【3分で分かる】ファーストペンギンの意味とは? ビジネスのファーストペンギンの特徴や思考を解説

ファーストペンギンのイメージ

ファーストペンギンと聞いて、みなさんはどんな印象を持ちますか? 果敢なチャレンジャー、一方で危険に飛び込んでいくような無謀な印象を持つ人もいるかもしれません。実話を基にしたドラマ『ファーストペンギン!』がテレビで放送されるなど、ビジネスの意味のファーストペンギンにはここ数年注目が集まっています。この記事では、ファーストペンギンの特徴や行動を解説します。

<INDEX>
ビジネスのファーストペンギンの意味とは?
なぜ、ビジネスでもファーストペンギンが必要なのか
ファーストペンギンにはどんな人がいる?
ファーストペンギンの特徴
ファーストペンギン思考を鍛えるには?
【まとめ】ファーストペンギンになるために

ビジネスのファーストペンギンの意味とは?

ビジネスの意味で言うファーストペンギンとはリスクを恐れず未開拓の分野に挑戦する人のこと。語源はペンギンの習性です。

ペンギンは基本的に集団で行動しますが、エサを求めて一斉に海に飛び込むことはないそう。その代わり1羽のペンギンが最初に飛び込み、安全でエサがあると確認できたら2羽目以降が後に続きます。

ファーストペンギンはリスクの代わりに、えさにありつける可能性も高い。天敵に捕食される危険性があっても、果敢にチャレンジする。そんな勇気あるペンギンのように、新たな領域のビジネスに先陣を切っていける人を、ファーストペンギンと呼びます。

なぜ、ビジネスでもファーストペンギンが必要なのか

ペンギンが群れで行動する理由は、天敵から身を守るため。確かに安全な場所で固まっていれば、襲われるリスクは低いでしょう。しかしそのままでは食べるものがなくなり、群れの存続が危ぶまれます。

けれど、リスクをとってエサ場を開拓するファーストペンギンがいれば、他のペンギンも生き延びることができる。これは、人間社会やビジネスにおいても同じことが言えます。

現状を維持していれば一見安定しているようでも、時代の変化に取り残されていずれ衰退してしまう。だから先頭に立って現状を変えていくファーストペンギンの存在はどのような企業、分野にとっても重要です。

また、たとえばインターネットやスマートフォンのように今となっては当たり前のものも、かつて新たな技術や概念を生み出し、生活の一部に定着させた先人がいるからこそ、私たちの今の生活は便利で、より快適なものになっています。ファーストペンギンたちに牽引されて、生活や文化が向上してきたと言っても過言ではないのです。


ファーストペンギンにはどんな人がいる?

ファーストペンギンというと、スティーブ・ジョブズやスズキのインド開拓などを牽引した鈴木修などが有名ですが、今も次世代のファーストペンギンたちが、さまざまな領域のビジネスで挑戦を続けています。

山下貴嗣(βace)
Bean to Bar(チョコレートの生産を豆の仕入れから製品に加工するまでを一貫して行う手法)のチョコレートを日本で先駆けて販売。チョコレートブランド「Minimal - Bean to Bar Chocolate -(ミニマル)」を経営し、日本のBean to Barの先駆者と言われる。

頓花聖太郎(闇)
「ホラー×テクノロジー」の可能性に気づき、ホラー事業を専門に行う子会社を設立してCCOに就任。テーマパーク等のイベントだけでなく、脱毛サロンやリゾートバイトとホラーを組み合わせたプロモーションを行うなど、ホラービジネスの第一線で活躍中。

森本萌乃(MISSION ROMANTIC)
自身がマッチングアプリを使用してロマンチックが足りないと課題を感じたことが原点に、「本を通じた出会いの機会を作り出す」をコンセプトに斬新なマッチングサービス「Chapters bookstore」をリリースする。

深澤雄太(AppBrew)
コスメ専門の口コミアプリ『LIPS』をリリース。既存のアプリでは、「信頼できる発信源からコスメの情報を得たい」という若い層のニーズを満たせないことに課題感を持ったのがきっかけ。累計ダウンロード数は1000万を超えて(2023年2月現在)、日本最大級にまで成長している。


岩橋洸太(バイオフィリア)
大手が寡占しているペットフード業界で、獣医師監修で国産原材料にこだわった手作りペットフードを届けるサービス「CoCo Gourmet(ココグルメ)」を立ち上げD2Cで販売。根底には「動物を幸せにしたい」というビジョンがあり、培養肉を商品化して食肉にされる動物を減らしたいと考えている。

神宮司誠仁(BASE)
小規模事業者や個人向けのネットショップ作成サービス『BASE』に20代でジョインし、プロジェクトマネージャーに就任。当時はまだ浸透していなかった「プロジェクトマネージャー」のキャリアを開拓

