家にいても旅はできる。70カ国を旅した“リーマントラベラー”東松寛文さんの趣味との付き合い方

東松寛文さんの趣味との付き合い方

さまざまな社会人の「趣味との付き合い方」をお聞きするシリーズ企画「変化する『趣味との付き合い方』」。今回は、広告代理店で会社員として働きながら週末や連休を使って世界中を旅してきた“リーマントラベラー”こと東松寛文さんにお話を伺いました。

コロナ禍で海外旅行をするのは難しくなりましたが、家の中や近所でも旅と同じような体験はできると東松さんは語ります。日常生活の中で新しい体験を得るためにどんなことをしているのかを伺いました。

***

Q.)東松さんの趣味活動について教えてください。

海外旅行が好きで、コロナ禍以前は会社員として働きながら、週末や連休を利用して70ヵ国159都市を訪れました。海外旅行に目覚めたのは、社会人3年目。NBAのプレーオフを見るためにゴールデンウィークに3泊5日でロサンゼルスを旅行したのがきっかけです。

その旅で「3泊という短い期間でも海外旅行は楽しめる」「英語が話せなくても意外となんとかなる」「世界にはこんなに人生を謳歌している大人がたくさんいる」という三つの気づきがありました。特に三つ目の気づきは、仕事ばかりの日々を送っていた当時の私には衝撃でした。ロサンゼルスで平日の昼間からお酒を飲んで楽しんでいる人の姿を見て、「こんな生き方をしている人がいるんだ」「こんなふうに生きてもいいんだ」と思えたんです。それを機にアメリカ以外の場所も見てみたくなり、休みのたびに海外へ行く生活が始まりました。コロナ禍前は「金曜の夜に出発→月曜の朝に帰国→そのまま出社」という週末海外旅行もよくしていました。

今は海外旅行はできませんが、代わりに「海外旅行をしなくても旅と同じような体験はできる」と気づきました。私が旅に求めるのは「知らないものに触れ、自分の枠の外に出る経験をする」こと。それは家にいてもできることなんです。

例えば韓国ドラマを観て、日本との文化の違いや恋愛事情の違いを知ること。それは「知らないものを知る」という視点で見れば旅だと思うんです。僕はまず韓国ドラマにハマって、そこから韓国の歴史を学びたくなり、最終的には韓国語を学ぶところに行きつきました。

近所の外国料理屋で知らない料理を食べてみることや、普段は歩いたことがない近所の道を散歩することも同じです。「こんな料理があるんだ」「この街にはこんな歴史があるんだ」と、今まで近くにあったのに気づかなかったことを知る。知らないことって、近所にも案外たくさんあるんですよね。そんなふうに、日常のささいなことをどうすれば旅に置き換えられるかを日々考えています。

Q.)今の東松さんにとって趣味はどんな位置づけでしょうか。以前との変化とあわせて教えてください。

コロナ禍前も今も、心のリフレッシュですね。以前はよく「週末に海外って疲れませんか?」と聞かれていましたが、めちゃくちゃ疲れます(笑)。ただ体力的にはしんどいものの、家でごろごろして過ごすのに比べ、心の回復度が格段に上がります。もちろん何によって心が回復するかは人それぞれだと思いますが、私の場合は、非日常に身を置いたり知らないものに触れたりといった経験が心の回復に繋がります。

先ほど話したように、今は家や近所で旅と同じような体験をすることも趣味の一つですが、心のリフレッシュという効能が得られる点では同じです。ただ、海外旅行では圧倒的にインプットが増える、「通行人に道を聞けた」など小さな成功体験を積むことで自信がつき自己肯定感が上がるなど、実際に旅行をしないと体験できないこともあります。なので、もちろん早くまた旅をしたい気持ちもありますよ。

「自宅でインド旅行」と称し、家でインドのカレーを再現

Q.)社会人は仕事とのバランスを考えることが多そうです。趣味と仕事を両立するうえで工夫していることを教えてください。

コロナ禍前、有給をとって旅行するときは、自分が休んでる間にも働いている人がいるのを忘れないことを意識していました。細かい話ですが、平日に休むときは日中にSNSの投稿をしないとか、おみやげを必ず買って会社の一人ひとりに感謝を伝えるとか。そうすることでお互い休みを取りやすくなって、休みの日は趣味の時間に集中できるので。

今、趣味と仕事のバランスで意識しているのは「切り替え」です。仕事が終わったらパソコンを片付けて手が届かないところに置いておく、スマホのメールやチャットアプリは通知が出ない設定(バッジも表示されないように)にし、仕事の情報が入ってこない環境を先に作っておきます。気を抜くと、つい癖で仕事してしまうので……(笑)

せっかく好きなことをやるのなら全力でやったほうが絶対に楽しいし、得るものも多いと思うので、趣味にしっかり打ち込める環境を作るよう心掛けています。もしかしたらそれは、海外旅行で“電波が入らない環境”を経験したことが生きているのかもしれません。海外旅行は携帯電話の電波が入らず仕事の連絡が来ない環境だったからこそ、思いっきり羽を伸ばせていたのかなと思います。

Q.)そのほか、趣味に関することで以前と比べて変わったことがあれば教えてください。

コロナ禍で韓国ドラマにハマったのを機に韓国語を勉強し始めたというお話をしましたが、それを経て気づいたことがあります。旅そのものだけではなく「旅を通じていろんな生き方を伝えること」自体が僕にとってもはや趣味のようなものなんですが、日本語以外の言語で発信ができれば、届けられる人の数もそれだけ増えますよね。それに気づいたことで、今までは日本だけに目を向けていましたが、海外に向けても発信をしていきたいなと思うようになりました。やりたいことのスケールが広がり、海外との精神的な距離が小さくなったように感じます。

旅を始めた頃に「サラリーマンはこうあるべき」に囚われていたのと同じで、今の自分にも「日本語で、日本人にしか発信できない」という思い込みがあったと気づいたんです。コロナ禍を経て「もっと広い世界で生きられるじゃん」という気持ちになれたのは大きな変化です。

よく「会社を辞めようと思わないんですか?」と聞かれますが、会社員でもこれだけ趣味を楽しめると分かったので、辞めるつもりはありません。毎月ちゃんとお給料が入ってくるのが会社員の何よりの強みです。安定した収入があるからこそ趣味にも打ち込める。そのメリットを最大限に生かしたいので、これからも会社員として頑張りたいと思っています。

(MEETS CAREER編集部)

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お話を伺った方

東松寛文

東松寛文
平日は広告代理店で働く傍ら、週末で世界を旅する“リーマントラベラー”。70カ国159都市渡航。地球の歩き方から旅のプロに選出。著書『サラリーマン2.0 週末だけで世界一周』『休み方改革』日本と台湾で発売中。趣味は海外ドラマ&ゴルフ&サウナ&カレー作り​​。
Twitter:@ryman_traveler