それ間違っているかも……! キャリアチェンジで失敗しないために注意したい3つの心得

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「いまの仕事って本当に自分がやりたいことなのか……」
「周りはどんどん転職している。自分はこのままで大丈夫なのか……」

そんな不安や葛藤は、20代半ばのビジネスパーソンの「あるある」の一つかもしれません。「やりたい仕事があって転職している友人や楽しそうに働いている同僚」に対して「なんとなく働いている自分」。他人と自分は別だと頭では分かっていても無性に焦りを感じてしまう時もあるでしょう。ただ、そんな焦りから、急いでキャリアチェンジで転職してみたものの、理想と現実のギャップに直面し、入社後に後悔してしまうケースもありえます。

自分のやりたい仕事を見つけて、納得のいくキャリアチェンジをするためにはどうすればよいのか。
今回は、キャリアコンサルタントの荒木信雄さんに「キャリアチェンジで失敗しないための心得」を伺ってみました。

お話を伺った方

荒木信雄(あらき・のぶお)さん
1981年生まれ。2009年よりフリースクールにて対人支援を開始。ひきこもり・非行・不登校・ニート・家族問題の就労や自立支援をサポートし、現在は国家資格キャリアコンサルタントとしてフリースクールやIT企業にカウンセリングや研修、キャリア教育を提供。コミュニティサービス「キャリQ」ではアドバイザーとして参加者のキャリアや転職の相談に回答、自己理解、自分磨きのノウハウを発信。
X(旧Twitter):@c_norm21

<INDEX>
・キャリアチェンジとは仕事だけでなく“生活の在り方”が変わることでもある
・キャリアチェンジで大切なのは、人の目を意識するよりも“自分軸”で考えること
・キャリアチェンジに失敗しないための「3つの心得」
・キャリアチェンジとは、人生の脚本を書き直すこと

キャリアチェンジとは仕事だけでなく“生活の在り方”が変わることでもある

──そもそも「キャリアチェンジ」とは何を意味しているのでしょうか?

荒木信雄さん(以下、荒木):端的に言うと、今とは異なる業界へ転職したり、同じ業界であっても別の職種に切り替えることです。

よく「キャリアアップ」という言葉を耳にしますが、これは同じ会社にいながら専門性を高めたり、経営的な視点を求められる役職に昇進したり、それに伴って給与などの待遇が向上するケースを指すことが一般的です。アルバイトや派遣社員から正社員になることもキャリアアップですね。また、同じ業界内で別の会社へ転職するケース、例えばもっと著名なタイトルに関わりたいという理由で「中小企業から大企業の出版社に転職して、これまでと同じ編集業務を続ける」こともキャリアアップと言えるでしょう。

一方で「キャリアチェンジ」という言葉には、未知なる業界や職種にトライすることだけではなく、「生活の在り方が変わる」といった意味も含まれます。雇用形態が変わることもそうかもしれません。私は広義では、フリーランスになったり、「育児に時間を割きたい」として時短勤務にしたり、シニア層が現在の仕事を続けつつも仕事量を減らしたり、責任を少し緩やかにして余暇や学び直しに取り組むことも、一つのキャリアチェンジととらえています。

──キャリアアップと似た言葉だとぼんやり思っていましたが、改めて聞くと言葉の意味が違いますね。話が戻りますが、転職においてのキャリアチェンジには具体的にどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか?

荒木:メリットは、これまで知らなかった業界や職種に身を置くことで、多様な価値観に触れられることです。視野が広がり、人間としてひと回り大きく成長することにつながります。同時に転職者自身も、これまで培ったノウハウや価値観を持っていくので、転職先でお互いの知見がうまく融合し、イノベーションが起きたり業界の慣例にとらわれない新しいアイデアが生まれたりすることが起きることだって十分にありえます。

ただ、「知らないことの連続」がデメリットになる可能性も否めません。いざ働いてみたらイメージと違う…… と感じるかもしれません。また、年下が先輩だったり、業務の勝手が分からなかったりすることもあって、これまで積み上げてきた自己肯定感が不安定になりやすいとも言えます。早く存在感を出したいと焦るあまり、「出る杭」になってしまったり、逆に遠慮してしまい、しばらくの間、ポテンシャルを発揮できないこともあるでしょう。

少し極端な例かもしれませんが、業界によって慣習が大きく変わることもあります。例えば一般のオフィスで「おい!それ危ないだろ!」と言ったら、ハラスメントと認定されてもおかしくありませんよね。でも、それが刀鍛冶の職場だったらどうでしょう。不注意が命の危険につながる状況での「おい!」は、とても真っ当だと感じませんか? 今までの職場では「あり得ない」ことが、転職先ではあるかもしれないのです。そして、自分がそれに順応できるとは限りません。

大切なのは、キャリアチェンジを目指す際は入社後に後悔しないためにもしっかりと計画を立て、情報の収集と整理を心掛けることです。具体的な方法や心構えについて、これからお伝えしていきましょう。

キャリアチェンジで大切なのは、人の目を意識するよりも“自分軸”で考えること

──荒木さんはこれまでも多くの方のキャリア相談を受けてこられたと思いますが、実際にキャリアチェンジの相談を受けることはよくあるのでしょうか?

