俳優/瀬戸康史 | 自分をオープンにしてその場の居心地を良く

第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる

俳優/瀬戸康史さん

脚本家・三谷幸喜さんが現在、最も頼りにしている俳優の一人だと公言するほど、その実力が高く評価されている瀬戸康史さん。
17歳で俳優デビューした当時は、自分で望んだ仕事ではなかったがゆえに様々な葛藤があったという。それでも今では俳優こそが天職と思えるほどになった。何が瀬戸さんを変えたのか。仕事への思いと共に聞いてみた。

Profile

せと・こうじ/1988年福岡県生まれ。2005年デビュー。22年、映画『愛なのに』で第44回ヨコハマ映画祭主演男優賞を受賞、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で北条時房を演じた。23年2月8日(水)からPARCO劇場(東京・渋谷)にて上演予定の舞台「笑の大学」に出演。

ドラマ、映画、舞台で目覚ましい活躍を見せている俳優の瀬戸さん。ここ数年、脚本家・三谷幸喜さんの作品への出演が相次いでいる。舞台「23階の笑い」「日本の歴史」、そしてNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に続き、2023年2月8日(水)からは東京・渋谷のPARCO劇場で上演予定の三谷さん作・演出の舞台「笑の大学」に出演。「またまた三谷さんが呼んでくれて素直にうれしいです」と瀬戸さん。

「笑の大学」は戦時色が濃くなる1940年の警視庁の取調室を舞台に、厳格な検閲官と喜劇作家が繰り広げる言葉の応酬劇。二人芝居で、96年の初演では傑作と絶賛された。その後、再演や映画化に加え、海外でも上演。「過去の舞台と映画を拝見したのですが、演じる役者さんによって全然雰囲気が変わるんです。今回は検閲官を内野聖陽さんが、喜劇作家を僕が演じます。2人がどんな化学反応を起こすか楽しみにしていてください」

子どもの頃から動物が好きで、獣医を目指して進学校に通っていたという瀬戸さん。しかし、母親が芸能事務所のオーディションに応募したことで状況が一変する。「受けたら合格してしまったんです。芸能界には興味がなく、できれば地元の福岡から出たくなかった。でも、受かったということは何か意味があるのかもしれないと思い直し、上京しました」

俳優/瀬戸康史さん

とはいえ当時まだ17歳。不安でたまらなかったという。「仕事がたくさんあるような状況ではないし、自分がやりたかったわけでもなかったので何かしっくりこなくて。福岡へ帰りたいと何度も思いました」。それでも踏みとどまったのは意地があったからだ。「弱音を吐くのが恥ずかしくて、親に心配させるのもかっこ悪いと感じていました。今なら一人で頑張ろうとせずもっと人に頼ってもいいと思えるのですが」

鬱々(うつうつ)とした状態はデビューから6年ほど続いた。でもさすがに周囲に心を閉ざし続けている自分が嫌になり、そこから抜け出したくなった頃、出演していたドラマ『TOKYOエアポート〜東京空港管制保安部〜』のスタッフだけの飲み会に参加することになった。「そこで、様々な人たちがチームとなって一つの作品を作り上げていることに改めて気づき、ちょっと肩の力が抜けたというか、ネガティブな自分から解放された感覚がありました」

以後、瀬戸さんは本来のオープンな性格を取り戻し、どの現場においても積極的にコミュニケーションをとるようになった。そうすると得るものも増え、自分の心もどんどん豊かになって、いつしか俳優こそが自分の天職だと思えるようになっていった。

興味があればまず行動。動けば何かが始まる

俳優/瀬戸康史さん

2005年のデビュー以降、着実にキャリアを重ね、存在感を増している俳優の瀬戸さん。特に昨年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では、主人公・北条義時の異母弟・時房を好演し、話題を呼んだのも記憶に新しい。

そんな瀬戸さんの俳優人生で、大きな転機となったのが15年に出演した舞台「マーキュリー・ファー」だという。「演出の白井晃さんにかなりしごかれました(笑)。でもそこで『芝居だけど芝居をするな』と言われ、演じることに対する意識が百八十度変わった感じがします。段取りやセリフなど全てをひっくるめ、作品や役に『なじめ』ということだと受け止めました。今も自分の心の中にある大切な言葉です」

