俳優/岡田将生 | 逃げ道をなくすことで進むべき方向を鮮明に

第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる

俳優/岡田将生

2006年にデビューして17年を経た岡田将生さん。
多忙を極める人気俳優だが、そのことに甘んじることなく、常にこれまでにない役どころに挑むなど、私たちを驚かせ、楽しませてくれている。
自信がなくて落ち込むこともあるけれど、それもまた俳優という仕事の面白さかもしれないと語る。そんな岡田さんの原動力になっているのは、まだ見ぬ「新たな出会い」だという。

Profile

おかだ・まさき/1989年東京都生まれ。2006年デビュー。近年の出演作に映画『ドライブ・マイ・カー』、ドラマ「ゆとりですがなにか」「ザ・トラベルナース」、ナレーションを務める番組「SWITCHインタビュー達人達」(毎週金曜日放送中)など。清原果耶さんとダブル主演する映画『1秒先の彼』が22年7月7日(金)から全国公開予定。

ここ数年、難しい役どころに挑戦し、その度に新たな一面を見せてくれる俳優の岡田さん。2022年7月7日(金)から公開予定の映画『1秒先の彼』では、何をするにも1秒早く、イケメンなのに少々残念な郵便局員の青年ハジメをコミカルに演じている。

「ハジメは毒っ気があるけど、ちょっと抜けていてどこか憎めない。一方、清原果耶さんが演じる大学生のレイカは、何をするにも1秒遅くて頼りなさそうですが芯の強い女の子。テンポは違えど、とても魅力的な2人が織りなす風変わりなラブストーリーです。見終えた後、優しい気持ちになってもらえると思います」

本作は台湾のヒット作『1秒先の彼女』の日本版リメイクで、脚本は宮藤官九郎さん、監督は山下敦弘さんだ。

「オーディションに受かって初めて出演させていただいた映画が山下監督の『天然コケッコー』でした。監督にはセリフの覚え方から、撮影現場とはどういうものなのかということまで一から教えてもらいました。そんな僕の原点でありますし、お世話になった監督と16年の年月を経てこうして再び同じ現場に立てたことがとても感慨深かったです。今まで味わったことのない幸福な時間を過ごすことができました」

俳優/岡田将生

17歳でデビューし、早々に相次いで映画やドラマに出演するようになった。「高校生の時、行き場のないエネルギーをぶつける場がほしくて、中学生の頃に声を掛けてくれた今の事務所に連絡し、この世界へ飛び込みました」。幸い仕事は順調だったわけだが、自身は「仕事量に比べて実力が圧倒的に足りなくて、それがずっとつらかった」と語る。

しかし、さまざまな現場で色んな先輩たちの演技を見て学んでいるうちに、どんどんこの仕事に引かれていく自分がいた。「それで20歳の時、俳優としてやっていこうと覚悟を決め、通っていた大学を辞めました。学校を逃げ道にしそうで怖かったからです」

芝居が心底楽しいと初めて実感できたのは、27歳で主演したドラマ「ゆとりですがなにか」だったという。

「松坂桃李君、柳楽優弥君という同世代の俳優との共演が大きかったです。宮藤官九郎さんの脚本で、水田伸生監督の演出もすべてマッチしていて、純粋に演じることを楽しんでいる自分がいました。しかも見てくださった方々からいい反応をいただき、励みになりました。ようやく、自分のやっていることに間違いはないんだと思うことができたのがこの作品でした」

新たな出会いを心待ちにすることが原動力

俳優/岡田将生

デビューから17年。俳優としての地位を着実に築いているにもかかわらず、まだまだ自信がなくてへこむことも多いという。「映像作品でも舞台でも、求められている演技ができていないと落ち込みます。自分がこうだと思って表現しても、まったく異なった解釈で捉えられたりすると何だか自分がふがいなく感じて。でも、それがこの仕事の面白さでもあるのかなと思ったりもしています」

