【CASE11】プロジェクトマネージャー × アジア初となる民間商業宇宙港の運営

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「宇宙の仕事」と聞くと、一部の専門家たちだけを対象とした”特別な仕事”と思ってしまいがちですが、実態はその真逆。特別な経験や知識がなくとも携われる仕事がたくさんある業界なのです。

そんな宇宙産業のさまざまな仕事を紹介する『宇宙の仕事辞典』の第11回。アジア初の民間商業宇宙港となる『北海道スペースポート』におけるプロジェクトマネージャーの仕事について、SPACE COTANの大出 大輔さんにお話を伺いました。

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SPACE COTAN/大出 大輔さん


【イントロダクション】SPACE COTANのビジネスとは?

アメリカの大手投資銀行によれば、2040年には宇宙産業の市場規模が1.1兆ドル(約160兆円)に達するという試算が出ています。2019年の市場規模が約40兆円なので、実に4倍もの成長が見込まれているのです。これは、地球観測データの利活用をはじめとした宇宙の商業利用が世界中で進んでいることを表していますが、そのキーデバイスとなるのが人工衛星。その数も年を追うごとに増加の一途をたどっており、現在1万機を超える人工衛星が地球軌道上を周回していると言われています。

当然、人工衛星の軌道投入にはロケットを使うことになるため、世界的にロケットの打ち上げ需要が急増しています。ところが、日本国内で行われるロケットの打ち上げは年に数回程度しかありません。これは商業宇宙港(スペースポート)が国内になく、民間企業が自由にロケット打ち上げを行なうことができないことが一因です。実は、アジア圏全体で見ても民間の商業宇宙港は少なく、この市場で欧米が先行する大きな要因となっています。

この状況を打破すべく2021年4月に設立されたのがSPACE COTANです。民間に開かれた宇宙港をつくるという『北海道スペースポート(HOSPO)構想』を発表した北海道大樹町から、HOSPOのプロジェクト推進業務全般の委任を受けて事業をスタートさせました。同社のビジョンは、HOSPOを事業の中核として、世界中から宇宙に関心を寄せるすべての人々が集まる「宇宙版シリコンバレー」を北海道の地につくること。そのため現在、実験・打ち上げ施設や滑走路の建設および整備に向けて企業版ふるさと納税等を活用した資金調達を進めています。また、ロケット会社とのコンタクト、さらには宇宙産業の促進に向けた新規事業の開発などにも取り組んでいます。

どんな仕事なのか教えてください

私はCOO(最高執行役員)として、様々なプロジェクトの実行に関わっています。ひとつが資金調達です。HOSPOでは資金調達に『企業版ふるさと納税』を活用しており、企業に趣旨を理解してもらうための説明を行っています。また、民間企業とコラボレートした新規事業の開発も進めています。例えば、北海道電力と提携し、電気料金の一部がHOSPOの整備に活用される『宇宙でんき』を立ち上げたほか、北海道コカ・コーラボトリングやサントリービバレッジソリューションとは売上金の一部が大樹町に寄付される『HOSPO 支援自販機』の開発をしました。

ふたつ目が世界中のロケット会社への営業活動です。HOSPOではすでに観測ロケット用のロケット発射場(以下、射場)が運用中で3回宇宙空間にも到達していますが、2023年度に人工衛星用ロケットの射場『Launch Copmplex-1』が完成する予定で、そのため世界中のロケット会社へのアプローチを始めています。HOSPOの建設を進めている大樹町は、ロケットの打ち上げ方向に適した東と南に海が広がっていて、かつ年間を通して晴天が多いという、射場として最適な地理的・環境的なアドバンテージを持っています。このため、すでにアプローチしたロケット会社各社から好感触を得ています。打ち上げがスタートすれば、営業活動だけでなく海外からの機体の輸送からHOSPOでの組立、実験、さらには打ち上げまでプロジェクトを一貫してマネジメントすることになります。

この仕事のやりがい・面白さは

宇宙ビジネスの可能性の大きさが、私にとっては一番の魅力です。私が生まれたのは1991年のことで、生まれて間もなくバブルが弾けました。つまり生まれてこの方、日本経済が低迷し、急速に社会の少子高齢化が進むという暗い時代で育ってきたというわけです。いま私には1歳になる子どもがいますが、子どもたちの世代には「この国に生まれてよかった」と思ってもらえる日本にしていきたい。この先、大きな成長が見込める宇宙産業には、それを実現できるポテンシャルが充分にあり、HOSPOは起爆剤になれると思っています。

