頼れる先は多い方がいい。ムラキさん流・仕事のモヤモヤを解決する社内外コミュニケーションの極意


さまざまな年齢・立場の人が集うオフィス。社内で気軽に困りごとを相談しづらい、ましてリモートワークとなるとどのようにコミュニケーションをとればいいのか分からない、と悩む方も多いのではないでしょうか。

ムラキさんこと伊美沙智穂さんは、フルリモートで働くパラレルワーカー。対人コミュニケーションを得意とし、オンラインコミュニティ「架空の同期」や子育て中の人がバーチャル空間で集う「VRパパママ会」など、ユニークな社外の交流も注目を集めています。仕事のモヤモヤを抱えたとき、誰に・どう相談すればいいのか。また、社外コミュニティは仕事にどんな影響を及ぼすのかを語っていただきました。

PROFILE

伊美沙智穂(ムラキ)さん。フルリモートで働くパラレルワーカー"

伊美沙智穂(ハンドルネーム:ムラキ)
立教大学卒業、1993年生まれ。現在はTHECOO株式会社のシニアデザイナー、Business Insider Japanの記者のほか、フリーランスのデザイナーとしても活動するフルリモート・パラレルワーカー。1児の母。新しい仕組みやテクノロジーが大好きで、日々の生活や仕事に積極的に取り入れている。
Twitter:@u_vf3

「仲良くなりたい」気持ちにオンライン・オフラインの区別はない

――会社員兼フリーランスとのことですが、普段はどのような働き方をしているのでしょうか。

会社員の仕事はUIデザイナー、いわゆる開発職と呼ばれる職種です。裁量労働制なので時間の制約はなく、執筆やデザインといったフリーランスの仕事も挟みつつ自由に働けています。

以前所属していた情報通信系企業では毎日出社していたのですが、最初の転職でフルリモートワークの会社に入って以来、ほぼリモートです。日々のコミュニケーションは主にslack(チームコミュニケーションのためのチャットツール)上で行っています。

――転職先がフルリモートだと人間関係を築くのが難しいという声をよく聞きます。最初の転職のとき、とまどいはなかったですか?

オンラインでのコミュニケーションに慣れていたこともあり、特に違和感はなかったんですよね。中学生くらいからメールや掲示板などのテキスト文化や、友人と10時間以上skype(スカイプ)を繋ぎっぱなしにして黙々と受験勉強をするようなコミュニケーションに親しんできたので、あまり抵抗がないのかもしれません。私の世代(1993年生まれ)は、そういう人も多い気がします。

円滑にコミュニケーションをとるために心がけていることがあるとしたら、対面のコミュニケーションにおいて「あの人と仲良くなりたいな」と思ったときにやることを、オンラインでも同じようにやることでしょうか。

――「仲良くなりたい」と思ったときにやることとは?

挨拶すること、自己紹介すること、何かをしてもらったらお礼を言うこと。そういった基本的なコミュニケーションに加えて、相手の好きなものを知り、関連情報を送ってみるとか……。例えば、slackの雑談チャンネルで「Aさんはポケモンが好き」という情報を得たとします。ポケモンに関連するニュースを見つけたら「こんなニュースありました〜」とAさんに共有すると、そこから会話が生まれますよね。

実はリモートワークの方が、そういった小さな趣味の話などを拾いやすく、社内の人と仲良くなるきっかけが生まれやすいのでは? と私は思っているんです。

――「仲良くなりたい」と思ったら、どんなふうにコミュニケーションのきっかけを作るのでしょうか。いきなりDM(ダイレクトメッセージ)を送るとか?

DMは個人的には推奨していなくて……。slackがオフィスだとしたら、DMは内緒話のようなイメージ。あまり印象のいいものではないのかなと思うので、テキストでの雑談はオープンな場でするようにしています。

それから、今私がいる会社には1on1の文化があって。業務時間中、すごくラフに「◯時から30分くらい話していいですか?」と連絡が来るんです。入社したとき、初めの1週間くらいはずっと社内のメンバーと1on1をしていました。

――1on1というと、上司と部下の面談のようなイメージがありますが。

上司・部下に限らず、誰とどんな話をしてもいいと思います。私の会社だと「今デザイナーにやってほしいと思っていること」「事業戦略」「財務表の見方」「会社の立ち上げから今までの歴史」といったまじめな話題から、「好きなポケモン」「今までの引越しの経歴」「八景島シーワールドのイルカの話」のようなくだけた話まで……。役職問わずいろんな人と話ができるシステムなので、仲良くなる仕組みとしてはすごくいいなと感じています。

社外コミュニティで得られるのは「安心感」

――ここまでのお話を聞いて、伊美さんは人とのコミュニケーションがお好きな方なんだなと感じました。SNSやオンラインコミュニティなど、社外コミュニティにも積極的に出入りしている印象があります。

私は「あれがやりたい!」と思ったらやらずにはいられない性格で……。例えば「あのボードゲームをやってみたいけど、一緒にできる人が身近にいない」という場合、Twitterで呼びかけたりして、一緒にやってくれる人を探すんです。そうすると、その周辺の人とも芋づる式に繋がって友達が増えます。そうやって「これがやりたい」「あれがおもしろそう」と感じたことを実行に移した結果、人の輪が広がっていく、という。特に「社外の人脈を広げよう」と考えているわけではないんです。

