俳優/瀧内公美 | 「これだ!」ってすぐ動いて今ここに居る【Heroes File】

f:id:meetscareer:20210210165946p:plain
第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる

俳優/瀧内公美

初めての映画『グレイトフルデッド』の主演で注目を浴びて以降、次々と話題作に出演している瀧内公美さん。そのつど異なるキャラクターを好演し、私たちを楽しませてくれている。
「毎回違う現場に行けて、年齢など関係なく尊敬できる人たちに出会えて、宝物にしたくなるような素敵な言葉をもらうこともあって楽しいんです」
瀧内さんが屈託のない笑顔でそんな風に語る俳優の仕事。その仕事との出会いや、続けていく中での葛藤、そして心の変化などについて話を聞いた。

Profile

たきうち・くみ/1989年富山県生まれ。大学卒業後、俳優の道へ。2019年公開の映画『火口のふたり』でキネマ旬報ベスト・テン主演女優賞を受賞。22年3月12日(土)から東京・世田谷パブリックシアターで公演予定の舞台「奇蹟 miracle one-way ticket」に出演。

映画『火口のふたり』『由宇子の天秤』、ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」などでの好演で高い評価を得ている瀧内さん。映像作品での活躍が目覚ましいが、今年は舞台でも注目を浴びそうだ。1月のミュージカルに続き、2022年3月12日(土)からは東京・世田谷パブリックシアターで公演予定の舞台「奇蹟」に出演する。

記憶を失った名探偵とその親友が、出口の見えない森の奥深くに漂う謎の世界へと迷い込む物語。中でも瀧内さんは極めて重要な役どころを演じる。「一見難しそうな話なのかなと思ってしまったのですが、美しい言葉の響きに導かれてスッとその世界観に没入できました。挑戦しがいのある作品に出会えたことに感謝し、最後まで頑張ります」

子どもの頃から俳優に憧れていた。でも自分がなれるとは思っておらず、18歳で上京し、大学で児童教育を学んでいた。そんな瀧内さんがこの世界に飛び込むきっかけとなったのが、教育実習先から自転車で帰宅する途中で出合った映画の撮影現場。楽しそうな様子に誘われ、募集していたエキストラに申し込んでそのまま参加する。「スタッフの方がエキストラに『自分の中で物語を作って歩いてください』って。その言葉にすごく惹(ひ)かれ、そういうことを考えて働けるっていいなって思いました。当時、教育実習がつらくて私に教師は無理だと感じていたこともあって、余計に撮影現場の雰囲気が魅力的に映ったんだと思います」

俳優/瀧内公美

そして「これだ!」と思った瀧内さんの行動は早かった。その日の帰りにオーディション雑誌を購入し、一つ目に見つけた芸能事務所に応募。こうして12年から本格的に俳優として活動を始め、半年後にはオーディションで映画の主演を射止める(笹野高史さんとのダブル主演)。「全く何も分からない状態でしたが、見るもの聞くもの全てが新鮮で楽しく、感動していました」

その後も相次いで話題作に出演。そんな瀧内さんにとって大きな転機となったのが廣木隆一監督の映画『彼女の人生は間違いじゃない』に主演したことだ。この作品で役としてただそこに居ることの難しさを知ったという。「何もしなくていい、ただ相手のセリフを聞いて感じたものを大事にしてと監督に言われ、考え過ぎて声が出なくなったこともありました。打ちのめされることの多い現場でしたが、お陰で役作りの奥深さを知ることができました」

監督や演出家によって求められるものは違うけれど、目の前の要求一つひとつにとにかく集中する。「それが、役者という面だけでなく自分という人間の血肉にもなっている気がします」

決断はただのきっかけ、悩み過ぎない方がいい

俳優/瀧内公美

クールで華やかな印象とは対照的に、無邪気な笑顔で楽しそうに話す瀧内さん。俳優として数多くの作品に出演しているが、そのつど異なる表情を見せ、脇役であっても見る者の視線を奪い鮮烈な印象を焼きつける。

「役を頂いたら、まずその人物の背景や抱えている問題について考えます。自分だったらどうするかとか、何かに葛藤する女性の役ならその心の内を深く探っていくとか。自分が触れたことのない世界が描かれている作品であれば、関連する本を読んで勉強することも多いです。22年3月に出演予定の舞台『奇蹟』も、自分の役が本作ではどのような意味を持つのか、それをつかみたくて最初に色々と調べました」

