VUCAの時代とは?時代に取り残されないビジネスパーソンに必要な4つの行動習慣

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「VUCAの時代」という言葉を聞いたことはありますか? 2010年頃からビジネスの中でも言われ始めたこの言葉。AIの普及、環境変動、紛争など、次々と変化が起こる予測が難しい時代を指しており、なんとなく不安を感じさせる言葉に捉えがち。しかし、それを前向きに捉えれば、チャンスが広がる時代とも言えます。なぜなら、全ての人たちに等しく訪れる時代で、あなただけが困るわけではないからです。そこで今回は、VUCAの時代を生きる私たちはどのようなマインドを持ち、どのような行動習慣を心掛けていくべきかを解説します。

VUCAの時代とは?

改めて「VUCAの時代」とは何を指すのでしょうか?

 VUCAとは  ・変動  (Volatility)
・不確実 (Uncertainty)
・複雑  (Complexity)
・曖昧  (Ambiguity)
の4つの単語の頭文字をとっており、端的にまとめると「予測困難で不確実な時代」ということになります。

もともとは1990年代のアメリカとロシアの冷戦終結後、核兵器を中心とした戦争から不透明な戦略へと移り変わり、先行きが見通せなくなった世界情勢を表している言葉でした。 その後2010年代になり、社会環境が大きく変化する中で改めて使われるようになったのがこの「VUCAの時代」です。
では、昨今なぜビジネスの中で「VUCAの時代」と呼ばれるようになったのでしょうか?

AIをはじめとしたテクノロジーの躍進

近年話題のChatGPTを代表とする生成型AIは世界中に大きな衝撃を与えています。ここで詳しく解説するまでもなく、AIは私たちの予想をはるかに超えるスピードで進化しており、人類の仕事の進め方やライフスタイルを根本から変えています。

AIが人類の知性を超えることを「シンギュラリティ」と呼び、それは2045年に訪れると言われていましたが、今のAIの進化を考えると随分と前倒しされるかもしれません。

AIの台頭によって人類社会にどのような変化が起きるかは不透明なのです。


グローバル化と新しい秩序

ビジネスを成長させるにはグローバルで展開していくことが定石となっており、物流や為替など複雑に絡み合った世界情勢を踏まえて戦略を立てる必要性が高まっています。

そしてその世界経済では長らくアメリカやヨーロッパがリードし、そこに中国が進出してきたのが第二次世界大戦以降の世界的な勢力図でした。
しかし近年、東南アジアや中東地域の経済発展が目覚ましく、勢力図が変わり始めています。結果、各国の思惑や立ち位置が変わってきているのです。国際情勢はビジネスにも影響し、どのエリアに事業展開していくかや、それに伴う人材採用戦略も変わってきます。日本国内で働いていたとしても同僚や上司が外国籍の方になる、ということも多くの会社で見られるかもしれません。
このように、私たちが生きている国際社会は予測不可能な時代に突入し、それによってビジネス環境も大きく変わっているのです。

地球規模の人口増加と環境問題

インドをはじめ、まだまだめざましい人口増加を遂げる地域があります。そして人類の経済レベルが上がり、地球の資源を奪い続けています。WWF(世界自然保護基金)によると、このペースで人類が増え続け、資源を奪っていくと2030年の地球人口の食料をまかなうためには地球が2個必要と言われてるほどです。また食料不足のみならず水不足も深刻化しています。

こうした世界的な潮流の中で企業はSDGsやカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量を削減し、吸収量・除去量を均衡させること)に力を入れています。ただ単に売上が上がれば良いわけではなく、サステナブル(持続可能性)に配慮した商品やサービスが消費者や投資家に支持されています。原料調達やマーケティングの方法論も変わってくるでしょう。

参考:国立研究開発法人科学技術振興機構

日本では少子高齢化が深刻に

地球規模では人口増加が止まりませんが、私たち日本では真逆の現象が起きています。いわゆる“少子高齢化”です。
2050年には日本から東京と関西圏分の人口がいなくなると言われています。国土交通省の調査によると、日本全体の60%以上の地点で現在の半分以下に人口が減少するそうです。

2050年と言われるとまだ遠い先の未来と思われるかもしれませんが、今、20代の方であれば40代後半~50代になり、そろそろ定年を見据えたキャリアを考え出すころ。しかし、働き手が少ないことで経済成長の低迷、社会保障の負担増加、仕事と介護の両立などが重なり、それどころではないかもしれません。

また、少子高齢化というと税金の問題がよくあげられますが、問題はそれだけではありません。労働力の担い手はもちろん、消費者の数も激減していくので、日本は経済規模の縮小とともに国際競争力が低下する恐れがあるかもしれません。

一概には言えませんが、VUCAの時代と言われる所以はこのようなところにあります。こうしてみると本当に大変な時代だなと感じますが、そうした中で私たちビジネスパーソンは何を意識していけばいいのでしょうか?