荒木:よくありますね。「会社は嫌いじゃないけど、やりたいことと違う」「今の仕事が向いていないのは分かるけど、じゃあ次に何をすればいいか分からない」といった相談もあれば、「仕事に一区切りつけて留学し、自分を見つめ直したい」「将来の結婚・出産・育児を踏まえて、しっかり休める職に就きたい」といった前向きなパターンまでさまざまです。

──そのなかでなにか、相談者の共通項にあたる悩みみたいなものはあるのでしょうか?

荒木:留学や結婚など将来のことを想定した相談以外ですと、「ここでは成長できない」「同期が活躍している」「友人が転職したから自分もそろそろしないと」と、置いてけぼりになっている焦りや不安を抱えている方が多いと感じますね。これは近年、特に20代半ばから後半にかけての世代の方に顕著です。その原因の一つとして、SNSなどネットとの付き合い方が影響しているかもしれません。

ある相談者から「自分は将来こうなって、それからこうしたポジションにつきたくて」と話を伺った際、ちょっと突飛だなと感じて「誰か参考にしている方がいるんですか?」と聞いたところ「SNSにこういう人がいるんです!」と。SNSで目につくインフルエンサーやYouTuberのように、誰でも何者かになれるように見えて、成功者を目の当たりにしやすい現在だからこそ、余計に焦りやすい状況が生まれているような気がします。もちろん、ネットで目にする人たちのことを否定している訳ではありません。ただ、直接交流があるわけでもない人からうまくいった部分だけの情報を、一方通行で浴び続けるだけ…… というのは危険だなと感じますね。キャリアチェンジは人の目を気にする“他人軸”ではなく“自分軸”で考えないと、なかなか成功しづらいと思います。

──とはいえ、さまざまな情報が錯綜する世の中で、どの情報を取捨選択すればよいか分からない時もあります。“自分軸”を考えるためにはまず何をすればよいでしょうか?

荒木:情報源を一つに限定せず、広く集めることですね。例えば相談の中には、「企画職にキャリアチェンジしたい」という方も多いですが、そうであればプレゼンの作り方のセミナーに実際に足を運ぶのもいいでしょう。入社したい企業のホームページでも、事業内容だけでなく会社の理念やブログでの発信内容、研修や教育制度、福利厚生など、見るべきポイントは多々あります。

また、転職エージェントから「あなたならもっといい条件があると言われた」と述べる方もいます。でも、複数のエージェントを利用したらどうでしょうか。中には厳しいことを言われるかもしれず、実はそんな意見こそ大切だったりします。

もし自分が何に興味があるか分からない場合は、職業興味検査なども活用してほしいですね。世の中に職業は無数にありますが、興味領域は6つ(現実的、研究的、芸術的、社会的、企業的、慣習的)に分類されるという考え方もあり、そうした絞り込みを行うことでキャリアチェンジを考える上での大まかな方向性も見えてくると思います。

キャリアチェンジに失敗しないための「3つの心得」

——読者の中にも実際にキャリアチェンジを考えている人は少なくないと思います。「後悔しないために、これだけは気を付けたほうがいい」ということはありますか?

荒木:キャリアチェンジをする前に心得てほしいことは3つあります。

【心得①】焦らず、複数の展望を用意する

転職=“椅子取りゲーム”と考えてしまいがちです。その気持ちも分かるのですが、「早くしないと空きが埋まってしまう!」という焦りから自己分析や情報収集が不十分なままなんとなくキャリアチェンジしてしまい、結果的にミスマッチだった…… というケースを避けなくてはなりません。そのためには半年から1年ほどかけた展望を用意して臨むとよいと思います。その間、給与や昇給条件、キャリアパス、やりがい、苦労、専門職に求められる素養、そしてその職に就くことで生活や人生がどう変わったかなど、実際に働いている人から実情を聞く機会を得られると、よりミスマッチ回避につながります。

なおかつ大切なのは「自分はこの業界のココしか目指さない!」ではなく、複数の展望を用意することです。一つの道筋だけを強く期待していると、その一つがうまくいかなかっただけで多大なショックを受けてしまい、立ち直るのに時間も労力もかかってしまいがちです。

