働きがいとは? 報酬よりも成長実感が大事? 越川慎司さんにデータをもとに聞いてみた

働きがいについて解説する越川慎司さん


「大丈夫、あなたは大丈夫です」と、音声プラットフォーム「Voicy」でいつも優しく励ましてくれる越川慎司さん。著書『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は世界各地でベストセラーになりました。さまざまなメディアで発信されている「自分が主役のキャリア」やビジネスの視点に、刺激を受けている人も多いのではないでしょうか。

今回はMEETS CAREERの記事をもとに、「Voicy」で働きがいやキャリアについてトークしていただいた内容をレポート記事としてお届け。「仕事に張り合いがない……」ともやもやしている方、必見です。

働きがいを感じる職場とは? 大事なのは収入よりも「成長機会」?

今回ピックアップする記事はMEETS CAREER「働きがいクライシス、克服の鍵は?」。私は「働きがい研究家」として6年以上、「働きがい」について調査・研究を行っていますので、得意中の得意のテーマです。

この記事に書かれている内容を私なりに解釈し、働きがいを見失ってしまう「働きがいクライシス」に悩む皆さんに、解決策をお伝えしたいと思います。

本記事では、働きがいを感じる職場の要素について、新入社員の意識調査(マイナビ転職)が紹介されています。対象数は800人。「どういうときに働きがいを感じるか」「どんな職場であれば働きがいを感じるか」といった質問で、新入社員を対象にしているので、「自分はこういうときに感じるだろう」という予測を含めた調査結果だと思います。

「どのような職場であれば働きがいを感じる?」という質問に対して、最も多かったのは「成長を感じる」で55.6%。これについてはその通りだと思いますね。

2位は「『誰かの役に立てた』と感じる」、3位は「褒められる、労わられる」、4位は「達成感や成果を感じる」、5位は「1日1回は『ありがとう』と言われる」。6位以降には「働きに見合う評価が得られている」、「お手本にしている先輩がいる」、「働きに見合う報酬が得られる」、「目標がある」、「変化に気付いて声をかけてもらえる」と続いています。

働きがいを感じるときのグラフデータ

注目すべきは、報酬・給与に関する内容がトップ5に入っていないということですね。この調査では、8位にようやく「働きに見合う報酬が得られている」が出てきます。この調査結果だけを見ると、意外に思われる方が結構いらっしゃるのでは。しかし、僕は全然意外とは思わないですよ。

私が代表を務める株式会社クロスリバーでは、新人の方から年配の方まで17万3000人の方々にアンケートを実施し、「働きがいって何?」とお聞きしています。また、「Voicy」の放送でも以前、「あなたの働きがいは何ですか?」とお聞きし、1万1000人の方々に答えていただきました。これらの結果にも、同じ傾向が表れているのです。

「成長を感じる=働きがい」の傾向はほかの調査でも

これらの結果が示すのは転職活動や新卒の就職活動では、どうしても報酬に目が行きやすいものですが、実際に感じる働きがいは違っている、そこにギャップがあるということです。

とくに1位の「成長を感じる」というのは、最近になって言われ始めてきたこと。「自分はこの会社で働くと、20代・30代で一人前の社会人になれるのだろうか」ということが大きな関心事なのです。

これを裏付けるデータとして、私たちの会社ではちょっと違う切り口でも質問しています。「残業削減を目的とした働き方改革に賛成ですか」と尋ねてみました。そうすると、20代・30代のビジネスパーソンの43%が「反対です。むしろ残業をしたいです」と答えているのです。

その理由は「残業代がほしいから」なのかというと、そうではなくて、最も多いのは「スキルアップしたいから」。「業務時間中に先輩から学びを得て、資格取得や業務範囲を広げるために勉強し、上司に教えてもらってスキルアップしたい。でも、働き方改革によって早く帰らされてしまう」ともどかしさを感じているということです。

MEETS CAREERの記事の「働きがい=成長を感じる」という結果と、私たちの調査による「残業抑制=成長を感じられなくなるので不安」という結果は、表裏でぴったりと合うのです。

多くの人が持っている「成長したい」というプラスのエネルギーを、会社としてもうまく活用しないといけないですね。収入ではなく、自分が成長できる場として就職先や転職先を考えるというのは、すごく前向きだと思います。

コミュニケーションと働きがいは相関する

次に、記事では「今の職場の状況は?」ということで、いわゆる職場のコミュニケーションの頻度と密度について聞いた調査結果が紹介されています。

働きがいを感じる職場のグラフデータ
例えば、会議だけではなく、雑談があるかどうか。雑談というのは、くだらない話をすることだけが目的ではなくて、実は相手との共通点を見つけるというコミュニケーション術なのですね。この調査では、「雑談が多い職場では成長を感じる、働きがいを感じやすい」という結果が出ています。

その通りですよね。だって働きがいに含まれる達成感とか、貢献とか、承認というのは、会議ではなく「会話」の中で生まれますからね。すごく当たり前のことだと思います。

今はコミュニケーション手段が多様化しています。例えば昔なら自販機の前とか、喫煙室の中で話をするというシーンがあったのですが、今はそういう機会が結構限定的です。一方で、コミュニケーションのツールとしては、実際に会えなくてもメールだけではなく、チャットとか、オンライン会議とか、いろいろありますよね。

