ゼネラリストとは? スペシャリストとの違いと適性人材の特徴を解説

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自分のキャリアを考えたとき、「ゼネラリスト」になるべきか、「スペシャリスト」になるべきか、迷う人もいるでしょう。

「ゼネラリスト」とは幅広い分野の知識と能力があり、どのような状況にも対応できる人のこと。多くの業務を経験していたり、チームをまとめられる力があったりする人がゼネラリストとして育成されやすい傾向にありますが、最終的にはあなたが「なにを目指し、どうなりたいか」次第である部分も多いのです。

ここでは、ゼネラリストの概要や向いている人の特徴、ゼネラリストになりたい人が取りたい行動を紹介します。

<INDEX>
・ゼネラリストとは?
・ゼネラリストの対となる「スペシャリスト」とは
・ゼネラリストに向いている人の特徴は?
・ゼネラリストとスペシャリストはどちらが需要がある?
・ゼネラリストになるには?
・ゼネラリストに関するQ&A
・何事にも挑戦することがゼネラリストになる近道!

ゼネラリストとは?

まずは、そもそも「ゼネラリスト」がどういう人を指すのか、基礎知識を解説します。

幅広い業務に対応できる人材のこと

「ゼネラリスト」とは、幅広い分野の知識と能力があり、どのような状況にも対応できる人のこと。「万能家」とも呼ばれます。異動や転勤、数多くのプロジェクトの担当、部下や後輩のマネジメントなどを積み、臨機応変な対応や視野の広さを備えた人がゼネラリストになりやすい傾向にあります。

なお、ただ単に「スペシャリストではない」という理由で、ゼネラリストとひとまとめにされることもあるようです。

管理職に向いているが強みをアピールしにくい

ゼネラリストが活躍できる仕事は、管理職や1人で多くの役割を務める仕事だと言えます。具体的には、以下のような仕事が該当します。

  • 部下をマネジメントする立場の課長や部長
  • 大きなプロジェクトの担当者や管理者
  • 人材採用、人材育成の担当者
  • 1人で幅広い領域の仕事を担当することが多いベンチャー企業や小規模企業の社員

そのためゼネラリストには、一例として以下のようなスキルが求められることが多いです。

  • 円滑に仕事を進めるためのコミュニケーション能力
  • トラブルなどが発生した時に柔軟に対応できる問題解決能力
  • 知識やスキルを習得し、仕事に応用できる学習能力
  • 業務全体を把握しチームをまとめるプロジェクト管理能力

ただしゼネラリストの業務やスキルは、全体的に「広く浅く」になりやすいもの。突出した強みやスキルが少ないと、昇進や転職の際にアピールしづらい場合があります。

自分が経験してきた仕事の内容や実績、果たした役割を客観的に振り返り、「特にこういった場面での対応が得意」と自分の強みを見いだしアピールできることが、キャリアアップの鍵となるでしょう。

ゼネラリストになるためのキャリアパス

ゼネラリストになる最短ルートは、さまざまな仕事を経験して昇進していくこと。あなたが営業部の社員なら、営業部の係長・課長・部長と昇進していくといったことです。

ただし中には、営業部から人事部、そして広報部と、昇進しないままいくつかの部署を経験する人もいます。「人手が足りないから、あちこちに飛ばされているのでは」と思うかもしれませんが、そうとは限りません。

ゼネラリストのキャリアパスはさまざまで、会社があなたのことを「ゼネラリストの素質がある」と見込んで、いろいろな経験を積ませている可能性もあるからです。

もし、自身の希望に反してあまりにも長期間、同じ仕事しか任されない場合は要注意。会社は、ゼネラリストではなく一つの分野に秀でたスぺシャリストとして育成したい、あるいは当人がゼネラリストを目指したいと考えていることに気付いていない可能性もあります。今の仕事にやりがいを感じ、楽しく働いていれば良いですが、もし今の状況にモヤモヤと感じるのであれば、まずは上司や先輩に希望を伝え、会社が自分に何を期待しているのかをすり合わせしてみるのも一つの方法です。

ゼネラリストの対となる「スペシャリスト」とは

ゼネラリストの対になる存在が、「スペシャリスト」です。スペシャリストとして進んでいきたい場合、ゼネラリストとは求められるものが異なります。

特定の分野の知識・スキルに優れた人材のこと

スペシャリストは、特定の分野に詳しく、特別なスキル・技術を備えている人材のことです。「専門家」「専門職」と呼ばれることもあります。

スペシャリストはその道のプロで、「知財の件ならとりあえずこの人に相談してみて」というように特定分野で頼られる存在として、力を発揮します。長年の経験やスキルアップを経て獲得した、何らかの資格や免許などを保有していることもあります。

専門職に向いているが仕事の幅は広げにくい

スペシャリストは、以下のような専門性のある知識やスキルを生かせる仕事が向いています。

  • エンジニア
  • 開発者・研究者
  • 経理
  • Webデザイナー

ただし、スペシャリストと認められ評価されるためには、特定のジャンルにおいて突出した知識量・経験・スキルが求められます。自分の強みを生かせる仕事やポジションに就けるだけの知識や経験を身に付けられるかが、スペシャリストとして活躍できるかを左右するでしょう。