例えば、コース1、コース2、コース3と複数分けることで、もしコース1がダメでも「別の業界のコース2にしよう」と素早く切り換えられますし、念願叶ってコース1で転職できた後、多少嫌なことがあったとしても「第一希望のコース1に行けたんだから」と自分を納得させることができ、壁を乗り越えやすくなるでしょう。

それともう一つ、転職したけれどどうしても自分に合わなかった場合、「元の会社に戻る」選択肢を長期展望に加えるのも悪いことではありません。「背水の陣」を敷くよりも「立つ鳥跡を濁さず」。繁忙期や引継ぎも不十分なまま辞めずに、円満に退職できるタイミングを考慮すべきでしょう。

【心得②】人と比べず、自分の軸としっかり向き合う

前章でも述べましたが、自分は何に対してやりがい、達成感、幸福感を得られるのか、自分の軸をしっかり把握することが大切です。

転職活動中の方をみると「周囲に追いつかなきゃ……」と、他人と照らし合わせた負い目の感情に支配されながら動いている方が多い印象を受けます。そうすると、なんとか新たな仕事を始め、たとえ給料が上がって周りに追いついたとしても、「なんだか心が満たされない」と感じてしまうこともありえます。自分の軸に向き合っていないがゆえかもしれませんね。

「心」と「キャリア」は密接に連動しているもの。心が混とんとしていると、キャリアもそこに引きずられてしまいます。自分をせっつくことも時として有効ではありますが、心の在り方を見つめ直せる良い機会と捉え、じっくり地に足をつけて臨むことをお勧めします。

さらにもう一つお勧めしたいのが心のエクササイズ。毎晩、寝る前に「小さな成功体験」を3つ、思い描いてください。「仕事で巨大プロジェクトを成功に導いた!」といった大それたものではなく「初めて作った朝ご飯が美味かった!」といった小さなことのほうがむしろ効果的。小さな自己肯定は、人の目を気にした劣等感を消し去るのに役立ちます。

【心得③】苦労も想定して、挑戦する勇気を

働く業界や会社が変われば、接する人も、文化も、ノウハウも、すべて違ってくることもあります。私自身もキャリアチェンジを経験していますが、それこそ「人生の脱皮」と思えるほど、今まで触れていなかった知識が身に付き、ひと回り成長した手ごたえを得ることができました。

一方で、予期しないことが相次いで起こるため、心や身体の体力を消耗してしまうのは致し方ないことだと心構えしておくことが大切です。新たな知識を身につけるための時間も必要ですし、そのためにはお金もかかるかもしれない。まったく違う人びとと接することで、慣れるまで心も相応に消耗し、しばらくはワークライフバランスが乱れてしまう可能性も考慮しておきたいところです。

そのための準備の一環として、自分にとって効果的な休息方法や、適切な睡眠時間なども把握しておくと良いでしょう。悩みを聞いてくれる友人や家族の存在も大きいですし、もし身近にいなければ、「キャリQ 」などの仕事やキャリアに関するコミュニティサービスを活用して、自分の悩みや考えを発信し、第三者から意見をもらうこともおすすめです。


「キャリQ」では、荒木さんなどの専任アドバイザーだけでなく、参加者からコメントがもらえることも

キャリアチェンジとは、人生の脚本を書き直すこと

——最後にキャリアチェンジに悩む人たちに向けてメッセージをいただけますか?

荒木:まずはしっかり自己分析して、得意なことや苦手なことを自分で理解することからはじめてみてください。なんでもこなそうとするとストレスになりますし、「ここは苦手ですが、ここなら任せてください」と言えることは、自分の弱点をさらけ出せる人だと好印象につながることも少なくありません。

そして、自分はどうなりたいのか?何を達成したいのか?何をもって成長と見なすのか?人生の脚本を書き直してみましょう。一度書いた脚本に手を加えることは悪いことではありません。まさに転職は、書き直し時であるといえます。「仕事を通じて世界平和やSDGsに貢献したい」といったスケールではなく、まずは身近なことでいいんです。その次の段階として「お客様に喜んでもらいたい」「地域に貢献したい」など、どのようにして人の役に立っていきたいかを考えましょう。

転職はれっきとした“自分ごと”。自分なりの喜びと人生を思い描いて、理想とするキャリアチェンジを果たしてもらいたいなと思います。

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取材・文:MEETS CAREER編集部

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Q.今すぐ転職やキャリアを変えるつもりはないけど参加して大丈夫?

問題ございません。今後のための情報収集、情報交換の場としてご活用ください。

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