俳優/門脇麦 | より良いものは楽しむ心から生まれる【Heroes File】

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第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる

俳優/門脇麦

2011年の俳優デビュー以来、数多くの作品に出演し、着実にキャリアを重ねてきた門脇麦さん。助演でも難役でもキラリと光るものを放ち、観(み)る者にその印象を焼きつけている。
そんな門脇さんだが、「自分には才能がないと自覚している」と語り、その上で「才能がない人にしかできないこともある」と言葉を継ぐ。その真意、そして仕事への取り組みなどについて伺った。

Profile

かどわき・むぎ/1992年生まれ、東京都出身。2011年に俳優デビュー。最近の主な出演作はNetflix映画『浅草キッド』、ドラマ「ミステリと言う勿れ」など。4月21日から赤堀雅秋プロデュース公演「ケダモノ」(東京・下北沢の本多劇場)に出演中。

門脇さんは現在、東京・下北沢の本多劇場で上演中の赤堀雅秋プロデュース公演「ケダモノ」に出演している。独特のユーモアを交えながら、人間たちの機微を独自の観点から描き出す赤堀さんの作・演出作品。「人間の残酷な部分をあえてむき出しにする赤堀さんの作品が大好きで、以前からいくつも観(み)てきました。今回ようやくご一緒させていただけて素直にうれしい。その喜びをかみしめながら日々舞台に立っています」

幼少期にクラシックバレエを始め、プロを目指して10年以上続けてきた門脇さん。それを中2で断念する。「一緒に習っていた友人たちが海外で活躍し始めたこともあり、自分の実力ではもう限界だなと悟って。つらかったですが、それよりも、プロになれないんだったらここに居ても何も始まらないという気持ちが大きくなって、新たな目標を探すことにしました」

その頃から映画をよく観ていたのもあり、俳優という職業に興味が湧いて、自分もやりたいと強く思い始める。しかし両親に相談すると許してはくれなかった。それでも一度決めたことは果たしたいという性格。ネットで検索し見つけた芸能事務所に応募する。「所属する俳優さんたちの顔ぶれを見て、その事務所が自分に合っていそうな気がしたんです。両親を説得し、高校卒業後まずはそこに入りました」

俳優/門脇麦

こうして2011年、18歳の時にドラマでデビューする。その後、14年公開の映画『愛の渦』で一躍注目を浴びることになる。数多くの賞を受賞し、仕事も急速に増えていった。「私は結構、根拠のない自信というものがある方なんですが、ただ、その頃は自分の芝居に自信がなくて、オファーを頂く度に申し訳なく感じて苦しかったですね」

悩みを抱えた状態は数年続いた。しかし気持ちは徐々に上向いていき、16年に、ミュージカル「わたしは真悟」で出会ったフランス人演出家のおかげで完全に抜け出すことができたという。「『楽しむ心がないと良いクリエーションは生まれないよ』と言われたんです。ハッとしました。実はそれまで、怒りや悲しみを抱えた役が多かったのもあり、ストイックに自分を追い込んで演じることこそが大事だと思い込んでいたんですね。でもそれはある意味、自己満足でしかないと気づかされました」

そこから一気に演じることが楽になった。遊び心を持ち、没入しすぎずに俯瞰(ふかん)して自分の役や作品を見られている。「ストイックにガチガチで演じている時よりも気づくものが増えました。気持ちのレンジ(範囲)も視界も、グンと広がりましたね」

「辞めること」は新たな道の始まり

俳優/門脇麦

ごく普通の女性の役でも、一筋縄ではいかない難役でも観(み)る者を引きつけ、話題作への出演が相次ぐ門脇さん。多忙ではあるが、俳優として、映像作品や舞台作品を問わずどんな仕事においても大切にしていることがあるという。それはワクワクする心だ。「人から与えてもらう場合もありますが、自分から湧き出てくるワクワクを大事にしたい。現場でワクワクできていることは安心材料にもなっています。今の私、結構高いモチベーションで仕事と向き合えているなって。うれしい瞬間です」

