インターネットが普及し、AIの存在感も増してきている現代は、誰もが幅広い情報にいつでもアクセスできる時代です。だからこそ求められるのは単に知識が多いことよりも、「入ってきた情報を状況に応じて取捨選択し、自分なりの意見や考えを創造する力」ではないでしょうか。
そこで生きてくるのが、「地頭」の良さです。この記事では、地頭がいい人の特徴や地頭の良さを発揮できるシーンにも触れながら、地頭の鍛え方について解説します。
「地頭」の意味や定義とは?
地頭がいい人の特徴
地頭がいい人が活躍できるシーン
地頭を今から良くするためには?
「地頭が良くなった」と考えられるサイン
地頭を良くして重宝される人材になろう!
「地頭」の意味や定義とは?
まず「地頭」という言葉の意味がどんなものなのか、確認してみましょう。
その人に備わっている知力のこと
『新明解国語辞典 第八版』(2020年発行)によると、「詰込みや暗記一辺倒の教育によって身に付けられるものではない、広範な思考力・応用力・洞察力・発想力などの、その人自身に備わる知力」と定義されています。つまり地頭とは、各自にもともと備わっている知恵の働きや、得た知識をもとにロジカルに考える力、次のアイデアを生み出す力を指すと考えられます。
ちなみに、『広辞苑 第六版』(2008年発行)や『集英社国語辞典』(2018年発行)などには、「地頭」という言葉は収録されていませんでした。「地頭」という言葉は、ここ数年で浸透してきた比較的新しい言葉なのかもしれません。
「地頭がいい」=「頭がいい」ではない
「地頭がいい」と「頭がいい」は、意味が異なります。「地頭」という言葉の定義を踏まえると、「地頭がいい」とは、深い思考力と洞察力を持ち、応用力や発想力に優れるといった意味だと考えられます。
一方、「頭がいい」は、どちらかといえば勉強ができる、成績が良いといったニュアンスです。テストで高い点を取れる人や知識量が豊富な人を想像すると、イメージしやすいでしょう。
こうした違いを踏まえると、必ずしも「頭が良ければ地頭もいい」とは限らないと言えそうです。同様に、勉強が苦手でも地頭がいい人もいると考えられるでしょう。
地頭は大人になっても良くできると言われている
地頭の意味を見ると、「地頭の良し悪しは、生まれ持った才能みたいなものだろう」と感じる人もいるかもしれません。しかし、地頭の良し悪しには日ごろの行動や考え方も影響しています。また近年では、大人になってからもトレーニングをすることで地頭を鍛えられると言われています。つまり、現時点で「自分は地頭が良くない」と感じていたとしても、これからの行動や心掛け次第では地頭を良くできる可能性があるのです。
そのためにもまず「地頭がいい人」とはどんな人なのか、どういった行動や心掛けをしているのかを知ることです。そのうえで自分に足りない部分を把握し、集中的にトレーニングすることをおすすめします。
地頭がいい人の特徴や、おすすめのトレーニング方法は次の章から解説します。
地頭がいい人の特徴
地頭のいい人に共通する特徴として、次のものが挙げられます。- 物事の本質を素早く把握できる
- 主体的に行動できる
- 柔軟性が高く、臨機応変に対応できる
- 誰とでもスムーズにコミュニケーションがとれる
- ユニークな発想ができる
もちろん、必ずしもすべてを満たす人ばかりとは限りません。しかし、まずはこういった傾向があることを知っておくと、地頭を鍛える際も役立つでしょう。
物事の本質を素早く把握できる
地頭という言葉の定義どおり、地頭がいい人は理解力も高いと言われています。論理的思考を得意としている分、入ってきた情報をサクサクと整理できるためです。また、思考力・洞察力に優れていることから、整理した情報の重要な点をすぐに見抜き、物事の要旨やポイントを素早く掴める人も多いです。