自身にも俳優として葛藤した時期があった。28歳の頃、将来が不安になったのである。そもそも自分は何がしたいのか、何のために東京に居るのか。「それでそんな状況を変えるため事務所をやめようと考えたんですが、でもその前に自分が変わらなければと思ったり。そんなことで悶々(もんもん)としたままその年の年末を迎えようとしていたんですね。でも、このまま何も変えずに新しい年を迎えるのかと思ったその時、ようやく、こういう決断ってただのきっかけに過ぎないんじゃないかと開き直ることができたんです」

今悩んでいることって長い人生でみたら本当に小さなこと。ただ素直に一歩を踏み出せばいい。それで変わらなかったとしてもそれだけのこと。そう思ったら迷いは消え、心機一転、新境地で俳優の仕事に挑戦していこうと心が決まった。事務所にやめたいと告げると「マネジャーは、悩んでいることは知っていたよって言ってくれました。逆に、打ち明けることができなかった自分が恥ずかしかったぐらいです」。

俳優の仕事は多くの人に支えられていて、そのことには感謝している。「ただ、自分の人生を決めるのは自分であり、決断しなければならないこともある。けれど、その決断を重く受け止め過ぎない方がいいと思っています。そのつど自分の向かう先を軽やかに見定めて進んでいけたら、それでいいんじゃないかなって」

ただし、やりたいことを実現するためには素直に人に助けてもらった方がいいとも言う。「最近読んだ本に『今の世の中は人に助けてと言えることが自立です』とありました。まさにその通りで、私も自分がやりたいことがあれば恥も外聞もなく人に伝えます。実際にかなわなくても、それに近いところで助けてもらえることもある。だから私は、一人で頑張りすぎないということを心掛けています」

ヘアメイク:増田加奈
スタイリング:馬場圭介

ヒーローへの3つの質問

俳優/瀧内公美

Q 現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?

児童教育を学んでいたこともあって、子どもを育てるということに興味があります。教育関係の仕事についていたのかなと思います。

Q 人生に影響を与えた本は何ですか?

『ともだち』(作:谷川俊太郎、絵:和田誠)という絵本です。小学生の時に図書館で見つけて読んだのですが、和田さんの柔らかいタッチの絵から最後の方はモノクロ写真になっていく、そのさまが怖かったんです。2年前、たまたま見つけたので購入しました。改めて読むと、奥が深くて示唆に富んだ本でした。

Q あなたの「勝負●●」は何ですか?

神社とお守りです。仕事につまずいてもうダメかもって思った時には、移籍した時に今の社長からいただいた手紙を何度も読み返しています。これはもうそのことを話すだけでも泣けてくる、それほど私にとっては大切な手紙です。

Information

舞台「奇蹟 miracle one-way ticket」に出演!

瀧内公美さんが出演するシス・カンパニー公演「奇蹟 miracle one-way ticket」が、2022年3月12日(土)~4月10日(日)に東京・世田谷パブリックシアターで上演予定だ。主人公は“記憶をなくした名探偵”(井上芳雄)。ストーリーテラーを務める親友(鈴木浩介)と共に出口の見えない森の奥へと歩みを進め、謎解きの物語が展開してゆく。次々と現れる謎に満ちた人たちは現実なのか、はたまた忘却の記憶が生み出した幻なのか……。瀧内さんは物語の肝となる重要な役どころを演じる。「物語としてはシンプルなのですが、そこには様々な問題が内包されていて見応えのある舞台に仕上がっています。特に井上さんと鈴木さんのバディ(相棒)ぶりに注目してほしい。本当に楽しいので」と瀧内さん。自身は北村想さんの書いた戯曲にすっかり魅了されたそうだ。「言葉の一つひとつがとにかく丁寧で、とても美しい響きを持つ日本語なんです。この世界観をじっくり堪能していただけたら!」

出演:井上芳雄、鈴木浩介、井上小百合、岩男海史、瀧内公美、大谷亮介
作:北村想
演出:寺十吾(じつなし・さとる)
公式サイト:https://www.siscompany.com/kiseki/
※大阪公演も予定