実際、日本の宇宙産業が世界から遅れを取っている原因のひとつに、ロケットの打ち上げ数が圧倒的に少ないことが挙げられます。先進国であるアメリカや中国が年間、40機以上打ち上げているのに対し、日本は数機程度。ここを根本的に変えられるのがHOSPOです。HOSPOがあることで、宇宙に関わる大勢の人が日本に集まるようになって「宇宙版シリコンバレー」が形成され、宇宙産業を核にして日本が世界に勝っていく姿を子どもたちに見せることができるのではないかと考えています。

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この仕事の難しさ・大変な部分は

現在の仕事の中では、資金調達に最も苦心しています。2つの射場を建設するのに総工費として60億円以上が必要なほか、有人スペースプレーンの離発着や宇宙空間を経由して世界中を1時間以内で移動できるようにするP2P(高速2地点間輸送)のための3,000m級の滑走路を整備する計画もあり、それには300億円近くかかる試算が出ています。

エクイティファイナンスを活用して建設費を調達することも検討しましたが、それだと出資者となる特定の企業の色が付いてしまう恐れがあります。また、出資者への利益還元のコストから、ロケット打ち上げ市場でのコスト競争力を失う恐れもありました。そこで考え出した手法のひとつが、企業版ふるさと納税の活用です。おかげさまでHOSPOのビジョンに賛同してくれる企業は少なくなく、2021年度には7億円を超える寄附を集めることができました。

今後、射場が整備されれば、いよいよ人工衛星用ロケットの打ち上げが始まります。そうなると、案件ごとにプロジェクトを回していく必要があり、また違った大変さが出てくると思っています。

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この仕事で求められる資質や、活かせる経験・スキル

私は大学で建築工学を学び、大学院では耐震分野の研究を行っていました。そのため、最初は大手の建設会社に研究職で入社し、耐震分野の製品開発に携わっていました。それが会社の人から声を掛けられたことがきっかけで、『S-Booster2018(内閣府主催の宇宙ビジネスアイデアコンテスト)』にエントリーすることになり、「地球内部のCTスキャン」というアイデアで賞をもらい、宇宙との接点ができたのです。その後、SPACE COTANの立ち上げメンバーの1人として声がかかって今にいたるわけですが、元々は宇宙と全く関係のない出自の人間でした。

ちなみに当社の他のメンバーとしては、蒸発濃縮装置や排水処理プラントの設計を行ってきたCTO(最高技術責任者)や、自動車メーカーのマーケティングで活躍してきたCMO(最高マーケティング責任者)など、やはり宇宙以外の業界で活躍してきた人材が在籍しています。

今後の事業展開を考えると、当社ではロケット会社への営業からロケットの輸送、現場での組立・実験、打ち上げの際の運用まで、一貫したサービスを提供できる体制づくりを進めていく計画です。そのため、商社で海外企業との商談や輸出入業務を経験してきた人やプラントエンジニアなど、さまざまなスキルを持った人材が活躍できるフィールドが拡がっています。

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【これから宇宙ビジネスにジョインする方へ】

●私が宇宙を仕事にした理由
私は社会人になるまで、宇宙の仕事がしたいとは全く思っていませんでした。むしろ、惑星探査等のニュースを見て、ビジネス効果の観点から疑問視していたくらいです。それが変わったのは、建設会社であらゆる分野での新規事業を検討したことがきっかけです。その後2019年になって、学生が共同でロケットを打ち上げるイベントに参加。人工衛星の開発・製造を手掛ける会社との出会いが、私の人生を一変させました。翌年、その会社からロケットの射場を運営する会社の設立にあたり、共同設立者に興味がないかと連絡を受けたのです。

当時、結婚して東京に家を買ったばかりだったのでかなり悩みました。それでも、宇宙産業の振興が日本の明るい未来につながると確信し、宇宙産業に身を投じる決断をしました。

●読者へのメッセージ
採用面接でも、志望理由に宇宙への憧れを挙げる人が少なくありません。決して悪いことではありませんが、いまや宇宙はロマンだけを語る場ではなく熾烈なビジネスの場。世界を相手に競争を繰り広げていくことなります。

ただ、日本にはアドバンテージがいくつもあって、太平洋に向けて大きく開かれている地理的優位性や人工衛星の開発・製造等における技術力の高さ、さらには宇宙好きの人が多いため優秀な人材が確保しやすいという点は、他の国にはない強みだと考えています。こうした点から考えると、宇宙産業は世界の成長産業の中でも日本が勝ちやすい産業であると言えます。ぜひ一緒に、この可能性にチャレンジして、経済成長する明るい日本を創っていきましょう。

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