GW明け「会社辞めたい…」と思った人へ。辞めたい衝動の飼い慣らし方を専門家に聞いた

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春は異動や転職の季節。新しい環境で、慣れない仕事や人間関係に戸惑うことも増えるでしょう。

ゴールデンウィーク明け特有のいわゆる「五月病」というメンタル不調もありますが、「この仕事、自分に向いていないかも」「会社を辞めたい」という気持ちが頭をよぎり始めた人は、決して少なくないはずです。

実際、マイナビ転職が2024年に実施したアンケート調査(※)では、同年4月入社の新入社員の3人に1人が、入社からわずか2か月で「今の会社を辞めたいと思ったことがある」と回答しています。新入社員に限らず、新年度の波を超えてなんとかゴールデンウィークにたどり着いたものの、息切れしてしまう感覚にはなじみがあるのではないでしょうか。

この「辞めたい」という気持ちは、なぜこれほど早く、そして強く湧き上がるのか。そして、その感情にどう向き合えば、キャリアを前向きに考えられるのか。

心理学と経営学の両面からあらゆる会社の経営改善を手がけてきた、一般社団法人日本経営心理士協会代表・藤田耕司さんにお話を伺いました。

監修者

藤田耕司さんプロフィール画像

藤田 耕司(ふじた こうじ)
徳島県出身。19歳から心理学を学び、複数の心理系資格を取得。2004年から2011年まで監査法人トーマツに在籍後、コンサルティング会社と会計事務所を設立し、心理と数字の両面から経営改善を行う。経営心理学を体系化し、年商300億円超の企業から個人事業主まで、延べ1200件超の経営改善を手がける。経営心理士講座の内容は金融庁や日本銀行等でも導入され、日本経済新聞、ダイヤモンド、東洋経済、PRESIDENT等のメディアに取り上げられる。

入社2か月で「この仕事向いてない」と感じるワケ

新入社員の3人に1人が入社2か月で「会社を辞めたい」と感じている——。

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このデータを見て「入社したばかりなのに、もったいない」と思う方もいるでしょう。しかし藤田さんは「あまり違和感はない」と述べます。

「近年は売り手市場が続いているので、若い方々のなかには『辞めたとしても、すぐに転職先は見つかる』と考えている人も少なくないと思います。また、最近は、仕事に対する価値観が多様化しており、必ずしも『我慢すること=美徳』とは捉えられていないように感じます

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「今の会社で何年くらい働く予定か」という質問に対しても、4人に1人が「3年以内」と回答

仕事で思い通りにならないことに直面したとき、『今は大変でも少し踏ん張って経験を重ねればうまくこなせるようになっていく』のか、それとも『仕事内容や働き方そのものが、自分には合っていない』のか、という切り分けは案外難しいものです。

仕事やキャリアの全体像が見えにくいと、『自分を変えるべきか』『環境を変えた方がいいのか』という判断に迷い、結果として環境の問題として捉えたくなることも、決して珍しくありません」

「長期休暇後に会社を辞めたくなる」の真相

とはいえ、入社からわずか「2か月」で辞めるかどうかを判断するのは、少し早い気もします。ただ、これに対しても藤田さんは「長期休暇後に『辞めたい』の感情が強まるケースも少なくない」と指摘します。

「入社2か月後はちょうど研修が終わって現場に出る頃。実務が本格的に始まるタイミングですので、こうした感情が湧いてくるのも無理はないでしょう。

初めは難しく感じたことも克服して乗り越えた経験がある人は、『初めは何事もうまくいかないもので、慣れるまではどこに行ったって同じ』と感覚的に分かるので、また違う感情を持つのではないか、と思うのですが。

そもそも、大型連休中は、普段とまるで違う生活を送る人も多いですよね。その状態に慣れたまま通常の生活に戻ると、ギャップが大きい。でも、それは一時的な問題であって、この先ずっと続くものではありません。

ツラい時、不安を感じている時の乗り切り方として、あまり未来を考えないことをお勧めします。今日のツラさが10だとして、それが1年続くとイメージすると3650になる。10なら耐えられても、3650は耐えられない。未来を考えることで、未来の分のストレスまで先取りしてしまうんです。

だから、今日1日の区切りで生きる。もちろん、長期のスケジュールを想定して対応すべき仕事はあると思いますが、少なくとも心持ちの上では、今日1日を精一杯頑張ろう、まずは目の前の1時間の会議を乗り切ろう、と目の前のことにフォーカスする。すると、メンタルを健やかに保ちやすくなります