岩田修(ジーンクエスト)
個人向けの遺伝子解析サービスを手掛ける株式会社ジーンクエストの副社長。研究者出身の経営者という異色のキャリアを持つ。研究職で身につけた仮説検証のスキルを経営でも活かし、ビジネスの課題解決をスピーディに行っている。


ファーストペンギンの特徴

ファーストペンギンの特徴まとめ
業界や年齢は違っていても、ファーストペンギンには複数の共通点があります。

ファーストペンギンの特徴(1)泥臭く行動できる

ファーストペンギンの成功談だけを聞くと、華やかできらびやかな印象があるかもしれません。しかしその裏では、誰もが泥臭い努力をしています。今では知らない人がほとんどいないECモールも、1997年の創業当時はインターネットで買い物をすること自体が社会に根づいていませんでした。創業メンバーたちは全国を回り、公衆電話から地元の商店に営業電話をかけ続けて取引先を開拓してきた過去があります。

ファーストペンギンの特徴(2)まずはやってみる

はじめから壮大な計画や100点を目指すあまり、なかなか行動に移せなくなってしまうというのはよくあることです。その点、ファーストペンギンの思考回路は、動きながら考えて状況に応じて変えていくのが基本スタンス。

トライ&エラーを繰り返し、より良い方向へと軌道修正をしながら、事業を確かなものにしていく。行動が遅くなりチャンスを逃してしまうことも、ある意味「リスク」と捉えているようです。

▼まず動き出してみて、その結果のフィードバックから臨機応変に道を修正したほうが早い
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ファーストペンギンの特徴(3)個人の成功や社会的名声よりビジョンを重視

億単位の売上を作る、有名になるなどの個人的な満足ではなく、社会的課題の解決に向けて動いている人が少なくありません。よって、ファーストペンギンには経営者が多いですが、起業が目的というよりも、既存の企業ではビジョンが実現できず手段として自分の会社を作る、という結果のようです。

時には資金繰りや従業員との方向性のずれなど苦境に置かれても挫折せずにいられるのは、「課題を解決したい」という使命感に突き動かされているからと言えるケースもあるでしょう。

ファーストペンギンの特徴(4)既成概念にとらわれない

「○○だからできない」「○○が普通だから」と先入観を持たず、できる方法を絶えず模索しています。

ドラマ『ファーストペンギン!』は山口県の漁業関係者がモデルになっていますが、同県には「一隻の漁船につき、一漁期に、一漁法しかしてはいけない」というルールがありました。

しかし、ルールとはいっても明文化されていない暗黙の了解のようなもの。もともとは漁師間の争いを避けるために設けられていたのですが、漁獲量も漁業者が減った現代にはそぐわなくなっていました。

ルールだけが残っていることに疑問を持ったコンサルタントの坪内知佳は、山口県漁場共同組合に廃止を何度も訴えたものの門前払い。強行突破しようとしたものの、最終的には坪内側が折れることになってしまいました。しかしこれを機にこのルールへの疑問が地域に広がり、なし崩し的にルールがなくなっていったそうです。変化には労苦がつきものですが、それと真っ向から向き合えるのがファーストペンギンです。

ファーストペンギンの特徴(5)自分の信念を大切にする

新しいチャレンジを始めると、周囲から反発されることも少なくありません。ファーストペンギンは、そんな声に耳を傾けつつも振り回されず、やりたい・やらねばと思ったことは反対を押し切ってでも立ち向かう意志の強さを持っています。

ある40代の経営者は属人的な業務管理や新人の離職率の高さに危機感を持ち、業務管理システムの導入や新人教育の徹底を決定したものの、50代以上の社員は猛反発。それでもあきらめずに少しずつ説得しながら改革を進めます。最終的には、業務管理システムは仕事になくてはならないものになり新人の定着率も上がりました。

もし反対派の声を聞いて改革を断念していたら、若手社員が育たないまま年配社員が定年退職を迎え、会社は消滅を待つばかりになっていたはずです。ファーストペンギンは反対勢力すら巻き込むパワーを持っています。

ファーストペンギンの特徴(6)「失敗」を失敗で終わらせない


ファーストペンギンたちは山ほど失敗をしています。倒産しかけたり集客ができなかったりと、むしろ一発で成功した事例のほうが少ないのではないでしょうか。

でも失敗を糧に次に進んでいるため、成功への過程の一つになり、結果的に失敗が失敗で終わりません。ビジョンが明確だから、その過程でつまずきがあっても立ち上がって突き進める強さをファーストペンギンは持っています。

▼事業が失敗するにつれて、「こういうところがダメだったんじゃないか」というのがノウハウとしてではなく実体験として身に付いた。meetscareer.tenshoku.mynavi.jp


ファーストペンギン思考を鍛えるには?