架空の同期」も、「なんかおもしろいことやってる人いるな」と思って参加したコミュニティです。

――「年代・業種が近い人同士の“会社の同期”のような集まり」という、ユニークなコンセプトのオンラインコミュニティですよね。

本当の同期ではないですが、「同期」という名前がついていることで、メンバー同士で仕事の話をしやすいと感じます。もちろん社外秘事項もあるので突っ込んだ話はできませんが、仕事の悩みを相談することもあります。

――例えばどんなことを話すのでしょうか。

デザイナーとエンジニア間で意思疎通がうまくいかないときにどうコミュニケーションをとるかを相談したり、英語話者のエンジニアと会話するときのコツを尋ねたり……。みんな似たような仕事をしているので、「この翻訳システムをこんなふうに使えばいいんじゃない?」といったように、立場が近く実践的なアドバイスをもらえます。他の会社のやりくりや工夫って、なかなか公の場では聞きづらいですよね。クローズドな場だからこそ、具体的な相談やアドバイスができるなと思います。

VR空間で友人と集う

インターネットを通じて知り合った友人とは、VR空間で集うことも多い

――「仕事の悩み」という話が出ましたが、社会人になって数年経つと、仕事のやり方やキャリアプランについてモヤモヤを抱えることも増えてくると思います。仕事に関する相談は誰に・どのようにしたら良いと思いますか?

先ほど1on1の話をしましたが、社内でそのように気軽に相談できる場があるといいなと思います。上司などに「とりあえず週に1回1on1を入れたいです」と伝えることから始めるといいかもしれません。

――たしかに、「まずは話す場を作る」のは大切ですね。ただ、「自分がどうしたいのか分からない」という段階だと、1on1はちょっとハードルが高い気もしますが……。

個人的には、最初は「ちょっと今の仕事にモヤモヤしていて」と伝えるだけでいいと思うんです。自分でも何が不満なのか分からないときってありますよね。

「この会社で働き続けたいけど、今なんとなくつらいです。だから一緒に今後のことを考えていきたいです」と伝えるなど、「分からないことを一緒に分かるようにしていきたい」という話し方が良いのかなと。「悩みをきちんと言語化して、相手に望むアクションも伝えなきゃ」と気負う必要はないと思うんです。

――「とりあえずモヤモヤを聞いてください」と、正直に伝えることが大事なのかもしれませんね。社内で相談する他、例えばフラットに話せる社外の人に相談することがモヤモヤの突破口になることもあるのでしょうか。

直接的な解決のきっかけにはならないかもしれませんが、交友関係を広げることは安心感につながると私は思っているんです。

社外のコミュニティで仕事にまつわる話をすることで、「Aさんの会社ではこの問題をこう解決できたと言っていたから、私も同じ方法を取り入れられるかも」「今の会社で働き続けられなくても、Bさんが教えてくれたあの会社もいいかも」と、選択肢がある安心感を得られます。そういう意味で、社会の中で繋がっている人の数は多い方が安定するのかなと私は考えています。

遊びも仕事も、どちらも同じ人間関係

――モヤモヤを募らせた結果、転職を考えることもあると思います。社外のつながりが転職に生かされたことはありますか?

今働いている会社との最初のつながりは、事業部長が私の書いたブログを読んでメッセージをくれたことなんです。まったく仕事には関係ない「雨の日に聴いてほしい曲◯選」という内容だったんですが(笑)音楽領域に関わることの多い会社なので、音楽の趣味が合うことが大きなファクターだったようで、社長にも「音楽の趣味が良い人だからぜひ話してほしい」と伝えていたらしいですよ。

――どこに仕事のきっかけがあるかは本当にわからないですね。

そうなんです。最初はただSNS上でやりとりをするだけでしたが、ちょうど私が転職を考え始めたタイミングで人を探していて。たまたまその話をしたことで採用に繋がったんです。

仕事を通じて知り合った人よりも、仕事関係なくフラットな場で出会った人との方が、「こんなふうに働きたい」「こんな仕事は嫌だ」といった話もしやすいですよね。私が今自分の希望に沿った柔軟な働き方ができているのも、偶然とはいえ、入社前に社内の人と話しやすい関係性を築けていたからだと思います。

――仕事の人間関係とそれ以外は別物として考えがちですが、分ける必要もないのかなと感じました。

遊びとキャリアは別物ではなく、「社会」という大きな枠の中での配分でしかありません。一緒に遊ぶ友達も仕事で付き合う人もみんなゆるやかにつながっていて、大きくまとめると結局はただの“人間関係”です。いろいろな人と出会うことが、時には心の拠り所に、時には仕事の思わぬ突破口にもなる。そういうことだと思っています。

――最後に、外に繋がりを見つけていくコツを教えていただきたいです。

能動的な方法だと、「好きな人に好きと伝える」ことが大事かなと思います。私の場合、仕事柄クリエイターさんと関わることが多いので、Twitterで素敵なイラストや写真を見つけたらなるべく引用リツイートやリプライで「素敵です!」とコメントを付けるようにしています。

自ら話しかけるハードルが高ければ、自分のことを黙々と発信するのも手です。ブログでもSNSでもなんでも良いのですが、「この人は何が得意で、何が好きで、どんなことをしたい人なんだろう?」ということがすぐ分かるようになっていると、声をかけてもらえることがあります。

リアルな場でもインターネット上でも、「〇〇やりたいんですけど、助けてくれる人いますか?」「〇〇が好きなんですけど、おすすめのものありますか?」と口にし続けていれば、きっとどこかのタイミングで誰かが声をかけてくれるはずです。

(MEETS CAREER編集部)

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