

政府の指針*1や企業のダイバーシティ推進もあり、能力やポテンシャルのある女性に管理職登用の声がかかる場面は確実に増えています。
また、年収の観点で考えると、管理職になると管理職手当や社内の等級が上がり、年収がぐんと上がるというケースも少なくありません。
しかし、その一方で「管理職になりたい」と答える女性は依然として少数派。

マイナビ転職の調査*2でも、定年まで会社員として勤めたいと考える女性の内、約4割が「管理職などのキャリアアップは望まない」と回答しています。なぜ、このギャップが生まれるのでしょうか?
本記事では、キャリアコンサルタントの林碧先生に、こうした背景にある“心理的ハードル”を紐解きながら、管理職という選択肢をどう捉えれば良いのかを伺いました。
キャリア・コンサルタント
- 「管理職なんて無理」――そう伝える前に
- 「向いてない」の正体は、可能性を奪う状況かもしれない
- それでも、選ぶ価値があるとしたら?
- 不安があるなら、“うまくやる方法”を探せばいい
- 今、悩めているのは、それだけの場所に立っているから
もし、いま「管理職を任せたい」と声をかけられたら、あなたはどう感じるでしょうか?
責任が重そう、家庭と両立できるか不安、自信がない……そんなふうに、思わず「無理です」と答えてしまいそうになるかもしれません。でもその“無理”という言葉、本当にそうなのでしょうか?
今回は、「管理職なんて自分には向いていない」と感じる背景を一緒に見つめながら、自分らしいキャリアの選び方を考えてみませんか。
“選ばない自由”も大切にしつつ、今のあなたにできる選択を、自分の手で描いていけるように。
「管理職なんて無理」――そう伝える前に
「次のポジション、任せてみたい」そう上司に言われたとき、胸がざわついた。認めてもらえた嬉しさよりも先に、「私に務まるだろうか?」という不安が一気に押し寄せる――これは特別な誰かの話ではなく、多くの女性たちのリアルな感情です。キャリア支援の現場でも、「自分に管理職に向いていないと思う」という相談はあとを絶ちません。
「家のこともあるし」「子どもとの時間を削りたくない」「プレッシャーに耐えられる自信がない」そんな本音が、言葉の裏にそっと隠れています。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみませんか? その「ムリ」という感覚、本当に“無理”なのでしょうか? もしかしたら、そう答えることが、自分を守るための反射的な反応になってはいませんか?
「向いてない」の正体は、可能性を奪う状況かもしれない
マイナビ転職の意識調査*3では、定年まで会社員として勤務したいと考える女性の内、約42%が「管理職にはなりたくない」と回答する調査結果が報告されています。管理職を選びたくないという意見は、決して少数派ではありません。また、異なる研究レポート*4では、「管理職になりたくない」と回答した理由として「責任が重そう」「自信がない(自分に能力がないと思う)」「両立が不安」など、どれも共感できる内容が寄せられています。

でもその“自信のなさ”は、あなた自身の資質の問題ではなく、整った制度がないことや、周囲にロールモデルがいないこと、経験を積む機会が少なかったことによって、「うまく進められるイメージが持てない」状況にいるからではないでしょうか。
たとえば、ロールモデルが少ない職場では「管理職像」が固定化されがちです。今は状況が変わりつつありますが、少し前の先輩世代は「ガツガツ働く=管理職になれる女性」という傾向が今以上に強かったため、そういう方が管理職には多いのかもしれません。そんな中で、「ああはなれない」「私には無理」と感じるのは、むしろ自然な反応です。
挑戦の機会に恵まれなかったということもあるでしょう。そのため「これをやりきった」といえる物は特段ない、と感じ、尻込みしてしまう女性も多いのです。会社の制度も成長過程、支援体制も見えにくい――そんな中で「やりきれる気がしない」と感じてしまうのも無理はありません。
実際、私は研修なども良く登壇させていただくのですが、企業の人事担当者とのお打ち合わせにて「登用したいと思っても、『自信がない』と辞退されるケースが多い」「声をかけても、なかなか手を挙げてくれない」という声を多く耳にします。
“向いていない”という感覚の背景には、「うまくやれる未来が想像できない」という状況があるのかもしれません。その状況こそが、多くの女性の可能性を静かに狭めてしまっているのです。
それでも、選ぶ価値があるとしたら?
それでも──もし、管理職を選ぶことに「意味がある」と思えたら? 少しだけ、視点を変えて考えてみましょう。管理職になることは、決して「自分を変えること」ではありません。今のあなたのまま、チームを導き、育て、任される経験を積むことができるはずなのです。
誰かに背中を見せる立場になる、というのはとても大きな意味を持ちます。
「〇〇さんがやっているなら、自分にもできるかも」。そう思ってもらえる存在になることは、キャリアの誇りにもなります。
実際、管理職になった女性の約6割が「やってよかった」「やりがいを感じている」と回答した調査結果*5もあるなど、「向いていないと思っていたけど、やってみたら意外と楽しい」という声は少なくありません。