「会社を辞めたい」と感じるきっかけは、4つの“欲求不満”

ただ、時期や世代を問わず「会社を辞めたい」という感情は一般的なものです。この「辞めたい」は、一体どのようなメカニズムで湧き上がってくるのでしょうか。

「人間が本能的に抱く欲求は、生存欲求(安心・安全に生きたい/給与や労働環境に関わる)、関係欲求(良い人間関係のもとで働きたい、認められたい)、成長欲求(成長したい、可能性を追求したい)、そして公欲(人に喜んでもらいたい、社会の役に立ちたい)の4つに分類して捉えることができます。

人間の欲求は4つに分類される

  • 生存欲求(安心・安全に生きたい)
  • 関係欲求(良い人間関係のもとで働きたい、認められたい)
  • 成長欲求(成長したい、可能性を追求したい)
  • 公欲(人に喜んでもらいたい、社会の役に立ちたい)

人は仕事においてもこの4つの欲求を求めがちで、どれか一つでも満たされなくなると、辞めたいという気持ちが湧いてきます

生存欲求・関係欲求・成長欲求の3つは、いわば『私欲』——自分が脅かされたくない・いい思いをしたいという欲求です。一方の公欲は、自分の得とは関係なく、純粋に人に喜んでもらいたいという欲求なんですね。

例えば、商品の中身に重大な欠陥があると分かっているのに、会社から売れと言われて売り続ける。売った分インセンティブは入ってくるけれど、お客さんからクレームが来る。そうした働き方に『人として間違っている』と感じて辞める人がいる。給料は十分もらっているのに、です。これが公欲が満たされないことによる退職です。

今の若い世代は、この公欲が他の世代に比べて強いと言われています。出世欲が薄い代わりに、公欲は強い。SDGsのような概念を小学校から学ぶ世代ですし、『世の中のためになることがしたい』と思うのかもしれません。

採用活動でも、『うちに入れば稼げます』というメッセージより、『社会にこれだけ必要とされる仕事です』『お客さまにこれだけ喜ばれる仕事です』と打ち出す方が、若い世代の反応が良くなる印象ですね」

欲求不満を引き起こす、2つの“引き金”

こうした欲求が満たされなくなる引き金については、主に「リアリティショック」と「自己決定理論」という2つのポイントから解釈できる、と藤田さんは言います。

「事前に抱いていた期待と現実とのギャップ、そこから生じるショックのことを『リアリティショック』と呼びます。『こういうスキルが身に付くはず』『こういうポジションが得られるはず』と期待していたけれど、実際はイメージと全然違って、『計画と違う。辞めよう』と思ってしまうケースです

入社(異動)後の活躍イメージやキャリアビジョンを明確に意識できている人、あと意外にも『プレイヤーとして成績がいい人』はこのショックを受けやすい傾向があります

プレイヤーとして成績がいい人は効率的かつスピーディーに成果を出せる分、周囲に対する期待値や理想も高く、『そんなやり方より、こっちのやり方が良いだろう』とつい反発してしまうんですね。

自分のやり方がすべてのレイヤーやポジションで有効だとは限らない、という原則を理解できていれば『チーム結束のため上司のやり方に合わせよう』などと判断できるのですが、プレイヤーとしての視点しかないと『ここでは自分の成長は見込めない』と切り捨ててしまう。

こういう方は、それが本人がより成果を出し満たされやすい環境へと移動していくことにつながることもありますが、一方で、転々と職を変えたり、独立して人間関係で痛い目を見たりすることも少なくありません。

また、転職にしろ異動にしろ、それを自分の意思で選んだり異動の意図が説明され納得した結果であるものか、一方的・強制的に選ばされたかで、捉え方はまったく違ってきます。前者であれば『自分が決めたのだから頑張ろう』と前向きに捉えやすい。でも、後者の場合は『環境が悪い、自分はこんなことやりたくなかった』と怒りや不満が湧いてくる。

自分の意思が反映された選択であれば、物事を前向きに捉えようとする心理を『自己決定理論』と呼び、選択の余地なく何かを強制されると反発しようとする機能が働くことを『心理的リアクタンス』と呼びます。