原動力は、まだ出会っていない人や作品への期待感だ。「これから先も素晴らしい脚本に巡り合いたいし、ご一緒していない監督さんや俳優さんも多くいます。特に、僕と異なる何かを持っている俳優さんや、これまでとは違う自分を引き出してくれる監督さんがまだまだいると思うんです。まだ見ぬ景色を眺めないわけにはいかないという思いが強いのかもしれません」

新たな出会いは新しい世界を教えてくれる。岡田さんがそう実感したものの一つに、14年に出演した舞台「皆既食~Total Eclipse~」がある。演出は故・蜷川幸雄さん。「初舞台でした。演劇のことをまったく知らない僕に、蜷川さんが舞台の立ち方やセリフの発し方などすべてを教えてくれました。ついていくのがやっとで、精神的にしんどくなり何度もくじけそうになりましたが、それでも日々生まれるものがそこにあるのが舞台の面白さなんだと実体験で学ばせていただきました」

その時、蜷川さんに言われた一言が今でも忘れられない。「君は舞台に向いているかもしれない、だからやり続けなさい」と。「新たな世界を見つけることができ、かつ自分の可能性を広げることもできました。それ以降、舞台のお仕事にも積極的に取り組んでいます」

そんな岡田さんが仕事において心掛けているのは、人とのつながりを大切にすること、そして「本当に自分が好きな仕事をやる」ということだ。「公開中の映画『1秒先の彼』も、僕は脚本をいただいた時から気に入っていました。心から好きだと思える作品でないと全力で取り組めないし、うまくいかなかった時に言い訳をしてしまう。それだけは嫌なんです」

言い訳をするということは現状に満足していないサインかもしれないと岡田さんは考える。「例えば今の仕事が自分の居場所ではないと感じているんだったら、飛び出したほうがいいんじゃないでしょうか。自分のパフォーマンスを100%発揮できる場所って誰にでもあると思うから。僕は、うまくいくいかないは別として、俳優という仕事が自分の居場所であり、全力を出せる場だと信じています」

ヘアメイク:小林麗子
スタイリスト:大石裕介

ヒーローへの3つの質問

俳優/岡田将生

Q 現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?

祖父の代から家業で金型を作っていて、父も金型職人だったので、たぶんその家業を継いでいたと思います。実際、僕も工業系の高校へ通っていたので。

Q 人生に影響を与えた本は何ですか?

2021年に公開された映画『ドライブ・マイ・カー』の台本です。それ自体に読み応えがあって面白かったんです。何よりこの作品に出演させていただいたことで、より自分の可能性を広げることができたので、僕にとっては大切な“一冊”となりました。

Q あなたの「勝負●●」は何ですか?

ありません。何かそういうものを作ってしまうとそのことに縛られそうで嫌なので、あえて作らないようにしています。

Information

映画『1秒先の彼』に出演!

岡田将生さんと清原果耶さんがダブル主演する映画『1秒先の彼』が2022年7月7日(金)から全国にて公開予定。監督は山下敦弘さん、脚本は宮藤官九郎さん。物語の舞台は京都。郵便局の窓口で働くハジメ(岡田将生)は、何をするにもとにかく1秒早い。路上ミュージシャン・桜子の歌声に引かれ、一目ぼれしたハジメは花火大会デートの約束を取り付けるも、目覚めるとなぜか翌日。花火大会デートの一日が完全に消えてしまっていたのだ。秘密を握るのは毎日、郵便局へやって来る大学生のレイカ(清原果耶)のようだった……。「僕が演じるハジメは正直であるが故に口が悪いけど、とてもかわいいキャラクターです。彼の純粋な部分をいかに丁寧に演じるかが肝でした。清原さんが演じるレイカも愛らしい女の子。どこか人とは違うポイントを持つ2人が心通わせるまでの物語ですが、何よりこの2人のキャラクターが本作の魅力。ぜひ劇場で楽しんでください」と岡田さん。

公式サイト:https://bitters.co.jp/ichi-kare/#modal

転載元:https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/heroes_file/270/