不安があるなら、“うまくやる方法”を探せばいい
管理職になると、急に何もかも背負わなければいけない──そんなふうに思ってはいませんか?でも実際は、頼っていいのです。チームで進めていいのです。
仕事と家庭の両立に不安があるなら、柔軟な働き方の相談をしてもいい。メンバーとの対話に苦手意識があるなら、周囲の先輩に相談すればいい。
すべてを完璧にやる必要はありません。「いまできることから始める」「助けてもらいながら育っていく」そんなスタンスで、一歩ずつ前に進むことも可能です。
実際、子育て中の女性管理職が、「週に一度は定時で必ず帰る」「できないことははっきり伝える」など、自分らしいやり方で役割を担っているケースもあります。
「変わってほしい」と思って声をかけているのではありません。今のその人にできると感じているからこそ、任せてみたいと思われているのです。
実際、先ほど話したとおり、企業の中では「どうしたら女性が管理職になりたいと思えるか」「何をサポートできるのか」……その人らしさを活かして活躍してほしい、そのための力になりたいと思っている人事が増えつつあるのを私は感じています。
今、悩めているのは、それだけの場所に立っているから
もちろん、迷うのは当たり前。けれど今その分かれ道に立っているという事実は、これまで誠実に仕事に向き合ってきたからこそ、チャンスが訪れたということでもあります。登用の声がかかるというのは、周囲があなたの実力を認めている証です。あなた自身がどう思っていようと、周囲は「できる」と感じている。
今、悩めているということ自体が、あなたがここまで頑張ってきた証であり、あなたが「選べる場所」に立っているということ。そのことに、どうか自信を持ってほしいと思います。
向いている・向いてないではなく、「向かってみてもいいかもしれない」そう思えたなら、それはもう十分に一歩目です。
もちろん管理職になるかどうかは、誰かに決められることではありません。ただ、勇気を持って「選べる自分でいる」ことは、これからのキャリアを考えるうえでとても大事なこと。
――「管理職なんて無理」と伝える前に、そっと自分に問いかけてみてください。
向いているかどうかじゃなくて、やってみたいかどうか。自分の人生を軸において、あなたを豊かにしそうかどうか。この声掛けを嬉しいと思えるかどうか。
今はまだ、不安や迷いの方が大きいかもしれません。
けれど、そのタイミングで「挑戦してみようかな」と思えるように、自分の気持ちに目を向けて、少しずつ準備しておけたら。
新しい可能性があなたには拓けるかもしれません。あなたの小さな一歩を、私は心から応援しています。
制作・マイナビ転職
*1:内閣府男女共同参画局「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023(女性版骨太の方針 2023)」
*2:マイナビ転職「新入社員の意識調査(2025)」https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/careertrend/24/
*3:マイナビ転職「新入社員の意識調査(2025)」https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/careertrend/24/
*4:マイナビ キャリアリサーチLAB「女性管理職を増やすための職場環境と上司のサポート」https://career-research.mynavi.jp/report/20240306_71445/
*5:マイナビ キャリアリサーチLAB「女性管理職を増やすための職場環境と上司のサポート」https://career-research.mynavi.jp/report/20240306_71445/