参考:今後の社会・経済情勢の変化(国土交通省)

VUCAの時代を生きていくために必要な、3つのマインド

ここまで見てきた通り、誰にも予測できないVUCAの時代に突入した現代社会。しかしこれはビジネスパーソンにとってはチャンスとも言えるでしょう。なぜなら、変化が起こるところにはニーズ(需要)が生まれるからです。そして前述した通り、全員同じ境遇なのでチャンスは等しく存在します。これまでとは変わり、序列が変わるチャンスでもあるのです。本人の意識と行動次第で、私たちのキャリアは大きく前進する可能性があると言えます。

ではここからは、VUCAの時代だからこそ持っておきたいマインドを4つご紹介します。

組織内キャリアではなく、キャリア自律の意識を持つ

日本企業の特徴だった「終身雇用」、「年功序列」という時代は当たり前ではなくなりました。これまでの時代は会社の中で昇進していくことが”キャリアアップ”でしたが、今は必ずしもそうとは限りません。会社の指示や評価ではなく、自分のキャリアは自分で作る意識を持つ。会社ありきの自分ではなく、会社は自分の長いキャリアの中のステージの一つでしかない、という意識を持つことが大切です。

市場ニーズの変化を捉えチャンスにする

これまで解説してきた通り、世界全体で大きな変化が起こる中でビジネス環境や消費者のニーズも変わってきています。これまでの成功パターンが通じるとは限らないのですが、だからこそチャンスです。消費者の生活習慣や価値観、ニーズが変化しているということを忘れず、ビジネスチャンスを狙っていきましょう。
例えば身近な例では私たちの情報収集源はテレビやラジオだけでなくスマートフォンになりましたし、情報発信やマーケティングのあり方が変わりました。またかつては一家に一台あった自動車も、必要なときに借りる「カーシェア」と呼ばれるサービスが出てきました。今後、自動運転が普及した未来には自動車の中で快適な時間を過ごせるサービスなどが登場するでしょう。

常に自分をアップデートする意識を持つ

時代を先読みして備えておきたいところですが、残念ながらVUCAの時代の先を読むことはかなり困難です。

変化を予測するだけでなく、常に自分をアップデートし、変化に対応できるようにする、という意識を持つことが大切です。新しいスキルを常に学習し、習得する。そして今まで身に着けていたスキルと新しいスキルの掛け算をすると希少価値の高いスキルになります。
例えば、法人営業というスキルを持つビジネスパーソンはたくさんいますが、そこにAIを活用した需要予測というスキルを掛け算すると「データを元に需要予測ができる法人営業」という希少価値の高い人材になることができます。

自分の持っている強みを分類してみる

未来は予測できませんが、過去と現在の自分の振返りは、誰でもすることができます。半年に一度程度、自分の振返りをして新たに挑戦した業務内容、交渉相手、身に付いたスキルや経験など自分の現在地をしっかり認識する。そして次はどんなスキルを身に付けたいか、そのためにどんな業務やポジションに挑戦していくといいかなどのキャリアプランを描くようにしてみると良いかもしれません。

振返りの方法ですが、「プロティアンキャリア」という理論が提唱している考え方をご紹介します。プロティアンキャリアでは、人の持っている強みや能力を「キャリア資本」と捉えています。「資本」とは本来、企業が事業を行う上で必要なお金のことです。この資本を元手にビジネスを行っているのが企業です。
この考え方をキャリアに当てはめ、自分の持っている強みをビジネス資本、社会関係資本、経済資本の観点で捉え直すのです。この3つの資本の考え方を簡単にご紹介します。

ビジネス資本

いわゆるスキルのことです。ビジネス、仕事で使うことのできる自分のスキルを可視化してみましょう。

社会関係資本

人間関係、ネットワーク(人脈)のことです。自分が何かを相談しようと思った時に相談できる相手、協力して一緒にビジネスを進められそうな取引先や関係部署や知り合い、コミュニティにはどのようなものがあるかを書き出してみましょう。

