俳優 柿澤勇人 | 花開く時は人それぞれ。各自の時計がある【Heroes File】

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第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる

俳優 柿澤勇人さん

よく通る声で分かりやすく話す人だ。芝居の話になるとそこに熱量が加わり、聞く者を惹(ひ)きつける。
劇団四季を退団後、ミュージカルなどの舞台からドラマや映画まで幅広く活躍している柿澤勇人さん。2020年にはNHK連続テレビ小説「エール」に出演し話題を呼んだ。
そんな柿澤さんが現在、初心に戻るような気持ちで臨んでいるという公演について、そして俳優に取り組む姿勢などについて話してくれた。

Profile

かきざわ・はやと/1987年神奈川県生まれ。2007年に劇団四季研究所へ入所。09年の退団後は舞台、映画、ドラマと幅広く活躍。東京・渋谷の東急シアターオーブにて21年7月27日(火)まで上演予定の「ジーザス・クライスト=スーパースター in コンサート」に出演。

世界各国で活躍するミュージカル界のトップスターが一堂に会して繰り広げる「ジーザス・クライスト=スーパースター in コンサート」。2019年の初演に続いて、21年7月12日から東京・渋谷の東急シアターオーブにて上演中だ。

出演者の一人である柿澤さんは、同作品の基となるミュージカル「ジーザス・クライスト=スーパースター」に特別な思い入れがあるという。「僕が19歳で劇団四季に入り、初めて舞台に立った時の作品です。初心に返って自分の原点と向き合える喜びを感じています」

幼少期からサッカーに打ち込み、高校もプロを目指して強豪校へ進学。しかし、高1の学校行事で観(み)た劇団四季の「ライオンキング」に衝撃を受け、目標が変わった。「ステージから放たれるエネルギーに圧倒され、僕もあそこに立ちたいと思ったんです」

ただ、大学までの一貫校に通っていながら、サッカーがやりたいと高校から転籍して家族に迷惑をかけたといういきさつがあった。「だから高校3年間は、とにかくひたすらサッカーに打ち込みました」

俳優 柿澤勇人さん

大学へ入学し、同時に夜間、俳優養成所へ通い始めた。そして半年後、何と劇団四季のオーディションに合格し、晴れて研究生となる。「とは言え、それまでたった半年しかダンスや歌を学んでいなかったので、大学は休学し、朝から晩まで延々と稽古に打ち込みました。早く役をつかみたいという気持ちも強かったので」

そうして研究生になって半年経った時に出演したのが「ジーザス・クライスト=スーパースター」だった。「研究生から2人だけ出演できるオーディションに合格できたんです」。当時の代表、故・浅利慶太さんは、力不足でも伸びると思った人を抜擢(ばってき)してくれた。だから柿澤さんは一心不乱にがむしゃらに頑張った。

その後、団員となってからもメキメキと頭角を現し、立て続けに主役を射止めた。「劇団四季では舞台の基礎を徹底的にたたき込んでもらいました。特に浅利さんからは大切なことをたくさん学びました。今も思い出すのは『役者が花開く時期は人によって全然違う。だから自分の時計を見なさい。周りがどんなに売れようが、自分にハマる役は必ず訪れるから焦らずに精進しなさい』と言われたことです」

そんな劇団四季を退団することにしたのは、海外の演出家たちとの仕事がきっかけだった。「役へのアプローチの仕方が劇団四季とは異なっていて、それがすごく新鮮で面白かった。それでもっと広く違う世界も見たくなってやめる決心をしました」

抱え込まず、人に話すことを面倒くさがらない

俳優 柿澤勇人さん

穏やかなまなざしの奥から、時折やんちゃな少年の表情をのぞかせる柿澤さん。歌唱力への評価が高く、ミュージカルや、現在公演中の「ジーザス・クライスト=スーパースター in コンサート」のように、歌がメインの演目への引き合いが目立つ。しかし実際は他にもストレートプレイやドラマ、映画にと八面六臂(ろっぴ)の活躍を見せている。

そうした数々の作品への出演で、転機となったことも多いという。とりわけ大きな影響を受けたのは、12年に出演した舞台「海辺のカフカ」の演出家、故・蜷川幸雄さんだ。「役者とは何ぞやというのを徹底して教え込んで頂きました。芝居に対して愛があるからこそ厳しい。稽古中ずっと罵声を浴びせられ、精神的にも相当きつかった。でもそれを乗り越えた先の景色は全然違ったし、鍛えてもらって本当に良かったと感謝しています」

