俳優・歌手/古川雄大 | 乗り越えた先で出会う新たな自分が楽しみ

第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる

俳優・歌手/古川雄大

子どもの頃からダンスが好きだったという古川雄大さん。そこから歌や演技に目覚め、俳優という表現者を目指すようになった。
ミュージカルでの活躍が目立っていた古川さんだが、ここに来てドラマや映画などでも独特のキャラクターを演じることが多くなり、異彩を放っている。
現在取り組んでいる舞台の話、そして転機となったミュージカルのことなどをじっくりと聞いた。

Profile

ふるかわ・ゆうた/1987年長野県生まれ。2007年に俳優デビュー。ミュージカルなどの舞台作品ほか、近年はドラマや映画など映像作品でも活躍。22年2月7日(月)から東京芸術劇場 プレイハウス(池袋)にて上演予定の舞台「シラノ・ド・ベルジュラック」で主演を務める。

2020年にNHK連続テレビ小説「エール」で、自らを「ミュージックティーチャー」と呼ぶ歌の先生役としてブレークした古川さん。ドラマや映画など映像作品への出演も目立ってきたが、長く活躍の場としてきた舞台ではもっぱらミュージカルが主戦場だ。気品漂うたたずまいに華やかなダンスと美声で「ミュージカル界のプリンス」との呼び声も高く、「モーツァルト!」など数々の人気作品に出演してきた。

そんな古川さんが満を持して10年ぶりにストレートプレイの主演に挑む。22年2月7日(月)から東京・池袋の東京芸術劇場で上演予定の舞台「シラノ・ド・ベルジュラック」だ。鼻が大きいというコンプレックスに悩む男シラノが、一人の女性を愛し続ける物語は世界各国で愛され、日本でも何度も上演されている。「シラノはコンプレックスを隠したいがゆえ明るく振る舞います。僕にもそういう面があるので、彼を通して自分の弱さに向き合うことができました」

今作は従来のシラノとは趣が異なり、現代的に脚色されている。「なんとシラノの一番の特徴である鼻をつけず、当時をほうふつとさせるようなクラシカルな衣装もありません。セットもごくシンプル。しかも原作で語られる詩の美しさを表現する形として、マイクを持ってラップを歌うという前代未聞の舞台になります。ただ、斬新な演出とはいえ観客の皆さんにはシラノ本来の世界観を堪能してほしいという思いもある。僕にとっては大きな挑戦。これを乗り越えた先には新しい自分が待っている気がして、今からワクワクしています」

俳優・歌手/古川雄大

出身は長野県。中学生の頃、テレビ番組で踊るバックダンサーを見て憧れ、地元のダンススクールへ通い始める。ダンス仲間にも刺激を受け、次第に歌や演技などに興味が湧いてきた古川さんは、高校卒業後に俳優を目指して上京。最初の1年はダンサーとして働くも、俳優の活動がしたいという思いが強かったのでオーディションを受け続けた。

そうした地道な努力の中で射止めたのが、人気ミュージカル「テニスの王子様」への出演だった。「歌もダンスも演技も全てを混ぜ合わせたような作品でした。多少演技が未熟でもエネルギッシュであることを大事にされた。若手俳優一人ひとりがここから成長していくのを見守って応援してくれるような、そんな雰囲気が現場にはありました」

古川さん自身、「テニスの王子様」に出会ったことで俳優という仕事の面白さに改めて目覚め、映像作品への出演も徐々に増えていく。そして12年、運命を変えるミュージカルと出会うことになる。

必死になると見えてくるものがあると知った

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俳優、歌手として快進撃を続ける古川さん。最近はインパクトの強いキャラクターを演じたり、主演ドラマの主題歌を手掛けたりとますます守備範囲を広げている。そんな古川さんの人生最大のターニングポイントとなったのが、12年、ミュージカル「エリザベート」の皇太子ルドルフ役への抜擢(ばってき)だ。

若手の登竜門とも言われる役。しかし、古川さんは稽古場へ入ってぼうぜんとしたという。出演者が一流のミュージカル俳優ばかりだったからだ。「実はそれまで本格的なミュージカルを観(み)たことがなく、音楽活動はしていたものの声楽の素養も基礎もなかったんです」

