最近耳にすることが増えた「リスキリング」という言葉。政府が推進し、一部の企業でも社員にリスキリングを促進する動きが見られていますが、マイナビ転職の調査(※1)では、リスキリング経験者で昇給した人は1割に留まるという結果が出ています。
また、リスキリングという言葉が独り歩きし、「何かやらなきゃいけない気がする」「けれど、何をやればいいか分からない」と困惑する人も多い様子。そこで、今回はデータをもとにビジネスパーソンが「リスキリングをやるメリット」を紐解きます。
<INDEX>
昇給1割。リスキリングには意味がない?
「仕事や働き方の選択肢が広がる」と感じている経験者は半数超
よくある誤解。リスキリングとは目的ではない
年収700万円の正社員は3割近くがリスキリングなどを実践
【まとめ】リスキリングは目的ではなく自己実現の手段
昇給1割。リスキリングには意味がない?
マイナビ転職の正社員対象の調査によると、「リスキリングが必要だと思う」回答した人は約8割。しかし、リスキリング経験者にリスキリングの影響を尋ねると、実利的な「昇給した(11.2%)」「昇進・昇格した(6.4%)」はごく少数。リスキリングの趣旨である「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために必要なスキルを獲得する/させること」(経済産業省より)に関連する「良い条件で転職ができた(3.9%)」「再就職がうまくいった(3.9%)」などは上位に入らず、僅かな結果になりました。
「仕事や働き方の選択肢が広がる」と感じている経験者は半数超
では、リスキリングはまったく意味のないものなのでしょうか。もう少し、リスキリング経験者の調査回答を見てみましょう。「リスキリングのイメージ」を見ると「仕事や働き方の選択肢が広がる」が約6割、「転職しやすくなる」が約半数。いずれも未経験者の回答を大きく上回りました。また、「効率化や生産性向上につながる」「人の役にたてるようになる」など、日々の業務のなかで効果を実感するような項目においても、未経験者の回答を大きく上回る結果に。
もとよりリスキリングに対してポジティブな印象を持っているから実践したであろうことは差し引いても、実際にやった結果なお、半数以上の人が「仕事や働き方の選択肢が広がる」と感じていることは、注目すべきでしょう。
特に20代には「ずっと同じ会社で働き続ける」に重きを置かず、「自分のやりたいこと、望むワーク・ライフバランスに合わせて会社を乗り換えていく」というキャリア感の人が少なくないとの説も。今すぐ転職はしなくても、いずれ転職したくなった時のために「手札を増やしておける」ことは、メリットと言えそうです。
よくある誤解。リスキリングとは目的ではない
同調査では、いざリスキリングをしようと思っても、何をすればいいか分からないという悩みも明らかになりました。リスキリングをしていない理由として最多にあがったのは「時間がない」ですが、「何から始めればいいか分からない」「どんなスキルを身に付けたらいいのか分からない」という声も一定数あがっています。そこで振り返ってほしいのは、リスキリングはあくまで手段であって目的ではないということ。
たとえば、「不動産の仕事に携わりたいから宅建(宅地建物取引士)の資格を取る」であれば、宅建取得によって不動産業界への転職がスムーズになるなど、リスキリングのメリットを感じやすいでしょう。しかし、「人気の資格だから」と宅建を取得しても、勤務先で生かせる部門がなく転職する予定もなければ、ビジネス面でのメリットにはつながりにくいかもしれません。
自分が将来「どんな仕事をしたいか」「どんなポジションに付きたいか」「どんな働き方をしたいか(テレワークなど)」「誰に、どのように評価されたいか」などゴールを決めて、その将来像に近づくためにどのようなスキルが必要とされるのかを調べ、リスキリングを実践する。そのように始めていけば、ただ達成感を得るだけでなく、実りの多いリスキリングになるのではないでしょうか。
また、今既に身に付いているスキルと合わさることでより価値が高まるスキルや、自分の職種×デジタルの領域にチャレンジしていくのも、デジタル化で人の手を介さなくなる仕事が増えるなか、長く必要とされる人材であり続けるために有効だそう。いずれにせよ、リスキリングを始める時には、まずは自分がどのようなキャリアを歩みたいか考えることが大切と言えそうです。
▼将来への備えになるスキルの見つけ方
https://tensyoku-note-mynavi.jp/n/n8c69f32c5c00tensyoku-note-mynavi.jp
年収700万円の正社員は3割近くがリスキリングなどを実践
ちなみに、マイナビ転職の他の調査(※2)によると、年収700万~900万円の正社員の27.5%が「今の会社で賃金を上げるための勉強・リスキリングを行っている」という回答も。同結果は年収500万円を境に、リスキリングなどの実践者が増加する結果にもなっています。リスキリングに限らず、何歳になっても学びを厭わず、ビジネスや時代の変化に適応し、必要なスキルを積極的に身に付けようとする姿勢は、優秀なビジネスパーソンであるために必要な資質の一つなのかもしれません。
【まとめ】リスキリングは目的ではなく自己実現の手段
いかがでしたでしょうか。リスキリングは直近の昇給や昇進、転職に結びつかなくても、キャリアの選択肢を広げていくために有効な手段と言えるでしょう。昨今は、社員向けのリスキリングプログラムを用意している企業や、就業時間内に学べる制度を整えている企業も出てきており、以前より挑戦するハードルは低くなっています。これを機に、トライしてみるのもいいかもしれません。文・本城奈々子
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【リスキリングのヒントを探る】
meetscareer.tenshoku.mynavi.jp
【出典】
■正社員のリスキリング実態調査(2023年)~リスキリングで賃金は上がるのか~(マイナビ転職調べ)
https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/careertrend/13/?src=mcdata03
リスキリングに期待することなどの調査結果も載っています
■正社員の賃金上昇実態と生活満足度調査(マイナビ転職調べ)
https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/careertrend/12/?src=mcdata03
賃金の理想と現実のギャップなどの調査結果も載っています