IT・経理・事務・企画は10年以内になくなる仕事か? 将来なくならない仕事とはどんな仕事?


IT・経理・事務・企画は10年以内になくなる仕事か?

相次ぐDX化や生成AIの登場で、私たちのビジネス環境は激変しています。そこで、今年の新入社員に「今の仕事(職務内容)は何年後まであると思うか」を調査したところ、驚くべき結果が出ました。

「今の会社は20年後もある」は半数にとどまる

マイナビ転職の「新入社員の意識調査(2023)」によると、「今の会社は何年後まであると思うか」の問いに「20年以上」と回答した人は49.9%。約半数にとどまる結果となりました。
今の会社は何年後まであると思う?グラフ

新入社員の20年後というと、まだ40代前半の働き盛り。その頃まで「今の勤め先が存続しているか分からない」という層がこれだけいることを思うと、「転職は当たり前」の価値観が浸透し、「定年まで今の会社で働きたい」の意向が2割を切る(※)のも納得の結果と言えます。

ちなみに、この傾向は従業員規模別でも顕著な差が。

「今の会社が何年後まであると思うか」の問いに「20年以上」と回答した人の割合

「今の会社が何年後まであると思うか」の問いに「20年以上」と回答した人の割合は、大企業(1,000人以上)は66.2%、小企業(99人以下)は32.4%と、会社の存続期間の予想が企業規模に比例する結果となっています。

ちなみに、一般的に倒産理由と言われるのは「販売不振」や経営状態の悪化だけでなく、「親会社から子会社への連鎖倒産」「大企業の倒産が取引先や下請けに波及する」「不祥事による信頼失墜」などのパターンもあります。

また、昨今特に言われるのが「人手不足」や「社長(代表)の高齢化・後継者の不在」。会社の先行きを見通すには、企業規模だけではなく、さまざまな観点を考慮することが求められます。

「今の仕事は20年後もある」は4割にとどまる

続いて、「今の仕事は何年後まであると思うか」の問い。こちらも「20年以上」と回答した人は40.5%。半数に届かない結果となりました。
今の仕事は何年後まであると思うか?グラフ

職種別に見ると、「医療・福祉・教育」では「20年以上」が66.4%。どんなに機械化や自動化が進んでも、最後は人間の五感にもとづいた確認やコミュニケーションが求められる分野だけに、なくならないと考える人も多いのでしょう。

IT・経理・事務・企画は10年以内になくなる仕事か?

反対に、危機感があらわになった職種を見ていきましょう。まず1つ目はIT専門職。「10年」の回答は36.5%、「5年以下」の回答は15.3%。2つ目の「経理・事務・企画」は「10年」の回答は34.0%、「5年以下」の回答は13.3%。

ちなみに「技能工・物流・配送」は「5年以下」の回答が19.5%。物流・配送については大手自動車メーカーが自動運転の実用化に向けて研究開発をハイピッチで進めており、日本ではレベル3の自動運転車両が一般道を走ることを想定し、法律も改正されているという状況です。「ドライバー」という仕事の在り方が変わる可能性を、ひしひしと感じているのかもしれません。

将来もなくならない仕事とは?

このように「将来仕事がなくなってしまうかも」と危機感を覚えているのは、おそらく新入社員だけではないでしょう。20年後というと、今40歳前後の方までは、十分に現役の可能性があるからです。ただし、職種で一概に「なくなる」「なくならない」を判断してしまうのは、危険かもしれません。

たとえばITに含まれるシステムエンジニアで言えば、仕様書通りにプログラミングをするといった作業は機械に代替されていくかもしれません。しかし、「潜在課題をヒアリングし、顧客にベストなシステムを提案・設計する」という部分は、人の力なしにはまだまだ難しいでしょう。

また、人力のみでやっている業務にシステムを導入する仕事も、人間にしかできません。いずれも、言語化できない「不安」や「不便」を聞き出す能力や、会話や目の前の人のリアクションから感情や思いを汲み取るなど、高度なコミュニケーションが要求されるシーンがあるためです。

社会の変化のなかでなくなる仕事は確かにありますが、「今後も必要とされ続ける仕事」「より価値が高まる仕事」もあるのが事実です。そのような視点で今の仕事を捉え、どんな経験を積み、どんなスキルを身に付けていくか、主体的に選択し社会の変化に適応していくことが、今後はますます重要になるのかもしれません。

【まとめ】「仕事がなくなるかも」と不安な人がすべきこと

これまで以上に変化が激しい時代でビジネスパーソンとしての市場価値、ひいては収入手段を維持するために、「今できること」にはどんなことがあるのでしょう。

それは、今から労働ニーズの変化をキャッチし、労働ニーズに応える人材になるよう、スキルや経験を身に付けて備えていくこと。仕事の選択肢は、経験やスキルの積み重ね、つまり「キャリア」でいくらでも広がったり狭まったりするもの。「その時」後悔しても、遅いのです。

面談などの機会に上長に担当したい業務の希望を伝える、社内のプロジェクトに立候補する、リスキリングや学びの制度を利用する、転職でキャリアチェンジするなど、方法はさまざまあります。どのようなスキルをどのような方法で身に付けていくか、今日から少しだけ意識してみてはいかがでしょうか。

(※)マイナビ転職「新入社員の意識調査(2023)」より。「今の会社であと何年働くか」を聞いたところ、定年までと回答した人は19.1%にとどまった。

文・本城奈々子