スペシャリストのキャリアパス

スペシャリストになるためには、極める分野を決め、関連する知識を自分から積極的に吸収する必要があります。その上で、知識を積極的に発信し、スキルを生かして貢献し、周りに「その道のプロ」として信頼されることが重要になります。専門学校に通ったり、外部の講座を受けたりするのも良さそうです。また、多くの企業を渡り歩いて経験を積むことも有効でしょう。

生涯をかけて自分のスキルアップに取り組むことが、スペシャリストとして活躍するためのキャリアパスになるとも言えます。

ゼネラリストに向いている人の特徴は?

ゼネラリストに向く人は、以下のような特徴がある人だと言われます。

さまざまなことに興味・関心がある

仕事に関連する内容以外にも広くアンテナを張り、絶えず情報収集できる人はゼネラリストとして活躍できる可能性があります。趣味が多い人や、好奇心旺盛な人にもぴったりです。

チャレンジ精神が旺盛な人にも向いているでしょう。ゼネラリストは時として、困難な状況下での判断や、誰もやったことのない仕事への対応を求められる場合があります。諦めず、解決策を考えられる力があれば、重宝されるはずです。

コミュニケーションを取ることが得意

ゼネラリストは、多くの人々の意見を聞いて判断をしたり、交渉・調整をする仕事もしなければなりません。社内外の多くの人々に接する機会があるため、誰とでも分け隔てなく接せられると、ゼネラリストとしての仕事もスムーズに進めやすくなるでしょう。

異なる立場の人の意見もきちんと聞けたり、不明点は素直に質問したりできることも大切です。

リーダーとして人をまとめて導ける

メンバーが取るべき行動を示し、目標達成に向けて迷わず行動できる下地を作るのも、ゼネラリストの仕事です。メンバーそれぞれの個性を把握し、円滑なチーム運営ができるスキルも必須だと言えます。

過去に「後輩の面倒見が良い」「リーダーシップがある」と上司や先輩に言われたことがある人は、自然とその力が身に付いているかもしれません。

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ゼネラリストとスペシャリストはどちらが需要がある?

自分のキャリアを考えて、「企業にとって、より需要のある方を選びたい」と感じる人もいるはず。しかし結論、どちらの方が企業にとって需要があるとは断言できません。独立行政法人 労働政策研究・研修機構が実施した「従業員の能力に関する考え方」の企業調査(2018年)(※1)では、企業が求める人材はゼネラリスト・スペシャリストどちらも一定の割合でした。しかし「仕事のやり方」や「働き方」の変化に伴い重視する人材の企業調査(2021年)(※2)では、コロナ禍が影響したのか、いろいろな業務をこなせるゼネラリストを重視している傾向もあります。

ただしこの傾向は、企業規模や事業内容や業種、会社が求める人材像によっても異なります。
さらに今後、社会情勢の影響を受けて変化が見られる可能性もあります。こうしたことから、どちらの方が需要があるかは分からないのが実情です。

どちらのキャリアを選択するか迷っている場合は、一旦ゼネラリストとしてキャリアを積んでみて、そして本当にやりたい仕事が見つかったら、スペシャリストへの転向を考えてみるのも一つです。

ゼネラリストになるには?

ゼネラリストになるための明確な方法は、特にありません。しかし以下のようなことを続けていけば、ゼネラリストに求められる力が付き、活躍できる可能性があります。

幅広い分野の仕事を経験する

ゼネラリストになるには、とにかくさまざまな分野の仕事を経験することが一番の近道だと言えます。この「さまざまな分野の仕事」とは、言い換えれば「多様な仕事」です。

営業職の場合を考えてみましょう。一言で「営業」と言っても、顧客や販売する商材は、以下の例のようにバリエーションがあるはずです。

  • 高額商品/廉価商品
  • 単発商品/サブスクなど継続パッケージ
  • 都市部/郊外などさまざまなエリア

部分的に共通するスキルはあるかもしれませんが、たとえ同じ職種であっても、顧客や商材が違えば必要な知識・スキルも変わってきます。今いる部署の仕事を極めるつもりで取り組んでみると、自然とゼネラリストに必要な経験やスキルも身に付いてくるでしょう。

世代や年齢・所属を問わず多くの人と交流する

ゼネラリストに求められる力を養うために、社内の多くの人々と接する機会を持つのもおすすめです。例えば、あまり接する機会の少ない部署の人にちょっとしたお菓子を配るきっかけで声をかけてみたり、類似案件を扱っている他部署の人に意見を聞きに行ったりするのも良いかと思います。

多くの人と関わることで、異なるバックグラウンドや意見を持つ人とも臆せずコミュニケーションを取れるスキルが習得できるはずです。

社外でも自発的に学習をする

職場外でもさまざまな学習をして、仕事以外に関する知識も積極的に吸収しましょう。

  • 趣味を深める(動画を見るだけではなく動画編集を始めるなど)
  • リスキリングや生涯学習を始める
  • 幅広いジャンルの本を読んで教養を身に付ける

こうしたところから得た知識も、思わぬ形で仕事に活きてくるかもしれません。何事も学びのためととらえ、楽しみながら取り組んでみてください。

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ゼネラリストに関するQ&A

最後に、「ゼネラリストになりたい」と考える人が疑問に思いやすい点と、それに対する答えをお伝えします。

自分はゼネラリストとスペシャリストどちらを目指すべき?

