さらに最近ではテレワークでプライベートと仕事の境界線があいまいになり、バランスの取りづらさを感じている人もいそうです。
今回はライフスタイルプロデューサーとして活躍する村上萌さんにインタビュー。社会人になってからずっと東京と地方の二拠点生活を送り、社長であり一児の母でもある村上さんに、ワーク・ライフバランスに関するお考えを伺いました。
プロフィール
村上萌1987年生まれ。株式会社ガルテンの代表。季節の楽しみと小さな工夫で理想の生活を叶えることがコンセプトのライフスタイルWEBマガジン『NEXTWEEKEND』の編集長を務める。現在は会社経営をする傍ら育児にも勤しみ、東京と長崎での二拠点生活を送っている。
プライベートと仕事を切り離さず、どちらも楽しめる環境を作った
――村上さんはワークライフバランスについてどう考えていますか? またプライベートと仕事のバランスで苦労したことがあれば教えてください。
基本的にはプライベートと仕事を切り離さず、それぞれが延長線上にあるものと考えています。就活をしていた21歳の頃から夫と付き合っていて、「移籍もあるプロサッカー選手の彼と生活しながら自分のやりたい仕事をやる方法」を探していましたし、夫を支える家事でさえ仕事に生かせないかと思っていたくらいで、プライベートは仕事に、仕事はプライベートに生かしたいと考えています。
そうして検討した結果、自分で裁量を持ち、やりたい仕事を作れる起業の道を選びました。起業した会社では「季節の楽しみと小さな工夫で、理想の生活を叶える」がコンセプトのコミュニティメディア『NEXTWEEKEND』を運営しています。私自身が季節の行事を大切にする家庭で育ち、七夕やクリスマスなどのイベントが大好きだったことが原体験になっています。
「NEXTWEEKEND」という言葉は直訳すると「次の週末」を意味しますが、単に週末の情報を伝えたいのではなく「こんなことしたいな…」と思っている、誰かの心の中の小さな野心を「それ、次の週末にはできるよ」と背中を押したいという意味も込めています。
仕事が忙しいと、自分のやりたいことを他人事にしてしまうことは多々あるかもしれませんが、先延ばしにせずに、ちゃんと向き合ってみると案外すぐに取りかかれることって沢山あるんですよね。そうやって少しずつ野心を叶えることで、「自分でもできるじゃん…!」という肯定感を実感してもらい、仕事もプライベートも良い循環が生まれたらいいなと思っています。
私自身、いつも「次の週末は何をしようかな?」とワクワクしながら計画を立て、実践しています。今年の春は、家の改造を週末の楽しみにしていました。プライベートの楽しみを作って仕事の活力にすることも、ワークライフバランスを整える一つの方法だと思いますし、仕事とプライベートは完全に分断したものではなく影響し合っています。
ただ、子どもが生まれてからは育児生活が始まり、時間が足りないと感じることが増えました。仕事とプライベートを切り離さないようにしていても、時間という壁によりどうしても両立の難しさを覚える時がありました。
地方と東京を行き来する際に、子どもが生まれるまでは移動時間をクリエイティブな仕事時間に充てていたんですが、子どもと一緒に移動するようになってからは仕事なんて絶対無理。家でも、子どもといる時は一人でパソコンを開く余裕はなく……無理やり仕事をしようとするとイライラしてしまって、自分にも一緒にいる家族にも良くありません。
そこで、物理的にプライベートと仕事の空間を分けるようにしました。家に仕事場を作り、基本的にパソコンを開くのは仕事場のデスクの上だけ。家族と過ごすリビングや、子どもと移動する新幹線ではパソコンを開かず「今はプライベートの時間だ」と割り切っています。やらない時はやらない、できない時はできないとあきらめてメリハリをつければ仕事が効率化できますし、プライベートも満喫できます。
こう書くと当たり前のようですが、子どもといる間に「あれもできていない、これもできていない」と仕事のTO DOが頭を過ぎると、なかなか全力で一緒に楽しめません。ただ一緒にいるのではなく、「楽しむ時間」と決めることで精神的にもしっかり区切ることができると思っています。
生活を犠牲にしないため、仕事で自分の希望はきちんと伝える
――お話を聞いているとご自身の生活を大切にしよう、という思いが根底にあるように感じます。自分の生活を大切にするために、仕事で意識していることはありますか?
