俳優/間宮祥太朗 | 続けられないと感じたら、とどまらずにほかを探す

第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる

俳優/間宮祥太朗さん

数々の話題作に出演し、クセの強い漫画キャラクターから、さえない青年まで実に多彩な役柄を見事に演じ分けてきた俳優、間宮祥太朗さん。
精力的に仕事に取り組んでいる印象だが、仕事はあくまでも生きていくための手段と捉えている。どこか落ち着いていて、どんなことにも動じない。そんな間宮さんらしい仕事観を今回伺うことができた。

Profile

まみや・しょうたろう/1993年神奈川県生まれ。2008年ドラマで俳優デビュー。18年NHK連続テレビ小説「半分、青い。」に出演し人気を博す。東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンにて22年11月23日(水・祝)から公演予定の舞台「ツダマンの世界」に出演。

話題のドラマや映画への出演が続き、今最も勢いのある俳優の一人として人気を得ている間宮さん。この2022年末は、劇作家・演出家の松尾スズキさんが2年ぶりに書き下ろした新作の舞台作品「ツダマンの世界」で締めくくる予定だ。

昭和初期から戦後にかけた時代を背景に、小説家・ツダマンと彼に関わる人たちの濃密な愛憎劇を描いた物語。間宮さんはツダマンを翻弄(ほんろう)する弟子・葉蔵を演じる。「登場人物それぞれがナルシシズムを抱えていて、それらが複雑に絡み合っていきます。阿部サダヲさん演じるツダマンと、弟子の葉蔵の関係が真剣だけど滑稽なのでぜひ注目してほしいです」

子どもの頃、野球少年だったという間宮さん。エースではあったが、中学2年の時、懸命に野球に打ち込む同級生を見て「彼の努力と情熱にはかなわないし、あそこまで頑張ろうとは思えない」と感じている自分に気づき野球をやめる。「やり続けられる気がないものに時間をかけたくなかった。ほかに夢中になるものを探そうと思ったんです」。その頃から、一度決断すると行動は早かったそうだ。

転機が訪れたのは野球をやめてしばらくした頃。先輩に誘われて雑誌のスナップ撮影に参加したところ、それが縁で現在所属する芸能事務所から声が掛かり、俳優として活動を始めることになったのである。「映画がすごく好きだったので、映画業界の近くに身を置けることがたまらなくうれしかったですね」

そんな間宮さんが、俳優という職業の魅力に気づいたのは17歳の時。初めての舞台経験となった作品「ハーパー・リーガン」がきっかけだった。「先輩の方々が稽古場で役を作り上げていく過程と、本番で観客を魅了する演技を目の当たりにさせてもらい、もう圧倒されっぱなし。これはすごい世界だなと。そしてぜひこの仕事を続けてみようと思いました」

以後、ジャンルを問わずさまざまな作品に出演していく。24歳の時には映画で初主演を飾り、翌年のNHK連続テレビ小説「半分、青い。」で一気に広く知られる存在に。「オーディションを受け続けていた10代の頃は、自分を印象づけることに懸命だった気がしますが、それがいつしか、その作品で自分に何が求められているのかを考えるようになった」という間宮さん。

「でも最近は、いつまでも求められることだけやっていても仕方ないなと思うことも増えてきました。毎日髪の毛が伸びていることを意識せずに過ごしているのに、ある時、ふとすごく伸びているなって気づくじゃないですか。そんな感じでたぶん僕も成長しているんじゃないかなと思います」

雄大な自然に比べたら失敗も取るに足らない

俳優/間宮祥太朗さん

演じる役柄によってガラリと雰囲気を変える。間宮さんはその変幻自在な役回りを自身でも楽しんでいる。「特に今年は短いスパンで印象の異なる役をやらせてもらえたのでうれしかったです」。そして何より、演じているその瞬間が好きだという。