主体的に行動できる
地頭がいい人の傾向として、受け身にならず自分からどんどん動ける人も良く見られます。入ってきた情報を整理する過程で、「自分はどう考えるのか」「今、どうすべきか」をしっかりと考えているためでしょう。もし疑問点や不明点が出てきた場合も積極的に確認するため、指示待ちになることも少なめ。率先して動ける姿勢から、周囲に高く評価される人も多いです。
柔軟性が高く、臨機応変に対応できる
どんな状況でも適切な対応ができる点も、地頭がいい人ならでは。優れた思考力や洞察力・応用力などがあるため、「自分が正しい」という考えに固執することもほとんどありません。だからこそ自分と違う意見を持つ人の声にも耳を傾け、場に応じた言動がとれるのです。
トラブルや急な対応が発生した際も状況を冷静に判断し、臨機応変な行動ができるのも特長の1つです。
誰とでもスムーズにコミュニケーションがとれる
地頭のいい人は、コミュニケーションを得意とする人も多いです。周囲の状況を落ち着いて把握したうえで、時と場合・相手に応じた言葉選びや話し方ができるためだと考えられます。そうしたコミュニケーションの積み重ねによってスムーズに信頼関係が構築できるため、仕事で高いパフォーマンスを発揮する人も。また、交渉や折衝が必要なシーンでも、うまく立ち回る姿が見られるでしょう。
ユニークな発想ができる
地頭がいい人は発想力にも優れていることから、多種多様な情報の本質や共通点を見抜いたうえで、固定観念にとらわれない柔軟な発想ができる人も多数。その結果、他の人が思いつかないようなアイデアや、他の人の意見を集約した斬新な案を、いとも簡単に提示できる機会も多くなります。
地頭がいい人が活躍できるシーン
地頭がいいと、特に次のようなシーンで活躍が期待できます。新しいプロジェクトや事業の立ち上げ
社内で新しいプロジェクトや事業を始めるときに重宝されるでしょう。企業として何か新しいことを始める際は、これまでにないアイデアや企画が求められます。特に昨今では人々のニーズが多様化していることもあり、柔軟な発想を持つ人材が求められます。
地頭がいいと、持ち前の応用力や発想力を生かしたユニークな視点で意見が出せたり、さまざまな情報を整理して画期的な策を出せたりするはずです。
トラブルやクレームへの対応
普段の業務で何らかのトラブルが起こったときも、地頭の良さは発揮されるでしょう。「地頭がいい人の特徴」でも紹介したように、地頭がいい人は柔軟性が高い人も多数。突発的な問題が起こったときもその原因を解明して解決策を考えたり、相手に寄り添いながら対応したりすることも得意です。
同様に、顧客や取引先から苦情・クレームが自社に寄せられたときもうまく対処できるでしょう。苦情やクレームも、突き詰めれば相手からの改善要求の1つ。相手が何を求めているか正確に理解できる分、トラブル発生時も対応できるのではないでしょうか。
日ごろの業務やコミュニケーション
地頭の良さは、普段の仕事でも発揮されるものです。
例えば本質や要点を素早く把握できることで、日ごろの報連相をスムーズに行えるでしょう。相手に合わせた言葉選び・話し方ができるため、誰とでもうまくコミュニケーションが取れそうです。
特にビジネスシーンにおけるコミュニケーションで求められるのは楽しくおしゃべりをすることではなく、伝えるべきことを伝えるべき相手に、正確に伝達すること。例え雑談が苦手でも、「誰に」「何を」「どのように」伝えるかが瞬時に把握できれば、同僚や取引先などとのやり取りに困ることはほぼなくなるでしょう。
ビジネスシーンにおけるコミュニケーションが苦手だと感じる人は、以下の記事も読んでみてください。
meetscareer.tenshoku.mynavi.jp
地頭を今から良くするためには?
