歌手 シルビア・グラブ | 課題をクリアすると、面白くなってくる【Heroes File】

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第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる

歌手 シルビア・グラブさん

ミュージカルなどの舞台で、より一層の輝きを見せる俳優のシルビア・グラブさん。「サウンド・オブ・ミュージック」のサウンドトラックが部屋に流れているという、そんな家庭に育ったせいか、子どもの頃からミュージカルにはなじみがあった。
「他の仕事は考えられない」と言い切るほど今の仕事に惹(ひ)かれている。その理由と、これまでの歩み、そしてプロとして大切にしていることなどを伺った。

Profile

シルビア・グラブ/1974年東京都生まれ。父はスイス人、母は日本人。米ボストン大学音楽学部声楽科卒業。ミュージカルなど舞台を中心に活躍。2021年7月6日(火)から東京・新国立劇場 中劇場にて上演予定のミュージカル「日本の歴史」(三谷幸喜作・演出)に出演。

ミュージカルやストレートプレイなど舞台を中心に活躍している俳優のシルビアさん。2021年7月6日(火)から始まる三谷幸喜さん作・演出のミュージカル「日本の歴史」に出演する。卑弥呼の時代から太平洋戦争まで、約1700年にわたる日本の歴史上の人物たち60人以上を7人の俳優たちが演じ分け、歌って踊るという大胆な構成で、18年末の初演が好評だったのを受け、今回再演となった。

シルビアさんは初演時同様、7役ほどを演じ分ける。「『日本の歴史』と言いつつ、意外な展開も待ち受けています。しかも最後には物語のテーマがズシリと心に残る素晴らしいエンターテインメントショー。その再演をほぼ同じキャストでできるのが素直にうれしいです」

子どもの頃から歌と踊りが大好きだったというシルビアさん。「ちびっこ歌謡大賞」のような番組にもよく出演していた。その一環で12歳の時、ミュージカル「レ・ミゼラブル」(以下レミゼ)の日本初演時のオーディションを受ける。残念ながら不合格だったが、「いつかこの作品に出るんだ」と心に誓った。

インターナショナルスクールを卒業後、歌がうまくなりたくて米ボストン大学の声楽科へ進学。そして帰国後、芸能活動をスタートさせる。再びレミゼのオーディションに挑戦し、またも落ちてしまうが、その後に舞台「ジェリーズ・ガールズ」への出演が決まり、これがデビュー作となった。

歌手 シルビア・グラブさん

「この作品にタップダンスのシーンがあったのですが、踊りは大人になってから遠のいていたので集中的に猛練習しました。それもあって歌って踊るショーに出たいという思いが強くなっていったんです。もしレミゼが初舞台だったら、踊りをそんなに頑張ろうとは思わなかったかもしれません」

以降、ミュージカル作品への出演が続き、着実に俳優としてステップアップしていく。そんなシルビアさんに転機が訪れたのはデビューから3年後、演出家・宮本亞門さんが手がけた「アイ・ガット・マーマン」に出演した時だ。

「歌は平気だったのですが、日本語でセリフをしゃべることにコンプレックスがあったんです。でも亞門さんは、苦手意識のある言語だとしても、心と感情があれば必ず伝わると教えてくれました。この作品をきっかけに自分の感情を舞台でさらけ出す面白さを知りました」

お陰でセリフ中心のストレートプレイにも挑戦したいと思うようになった。与えられたことを一生懸命にやり、そこで見つけた課題をクリアすると面白くなって自分の力になる。それがシルビアさんの礎となっていった。

予期しない挑戦は新しい引き出しを増やす

歌手 シルビア・グラブさん

圧倒的な歌唱力と天性の華やかさで、今やミュージカル界にとってなくてはならない存在となったシルビアさん。「素晴らしい演出家や俳優と出会い、それがきっかけで新たな作品に呼んで頂いています。縁が縁をつないでくれたお陰で今があると思っています」

以前は強い感じのパンチのある役が多かったシルビアさんだが、最近は多様な役を演じている。その引き金の一つとなったのが、脚本家・演出家の三谷さんとの出会いだった。14年に出演した三谷さん作・演出の舞台「ショーガール」で、もらった役は何と「地味な女」。「それまで私にそういう役が巡ってきたことが一度もなかったので衝撃的でした」

