緒に見よう」と時間の枠をつくる
・すぐ答えを出す前に「あなたはどう考えた?」と問いかける

こうした関わり方は、相談の時間を短くするだけでなく、相手の成長にもつながります。

大切なのは、「答えを出すこと」だけに偏らないこと。

育成の機会でもあるという視点を持ち、その時の状況や余力の中で、相手が自分で考えられる状態をつくることが、結果としてチーム全体の力や仕事の効率を高めていきます。

相談は、迷惑ではなく「仕事を前に進める力」

「相談すると迷惑をかけてしまうのではないか」

そう感じる方は、周囲への配慮ができる、やさしい方でもあります。
とはいえ、本来相談は仕事の質を高め、判断の精度を上げるための行動です。

「良い相談」ができるようになることは、自分自身の評価を高めることにもつながっていきます。

相談は、センスではなくスキルです。

最初からうまくできなくても、経験の中で少しずつ身についていきます。

少し整理して伝える。相手の前提を確認する。

そんな小さな積み重ねが、やり取りの質を変え、仕事の進め方を変え、やがて信頼関係にもつながっていきます。

相談は、相手の時間を奪う行為ではなく、仕事を止めないための前向きなアクションです。

この記事が、読んでくださった方の一歩につながっていれば幸いです。


今回のテーマである「相談のしにくさ」や「相談時間の長さ」は、実は“言語化”のスキルとも深く関係しています。

頭の中では考えているつもりでも、それを相手に伝わる形で整理するのは意外と難しいものです。そしてこのズレが、「話が長くなる」「結論が見えにくい」といったすれ違いを生みやすくなります。

逆に言えば、考えを整理し、要点を言語化できるようになると、報連相はぐっとスムーズになり、相手の負担も軽減されていきます。

以下の記事では、報連相の具体的なポイントや、言語化力を高める方法について詳しく解説しています。今回の内容とあわせて、ぜひ参考にしてみてください。

meetscareer.tenshoku.mynavi.jp

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制作:マイナビ転職編集部


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