前述のとおり、地頭の良さは生まれつきのものではなく、トレーニングをすることで今からでも良くできると言われています。ここでは、地頭を良くするために取り組みたいトレーニングを3つ紹介します。こうした心掛けや意識の切り替えをしているうちに、自然と地頭が良くなっていくかもしれません。
入ってきた情報を鵜呑みにしない
まずは身近な物事や見聞きした情報に対して「なぜ?」「本当に?」と疑問を持つクセを付けてみてください。自分が納得いくまで考え抜く習慣ができれば、自然と論理的思考ができるようになります。思考力も、次第に伸びていくでしょう。情報の正しさを判断するためには、自分の考えを言語化する過程も経ることになります。多少面倒でも毎回自分の考えを言語化しておけば、自分なりの意見や考えをきちんと持つことができ、コミュニケーションや交渉などもよりスムーズになるでしょう。
言語化がうまくできるようになるコツは、以下の記事で紹介しています。
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積極的にインプットとアウトプットをする
日ごろから、さまざまな情報をインプットしましょう。地頭の良さは頭の良さとは異なるものではありますが、やはり知識がなければ論理的思考や臨機応変な対応は難しいためです。読書を習慣化する、分からないことは積極的に調べるなど、新しい知識を身に付けることで地頭のいい人に一歩近づきます。年上・年下を問わずいろいろな年齢層の人々とコミュニケーションをとって、多種多様な情報や価値観に触れるのも効果的です。
加えて、インプットした内容は積極的にアウトプットしましょう。見聞きしたことをアウトプットしようとすることで、「どこが重要か」「どうまとめるか」などを深く考えるきっかけにもなります。知識が身に付くうえ、思考力も深められるでしょう。
アウトプットが苦手だと感じる方は、以下の記事も読んでみてください。
meetscareer.tenshoku.mynavi.jp
「地頭がいい」と思う人をお手本にする
身近にいる「地頭がいいな」と思う人を観察するのも1つの手です。
今回の記事で地頭がいい人の特徴をいくつか紹介してきましたが、やはり「百聞は一見に如かず」。自分自身で地頭がいい人の様子を見て、どういう思考回路があるのか、何をどう考えるのかなどを学ぶのが効率的です。
何からやればいいか迷ったら、地頭がいい人の行動や心掛け、考え方などで「すごいな」と思った点があれば積極的にメモしておき、自分にできることから真似してみてください。メモの方法には決まりはありません。気付いたときに、その場で簡単に書くだけで十分です。
■メモの例
- いつも話が簡潔で要点が分かりやすい
- 幅広い情報に触れ続けるために毎日、朝刊を読んでいるらしい
- 自分の意見に反対された時は、相手の意見に耳を傾け、良い部分を取り込んで意見をブラッシュアップできる
いきなり誰かの行動を真似するのは難しいと感じる場合は、とったメモを後から読み返すだけでも構いません。メモを読み返すと地頭がいい人の習慣や特徴が整理され、自分の中にも知識として蓄積されます。その結果、徐々に自分の意識や行動も変わってくるでしょう。
「地頭が良くなった」と考えられるサイン
こうしたトレーニングを続けていると、ある日、以下のような手ごたえを感じられることがあるでしょう。
- 以前は数日かかっていた仕事が、1日でできるようになった
- 質問に対して、「私はこう思う」とすぐに答えられるようになった
- 新しいアイデアをひらめくことが多くなった
これらができるようになってきたと感じたときが、あなたの地頭が良くなってきたサインかもしれません。
サインが出るのがいつになるのかも人によって異なりますが、地道にトレーニングを続けているうちにきっと、「あっ!」と感じるタイミングが訪れるはず。自分にできることから、コツコツと取り組んでみてはいかがでしょうか。
地頭を良くして重宝される人材になろう!
地頭は良し悪しが生まれつき決まっているものではなく、日ごろの行動や意識をほんの少し変えるだけでも鍛えられるものです。
地頭がいい人になると、日ごろの仕事で主体的に行動できたり、斬新なアイデアを出せたりして、一目置かれる存在になれるでしょう。その結果、周囲から「信頼できる、優秀な人だな」と評価され、ますます社内で重宝される人材に近づきます。
今回紹介した方法のなかから「自分でもできそう」と思うものを取り入れて、地頭を鍛えてみてください。その積み重ねが、数カ月後・数年後のあなたの未来を変えているかもしれません。
文/シモカワヒロコ(Nyima.)