ファーストペンギン思考の鍛え方
ペンギンも人間も、リスクがあるかもしれない場所へいきなり飛び込む勇気はなかなか持てません。でも、日々の思考や行動を変えることで少しずつファーストペンギンに近づくことができます。

ファーストペンギン思考の鍛え方(1)出来事を良い方向に解釈する


目の前の出来事をポジティブに捉えることで、世の中の見え方も変わってきます。たとえば仕事でミスをして、「自分はできない人間だ」と落ち込むだけでは、それ以上の進展はありません。一方、「この程度で済んでよかった」「これをどう活かそうか」と考えて次の行動に移すのはファーストペンギン思考と言えます。

ファーストペンギン思考の鍛え方(2)既存のことに新しい価値を加えられないか考える


ファーストペンギン全員が、ゼロからこの世になかったものを生み出しているわけではありません。既存のものに新しい価値を加えることでイノベーションが起きる場合もあります。

かつて音楽は家で鑑賞するものであり、音楽プレイヤーの価値は音質や価格で決まっていました。そこにソニーが「屋外で鑑賞できる」という価値を加えたことで誕生したのがウォークマンです。

これまでの価値観や使用方法にとらわれず別の視点で既存のものごとを観察する意識を持つことで、斬新なアイディアが浮かぶかもしれません。

ファーストペンギン思考の鍛え方(3)やりたいことを人に話す


アフリカのある国で野生動物保護活動をしていて日本のテレビでも取り上げられたことがある女性は、「アフリカに行きたい」といろんな人に話していました。すると近所に住む人がケニアでの研修生を募集しているという新聞記事を見つけて教えてくれ、アフリカに渡る足掛かりをつかんだのです。臆せずに口に出すことで、思わぬところからチャンスが転がってくる場合があります。

この女性は筆者の高校時代の友人。高校2年生のときに動物保護に興味を持ち、打ち込んでいた部活を辞めて文系から理系に転身して関東から地方の大学に入学しました。まさにファーストペンギンにふさわしい行動力の持ち主です。

ファーストペンギン思考の鍛え方(4)チャンスやニーズに敏感になる


石川県にある自動車解体業の会宝産業株式会社は、海外との取引が売上の80%を占めるグローバル企業です。世界88か国に中古車部品を輸出したり技術を海外に伝えたりと幅広く展開しています。

海外展開のきっかけは、これまで廃棄物として処分していた鉄くずなどをクウェート人バイヤーに「販売してほしい」と言われたこと。目の前に現れたお客様のニーズから、そこにビジネスチャンスがあると気づきました。

毎日の仕事や日常生活に新たなニーズやチャンスが隠れている可能性は充分あります。常にアンテナを張っていることが大切です。

▼たまたま金曜日の夜にテレビでやっていた「あの映画」がヒントになった
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ファーストペンギン思考の鍛え方(5)リスクを分析しすぎず、小さく始める


入念な計画やリサーチも、やりすぎると「リスクがあるからやめよう」となりがちです。インターネット上にある失敗例が自分にあてはまるとは限りません。まずはやってみる、やりながら考える精神も大事です。

実現したいことが見つかっても、漠然としていたり壮大すぎたりしたら、何から手をつけていいのか迷うこともあると思います。そんなときは、今すぐできることにまで細かく分解しましょう。行動に移すまでのスピードが格段に上がります。


【まとめ】ファーストペンギンになるために

ファーストペンギンに名前が挙がるのは起業家が多いですが、会社員がファーストペンギンになれないわけではありません。たとえば新プロジェクトの先頭に立つ、新しいシステムの導入の指揮をとって社内インフラを整備する、社内で誰も持っていない資格を取って業務に活かすなど、社内で率先して行動する人もファーストペンギンです。

さきほど紹介した頓花聖太郎さんも、会社員として担当したホラーイベントに商機を見出して社長に提案し、子会社を設立してCCOに就任しました。ゼロからひとりで起業したわけではないのです。

頓花さんは「ホラーをやりたい」と手を挙げ、社長を説得したりホラーイベントを開催してホラーのおもしろさを社員に体験してもらったりと、行動を起こしています。

やってみたい、変えてみたいと思ったことに対して勇気を出し実行に移すことが、ファーストペンギンへの第一歩と言えるのではないでしょうか。

参考書籍
『私がファーストペンギンになれた理由~ゼロイチからつくるということ~』(カナリアコミュニケーションズ)
『ファーストペンギン シングルマザーと漁師たちが挑んだ船団丸の奇跡』(講談社)
『ファースト・ペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』 (日本経済新聞出版)
『ザ・ファースト・ペンギンス 新しい価値を生む方法論』(講談社)
文・ミーツキャリア編集部