「役のことを真剣に考えて臨んでも本番の芝居が全然ダメだったり、何も考えずにやってみたら意外に良かったり。また、相手役の出方次第で変わったり。演技には方程式もレシピもないので、毎回自分でこれ以上はないという演技にしたいと、もがき、探しながらやるしかない。そこに魅力を感じています」

15歳で俳優デビューし、そこから15年近くのキャリアを持つが、いつも目の前の仕事に集中してきただけだと言い切る。

「やったことのないジャンルの作品に出演する時も、新たな挑戦という気負いはなく、フラットな気持ちで臨むことが多いです」

どんな仕事でも緊張することはないという。現在出演中の舞台「ツダマンの世界」も、実に6年ぶりの舞台であり、周囲の間宮さんへの期待もかなり高いのだが、プレッシャーはまったくなく、むしろ楽しみでしかないそうだ。

「仕事で失敗しても、悔やんだり落ち込んだりすることがないんです。失敗は起きてしまうことだし、過ぎていくこと。嘆いたりして時間を費やすのはもったいないですよ」

また、大きな目標を掲げて切磋琢磨(せっさたくま)する人もいるが、間宮さんは真逆のタイプ。「乗り越えなければダメだと思って自分の実力以上のものを発揮しようとすると、僕の場合はどうしても不安が生まれますから」と。

泰然としていて、肩の力が抜けている。「それはおそらく、幼い頃から祖父母と一緒に海外の世界遺産や自然保護区へ行く機会があったことが大きいかもしれません。そういう原体験が僕の中に息づいているから、多少うまくいかないことがあっても、雄大な自然に比べたら取るに足らないことだと思えるんだと思います」

だから、他人から何を言われても気にならないという。「仕事での評価と自分の人生で重要としていることはまったく別物です。俳優である前に一人の人間として人生を楽しみたい」

そう語る間宮さんの原動力は日常生活。何げないささやかな幸せが、仕事への意欲を駆り立ててくれるのだそうだ。

スタイリスト:津野真吾(impiger)
ヘアメイク:三宅茜

ヒーローへの3つの質問

俳優/間宮祥太朗さん

Q 現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?

中学生の頃からバンドをやっていたので、もし今の芸能事務所に入っていなかったらそのままバンド活動を続けていたと思います。

Q 人生に影響を与えた本は何ですか?

伊丹十三さんの『女たちよ!』です。身の回りのものをはじめ、何かを選択する時に必ずそれを選んだ理由が自分の中に明確にあるという人生っていいなと思いました。自分もかくありたいと思えた一冊です。

Q あなたの「勝負●●」は何ですか?

特に緊張もしない性格なので、ないですね。

Information

舞台「ツダマンの世界」に出演!

東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンで、2022年11月23日(水・祝)~12月18日(日)に舞台「ツダマンの世界」が上演される予定だ。同劇場の芸術監督を務める松尾スズキさんが2年ぶりに書き下ろした新作。昭和初期から戦後にかけた時代を舞台に、主人公の小説家・ツダマンとそれを取り巻く人々の濃密な愛憎劇が描かれる。ツダマンこと、弟子に翻弄(ほんろう)される津田万治を演じるのは阿部サダヲさん。自己愛と名声欲の強い弟子・長谷川葉蔵を間宮祥太朗さん。ツダマンの妻・津田数には吉田羊さん。そして江口のりこさん、村杉蝉之介さん、笠松はるさん、見上愛さん、皆川猿時さんら実力派俳優が集結。間宮さんは「松尾さんと初めてお会いした時、ツダマンの話と絡めてご自身と宮藤官九郎さんとの関係について話してくれました。『あいつ(宮藤さん)を見てるとなんか頑張らないといけないなという気持ちになる』と。そう聞くと、阿部さん演じるツダマンが松尾さんぽく見えてきます」と語る。久々の舞台に心弾ませ、ワクワクしているという間宮さん。その演じっぷりにも注目したい。

※12月23日(金)~29日(木)に京都公演も予定。
公式サイト:https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/22_tsudaman/

転載元:https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/heroes_file/258/