嘉島さんを変えたひと言は、自分が思い描く「先輩像」とのギャップに引け目を感じていた時に上司からかけられた言葉。その言葉により、率先して新しいチャレンジをすることは挑戦する土壌を生み、会社はもちろんのこと自分にも還元される体験をします。
そして、こういった前向きな行動を見せることも先輩の一つの姿と感じ、それまでの「先輩像」から解放されていきました。
Q.)嘉島さんがご自身のキャリア観において大事にされている軸に影響を与えた上司や先輩、あるいは同僚に言われたひと言について教えてください。
“前例がないことこそ、「先輩」であるきみがやるべきことなんじゃないかな”
Q.)このひと言をもらう前の嘉島さんはどんな状態だったんでしょうか?
それまで自分が得意だったインタビューなどは別の部署の仕事で、私に掲げられた目標はファッションやメイクなどの記事をつくり、新しいユーザーを獲得すること。「インタビューがダメならエッセイを書いてみたい」と上司に提案するも「媒体に合っていないからねぇ」と言われ、悶々とする日々を送っていました。
個人的に書いているブログは着実に数字を伸ばしているのに、本業ではその知見も生かせない。得意技を出せない状況で、どうやって結果を出せばいいのか分からず、焦りは増すばかりでした。
そんななか、本社の上司と久しぶりに1on1をすることになりました。
「日本市場でエッセイが受けないとは思えない」「得意技を出せないのに活躍を求められてつらい」と、ブログの数値を見せながら上司にキャリアを相談していると「エッセイ、書いてみればいいんじゃない? 僕がきみの上長に言っておくよ」とサクッと提案してくれたのでした。
さらに上司は続けます。
「きみのブログの数値を見ると、結果が出ているようだし。アメリカではあまりエッセイは読まれないけど、インドでは逆に人気ジャンルだから、日本でもウケるかもしれない。それに、もし結果が出なくても、新しいことにチャレンジするのはすごく価値があるし、それこそ、長く働いているきみがやるべきことだよ」
こう言って、コーヒー片手に、ウィンクしてアドバイスをくれたのでした。そして、すぐさまカタカタカタ……キーボードを打つ音が聞こえました。今思えば、もしかしたらその場で、上長に掛け合ってくれていたのかもしれません。
Q.)そのひと言が嘉島さんのキャリア観にどんな影響を与えたのでしょうか。
私が思い描く「先輩像」と、自分がかけ離れている気もしており、会社の中で引け目を感じていました。
しかし、冒頭のアドバイスを聞いた時、ファーストペンギン的に動くことも先輩の一つの姿かもしれないと視野が広がりました。
また、当初は「結果が出ない」と言われたエッセイでしたが、実際に書いてみると想定以上に反響があり、以降いろいろなメンバーが書くようになりました。
Q.)それによりその後の行動や思考がどう変化し、嘉島さんのキャリアにつながっていったのでしょうか。
得意技を生かせる場所はどこに眠っているのか分かりません。上司の一言から、まずはとにかく「やってみる」という姿勢に価値を見いだせるようになった気がします。
また、ソツのないかっこいい人間にはならなくてもいいと諦めがつき、肩の荷が降りました。失敗やミスは少ないほうがいいですが、それを恐れるあまり新しいことにチャレンジできなくなってしまうと、組織も停滞しそうです。先輩という存在こそ、失敗する姿を見せたほうが、後輩たちもいろいろなことにチャレンジできるようになるかもしれません。
また、やりたいことがある時は、いろんな場面で提案していくと実施できる確度が高まることにも気が付きました。要領が悪いタイプだからこそ、いろんな人に「こういうことがしたい」と話しかけ、一歩を踏み出したほうがいいんだろうなと思っています。自分のアイデアが受け入れてもらえなくても、しばらく時間をおいたり、別の人に相談したりすると、承諾してもらえることは往々にしてあります。「なんでダメなんだ」「ひどい」といじけないでやりたいことをやり続けると、いずれチャンスが降ってくるような気がします。それまで爪を研いでおけばよいのです。
お話を伺った方