経済資本

預金や債券、不動産など金銭に関する資本のことです。私たちの持っている資本は何も銀行口座にある預貯金だけではありません。経済的に自分がどういう状態にあるかを具体的に捉え直してみると見えなかったものが見えるはずです。例えば、銀行に預けている預金残高はおおよそ把握していても、積立保険がいくら積立られているかなどは意外と把握していないものです。自分の持っている経済資本を洗い出し、全体で捉えてみる。そのうえで現金預金の割合を少し減らし、その分を投資効果が見込める「つみたてNISA」の割合を増やして経済資本全体を増やしていく、という考え方をしてもよいでしょう。

なお、これらの資本は増やすこともできます。自分が今、どんな強み(キャリア資本)を持っていて、今後どの資本を増やしたいかを考えると今後のキャリアプランが考えやすくなるでしょう。

VUCAの時代に備えたい、4つの行動習慣

VUCAの時代とは何か、そしてビジネスパーソンが持つべきマインドについて解説してきました。最後に、明日から始められる習慣をご紹介します。習慣化することでVUCAの時代に備えていきましょう。

社外コミュニティに所属する

意識せずに生活をしていると、どうしても人間関係が限定的になってしまいます。会社や仕事関係者以外に交流がないと、価値観が似ている人ばかりの会話で視野が狭くなり、変化に気付きにくくなりがちです。
学生時代の友人や趣味のコミュニティ、ボランティアや副業など、会社以外の人間関係を意識的に作っていくことが大切です。

ビジネスに関する情報を吸収する

ビジネスや経済情報は複雑で難しいものも多く、新聞やビジネス書を習慣的に読むのは抵抗がある方もいるでしょう。
しかし今は動画や音声配信でビジネス情報を入手することもできます。またそうした配信サービスは倍速再生や「ながら聞き」も可能なので、移動中やランニング中、家事をしながらなどに倍速で効率よく入手したい方にも向いています。

とくに、お勧めしたいのが”乱読”という読書スタイルです。じっくり理解しながら読む必要はないので、ざっとでいいので眼を通し、気になった本があれば読み返すことから始めてみてください。
何の本を読めばいいかわからない方は、とりあえずヒットしているビジネス本から手をつけるのも有効です。書店に行って人気ランキングに入っている本や見出しが気になる本を手にとって読み始めてみると良いでしょう。

そうすることで、新しい知識や方法論を手軽に学ぶことができます。

新しいサービスにはとりあえず触れてみる

世の中には日々、新しいサービスが誕生しています。特にWebサービスやSNSには無料で利用できるものも多くあります。個人情報漏洩などのリスクマネジメントはしつつ、話題になっているサービスがあったらとりあえず自らの手で体験してみましょう。なぜそのサービスが生まれたのか、メインターゲットはどんな人たちか?なぜこれが流行っているのか?などを自分の手で触りながら考えることで自分の仕事でも活かせる部分が見つかるかもしれません。

目の前にチャンスがあればとりあえずやってみる

「チャンスの神様は前髪しかない」という言葉をご存知でしょうか。ギリシャ神話のカイロスという神様には前髪しかないそうで、カイロスを捕まえようと思ったら後ろ髪は捕まえられないのです。カイロスはギリシャ語で「機会(チャンス)」を意味します。

自分のキャリアもそれと同じです。何か機会やチャンスがあった時に、短期的な損得勘定で逃さないようにしましょう。多少めんどくさかったりお金がかかっても、中長期的なリターンの可能性があるなら挑戦してみるべきです。芽が出ないことも多いかもしれませんが、一つ一つの小さな挑戦がやがて次のキャリアに繋がっていきます。

VUCAの時代だからこそ、目の前のことに全力投球しよう

今回の記事では世界全体に影響があるVUCAの時代について解説し、その中でビジネスパーソンに求められるマインドや習慣を取り上げてきました。VUCAの時代は確かに不安要素が多く、重たい気持ちになってしまうかもしれません。しかし考えてみれば、10年前だって今の状況は予想できなかったはずです。それでも私たちはさまざまな変化に柔軟に対応しながらも毎日を過ごすことができています。先の読めないVUCAの時代だからこそ、先のことを考えずに目の前の小さな行動を積み上げる意識を持って自分のキャリアを前に進めていきましょう。

文:羽田啓一郎(株式会社Strobolights)