相手の都合に合わせていると自分の生活がおろそかになってしまうので、その都度交渉して、働きやすい環境を作っています。私は自分の会社の代表なので上司はいませんが、執行役員を務めている会社や取引先などのクライアントが多く、たくさんの打ち合わせがあります。でも、サッカー選手である夫のホーム戦は絶対応援しに行きたいし、唯一のオフの月曜日は一緒にいたいので、打ち合わせの日程を決める時はこうした希望をハッキリ伝えて、別の日にしてもらっています。
先日も、娘の誕生日に重なってしまいそうな仕事を「娘の誕生日なので家で祝ってあげたいと思っていて…」と理由を伝えたうえで調整していただくことがありました。もちろん、どうしてもその日でなければならない時は、優先順位も変わりますが、大事にしたいタイミングを明確にしたうえで予定を組んでいくことは重要で、私がそれをすることで、部下もそういった主張がしやすくなるかなと思っています。
日本だと、自分の希望があっても黙って我慢してしまう人が多いように感じます。それだと相手もこちらが我慢していることが分からないし、自分も「この仕事のせいでプライベートを犠牲にしちゃったな」と感じて仕事が嫌いになってしまうかもしれません。
だれだって自分の人生があり、自分で選んだ仕事をやっているわけですから、働きやすさも主体的に作ったほうがいいですよね。私自身、20代の頃からクライアントに対しても自分の希望を伝え、できる限りプライベートと仕事を両立できるスケジュールを作ってきました。その分、成果はきちんと出すようにしたり、重要なポイントでは打ち合わせを優先したりして、信頼関係を維持しています。
希望は早めに伝えるのがポイントです。私の会社では、毎月スケジュールを確認する時間を設けて、1カ月の流れを互いに共有しています。「毎週金曜日は明治神宮に野球観戦に行きます」などと事前に聞いておけば、当日もメンバー同士で「今日、神宮だよね?早く行かないと!」フォローアップできます。
直前に言うと「いきなり言われても……」となってしまいますし、本人も言いにくいと思うので、事前共有が肝ですね。スケジュール確認の機会がなかったら、今自分がどんな状況なのか、今月どうしたいと思っているのか、雑談ベースでもいいので周囲に共有できるような機会を作れるといいですね。
まずは休日の楽しみを設定し、今すぐに行動してみよう
――最後に、読者もマネできるプライベートと仕事を両立させるための具体的なアクションを教えてください。
ワークライフバランスに悩んだら、まずは次の休日の楽しみを作ってみてください。おいしいお肉を食べるとか、気になっていたカフェに行くとか。先ほどもお話したように、ちょっとしたワクワクを叶えられたら「自分はやりたいことができるんだ、毎日を楽しめるんだ」って自信が生まれて、仕事のやる気にもつながります。
ただ楽しみを作っても、いろいろなことを言い訳に「今はできないや」とあきらめてしまうこともあるかと思います。でもそこで「どうやったら今の環境でその楽しみを実現できるかな?」と考えるのが大切なんです。
例えば、先日ようやく決行した子ども部屋のDIYは「この昔ながらの一軒家を、どうしたらもっと楽しく子育てできる家にできるかな?」と考えて、新しい楽しみとして試みたことです。
なかなかな作業ではありますが「めんどうくさいな」と後回しにせず行動に移すには、タスクを予定に入れ込むのがポイントです。出張が多く忙しい時期だったので「次の土曜日はカーテンを決める」などとスケジュールに入れたり、DIYをする当日は「インスタ配信をしながら押入れ改造をします」と宣言してやり切りました。気持ちが高まった瞬間に準備して、周りにも宣言するのがおすすめです。
「気になっていたカフェに行く」など小さなことでもいいので、プライベートの楽しみを作り、それを実現し、仕事のモチベーションにもつなげる。こんなふうにプライベートと仕事を切り離さず、それぞれにいい相互作用を与えながら毎日を充実させていってほしいです。
(MEETS CAREER編集部)