「周りに置いていかれる」若手がゆるい職場に不安を覚えるワケ

ゆるブラック?「周りに置いていかれる」若手がゆるい職場に不安を覚えるワケ

「ゆるい職場」と聞いて、みなさんはどんな職場を思い浮かべますか? 残業時間が少ない、服装や身だしなみの規定がない、上下関係がフラット……。人によってさまざまだと思いますが、若手のうちは「上司・先輩からの指導や管理がゆるい」も「ゆるい」の1つの要素となりうるでしょう。

「ゆるい職場」というと居心地がよく、働くうえでのデメリットが少なく、長く働くにはもってこい。そんな印象を受ける人もいるかもしれませんが、近年「ゆるブラック」という言葉が生まれ、「職場がゆるい」ことに危機感を抱き、退職を検討する若手の存在が指摘されています。

職場がゆるいことがなぜ、不安や焦りにつながるのか。データをもとに紐解いてみましょう。

「職場がゆるい」と感じる新人は約半数

「新入社員の意識調査2023(マイナビ転職調べ)」によると、職場がゆるいと感じている新入社員は57.4%。約半数超が、職場を「ゆるい」と感じていることが分かります。

グラフ・職場がゆるいと感じている新入社員は多い

また、職場がゆるいと感じている人のなかで「3年以内に退職意向」の人は約3割。定年まで働きたいという人を上回っています。

グラフ・ゆるい職場の社員は3年以内退職意向が高い

退職意向に影響する要因は賃金・休日・仕事内容・人間関係などさまざまありますが、仕事の進め方や上司・先輩とのコミュニケーションなど、仕事環境に起因する部分はないのでしょうか。次に、ゆるいと感じている人がどのような仕事環境にあるのかを見てみましょう。

「ゆるい職場」はコミュニケーションが不足気味?

職場を「ゆるい」と感じている人に、あてはまる仕事環境を回答してもらいました。

グラフ・職場がゆるいと感じている人はコミュニケーション量が少ない回答傾向

職場をゆるいと感じている人の回答傾向を見ると、コミュニケーション量に特徴が表れています。「コミュニケーションを取りながら進める仕事が多い」が低く、「1人で進める仕事が多い」が高い。つまり、コミュニケーションが少なめの傾向があるのです。

コミュニケーションが少ない職場は、成長実感や働きがいを得にくい?

コミュニケーションが少ない職場は「必要以上に干渉されずに済む、良い職場では?」と思う方もいるかもしれません。しかし、社会人経験が浅いうちは、うまく物事を進められなかったり、思うような成果が得られなかったりと思い悩むシーンが多いもの。

そんな時に、上司や先輩や同僚とコミュニケーションが多いと、自然とさまざまな情報が入ってくることで、ヒントや新たな視点を得やすくなります。また、「分からないことが分からない(特にない)」状態から「この部分、理解できていないかも?」「自分のイメージと違うかも?」という気付きにつながることも。

このように「理解が曖昧なことに気付く→質問する→答えを得る→やってみる→分からない部分が出たらまた質問する・提出してフィードバックをもらう」という過程は、多く踏めば踏むほど「分かるようになった」「知らなかったことを知れた」「できた」などの成長実感が得られるものです。コミュニケーションが少ない職場ではこの好循環に入りづらくなるという点は、留意すべきかもしれません。

そして、報告ではない「会話」のなかで「がんばったね」「次も頼むわ」「もう一人で大丈夫だね」「やっておいてくれてありがとう」など、先輩がくれた何気ない言葉から、自身の成長や貢献に気づけることもあるでしょう。

上司や先輩の仕事の話を聞いて「自分もこういう案件を任されるようになりたい」「こういう場面で頼りにされるのはカッコいいな」「役に立ちたい」など目標ができ、仕事に張り合いが出るケースもあります。同調査の結果を見ても、「職場がゆるい」と回答した人はコミュニケーションが少ない傾向があることに加え、「身に付けるべきスキルが明確」「成長したと感じる」「目標が明確である」などの項目が低い結果に。

このように、漠然とした手ごたえのなさや将来の不安(同調査でも高い傾向)を抱えている状態でいきいきと働くほかの会社の同期の話を聞くと、「自分だけが停滞している」「成長できる環境にいかないと」と焦りが生まれ、転職を決断するケースがあるのです。

「干渉されない職場」は若手にとって「良い職場」か?

ちなみに上司や先輩の立場だと、コミュニケーションと言われても、若手にとって「干渉しすぎる先輩」の存在はうっとうしいのではと心配になる部分もあるでしょう。これは「人による」の大前提がありますが、同調査の「新入社員の人間関係の悩み」を見ると以下の結果に。

グラフ・職場がゆるいと感じている人は人間関係の悩みでも孤独感が窺える

上位に入っている項目は「苦手な人がいる」を除いて、「同年代が少ない」「交流が少ない」など、どちらかというと「コミュニケーションが多い」より「少ない」ことに悩んでいる傾向。

慣れない環境や目上の人が多いところでは萎縮し、「自分からコミュニケーションをとる」ことのハードルがぐんと上がってしまうというのも、多くの人に覚えがある部分でしょう。そう考えると、上司・先輩側からこまめに進捗確認などで声をかけてあげることは、若手からするとコミュニケーションや質問できるチャンスにもなり、それほどネガティブにならないかもしれません。

ゆるブラック・ゆるい職場という不安=大企業とは限らない?

前述のとおり「職場がゆるい」というと労働時間や体力的負担の側面のみのイメージから「一部の大企業の話でしょ?」と言われる方もいます。しかし、今回の調査では「職場がゆるい」と感じた人は大企業より小企業に多い傾向でした。

グラフ・職場がゆるいと感じている人は小企業のほうが多い

というのも、今回焦点をあてた「上司や先輩からの指導・管理のゆるさ」という点では、新人や若手の受け入れ・育成体制が整っているかという部分がキーになります。そうすると、新人の受け入れが「毎年恒例」ではない会社・部署、あまり若手が入らず育成ノウハウが蓄積されていない会社・部署、人手不足で後輩フォローが手薄になりがちな環境で起こりやすいということに。

ですから若手の「職場がゆるい」という不安は、企業規模を問わずどこでも起こりうるということを、頭の隅に置いておきたいものです。

まとめ:「職場がゆるい」の不安解消にはコミュニケーション

以上、「若手がゆるい職場で感じる不安や危機感」についてデータを見てきました。今回参照したデータは新入社員を対象にした調査ではありましたが、「達成感ややりがいを得られないことによる張り合いのなさ」「コミュニケーション量が少ないことで生じる問題」は、若手に限らずすべてのビジネスパーソンに通じる部分でもあります。

自身のパフォーマンスを上げていく、また職場の雰囲気づくりや人材の定着という観点でも、考えてみる価値はあるのではないでしょうか。

文・ミーツキャリア編集部


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