加えて仕事をする上で大切にしているのが、「それを自分がやりたいかどうか」という気持ちだ。「この人と一緒に仕事をしたいと思えたら、迷わず挑戦します。それともう一つ心がけているのが、台本を読んだ時に自分が演じている姿が想像できないような作品を選ぶこと。自分が乗り越えるべき壁を作る、という意味があってのことです」

例えば現在出演中の舞台「笑の大学」もそうだ。尊敬する脚本家・三谷幸喜さんの作・演出、そして内野聖陽さんとの初共演に魅力を感じた。「それと二人芝居というのも初めてで、どんな感じになるか全く分からなかったからこそ出演を決めました」

10代より20代、20代より30代と仕事の楽しさはどんどん更新されているとうれしそうに話す。20代は本当に休みなんていらなかった。むしろ休みがあると不安になったくらい。しかし30代になってコロナ禍を経験したのもあり、休みも大事だと思うようになった。「だらだらするばかりが休みじゃない。絵を描くとか工夫して過ごせば、すごく充実したものになるし、リフレッシュできると分かったんです」

それと、俳優としてのキャリアも長くなってきたが、この仕事に関しては年齢はあまり関係ない気がしているという。「長くやっていればいい役者になれるわけではない。ただ、息が長いからこそ見えてくるものはあるし、それによってさらに楽しくなる感覚はあります。何よりここまできたからにはやめるのはもったいないという気持ちもあって、僕は続けています」

生来ポジティブな性格。何かやりたいことがあればまず動く。行動しないと始まるものも始まらないと考えるからだ。「それがプラスになるかマイナスになるかは分からない。だけど何かは動き出します。だからやりたいことがあるという人は、怖がらずに新しい世界へ飛び込んでいってほしいなと思います」

ヒーローへの3つの質問

俳優/瀬戸康史さん

Q 現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?

獣医になりたいと思っていました。子どもの頃から動物が好きで、獣医を目指す前は動物と触れ合える施設「ムツゴロウ動物王国」へ行きたいと言っていました。

Q 人生に影響を与えた本は何ですか?

漫画の『RAVE』と『NARUTO -ナルト-』です。両方とも中学の頃に夢中になった作品ですが、今でも時々読み返しています。改めて読むと「ああ、この巻は先輩の家で読んでたなあ」とか「あそこで4巻を買ったなあ」と、当時の自分を思い出すんです。それによって何か初心に帰るというか、背中を押してくれているような感覚に浸れるので心地いいんです。

Q あなたの「勝負●●」は何ですか?

公演本番の直前、10分前くらいに舞台袖へ行った時、目を閉じて3回ジャンプします。「勝負ジャンプ」です。それをやると不思議と力が抜けていいんです。

Information

舞台「笑の大学」に出演!

脚本家・三谷幸喜さんの傑作劇が四半世紀ぶりに劇場に帰ってくる。2023年2月8日(水)~3月5日(日)に「PARCO劇場開場50周年記念シリーズ」として公演予定の「笑の大学」だ。戦時色が濃厚になる1940(昭和15)年、警視庁の取調室。厳格な検閲官と喜劇作家の間で上演許可を巡る7日間の緊張感漂う攻防が繰り広げられる。そしてやがて2人の間に不思議な友情が生まれ、完璧な喜劇を創り上げていく――。96年に「パルコ・プロデュース公演」として青山円形劇場にて初演された二人芝居。読売演劇大賞の最優秀作品賞に見事輝いた三谷さんの作品で、今回は検閲官に内野聖陽さん、作家に瀬戸康史さんを迎え、三谷さん自身の演出で上演される。瀬戸さんは「僕が演じる作家は基本的に受け身なんですが、内野さん演じる検閲官との攻防戦で逆転する感じが面白いんです。三谷さんが今回僕にどんなむちゃぶりをしたか、それも楽しんでいただけたらと思います」と語る。

公式サイト:https://stage.parco.jp/program/warai
※新潟、長野、大阪、福岡、宮城、兵庫、沖縄にも巡演予定。

転載元:https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/heroes_file/263/