現在出演中の舞台「ケダモノ」でもワクワクが止まらないそうだ。「単純に私は舞台に立つのが好きで、袖に立っただけで鼻血が出そうなくらいなのですが、今回は初めて共演する方々ばかりというのもあって本当に楽しい。興奮しています(笑)」。映像作品では瞬発力が求められるが、舞台は稽古と本番を含めると最低でも1カ月以上同じことを繰り返すので、その場で出た瞬発力を積み重ねることになる。「クオリティーとモチベーションを保ち続ける必要があるので、筋トレをしている感覚もありますね。そこもまた舞台の魅力です」

それほど今の仕事に夢中な門脇さんだが、自分には演技の才能はないと謙遜する。「そう確信したのは俳優の成河さんと共演させていただいた時。尊敬する大好きな先輩ですが、本当に四六時中、演技のことしか考えていない『お芝居モンスター』なんです。私にはさすがにあそこまで演技への熱量はないなと気づかされました」。ではなぜ俳優の仕事を続けているのか? 「自分がパフォーマンスをすることよりも、みんなで一つの作品を作り上げていく現場が好きなんですね」

ただ、才能がないことは決して悪いことではないとも考える。「天才肌の人は一芸に秀でている分、それ以外のことが不器用だったりします。そこを補完するために私のような普通の人間が必要。何より天才たちの間に普通の人が数人いた方が場も和むんです。そこに気づいているのが私の強みであり、才能かな(笑)」

22年に30歳を迎えるにあたり、実年齢に近い女性を演じてみたいという。「だって30歳前後って、これから人生どうしようかと悩んだり葛藤も多い一番面白い年頃じゃないかと思うんです」。同世代の人たちにはぜひ、自分が心の底から「ワクワクすること」をして欲しいと願う。「本当につまんないと思う仕事だったら辞めてもいいんじゃないかな。『辞めること』は逃げではなく新たな道のスタート。すごくポジティブな選択だと思うんですね」。淡々と、でも熱く語る。説得力のあるメッセージだ。

スタイリスト:宮本茉莉(STAN-S)
ヘアメイク:秋鹿裕子(W)

ヒーローへの3つの質問

俳優/門脇麦

Q 現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?

中学の頃から興味があった心理学を勉強し、それを生かせる仕事。あるいは料理を作るのが好きなので飲食に関わる仕事でしょうか。

Q 人生に影響を与えた本は何ですか?

『エルマーのぼうけん』です。幼少期、児童文学を読みあさっていたのですが、私の“ワクワク源”はこの時に培われたものも大いにあります。いつか自分に子どもができたら朗読会を開こうと思っています。

Q あなたの「勝負●●」は何ですか?

馬刺しです。気合を入れたい大事な仕事の前にいただいています。「これを食べたからには頑張りなさいよ」って自分に活を入れる感じです。あ、でも冷凍庫にストックしているので、考えたら勝負じゃない時も口にしていますね(笑)。

Information

舞台「ケダモノ」に出演中!

俳優の田中哲司さんと大森南朋さん、そして演出家兼俳優の赤堀雅秋さんによる演劇ユニットが6年ほど前に誕生。真摯(しんし)に物作りができる場所を求め、キャスティングも俳優同士で声を掛け合い、2016年に「同じ夢」、19年には「神の子」を上演してきた。そして今回、22年4月21日(木)~5月8日(日)に東京・下北沢の本多劇場で、3作目となる赤堀雅秋プロデュース「ケダモノ」が公演中だ。門脇麦さんはこの「ケダモノ」で本ユニットへの初参加となった。「コロナ禍であり、世界でも大変なことが起きてしまって鬱々(うつうつ)とした空気が世の中に流れています。そういうのもあって気持ちを上げるために明るい作品を観るのもお薦めですが、もしかしたら『ケダモノ』のような人間の本質を深くえぐる作品を観ることが何かのヒントになったり、それぞれが抱えている問題の解決の糸口につながったりするかもしれません。本多劇場での上演後、札幌、大阪でも公演しますのでぜひ劇場へお越しください」と門脇さん。今回、実はほぼ全員と初共演だったという。門脇さんが諸先輩方とどんな化学反応を起こしているか、それを目撃するのも面白そうだ。

作・演出:赤堀雅秋
出演:大森南朋、門脇麦、荒川良々、あめくみちこ、清水優、新井郁、赤堀雅秋、田中哲司
公式サイト:https://www.comrade.jpn.com/kedamono/