新人が入ってきたり、転職や部署異動があったり、自分の仕事を誰かに引き継ぐタイミングは誰にでも訪れるもの。とはいえ、引き継ぎをする機会はそれほど多くないうえ、引き継ぎをする時期は何かとバタつくこともあり、つい手を抜いて最後の最後に仕事ぶりにケチがついてしまう、なんていうのもよく聞く話です。
引き継ぎにはいくつか「外してはいけないポイント」があります。そうしたポイントを押さえておけば、初めてでもスムーズに引き継ぎを進められるはずです。引き継ぎの重要性や注意点とともに、詳しく解説します。
- 業務の引き継ぎが重要な理由
- これだけは!引き継ぎを確実に行うための3カ条
- スムーズに引き継ぎを完了させる手順
- 分かりやすい引き継ぎ資料を作る5ステップ
- 絶対避けたい!NGな引き継ぎ方法とその対策
- どうしても引き継ぎが間に合わないときの対策
- まとめ:忙しい時期だからこそ丁寧な引き継ぎが重要!
業務の引き継ぎが重要な理由
正直なところ、「引き継ぎなんて面倒…」と感じる人もいると思います。しかし知っておいていただきたいのが、「引き継ぎは、自分のためにもなる」ということです。引き継ぎがきちんとできているだけで周囲や後任者から一定の評価が得られます。「担当者が変わってもしっかり対応してくれる会社だ」と、顧客からの信頼も保てるでしょう。引き継ぎのために業務の棚卸しをすることで、新たな課題発見と業務効率化も期待できます。
また、引き継ぎを丁寧に行っておくことで、自分が新しい仕事を始めた後に後任者から何度も質問されたり、対応が求められたりする機会も減らせます。引き継いだ後の自分を助けるためにも、多少の手間をかけてでも引き継ぎに取り組んでおくべきです。
これだけは!引き継ぎを確実に行うための3カ条
業務の引き継ぎを確実に済ませるためには、次のポイントを意識しましょう。- 余裕を持ったスケジュールで行う
- 実情に即した分かりやすい資料を作る
- 相手の理解度を確認しながら引き継ぎをする
余裕を持ったスケジュールで行う
業務の引き継ぎには、予想以上に時間がかかるものです。あなたからすれば慣れた仕事を他の人に渡すだけですが、後任者からすればそうではありません。特に新入社員や別の部署から異動してきた人が後任者となる場合、引き継ぎの内容を理解するまでに時間がかかるでしょう。引き継ぎをする時期は部署異動や休職・退職などがあり、社内全体が何かとバタつく時期でもあります。直前に慌てることのないよう、後任者が引き継いだ業務に自力で取り組み、後任者の不明点にあなたが答えられるぐらいのスケジュールで進めるのがおすすめです。
実情に即した分かりやすい引き継ぎ資料を作る
理想的な引き継ぎ資料とは、「書かれた内容の通りに進めれば、誰でもきちんと仕事が完遂できるもの」。以下の点も意識し、分かりやすい資料作成に努めてください。- 説明が細かすぎ・簡略化しすぎではないか
- 知識や経験がなくても「見れば分かる」か
- あなたや特定の人だからできていた部分が含まれないか
「引き継ぎ資料の内容どおりに進めても、業務が終わらない」「途中で手順が分からなくなる」といった資料では、引き継ぎはスムーズに進みません。
相手の理解度を確認しながら引き継ぎをする
引き継ぎは資料をベースに、口頭での説明も交えて行われることが多いもの。その際、一方的に説明するばかりでなくコミュニケーションを取りながらできると、より円滑な引き継ぎができるはずです。たとえば、以下のように相手の反応を確認しながら進めると良いでしょう。
- 「ここまでで分からないことある?」と適宜聞く
- 不安そうな表情をしていないかを見る
- メモをきちんと取れているか確認する
- 取ったメモの内容を整理・理解できているか尋ねる
こうした点を意識するだけで後任者の不安は和らぎ、分からないところがあれば自ら質問でき、サクサクと引き継ぎが進むはずです。また「それぞれの業務が何に関連しているのか」といった業務の全体像や、目的・ゴールなどを伝えることも大切です。
スムーズに引き継ぎを完了させる手順
仕事を引き継ぐ場合、以下の手順で進めることが多いです。- 事前準備(進め方の確認・整理)
- 引き継ぎ資料を作成する
- 後任への引き継ぎと関係者への連絡をする
- 後任に業務を一通り体験してもらう
- 引き継ぎ完了&後任のフォローをする
ゆとりを持って引き継ぎを完了させるために、各手順で行うべきことを解説します。
引き継ぎフェーズ1.事前準備(進め方の確認・整理)
引き継ぎを円滑に進めるために、以下の点をチェック・対応するところから始めましょう。スケジュール関連 |
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業務に必要な物 |
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引き継ぎ相手の詳細 |
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そして、上記の点も踏まえて大まかな引き継ぎのスケジュールを立ててください。立てたスケジュールは、上司にも共有しておきましょう。