「向いている人の特徴」に当てはまるなら、ゼネラリストの素質はありそうです。

ただ、もし既に「スペシャリストとしてやりたい」という分野が自分のなかにあって、そのうえで「なれる自信がない」と迷っているのであれば、妥協案としてゼネラリストを選ぶのではなく、その情熱を生かして研鑽し、発信し、その道の先達者に相談に乗ってもらいながら、スペシャリストの道を目指すのもいいと思います。未練を抱えながらゼネラリストとしての道を目指しても、中途半端になってしまうでしょうから。

スペシャリストとして打ち込みたい分野がまだ見つかっていないのであれば、そのような情熱を注ぎたいと思える分野に出合うまでは、ゼネラリストになるつもりで幅広くアンテナを張り、フットワーク軽くさまざまなことに挑戦していく、という考え方も一つです。

向き不向きだけではなく、「自分はどうなりたいのか」という観点で判断軸も作っておき、そのうえで、より自分にふさわしいと感じる方を選べば良いのではないでしょうか。

スペシャリストからゼネラリストへの転換は何歳までできる?

「ゼネラリストになれるのは何歳まで」といった年齢の制限は、特になさそうです。自分が転換したいタイミングに検討すれば良いでしょう。

ただし、スペシャリストにも言えることですが、ゼネラリストに必要な知識やスキルは、一朝一夕で身に付くものではありません。現場で活躍できるようになるまでは、最低でも数年~十数年かかると考えられます。もしスペシャリストから転換するのであれば、少しでも早いタイミングで検討する方が良いかもしれません。

コミュニケーションが苦手な場合はゼネラリストよりスペシャリストがいい?

コミュニケーションの得意不得意でゼネラリストかスペシャリストかを選ぶのは、あまり得策とは言えません。というのも、ゼネラリストはマネジメント(部下の育成や管理)というコミュニケーションを求められがちですが、一方でスペシャリストは、自分の部署の「いつものメンバー」だけではなく、専門知識を必要とするさまざまな部門から都度、協力要請を受けて一緒に仕事をしていくなど、毎回信頼関係を構築したり、ゼロから短期間でスムーズなコミュニケーションを確立してかなければいけない状況もあります。

また、スペシャリストを目指す過程では、自身の知識やスキルを「認めてもらう」ことが必要になるので、そのためには自身から積極的に発信をしていかなくてはなりません。スペシャリストとして活躍するには、ある面においてはゼネラリスト以上にコミュニケーション力が求められるのです。

と考えると、苦手に引きずられて消極的に選択をするよりも、どのみちコミュニケーションは取らなければいけないものとして克服し、どちらのキャリアを歩むかは「自分がどちらになりたいか」という前向きな気持ちに焦点をあてて考えてみてはいかがでしょうか。

今の仕事を続けてもゼネラリストにもスペシャリストにもなれない気がするんだけど…

今は、目の前の仕事にひたむきに取り組むことをおすすめします。

ゼネラリストだけではなくスペシャリストも、活躍できるまでに数年~十数年かかるものです。今は「やっている意味が分からない」と感じる仕事も、長期的に見ればその経験が役立つ日が来るはずです。

どうしても先が見えないことに不安を感じる場合は、ロールモデルとなる人を見つけて、参考にしてみると良いでしょう。それが上司や先輩なら直接相談することで、今担当している仕事の意味や将来どう役に立つかなどアドバイスがもらえるかもしれません。

何事にも挑戦することがゼネラリストになる近道!

ゼネラリストは豊富な知識と経験を活かし、現場を俯瞰的に見て社内外の人々を導いていく存在です。特定の分野や「仕事に関係あるか」にこだわりすぎず、広く物事を経験していくことが、ゼネラリストになるための近道だと言えます。

ただし、この「経験」を難しく考える必要はありません。何か1つでも昨日の自分にはなかった知識を吸収したり、できていなかったことに取り組んだりするだけでも十分です。将来ゼネラリストを選ぶ可能性があると感じている人は、まずは小さな挑戦から始めてみてはいかがでしょうか。

文:シモカワヒロコ(Nyima.)

<参考資料>
※1 独立行政法人 労働政策研究・研修機構「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査(企業調査・労働者調査)」(P62)

※2 独立行政法人 労働政策研究・研修機構「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(企業調査)」(P68~69)

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