以後、三谷さんと数々のタッグを組んできたシルビアさん。21年7月に上演されるミュージカル「日本の歴史」の役どころもなかなかユニークだ。織田信長や卑弥呼といった歴史上の人物を中心に7役ほどを演じる。

「初演時、シルビアの織田信長が見たかったと言われまして。その発想は一体どこから出てくるのか。予測不能な方です(笑)」。でも「演じたことのない役に挑戦するのは、役者としての引き出しが増えることになります。だから他の演出家の方も同じですが、どんな役をやらせてもらえるか、新しい作品に向かう時は毎回ワクワクします」。

初めて舞台に立ってから25年近くになる。20代の頃は自分のことしか見えなくて、とにかく与えられたものを必死にやるだけだった。「一心に頑張るというスタンスは今も変わらないのですが、30代に入ってから少し視野が広くなって周囲も見渡せるようになりました。最近は、さらにどうすれば共演者が居心地良く舞台にいられるかまで考えるようになったというか、そんな風に気を使うことまでできるようになりましたね(笑)」

今まで俳優をやめたいと思ったことはないという。「子どもの頃、実は引っ込み思案だったんです。でも、歌ったり誰かになりきったりすると人前に立つことができた。今も同じです。セリフという人の言葉を借りれば自信を持って舞台に立てるし、誰かに何かを伝えられそうな気がして胸が高まります。だから私はこの仕事を一生続けたいんだと最近気づきました」

もう一つ、昔から変わっていないことがある。それは頑張っている姿をお客さんに絶対見せないこと。「チケットを買って頂いているのに、そんなところを見せてはプロとは言えないと思うんです」。だからこそ日々の稽古に情熱を注ぐ。「常にベストな状態をキープし、これからも新たな作品に挑戦し続けていくつもりです」

ヒーローへの3つの質問

歌手 シルビア・グラブさん

Q 現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?

俳優ではなかったとしたら歌手ですね。いずれにしても他の仕事は考えられません。

Q 人生に影響を与えた本は何ですか?

インターナショナルスクールの高校生の時に国語(英語)の授業で小説『レベッカ』を読みました。ダンヴァース夫人というキャラクターがとても強烈で印象に残っていたのですが、その舞台化作品に20年後まさか自分が出演し、ダンヴァース夫人を演じることになるとは。強い巡り合わせを感じるだけに、私にとっては大切な作品です。

Q あなたの「勝負●●」は何ですか?

勝負の「前」ではなく「後」ですが、いい舞台、いい仕事の後のおいしいワインです。ロングランの舞台の千秋楽には、買っておいたいいシャンパンを必ず開けます。自分の中での祝杯ですね。


Information

ミュージカル「日本の歴史」に出演!

2018年の年末から翌年初頭にかけて上演された、三谷幸喜さん作・演出のミュージカル「日本の歴史」。卑弥呼の時代から太平洋戦争までの約1700年の歴史を凝縮したストーリー、というだけでなく、そこに、ある家族の物語も重ね合わせるという斬新な構成で人間の因果が描かれる。今回2年半ぶりの再演となり、中井貴一さんや香取慎吾さんら初演メンバーに瀬戸康史さんが加わった7人のキャストで、総勢60人以上の登場人物を演じ分け、歌い踊る。シルビア・グラブさんも初演メンバーの一人。「演じる役が多いだけに俳優陣は何度も着替えます。また、俳優自ら舞台セットの転換を行うなどやや小劇場っぽい雰囲気のあるミュージカル! それをこんな豪華キャストでやるっていうのはそうそうないと思います。面白いですよ、ぜひ観(み)に来てください」とシルビアさん。

日程:2021年7月6日(火)~18日(日)
会場:東京・新国立劇場 中劇場
音楽:荻野清子
出演:中井貴一、香取慎吾、新納慎也、瀬戸康史、シルビア・グラブ、宮澤エマ、秋元才加
公式サイト:http://www.siscompany.com/mitanisaien
※大阪公演もあり