圧倒的に実力不足なのは一目瞭然。それでも出演するからには共演者たちのレベルに少しでも追いつきたい。そう思った古川さんはすぐに声楽のレッスンに通い始める。「ただ、講師の言うことがよく理解できなくて、これはもう自力でやるしかないと考えて歌い込んでいたら今度はのどを壊してしまった。そんなことを重ねる毎日でした」

でも、そうやってがむしゃらに取り組んで芝居の稽古を積んでいくうちに、次第に面白くなって気づいたらミュージカルが好きになっていたという。「その時点で与えられたことを必死に頑張っていると、見えてくるもの、つかめるものがあるんだということを知りました。次はこのミュージカルのこんな役に挑戦したいという目標までできてしまいました(笑)」

「エリザベート」では演出の小池修一郎さんとの出会いも大きかった。「小池先生は一人ひとりをよく見ておられ、多少下手でも地道に努力している人を評価してくれました。その翌年『ロミオ&ジュリエット』の主演に抜擢してもらい、ちゃんと見てくださっていたんだと感謝の気持ちでいっぱいでした」

ミュージカルを始め、舞台は「生もの」。それゆえの緊張感があり、その時にしか生まれないものがある。「今はそこに魅力を感じています。一つの作品に没頭できるところも好きです」。現在は間もなく始まる舞台「シラノ・ド・ベルジュラック」のことで頭がいっぱいだ。「稽古中から考え、悩んで、演出家からのダメ出しを受け、違うやり方をしてまた失敗といったことを繰り返してきました。大変でしたが心身共にかなり鍛えられた気がします」

芸能界へ入った20歳の頃、お金がなくて生活も苦しかった。「でも、夢を諦めなくて良かった。めげることも多々あったけど、とにかくやり続けることで何とかなって、結果的に望む方向に進むことができましたから」

ヘアメイク:窪田健吾(aiutare)
スタイリスト:根岸豪(THE Six)

ヒーローへの3つの質問

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Q 現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?

子どもや動物が好きなので、保育士さんか幼稚園の先生、もしくはペット関連の仕事についていたかもしれません。

Q 人生に影響を与えた本は何ですか?

舞台「シラノ・ド・ベルジュラック」の主演を務めさせていただくことが決まってから、エドモン・ロスタンさんが書いた原作を読みました。シラノの淡い恋の物語というだけでなく、人間の在り方みたいなものを訴えかけてくるようにも感じました。「今後、自分とどう向き合って生きていくのか」「他人とどう接していけばいいのか」などすごく考えさせられる内容で、自分の「これから」にすごく影響を与えてくれる本でした。

Q あなたの「勝負●●」は何ですか?

本番前のルーチンを決めて舞台に臨んでいた時期があったのですが、ある時、時間がなくてそれができず舞台上で焦ってしまったことがあったんです。だから今はあえて「勝負●●」は持たないようにしています。

Information

舞台「シラノ・ド・ベルジュラック」に主演!

17世紀フランスに実在した、詩人にして剣豪で勇気ある男シラノが主人公の戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」。大きな鼻にコンプレックスを抱えながら一人の女性を慕い続けたシラノの愛の物語は、1897年に初演されて以降、世界各国で上演され続けてきた。2019年秋から20年にかけてロンドンで上演された際は、劇作家マーティン・クリンプによって現代的に脚色され、新生「シラノ・ド・ベルジュラック」が誕生。この現代版が日本で初上演されるわけだが、その主演を務めるのが古川雄大さんだ。舞台上のセットはシンプルで、役者も古典的な衣装はまとわず、原作で語られる詩の美しさはラップで表現するという、これまでにない「シラノ」となっている。「シラノの物語が好きな人にも違和感なく楽しんでもらえるように頑張ります。また、初めてシラノに触れる方にも楽しんでほしい。コンプレックスにどう向き合い、どう立ち居振る舞うのかを深く考えさせてくれる作品です」と古川さん。

日程:2022年2月7日(月)~20日(日)
会場:東京芸術劇場 プレイハウス
出演:古川雄大、馬場ふみか、浜中文一、大鶴佐助、章平、堀部圭亮、銀粉蝶ほか
作:エドモン・ロスタン、脚色:マーティン・クリンプ、翻訳・演出:谷賢一
公式サイト:cyrano.jp
※大阪公演も予定

転載元:https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/heroes_file/245/

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