「上司が合わない」と悩んだら。転職や異動を決断する前に知っておきたい意外な落とし穴

「上司が合わない」と悩んだら。転職や異動を決断する前に知っておきたい意外な落とし穴

「上司が変われば、もっと働きやすくなるのに……」
仕事の悩みを抱えたとき、そう感じた経験がある方は少なくないのではないでしょうか。

実際、マイナビ転職が実施した『新入社員意識の調査』では、「現在の会社を辞めたい理由」として「上司や先輩など、職場の人と合わないと思ったから」が上位に挙がっています。働くうえで、人間関係、とりわけ上司との関係が大きな影響を与えていることがうかがえます。

一方で、管理職側への調査では、「ハラスメントと言われるのを避けたい」「部下に言いたいことがあっても我慢している」といった声も多く聞かれました。

つまり、上司と部下の間では、どちらか一方だけが悩みを抱えているのではなく、お互いに「どう関わればいいのか分からない」という戸惑いを抱えているケースも少なくないようです。

もちろん、中には個人の言動や組織風土に問題があり、環境を変えることが有効な場合もあります。しかし、すれ違いの原因がコミュニケーションや期待値のズレ、組織構造にある場合、「上司さえ変われば解決する」と考えて転職や異動を選んでも、別の環境で同じような悩みに直面してしまう可能性があります。

そこで今回は、キャリアコンサルタントの林碧先生に、

  • 「上司が原因」と感じる背景には何があるのか
  • 環境を変えても同じ悩みを繰り返してしまうのはなぜか
  • 転職や異動を決断する前に整理しておきたい視点

について解説いただきました。

上司との関係に悩み、「このまま続けるべきか、環境を変えるべきか」と迷っている方にとって、後悔のない選択をするためのヒントになれば幸いです。

キャリア・コンサルタント

林 碧(はやし みどり)
株式会社キャリアイズ 代表取締役社長、国家資格キャリアコンサルタント・キャリアコンサルティング技能士1級、両立支援コーディネーター。 企業人事経験および個別相談対応経験を活かし就職・転職の相談からライフキャリアビジョン構築、育児・傷病など個別事情との両立まで、幅広い相談に対応。通算6000件以上の個別面談実績、年150件以上の研修登壇実績を保有。特に若年層のキャリア形成支援を得意とし、大学での登壇実績が豊富である他、企業向けの育成者研修や若手定着支援、組織コンサルティングも実施。日経Womanアンバサダー。小学生2児の母。

「上司が変われば…」と思ってしまうのは、あなただけではない

「この上司じゃなければ、もう少しうまくやれる気がする」
「別の部署だったら、こんなに苦しくないのかもしれない」

仕事を続ける中で、そんなふうに感じたことはないでしょうか。

実際に、キャリア相談の現場でも、転職を考える理由のひとつとして「上司や職場の人間関係が合わない」という声は少なくありません。

日々の業務の中で関わる時間が長く、評価や仕事の進め方にも影響を受ける上司との関係は、働きやすさを大きく左右します。
だからこそ、「上司が変われば状況も変わるはず」と感じるのは、とても自然なことだと思います。

私自身、一人の働く人間として、上司との関わりに悩んだことがありますし、それがひとつの要因となって転職を選んだこともあります。

ですので、上司との関係に苦しさを感じている方に対して、簡単に「環境のせいにしてはいけない」とは言いたくありません。

ただ同時に、キャリア支援の現場で多くの方のお話を伺ってきた中で、「上司が変われば解決する」と思って動いたものの、次の環境でも似たような悩みにぶつかってしまう方を見てきたのも事実です。

今回は、上司との関係に悩んだとき、すぐに「辞める/我慢する」の二択にする前に、少しだけ立ち止まって考えておきたいことを一緒に整理していきたいと思います。

「上司が原因」と感じやすいのには理由がある

何らかのストレスを感じているとき、私たちはその原因を「人」に結びつけて考えやすくなります。

たとえば、

  • 指示が曖昧で仕事が進めづらい
  • フィードバックがなく、自分の評価が分からない
  • 忙しそうで相談しづらい

こうしたことが重なると、「この上司だからうまくいかないのでは」と感じるのも無理はありません。

実際、仕事そのものよりも、「誰と働くか」が日々の負荷を左右する場面は少なくありませんし、上司との関係がつらさの中心になっていくこともよくあります。

また、上司は業務の指示や評価に関わる立場にあるため、小さな違和感が積み重なりやすく、ストレスの矛先が向きやすい存在でもあります。

ただここで少しだけ立ち止まって考えてみたいのは、「それは本当に“その人だけ”の問題なのか?」という視点です。

関係性の中で起きていることや、役割の影響で生まれているすれ違いが、結果として「上司との問題」に見えているケースも少なくありません。「この人が原因だ」と結論づける前に、少しだけ視野を広げてみる余地があるかもしれません。