引き継ぎフェーズ2.引き継ぎ資料の完成
おおよそのスケジュールが決まったら早急に引き継ぎ資料の作成に着手し、完成させます。引き継ぎ資料の作成には、意外と時間がかかるものです。自分の普段の仕事と並行して作るためには、週に何日か資料作成の時間を確保してコツコツ進めるのがおすすめです。余裕があれば、引き継ぎの計画書を作っても良いかもしれません。
ただし引き継ぎ資料を、1から作成するのはおすすめしません。社内にあるマニュアルのフォーマットを流用できるのであれば積極的に活用し、効率よく作成しましょう。
引き継ぎフェーズ3.後任者への引き継ぎと関係者への連絡をする
次に、作った資料をもとに後任者に仕事を引き継ぎます。ただしこの段階ではミーティングを行い、引き継ぎ資料を大まかに説明する程度で大丈夫。細かい内容は、実際に業務を体験してもらうときに伝えましょう。同時にこの段階までには、顧客や取引先へ近々担当者が変更する旨を伝えておきます。なお、関わりの薄い取引先への挨拶や連絡は、引き継ぎの直前でも構いません。
引き継ぎフェーズ4.後任者に業務を一通り体験してもらう
口頭での引き継ぎが終わったら、資料をもとに後任者に業務を一通り体験してもらいます。まずはあなたがフォローしながら、一緒に業務に取り組みます。無事に完遂できたら、今度は後任者に1人で取り組んでもらい、その工程・出来映えをあなたがチェックしてください。
この流れを最低でも2回は繰り返すと安心です。2回やっても不安点が残る場合はもう一度。「何回やったか」ではなく、後任者が確実に業務を行える状態にすることが大事なのです。最後は、あなたのフォローは極力行わず、後任者がメインで業務に取り組むのを見守る機会を設けると、より確実でしょう。
引き継ぎフェーズ5.引き継ぎ完了&後任のフォローをする
業務を後任者がメインで対応してもらうようにして、引き継ぎを完了させます。質問や疑問点もこの時点で解消しきることを目指します。もし何も質問されない場合は、あなたから「何か質問はない?」「こういうケースはどう対応する?」「この工程ではどんなトラブルが考えられると思う?」など質問し、理解度を確かめましょう。不明点がないのではなく、「分からないことが分からない状態」である可能性もあります。
退職の場合は難しいかもしれませんが、なるべく自分の連絡先も伝えておくとより安心です。いざという時に連絡できる環境が整っていると、後任者の気持ちの負担を減らせます。
分かりやすい引き継ぎ資料を作る5ステップ
引き継ぎが円滑に進むかどうかは、資料の分かりやすさが左右すると言っても過言ではありません。次のように段階的に進めると、整理された資料が作れるでしょう。- まずは業務内容を洗い出す
- それぞれの業務を分類して解説する
- 注意点やポイント、失敗例なども追記する
- 図表なども加えてブラッシュアップする
- 一旦寝かせてから後任や他のメンバーに確認してもらう
1.まずは業務内容を洗い出す
資料作りの前準備として、引き継ぐ業務を大小問わず全て洗い出してみましょう。この段階では箇条書きやメモ書き程度で構いませんが、その業務を行う頻度や締め切り、所要時間、今まで起きたミスやトラブル、トラブル発生時の対応なども併記しておくと、あとあと役立ちます。もし洗い出してみて「必要性が疑問」「他の部署の方が適任だ」と感じる業務があれば、業務フローの改善を検討するのも手です。
2.それぞれの業務を分類して解説する
洗い出した業務を、年次・月次・週次・日次で行うものに大まかに分けます。一通り分類できたら、以下のように各業務のジャンルや名称、内容・手順を詳しくまとめます。<分類例>
ジャンル | 業務名 | 実施頻度 | 手順 |
---|---|---|---|
備品管理 | 事務用品発注 | 毎月第1・3月曜日 |
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経理関連 | 立替金の返金 | 毎週水曜日 |
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あらかじめ業務を分類したうえで各業務について解説すると、内容の抜け漏れ・過不足を防ぎやすくなります。簡易的な年間・月間カレンダーを作るのも分かりやすいです。
3.注意点やポイント、失敗例なども追記する
業務内容や手順に加えて、あなた自身がよく直面したトラブルや、ミスをしやすいポイントも記載しましょう。もし実際に大きな失敗につながった例があれば、それも併記してください。「この箇所にチェックが入っていないと、こういうミスになる。実際に◯年◯月に同じミスをしてしまい、10万円分の商品の発注が遅れた」といったように、ストーリー立てて記載すると、より重大性や注意すべき点が伝わりやすくなります。
4.図表なども加えてブラッシュアップする