営業のプロセスでも、『この商品を買った方がいいですよ』と一方的に勧められると、お客さんはなかなか警戒心を解かないですよね。だけど、『AとBの商品、どちらがお客さまに向いてると思いますか?』みたいな質問を一つ入れて、『どっちかというとBですかね』『Bがお客さまにフィットすると思っておられるんですね。そういうことであれば、Bについて詳しくお話しさせていただきます』といった話の流れをつくれば、お客さんは自分で選択している分、提案を受け入れやすくなるはずです」

欲求不満を引き起こす「引き金」

  • リアリティショック(イメージと実態のギャップに対するネガティブな反応)
  • 心理的リアクタンス(ある選択を「自己決定」できていないことによる心理的な反発)

「辞めたら状況が良くなる」は思い込みに近い

とはいえ、会社に所属する以上、好きなことだけをやるというのは難しいもの。すべての転職先や配属先、異動先、業務内容を思い通りに選べるわけではありません。意に沿わない転職や配属、異動、業務への対応と、それで生じる「辞めたい」の感情にどう向き合えばいいのでしょうか。

「『自分にとって必要な学びの機会』と捉えられるかどうかが分かれ目です。希望した環境で働けなくても、『これは今の自分にとって意味のある経験だ。ここで何を学ぶべきかを考えよう』と思えれば環境に適応しやすいですし、「合わずに辞める」の繰り返しに陥ることを防げます。

そして『辞めたら今より状況が良くなる』とは限らないという点も、考慮しておきたいところです。不満ばかりに目が向いて転職した結果、はじめて前の職場のありがたみに気づく、ということは往々にしてありますから。

大事なのは、『辞めたい』という感情を論理的に分析することです。『嫌だ、無理だ』という感情が積もっている。では、その感情のそもそもの原因は何なのか。先ほどの「4つの欲求不満」に落とし込むと、どの部分に該当するのか。今の環境で、本当に解消できないのか。逆に、他の環境であれば必ずしも解消されるのか。困っていることをまずは上司に打ち明けたり、人事に相談してみたり、まずは原因を解消するアクションを取ってみると、意外にラクになることもあります。

キャリアを続けていく限り、環境に適応する力はあらゆる職場、あらゆる場面で求められます。もちろん、ハラスメントや明らかに不健全な環境から距離を取る判断が必要なケースは別ですが、環境を変える前に、本当に辞めることで解決するのかを一度考えてみてほしいですね

「辞めたいからSNSやAIで情報収集」の思わぬ落とし穴

「辞めたい」の感情と健全に向き合う上では、SNSなど外部から得られる情報との接し方にもコツがあるといいます。

SNSの情報が『辞めたい』という感情を強めることは大いにあり得ます。人間の心理には確証バイアス(自身の先入観や意見を支持する情報のみを集め、反証する情報を無視または排除する心理作用)が働いており、自分の考えが正しいことを確認したがる性質があるからです。

『辞めた方がいいんじゃないか』という半ば願望のような仮説を持ってSNSを見ると、転職して成功した人の情報ばかりが目に入る。転職して失敗した人、前の会社の方が良かったと後悔している人の情報は目に入ってこない。

また、生成AIに『辞めるべき?』と聞いて、辞めた方がいい理由、辞めない方がいい理由の両方が出てきたとしても、辞めた方がいい理由ばかりに意識が向いたりする。相談すること自体はありですが、こういった確証バイアスが働かないように注意すべきでしょう。

まずは自分の気持ちを受け止めてあげる。そのアクションは大切ですが、大きな意思決定をするにあたっては『自分に都合の良い情報を優先して取りに行っていないか』を十分確認したいところです。

強い感情を抱いている時ほど、外の情報に慎重になるべきでしょうね」


「辞めたい」という感情は、誰にでも生じうる自然なものです。大切なのは、その感情に振り回されるのではなく、一度立ち止まって原因を見つめ、今の場所でできることを探してみること。その積み重ねが、自分だけのキャリアを築いていく土台となるはずです。


退職欲求と健全に向き合うことができれば、この先のキャリアもより鮮明に見通せるはずです。マイナビ転職では年収アップが目指せる求人を、数多くご紹介しています。ぜひチェックしてみてください。

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【出典】
マイナビ転職『【新入社員の意識調査】「辞めたい」と思ったことがある新入社員は3人に1人。離職防止のカギは「給与」「仕事内容の適性」?』

取材・編集:はてな編集部
制作:マイナビ転職

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