環境を変えても、同じ悩みを繰り返してしまうことがある

「上司が変われば解決する」と考えて転職や異動を選んだ場合でも、別の職場で似たような悩みに直面することがあります。

キャリア相談の現場でも、
「前の会社でも上司と合わずに辞めたが、転職先でも同じような違和感がある」
という声は珍しくありません。

もちろん、環境を変えることで状況が大きく改善するケースもあります。人との相性や組織文化が合うかどうかは、働きやすさに直結する重要な要素ですし、環境を変えること自体は決して悪いことではありません。

ただ、「人が変わればうまくいくはず」という前提だけで動いてしまうと、同じようなストレスを繰り返してしまう可能性があるのも事実です。

また、短期間での転職を繰り返してしまうと、その後のキャリアに影響が出ることもあり、「もう少し状況を整理してから動けばよかった」と振り返る方もいらっしゃいます。

環境を変えること自体が問題なのではなく、
「何がつらかったのか」が整理されないまま動いてしまうことが、次の環境でも同じ場面を引き寄せてしまうことにつながりやすいのです。

上司側もまた、悩みを抱えている

ここで少しだけ視点を広げてみると、見え方が変わることもあります。


マイナビ転職の調査では、管理職側の悩みとして

  • 「パワハラなど、ハラスメントと言われるのを避けたい」
  • 「部下に言いたいことがあっても我慢している(指摘できない)」

といった声が上位に挙がっています。

つまり、上司もまた、
「どう関わればいいのか分からない」
「どこまで踏み込んでいいのか迷っている」
といった葛藤の中にいることがあります。

さらに、評価や業務マネジメントといった役割を担いながら、自身の業務も抱えているため、余裕を持って関わることが難しい状況にあることも少なくありません。

もちろん、すべてのケースに当てはまるわけではありませんし、不適切な関わりが許されるわけではありません。

ただ、「上司個人の問題だけではない可能性もある」と捉えることで、少しだけ状況を立体的に見ることができるようになります。

もしかすると、その関係性の中で感じている違和感は、相手側も何らかの形で感じている可能性もある、という視点は持っておいても良いかもしれません。

大切なのは「自分にできること」に目を向けること

ここまで見てきたように、上司との関係にはさまざまな要因が絡みます。

そのうえで大切にしたいのは、
「自分でコントロールできる部分に目を向けること」です。

環境を変えることも一つの選択肢ですし、それによって状況が大きく変わることもあります。

ただ、自分の行動や関わり方は、どの職場に行ってもついてくるもの。

もし、

  • 期待していることが言語化されていない
  • 伝え方や相談の仕方に改善の余地がある
  • 状況の整理が不十分なまま不満が積み重なっている

といった状態で環境を変えた場合、同じようなすれ違いが起きてしまう可能性は高くなります。

ここでいう「自分にできることに目を向ける」というのは、我慢することではありません。

状況をより良くするために、自分が動かせる部分はどこかを見極めてみること。
そこに、できる働きかけを検討してみること。
その視点を持つだけでも、選択の質は大きく変わってきます。

転職前に整理しておきたいセルフチェック

環境を変える前に、一度立ち止まって整理しておきたい6つのポイントがあります。

  1. 自分は何にストレスを感じているのか、具体的に言葉にできているか
  2. 上司に対してどんな期待を持っているのか整理できているか
  3. その期待は相手に伝わっているか
  4. 相談の仕方やタイミングを変える余地はあるか
  5. 他の上司でも同じことが起きる可能性はないか
  6. 今の環境で試せることは、本当にやり切ったと言えるか

これらを振り返ることで、「環境を変えるべきかどうか」の判断が、少しずつクリアになっていきます。
もし「できているとは言えない」と感じる部分があるのであれば、小さな行動をひとつ取ってみてもいいかもしれません。

仮に最終的に環境を変える選択をしたとしても、このプロセスを経ているかどうかで、その後の納得感は大きく変わってきます。

小さなアクションから始めてみる

大前提として、すべてを一度に変える必要はありません。

たとえば、

  • 仕事のゴールや期待値を具体的に確認してみる
  • 報告や相談のタイミングをすり合わせる
  • フィードバックを求める頻度を少し上げてみる

こうした小さな行動をとり、上司の反応を見てみるのもひとつの方法でしょう。

あるいは自分と上司との関係性を、二人だけの問題として抱え込まないためのアプローチをとってみてもいいかもしれません。

これらの小さな働きかけにより、関係性や仕事の進めやすさが変わることがあります。

「上司を変える」ことはできなくても、
関わり方を変える余地は、意外と残っていることが多いのです。

選択の質を上げるために

上司との関係に悩むことは、決して特別なことではありません。
そして、そのつらさから環境を変えたいと感じるのも自然な反応です。

大切なのは、「転職するかどうか」ではなく、どのような状態でその選択をするのかだと思います。

自分にできることを整理し、試したうえでの環境を変える選択は、後悔しにくいものになります。

「上司が変われば解決するのか?」
その問いにすぐ答えを出すのではなく、一度立ち止まって考えてみること。

その時間が、これからのキャリアをより納得感のあるものにしてくれるはずです。

あなたのこれからの選択が、少しでも前向きなものになりますように。

制作:マイナビ転職編集部


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