引き継ぎ資料に図表や画面のキャプチャなども使用し、さらに視覚的に分かりやすくまとめましょう。文字ばかりの資料は、必要な情報を見つけづらいものです。特に画面キャプチャは可能な限り資料内に入れることをおすすめします。
ただしこのとき、「作業興奮」に陥らないように注意してください。資料を作っていて、つい夢中になって何時間も経ってしまった経験はありませんか? カラーリングやデザインも気になるところではありますが、「本当に伝えるべきことは何か?」を念頭に置いて、シンプルかつ分かりやすい資料作りに努めましょう。
5.一旦寝かせてから後任や他のメンバーに確認してもらう
内容がおおむね出来上がったら、1日以上資料を寝かせましょう。その後、自分で作った資料の通りに取り組んで、問題なく対応できるか確認してください。資料を作った直後は、多少資料に不足があっても気付かないケースがあります。少し時間をおいてクリアな頭で確認することで、誤字脱字や抜け漏れが発見できるはずです。
内容が問題なさそうであれば、他のメンバーにも共有し、実際に資料を見て業務に取り組んでもらいます。他のメンバーに共有することで情報の抜け漏れや書き方が分かりにくい場所などを確認できるほか、「前任者以外、引き継ぎの内容を知らない」という事態を防止します。
絶対避けたい!NGな引き継ぎ方法とその対策
引き継ぎのやり方次第では、期日までの引き継ぎが難しくなるケースもあります。引き継ぎがスムーズに行かない例として、ありがちなものをまとめました。よくよく留意して準備を進めましょう。NG引き継ぎ例1:後任者の自発性を試そうとする
仕事の引き継ぎは、自分から後任者に積極的にアプローチして進めましょう。そもそも「業務を引き継いでもらう」ので、後任者主体で進めるものではありません。後任者は、あなたの様子を見て「忙しそう」と遠慮してしまったり、「こんなことを聞いても良いのかな」と不安に思ってしまったりするもの。後任者から「引き継ぎをお願いします」といった声かけを待っていると、いつまでも引き継ぎができない可能性があります。
後任者との面識の有無や共に働いた時期の長短を問わず、自分からグイグイ行って進めるべきです。さらに、ちょっとした時間に「正直、どんな感じ?」など話しかけてみると、リアルな感想や不安・不明点などが聞き出せるかもしれません。
NG引き継ぎ例2:伝えるだけで満足する
引き継ぎは一方的に内容を伝えれば良いわけでもありません。また、「伝えたかどうか」ではなく「後任者が業務を行える状態になっているかどうか」が大切です。「マニュアルを渡すだけ」「やるべきことを口頭で伝えるだけ」では、「引き継ぎをした」とは言えません。これまでに業務を担当してきたあなたと、初めて担当する人とでは知識量も経験も異なって当然です。「ここまで言わなくても分かるだろう」と勝手に判断せず、丁寧すぎるぐらいの対応を心がけてください。また、相手の理解度や作業の習熟度が求めたレベルに達しているかの確認を怠らないように注意しましょう。
NG引き継ぎ例3:準備が整っていない状態で引き継ぎをする
資料のほか、必要なツールやアクセス権も全てそろえてから引き継ぎをしましょう。「ログインに使うアカウントが用意できていない」「必要なファイルが共有されていない」といった準備不足の状態で引き継ぎをしようと思っても、前に進みません。何より、後任者からの信頼を落とす可能性もあります。
遅くとも引き継ぎの前日までには、後任者が業務をできる状態になっているか、必要なものがそろっているか確認してください。
どうしても引き継ぎが間に合わないときの対策
何らかの理由で、引き継ぎに十分な時間が取れないこともあるでしょう。その場合にできる対策は、大きく次の2つが考えられます。引き継ぎ資料作りに優先的に取り組む
まずは、引き継ぎ資料の完成を最優先に考えましょう。資料さえできていれば、あなたから後任者へ口頭で説明ができなくても、一通り業務ができる体制が整えられるはずです。ただし、資料を読むだけで後任者が業務を完遂できるぐらい作り込んでおく必要があります。資料の作り方は、「分かりやすい引き継ぎ資料を作る5ステップ」を参照してください。
上司や先輩などにも相談しておく
引き継ぐ仕事や作った資料の内容を、あなたの上司や先輩にも伝えましょう。特に上司は引き継ぎの進捗を確認する役割もあるため、引き継ぎ内容を伝えておくことは重要です。共有の際は「今ここのフェーズまで来ています。あと◯日くらいで独り立ちです」のように具体的に伝えると、上司も安心できます。
まとめ:忙しい時期だからこそ丁寧な引き継ぎが重要!
業務の引き継ぎが必要になったとき、やるべきことが分からずつい身構えてしまうかもしれません。しかし、引き継ぎのために対応すべきことはとてもシンプル。余裕を持ったスケジュールで順序立てて進めれば、きっと問題なく完了できるはずです。引き継ぎがきちんと行えるスキルは、自分自身の信頼関係維持や、自分が新たな業務を習得する際の心構えという観点でも有用です。気持ちよく次の仕事に取り組むためにも、ぜひ前向きに取り組んでみてください。
文/シモカワヒロコ(Nyima.)