ストリート・スタイル・フォトグラファー/シトウ レイ | 思いがけない依頼から始まった「天職」

第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる

ストリート・スタイル・フォトグラファー/シトウ レイ

笑顔がチャーミング。東京を始め、海外の街のストリートファッションを国内外に向けて発信し続けているフォトグラファーでジャーナリストのシトウレイさん。
10年以上にわたり、ファインダー越しに人とストリートの変化を見つめてきた経験の中で、独自の審美眼を磨いてきた。そんなシトウさんだからこそ、たどり着いた仕事観があった。

Profile

シトウ・レイ/石川県出身。早稲田大学卒業。ストリートファッション誌で活躍後、2007年に独立。翌年、ブログ「STYLE from TOKYO」を開設。現在、雑誌などの連載ほか、ユーチューブチャンネル「シトウレイ チャンネル NEW !!!」でファッション情報を発信中。

国内外のブランドショップやセレクトショップが軒を連ねる東京の原宿・青山を中心に、ストリートファッションのスナップ写真を撮り続けているフォトグラファーでジャーナリストのシトウさん。

パリコレなどのファッションショーを取材し、朝日新聞デジタル「&w」や雑誌などメディアにも寄稿、そして自らの着こなしやファッションの楽しみ方をSNSやユーチューブで発信。今やファッション業界を牽引(けんいん)する一人として人気が高く、テレビやラジオへの出演、商品プロデュースなどジャンルを超えて活躍中だ。

シトウさんは大学1年の時、原宿でスカウトされてモデルデビューした。雑誌やCMなどで活躍していたが、「あくまでアルバイト感覚。ずっとやるつもりはなかったです」という。とはいえ他にしたいこともなく、卒業後もモデルの仕事を続けていた。

転機となったのは2004年、あるファッション誌の編集長から突然、カメラで撮る仕事を依頼されたことだ。「原宿であなたが好きなファッションをしている人を撮影してきてと。驚きましたが、未経験を承知の上ですし、断る理由も特になかったので挑戦してみました」

ストリート・スタイル・フォトグラファー/シトウ レイ

これが想像以上に面白かった。「宝探しみたいな感じでワクワクしながら取り組みました。中にはワンピースをマフラーみたいに巻いた路上生活者の方がいて、あまりにしゃれていたので思わず撮らせてもらったこともあります」

その独特の審美眼と物おじしない性格が評価され、同誌に掲載するスナップ写真を約3年間撮り続けることになる。そしてシトウさんは、いつしかこれを本業にしたいと思い始める。「着こなしにはその人の生き方が反映されているように感じました。それに、ロックな格好で一見怖そうな男性が実はおばあちゃん思いだったというギャップに接したりして、撮影を通して色んな人の人生に触れられるのがすごく楽しかったですね」

でも、その雑誌は写真がメインでそこまで伝えることができなかった。出会った人たちが持つそれぞれの物語を写真と文章でもっと伝えたい。そんな気持ちが強くなり、雑誌の仕事を降りて08年から自らが発信するメディアとしてブログを開始。そこでストリートスナップを発表することにした。

当時、東京の「今」のファッションを発信するブログがあまりなかったこともあり、シトウさんのブログは国内だけでなく海外からも注目を集め、アクセス数が急速に伸びていく。こうして、業界紙の連載など仕事は他のものへも広がっていった。

挑戦したい時はワクワクする服を着る

ストリート・スタイル・フォトグラファー/シトウ レイ

20年秋、フォトグラファーでジャーナリストでもあるシトウさんの写真集『Style on the Street:From Tokyo and Beyond』が世界同時発売された。シトウさんが20代からの12年間、東京の原宿・青山を始め世界各地の街で撮影した400枚以上のスナップ写真を掲載。ファッションの楽しさや自由さが伝わってくるような一冊だ。

まさに自身の集大成でもあるが、ストリートスナップは今なお続け、週2日は街行く人々を撮っているという。「たとえそれほど似合っていなくても、とにかく装いが大好きというオーラを放っている人を撮影させて頂いています。もちろん撮りたい人に必ず出会えるわけではなく、空振りが何日も続くことも多いです」