このようなコミュニケーションツールを活用するとか、出社したときには会議ではなくて会話をするとか、そういったことを積極的に行っている人たちのほうが働きがいをより感じやすいというのが、この調査結果です。その通りですね。

コミュニケーションが大事な理由

コミュニケーションの頻度を高めていくと、密度が高まります。密度が高いというのは、職場の人たちと腹を割って話せる関係性があるということです。コミュニケーションの頻度と密度が高まると、実は出社だけではなくて、リモートワークにおいても、人間関係がよくなるのです。つまり、チーム内で関わる人との「心理的安全性」が高まるのです。

心理的安全性とは、自分の意見や気持ちを安心して伝えられる状態のことです。心理的安全性が高まれば、いわゆる反対意見とか、改善意見も言いやすく、チーム全体が成長していきます。

逆に心理的安全性がないチームでは、コミュニケーションの頻度・密度が低く、過剰な気遣いが生まれてしまうのです。過剰な気遣いがあると、雑務が増えるのですね。

日本で作られているパワーポイントの資料について調べると、24%が上司や顧客に対する過剰な気遣いによって作られているのです。これは「忖度ページ」と言われていて、約8割がめくられていない、つまり相手は求めていないのですよ。心理的安全性があって、「今ちょっといいですか?」と作成途中で1分でも上司に聞くことができれば、この「忖度ページ」をなくすことができるのは1.9万人の行動実験で明らかになりました。

腹を割って話せる関係性がなく、コミュニケーションが取れていないと、会議のための会議とか、「メールを見ていますか」という世界一無駄なメールをやりとりするとか、雑務が増え、働きがいが下がってしまいます。

コミュニケーションと働きがいはこういった相関関係にあるので、コミュニケーションの頻度・密度というのは、職場のインフラとして、プラットフォームとして重要だということですね。

自分主役のキャリアを構築するためにも働きがいは重要

MEETS CAREERの記事には、「あと何年同じ会社で働き続ける予定ですか」というアンケートの結果も出ています。3年以内と答えたのは、働きがいがある人は約20%、働きがいがない人は約64%。働きがいがない人ほど、早く辞めてしまうということですね。報酬ではなく、働きがいを得るために会社を変えるというのは、よくあることなのです。

働きがいと退職意向の関連データ

私たちの会社では、クライアント企業815社・17万3000人の従業員に対して匿名でアンケートを取りました。回答率は55%くらいでしたから、大体8万人くらいの方に回答していただきました。それによると、転職を考える動機の1位はいまだに「人間関係」でしたが、2位は「働きがい・やりがい」だったのです。

働きがい・やりがいと強い相関関係にあるのは、やはり「成長機会」ですね。自分が成長できるかどうか。成長はどのように感じられるのかというと、やはり認められること。承認ですね。それから、目標に対して達成できること。そして、リモートワークなどの働く場所を含め、自分の仕事のやり方に自由を得られること。

つまり、「達成・承認・自由」という要素をもとに働きがいを感じられるかどうかが、転職理由の一つになっているのです。

「働きがいがないと困る」とか、「働きがいクライシス」というのはその通りなのだけれど、ここで言えるのは、「働きがいというのは自分で気づき、自分で築いていくものだ」ということです。

自分の働きがいは達成型だな、承認型だな、自由型だなということを自分で確認できると、それに対して対策が得られるのです。

どういうことかというと、達成できないというのは、目標がないからですよね。働く人の61%が目標を持っていないので、まずは上司との1on1ミーティングできちんと行動目標を設定しましょう。そして、設定した目標を達成できたなら、自分からその成果を周りに見せましょう。そうすると承認されます。達成して承認された人には、自由が与えられます。

この方程式を理解しておけば、自分の働きがいは何か、そのためにどういう行動が必要なのかがわかってきます。自分で自分の働きがいを確認し、行動を周りに見せ、認めてもらうということを少しずつ積み重ねていけば、自分が主役のキャリアを構築できます。就職しても、転職しても、自分の働きがいを確立できます。

つまり、自分が主役のキャリアを構築するためには、自分の働きがいを理解し、その働きがいを獲得するための手段は何かを考えること。そして、行動に移して見せていくこと。これが、皆さんが自分主役のキャリアを構築する鍵になりますので、ぜひトライしていただければと思います。


越川慎司さんのVoicy「トップ5%社員の習慣ラジオ」はこちらから! 
https://voicy.jp/channel/2708
今日から役立つ仕事のヒントやキャリアの参考データが盛りだくさん。

いかがでしたか? 今回は越川さんがVoicy「トップ5%社員の習慣ラジオ・働きがいクライシス、克服の鍵は?」で語ってくださったトークを記事の形でお届けしました。今のままでは漠然と不安、今の職場では張り合いがない、など不安を抱えている方はぜひ、「自身の働きがい」を考えるところから始めてみてはいかがでしょうか。

<プロフィール>
越川慎司
国内外の通信会社に勤務後、ITベンチャーでの起業を経てマイクロソフト社に入社。同社でPowerPointやExcel、Microsoft Teamsなどの業務執行役員を務める。2017年に株式会社クロスリバーを設立し、800社以上の働き方改革を支援。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」の準レギュラーなどメディア出演多数。オンライン講座や年間400件以上、著書は直近7年で27冊にのぼる。

書き起こし・MEETS CAREER編集部

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