「景色が違った」とは、芝居に向かう自身の考え方や見方が百八十度変わったということ。「もっと屈折しろ!とよく言われました。確かに人生はきれいごとだけでは済まないし、色んな面があるから面白い。それを表現するのが役者だと思うようになり、以降、例えばミュージカルでもただきれいに歌って踊るだけではなく、役としてそこに生きることを心がけるようになりました」。さらにまた「もっと売れたい」という思いもがぜん強くなり、仕事への貪欲さが増したという。

出会う人からそのつど刺激を受け、人として、俳優としても着実に成長している柿澤さん。「20代は勢い任せだったけど、30代に入ってからは一つひとつの作品に丁寧に向き合うようになりました」。そうやって研鑽(けんさん)を積みながら目指しているのは、ジャンルを問わず闘える役者だ。「格闘技に例えたらボクシングや柔道、総合格闘技など全てが強かったら最強ですよね。そういう役者になるのが理想です」

そんな柿澤さんが大切にしているのは、どんなにつらい時でも自分一人で抱え込まないということ。「思い通りにいかないと分かっていても、やりたいことや変えたいことはとりあえず口に出して親友やマネジャーなど周りの誰かに絶対話します。そのためにはエネルギーがいるので大変だけど、それをやらないと変わらないし、良い方向へ進んでいかないことも多いんです。何より、仕事は一人でやっているようで実は周囲の人がいてこそ成立するもの。ひらめきもポジティブなことも、そして愚痴も含めて説明します。面倒くさいから黙っていよう、とはならないですね」

諦めない人は強い、そう教えてくれる。

ヒーローへの3つの質問

俳優 柿澤勇人さん

Q 現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?

サッカー関係かな。プロになるほどの実力はないと高校時代に悟ったので、プロ選手を目指すことはなかったと思うのですが、サッカーに関わることには携わっていたと思います。

Q 人生に影響を与えた本は何ですか?

『中田語録』(文藝春秋)ですね。元サッカー選手、中田英寿さんの発言集です。僕がサッカー少年だった小中学生の頃からバイブルのように何度も読み返してきました。サッカーだけでなく、人間としての生き方においても中田さんを尊敬しています。

Q あなたの「勝負●●」は何ですか?

僕の曽祖父は浄瑠璃の語り手、祖父は三味線奏者。2人とも歌舞伎という芸能の世界で生きた人たちです。同じ舞台とは言え僕とは畑が違うと思っていました。でも、ケガをして舞台降板をするなど様々な経験を経た今、曽祖父と祖父がいたからこそ自分がこのように俳優として仕事ができているんだと思うようになったんです。それからというもの、舞台が始まる前は、楽屋のれんにある家紋に向かってお祈りするようになりました。神頼みというよりご先祖頼みですね。


Information

「ジーザス・クライスト=スーパースター in コンサート」が出演中!

イエス・キリストの最後の7日間を描いたミュージカル「ジーザス・クライスト=スーパースター」。この不朽の名作を全幕、英語歌唱のコンサート版として2019年に上演し、大きな話題を呼んだのが「ジーザス・クライスト=スーパースター in コンサート」。そして21年夏、本作を再演。日本と海外の豪華キャストが集う伝説のコンサートがよみがえった。今回初めて出演し、シモン役を演じている柿澤勇人さんは「とにかく曲がどれも素晴らしく、しかもキャッチーで、劇場を出る頃には思わず口ずさんでしまうほど心に残るはず。マイケル・K・リーさんやラミン・カリムルーさんら世界の名だたるミュージカルスターたちの夢の共演を僕も楽しんでいます。ワクワクした気持ちになれると思いますよ!」と熱く語る。

日程:2021年7月12日(月)~7月27日(火)
会場:東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11F)
作詞:ティム・ライス、作曲:アンドリュー・ロイド=ウェバー
出演:マイケル・K・リー、ラミン・カリムルー、セリンダ・シューンマッカー、
藤岡正明、宮原浩暢(LE VELVETS)、テリー・リアン、ロベール・マリアン、
柿澤勇人、アーロン・ウォルポール、ほかアンサンブル10人
公式サイト:https://theatre-orb.com/lineup/21_jcs/top.html