海外のファッションショーの際には、会場に出入りする人たちのスナップ写真をカメラに収めるため、何時間も立ちっぱなしのこともある。「それでも、ファッションを楽しむ人に出会えると疲れも吹っ飛び、元気になります」

写真集を発売する前年の19年、ストリートスナップの発信の場をブログからSNSへ移行した。20年には、自身の着こなし方やショップなどを紹介するユーチューブチャンネルを開始。「これからは動画の時代だという予感がありました。それと、18年ごろから得意な仕事をルーティンでこなしている気がしてモヤモヤしていたのもあります。そこを打破するには今一度ルーキーになって、もがきながら何かを成し遂げるしかないと考え、未知の世界であるユーチューブチャンネルを始めました」

カロリーを消費し尽くし、「今日も疲れた」と笑って言える人生が好きだという。だからこそあえて安定を避けゼロから始めたくなる。

22年5月、ユーチューブチャンネルを大幅にリニューアルした。「またルーキーに戻りたくなって(笑)。順調すぎると自分に飽きてしまう。それが怖いというのもあります」。その感覚はトライ&エラーの多いストリートスナップを長く撮り続けた中で培われたという。「撮影したいと声をかけた時、断られることも多いんです。さすがに打たれ強くなります(笑)」

新しいユーチューブチャンネルではショップ店員にスポットを当てたり、東京以外の街にも出かけていったりと新企画が満載。「何を着るかではなく、どう着るか。特に、何かに挑戦したい時は似合う服や安心な服ではなく、自分が心底ワクワクする服を選ぶことをお勧めします」と楽しそうに語るシトウさん。その言葉からは、自分を奮い立たせるために自身の「好き」をもっと信じていいし、ファッションの力に頼ってもいいと、そう思わせてくれる。

ヒーローへの3つの質問

ストリート・スタイル・フォトグラファー/シトウ レイ

Q 現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?

学生時代にカフェでアルバイトをしていた時、一緒に働いていた年上の人に「将来は何になりたい?」と聞かれ、「本屋になりたい」と答えたことがありました。その人からは「夢は大きく持て!」と言われたことも覚えています。

Q 人生に影響を与えた本は何ですか?

2冊あります。一つは高2の現代国語の授業で知った夏目漱石の『こころ』。文字だけで人の心の機微を表現できる文学ってなんて奥深くて面白いんだと衝撃を受けました。それがきっかけで早稲田大学文学部を目指すことにしたのです。もう1冊は世界的に有名なストリートフォトグラファーであるスコット・シューマンの写真集『The Sartorialist(ザ・サルトリアリスト)』。私もこの人のようにストリートスナップを撮っていこうと決めて独り立ちしました。

Q あなたの「勝負●●」は何ですか?

17歳の時に買った「ロレックス」の腕時計です。全然身の丈に合っていない高級時計なんですが、これに見合うような人間になろうと思って清水の舞台から飛び降りる覚悟で購入。それ相応に頑張れば希望する早稲田大学にも受かるはずと思って猛勉強しました。お陰で無事入学。今も愛用していて、寝る時もつけています。

Information

「シトウレイ チャンネル NEW !!!」オープン!

2020年から開始されたユーチューブチャンネル「シトウレイ チャンネル」が2年の節目を迎えた22年5月14日、装いも新たに第2章「シトウレイ チャンネル NEW !!!」として再スタート。これまで軸にしてきたファッションの情報発信という部分は変わらないが、これからは「360度全方位でファッションを楽しむ!」をコンセプトに、ストリートからオートクチュール、ビンテージファッションまで幅広く自由に様々なファッションを紹介していく。「今までは私自身のスタイリングを紹介してきたのですが、新しいチャンネルでは元気に頑張っているショップ店員さんの1週間のスタイリングを紹介したり、東京以外の様々な街にも出掛けていったりしていこうと思っています。シトウチャンネルの第2章、すでに始まっているのでご覧ください」とシトウさん。

「シトウレイ チャンネル NEW !!!」
https://www.youtube.com/channel/UCdG3KYNsdn2xXdf6NzjKeHA

転載元:https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/heroes_file/252/

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